2007年 08月 02日
刑務所の中/花輪和一
銃砲刀剣類不法所持が実刑3年にも値する罪ということにまず驚かされました。食事の充実ぶりは目を見張るものがあるのですが、それにもかかわらずパンや牛乳、そしてマーガリン+小倉パンへの驚くべき執着など、経験してみないとわからない人間の不思議がいっぱい。
【Amazon.co.jp】 刑務所の中って一体どうなっているのだろう。
独房の構造は、クサい飯とは、実際どんなものなのか。トイレはどうしているのか。看守は? 囚人同士の関係は?
現役漫画家である著者が、記憶をたよりに細密な絵で描く『刑務所の中』は、そんな単なるヤジ馬的好奇心を満たしてくれるばかりではなく、狭い閉ざされた空間でヒトはいったい何を思い、どんなことに楽しみを見出して過ごそうとするものなのか(「マーガリンつきのパン食」のエピソードは必見)、しみじみと教えてくれる秀作である。
巻頭にはマンガ評論家の阿部幸弘らとの対談を収録。著者が3年の懲役を受けるに至った経緯が、自戒の念を込めて語られている。あとがきでは呉智英が著者の才能が潰れることがないようにと念じながら獄中の著者と手紙のやり取りをしていたエピソードを披露している。
獄中の著者が「一日が過ぎるのがものすごく早い」と独白しているが、四六時中監視されながら複数の人間が閉じ込められている「緊迫」と、生活のすべてが看守の号令のもと受身に過ぎていく「弛緩」に、読んでいるほうもあっという間に引きずりこまれて、しばらく抜け出せなくなるのでご用心あれ。(福山紫乃)
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by yomodalite
| 2007-08-02 09:54
| 報道・ノンフィクション
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