文化系のためのヒップホップ入門

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2018年最後の投稿は、今年一番アンダーラインを引いた本を紹介することにします。



ヒップホップにイマイチ乗れずにいる洋楽ファンにとって、1968年生まれの長谷川町蔵氏と、1970年生まれの大和田俊之氏の対談形式によるこの本以上に納得できる読み物はないんじゃないでしょうか。


おふたりの話は、専門用語が散りばめられただけで、アーティストへの過剰な思い入れも、リスペクトの理由も、さっぱり伝わってこないヒップホップマンセーな書き手とは違って、


日本の多くのリスナーにとって、本来はカンタンに共感出来そうにない世界について、フィジカルレベルで、ストンと納得させてくれます。


こんな風に理解できていたら、ムダな苦労をしなかったのに、とか、やっぱそうだよね、と安心したり、全然知らなかったこともたくさんあるのですが、下記はほんのさわりだけ。


(省略して引用しています)


◎第 1部ヒップホップの誕生より


I N T R O D U C T I O N

ヒップホップの壁を超えて


大和田:・・・というわけで 、かつての僕のような初心者 、つまり 「興味はあるのに聴き方が分からない 、どこから手を出せばいいのか分からない 」読者に向けて 、町蔵さんにレクチャ ーしていただこうと思います。


長谷川:まあ 、メディア側にも問題はあるんですけど 。本来はヒップホップを世間に紹介しなくてはいけないヒップホップ系ライタ ーがコアなヒップホップ ・ファンにしかわからない用語で書くし


良識ある洋楽ファンがヒップホップの壁を越えられないのはよく分かるんですよ 。まず歌詞が暴力 、金 、犯罪を礼賛して女性蔑視的だし 、音楽的にもロックのように洗練していかない ・・・ヒップホップをロックと同じように音楽だと思うから面白さがわからないのであって ・・・


大和田:音楽じゃないとするとなんでしょう


長谷川:ずばり 、一定のルールのもとで参加者たちが優劣を競い合うゲームであり、コンペティションです。・・・たとえば第一線から退いたアーティストの扱われ方・・・ロックだとファンが徐々に減っていくけど 、ヒップホップは、ファンがクモの子を散らすようにいなくなっちゃう 。それは 「こいつはもうゲームに勝てなくなった 」と見限られたってことなんですよ


筋金入りの帰国子女で 、大学入学までずっとロサンゼルスにいた学生が、「今の日本のヒップホップはぜんぜん面白くない ! 」と。「どうして? 」って訊くと 、「ビ ーフがないからっすよ!ヒップホップはカンプティッションなんっすよ! 」と叫ぶんです 。


僕がヒップホップに興味があると伝えると毎日のようにメールをくれるんですが、それが 「先生ヤバイっす、誰が誰をディスりました 」とか 「誰と誰がビ ーフを始めました 」「誰が誰のレーベルに入りました 」とか人間関係の話ばっかり 。・・・ この曲がカッコいい !ていう音楽の話はひとつもない (笑)


僕も最初から競技と思って聴いていたわけじゃないんですよ 。もともとニューウェーヴの延長で「新しいロック 」としてヒップホップを聴き始めたので 、途中まではヒップホップに進化や洗練を求めていたんです。でも途中でこれは違うなと


それで競技であることを意識しながら、時代順にもう一回聴いてみたら、自分の直感が正しいような・・・なので 、歴史をたどりながら 〝ゲームとしてのヒップホップ 〟を喋っていきましょう。


◎テクノ、ハウスとの関係


大和田:ヒップホップとハウスは両方ともディスコをそのルーツのひとつとしながら、片方は女性蔑視的な性格を帯びつつ 、もう片方はゲイ ・カルチャーを継承するわけですよね 。同じ黒人音楽でもこうした対称性がはっきりと出てくるのは・・・


ハウスやテクノにはどこかスピリチュアルな雰囲気が漂うというか 、ある種の超越性が感じられますよね 。それに対してヒップホップはどこまでもリアリティに根ざしている 。


長谷川:ハウスもテクノもループ主体の音楽なのに、ヒップホップほど商業的に大きくならなかったのは、ディスコから受け継いだ匿名性や 音楽の中にある超越性のせいなのかもしれません 。インタビューや写真撮影を拒否している人や 、一人で様々な名義を使い分けているア ーティストも多いんです。そこいらへんが 「俺が俺が」って主張しまくる俗っぽいヒップホップと対照的なんですよ


◎ジャマイカからブロンクスへ


大和田:ヒップホップに関する文献を読むと 、必ずジャマイカから始まりますよね 。ほとんどレゲエの歴史と同じになってしまうという ・・・


長谷川:ブロンクスはジャマイカ移民が多くて 、ネーション・オブ・イスラムの指導者ルイス・ファラカーンや国務長官だったコリン・パウエルもブロンクスのジャマイカ系黒人なんですよ・・・


大和田:ブロンクスにはもともとユダヤ系やアイリッシュ系の人がたくさん住んでいたんですが、6 0年代にブロンクス横断高速道路が建設されると、白人がみな郊外に逃げちゃった。だから、アフリカ系とヒスパニック系移民が流れ込んでくるのは比較的最近なんです・・・


長谷川:最初は、当時のディスコDJと同じように 、2つのターンテーブルとミキサーを使ってレコードを切れ目なくかけているだけだったのに、ある日仲間たちのダンスが盛り上がるのが 、曲のコ ーラス部分ではないってことに気づく。たとえばジェームズ ・ブラウンの F u n k y D r u m m e r 〉は 6分以上続く曲だけど 、一番盛り上がるのは 5分を過ぎてから出てくる・・・いわゆる 「ドラムブレイク 」と呼ばれる部分 ・・・


(引用終了)


これが〝ブレイクビ ーツ 〟の発明に繋がり・・価値観の転倒や、パラダイムシフトをもたらし


ちなみに、マイケルは、ヒップホップの楽曲の中でも数多くサンプリングされたアーティストの1人なんですが、中でも一番多く使われたのは何だと思いますか?


その答えと、結局ラップは何を語っているのかについて興味がある方はぜひ!

そして、今年お世話になったみなさまへ。

このブログは来年もまだ続きますw


Commented by kei-wa at 2018-12-31 21:36 x
一年の締めくくりにまたとても興味深い本を紹介していただいてありがとうございます!
御多分に漏れずヒップホップは苦手な一人でした。
競技だなんて考えても見ませんでした(汗)
これも読まねば!な本に加えさせていただきます!
あ、小さな白い鳥も読みましたし、Dancing the dreamも英語版を買ったので、和訳についてもまた来年も勉強させていただきますのでよろしくお願いしますm(_ _)m
Commented by yomodalite at 2019-01-03 18:24
たくさん読んでいただいてありがとうございます!
昨年は、kei-waさんのコメントに何度も励まされました。
今年もおつきあいいただけるとうれしいです。
今読んでいる本(音楽関係)もすごくイイので、
また紹介しちゃいますからねー!
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by yomodalite | 2018-12-29 23:00 | 現代文化・音楽・訳詞 | Comments(2)

旧「読書日記と着物あれこれ」。歴史/文学/お笑いを好み、着物生活をしていたはずが、いつしかマイケルジャクソンのように本を読もうになってしまったブログ。永年暮らした東京を離れ、現在は大阪を満喫中。


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