1976年のアントニオ猪木/柳澤健

完本 1976年のアントニオ猪木 (文春文庫)

柳澤 健/文藝春秋




1976年、それまで私はプロレスを一度も見た事がなかったけどプロレス嫌いの父が、猪木×アリ戦を少しだけ見て「くだらない」とつぶやいていたことは、少しだけ覚えています。猪木に関する本は、加治将一の『アントニオ猪木の謎』 に続いて2冊目。レスラーとしての猪木を全く知らない私ですが、大人になってから知る猪木という男の真実は非常に興味深い。

猪木には、猪木をとおしてしか知ることができないような、男の「秘密」や「謎」がつまっている。

加治氏は猪木個人の謎に迫りましたが、橋本治を師と仰ぐ柳澤氏は日本人の謎にも迫っているところが、わたしにとっては、本書の魅力でした。

当時ファンだった人には、猪木の八百長話に惹き付けられるでしょうが、本著が浮かび上がらせた「リアルファイトに対しての日本人の歪んだ感情」というテーマは、日本人論として非常に興味深く、プロレスファンでない人にとっても読む価値大。どうやら日本はまだ当分の間「9条」を保持したほうが良さそうです。

☆☆☆☆☆(満点。大人であることの楽しさを満喫!)

(以下は、著者のインタヴューより抜粋)

真剣勝負の格闘技と、大衆娯楽のプロレス。本来、交わることのない両者が、なぜか、日本だけは密接な関係を保ち、混同している人も多い。格闘技とプロレスにおける捩れた現象。その要因こそ“アントニオ猪木の1976年”に帰結すると本書では説いている。

〜「ルスカの部分っていうのは、個人の物語なんですよね。悲しい男の話。で、アリのところは、スーパースターの物語。パク・ソンナンっていうのは、国の物語。ペールワンは、一族の話」

〜猪木から現在の格闘技に繋がっているのはファンタジー。ファンタジーの文脈を掴んで、わかりやすく説明するのはすごく難しい。ある時点で、これ本にするためには、76年の猪木が今にどう繋がっているのかを書かなければならないということが明らかになったんです。

〜だから、76年の4試合を書けば終わりとはならない。“76年の猪木と現在とはファンタジーで繋がっている”と書けば一行で済む、それを説明するのは難しいよぉ(笑)。

ーー柳澤さんにとってのアントニオ猪木。その結論は?
「力道山やジャイアント馬場、ルー・テーズやバディ・ロジャースなど偉大なレスラーはいっぱいいたけれど、皆、観客や会社(団体)のためのツールにすぎなかった。ただ一人、猪木だけが新しいジャンルを切り開いた世界一のレスラーだった。

——子供の頃にに見ていた猪木も世界一のプロレスラーだった?
「そう。結論は74年の小林戦の頃と全然変わらない。でも、過程はずいぶん違う。大人になるってことは、そういうことなんじゃないかな(笑)」

★柳澤健インタヴュー
http://allabout.co.jp/sports/prowrestling/closeup/CU20080117A/index.htm

★水道橋博士の「博士の悪道日記」
http://blog.livedoor.jp/s_hakase/archives/50326900.html
____________

【内容紹介】2月ルスカ戦、6月アリ戦、10月パク戦、12月ペールワン戦。4試合の当事者を世界に訪ね、新証言によって描く格闘技を変えた熱い1年。1976年、猪木は異常ともいえる4試合を闘いました。2月に柔道オリンピック金メダリスト・ルスカと最初の異種格闘技戦を闘い、6月に現役のボクシング世界ヘビー級チャンピオンだったモハメッド・アリに挑み、10月に韓国プロレスの希望の星をたたき潰し、12月にパキスタンの国民的英雄の腕を折り、一族を破滅においこみます。
著者は、当時の試合の当事者たちを世界中に訪ね歩き、猪木の開けた「巨大なパンドラの箱」を描き出します。私たちは76年に猪木がつくりあげた世界観の中にいる——知的興奮にも満ちたこの一冊。(SS)  文藝春秋 (2007/03)
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by yomodalite | 2008-05-12 14:43 | 報道・ノンフィクション | Trackback | Comments(0)

旧「読書日記と着物あれこれ」。歴史/文学/お笑いを好み、着物生活をしていたはずが、いつしかマイケルジャクソンのように本を読もうになってしまったブログ。永年暮らした東京を離れ、現在は大阪を満喫中。


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