和訳 “Black Or White”

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今回の和訳はアルバム「Dangerous」の先行シングルで、マイケルの作品の中で、もっともアカデミックな世界で注目された作品だと言われる「Black Or White」。


この曲については、大勢の人が「黒人と白人」をイメージすることから、マイケルが人種差別について考えた曲であり、黒人が被ってきた悲劇的な歴史や、今なお残る差別について語られることも多いですね。公民権運動によって様々な人種差別法が撤廃され、黒人の大統領が誕生するまで現実が変化していても、人種差別はなくなっていない、と語ることは依然としてトレンドです。


でも、そういった理由のひとつに「アイデンティティ政治」と言われるものがあるのも確かなことで、人々を、ジェンダー、人種、民族、性的指向、障害など、特定のアイデンティティに基づく集団に分類することは、その集団の利益を代弁しようという統治者側の意図でもある。(能力差や階級差に目を向けさせず、労働者の利益を守るとか、反戦運動など、人々による大きな団結を阻止し、資本家にとって都合のいい人材を安く輸入するため・・・)


裏返して言えば、政策に人種差別撤廃をうたう統治者やエリート集団には、飯の種である「人種差別」をなくすことは出来ないのです。そしてそれは黒人至上主義の多くを見過ごし、白人至上主義を「悪魔」のように語ることにもつながっている。


「人種には優劣がある」という分類が流行らないのなら、「人種差別を完全撤廃せよ」という運動を推進すればいい。どちらも「分断して統治せよ」という政治手法であり、アメリカに限らず、これまでの帝国がやってきたことで、トランプ大統領によって分断されたわけではないのですが、現代を生きる人々にとって、こういった影響から逃れることは本当にむずかしいことです。


実際多くのアーティストが様々な差別撤廃への政策を支持し、アイデンティティを歌にする一方で、マイケルが常にそういったことに慎重だったのは、彼がその様々な問題点に気づいていたからだと思います。そして、それが最もよく表れているのが、今から27年も前に発表されたこの曲ではないでしょうか。


何度も書いていることですが、ほとんどの場合、彼の詩の主語は、いくつも変化していきます。マイケルが生前出版した詩集『Dancing the Dream』(1992)でも顕著に見られる特徴ですが、彼は常に「自分は・・」よりも、「わたしたちは・・」を大事にしているんですね。


「心の中を見てごらん」と、“わたしたち” は言う。「何が見える?」あなたと、わたしではなく、ただひとつの “わたしたち” が見えるだろう(「I YOU we」より)



黒人として生まれた彼のアイデンティティは「黒人」に留まることなく「KING OF POP」へと成長していったのだ、と私は思いますが、残念ながら、そんなに賢明ではない私たちは、日々くだらないトピックを発見しては大騒ぎして、怒ってみたり、記事を書いたり、お金を稼いだりしてしまいがちなんですよね。


数年前も、セレブに関する都市伝説を映像化しようとしたコメディTV映画『Urban Myths』で、マイケル役を白人が演じることに批判が集まったことがありました。「黒人にも様々な肌色を持つ人がいて、黒人の血が流れている人もいるのに、白人が演じるのは、マイケルに対する侮辱だ」と。


そして、その根拠として、あるコマーシャルで彼の幼少期を演じるのに、マイケルが白人の男の子を配役したがったという噂に対して、マイケルが「僕は黒人のアメリカ人だ。それを誇りに思っている。だからそんな噂を信じないで」と語ったインタビューが紹介されていました。


マイケルが黒人として生まれたことに誇りを持っているのは確実で、幼少時「黒い肌だった自分」を演じるのに「白い肌の少年」を選ぶなどという馬鹿げたことをするわけがない、と言いたいのはよくわかります。


しかし、2000年以降、白人よりもさらに白い肌になり、またそれを堂々と隠すこともしなかったマイケルが、その当時の自分を演じる俳優を「黒人でなければ・・」などと考えるとは私には思えません。


また、この批判の中で「黒人にも様々な肌色を持つ人」というのは、ワンドロップルールのことで、以前は見た目には白い肌で白人に見えても、祖先に黒人の血が混じっていると「黒人」とみなされるということがありました。ただアイデンティティ政治が進んだ現代では、そういった人々のことを黒人とは認めない、という黒人サイドの意見が大きいのも確かで、最近では、黒い肌にみえるブルーノ・マーズにアフリカ系の血筋が認められないという理由で、黒人文化を盗用していると批判されたこともありました。


つまり、こういった批判をしている人を納得させるには、ルーツを遡って、アフリカ系の血筋を確認し、なおかつメイクをすれば、マイケルのような白い肌と細い鼻筋が可能というような、相当むつかしい俳優選びになるわけですが、仮にそうして選んだ黒人俳優が「白塗り」したとたん、今度は「黒塗り」を批判されてきた白人が・・と、なることも容易に想像がつきますよね(笑)


つくづくバカバカしく、日々記事を作らなくてはならない商売の方々にはお疲れさま、とだけ思って無視したかったのですが、日本のMJファンの方で真剣に怒りを覚えたと書かれていた方がいたので、つい長々と説明してしまってますw


マイケルが「白人になりたかった」という噂に反論するつもりで、マイケルの肌の色が白くなったのは病気のせい・・という説明もよく目にしますが、マイケルが肌の色を明るくしたいと思っていたことまで覆す必要はないでしょう。なぜなら、肌を白くしたいことと、白人になりたいと思うことは別問題だからです。


美白化粧品を使用している日本人は、色白の肌を美しいと思い、日焼けマシンが欠かせない日本人は、黒い肌を美しいと思っているだけ。黒人が黒い肌を薄い色にしたいのも、白人が日焼けに精を出すのも、個人の自由であって、黒人も、白人も、誰かの基準で「らしさ」を求められることが、はたして自由(リベラル)な社会でしょうか。


マイケルがインタビューで答えたことからわかるのは、彼が黒人としてアメリカに生まれたことにプライドをもっていた、ということ。


でも、今後もアメリカ黒人として生きて行くとことに誇りを持ち続けるのではなく、本当は人種なんて区別はないのだと気づき、常に両方の意見を聞いて、世界中みんなで手をつなげる社会を夢に描き、また、そんな自分が世界中で愛されたことに、もっともプライドを持っていたのではないでしょうか。


そんなことは、この曲を聴けば明らかだと私は思うんですが、(拙訳も含め)訳した人の人種問題に関する考えが反映されやすい曲なんですよね。


Black Or White は、白人音楽とみなされているロックと、黒人音楽だとされているヒップホップが融合されているのですが、「僕は生涯、有色人種と呼ばれて生きる気はない(下記の私訳では色分けされて・・)」というラップを「白人」の Bill Bottrell にやらせたり、


◎参考記事「Black or White」でラップを歌った謎の男に会う


SFの前半では、アメリカの一般的な白人家庭とアフリカの民族を対比させ、暑いインドと寒いロシアといった対極の国が登場し、後半では、それまでにこやかに踊っていたマイケルは、過激な黒人解放運動で知られるブラックパンサー党をも匂わす黒豹に変身し、既存の社会を破壊するだけでなく、自己イメージの破壊をも試みている。


「Black Or White」は、黒人と白人というだけでなく、完璧な正義(白)も、完璧な悪(黒)もない、この世界そのもののことでもある、とも言えるのではないでしょうか。


ところで、、

マイケルはこの曲の中で「奇跡がおこった」と言っています。

この「奇跡」を、あなたはなんだと思いますか?


理想の女の子とひとつに結ばれたこと?

それとも、黒人が白人の女の子と対等につきあえたこと?


でも、黒人が白人の女の子とつきあうなんて、マイケルが最初でもないし、少年時代から世界的な白人アイドル女優を2人も彼女にした彼にとっては奇跡でもなんでもないですよね?(^^)


マイケルの主語は「I」であっても、「You」であり、そして「We」でもあることがほとんど。この奇跡もマイケルにだけ起こったことではなく、私たちも目にした奇跡・・・


そう、「黒であり白でもある」ということを全身で表現し尽くしたマイケルを目の当たりにしたとき、私たちが感じた、それこそが奇跡だったのではなかったでしょうか。






(冒頭のスキットはSFから)

大音量の音楽。父親はリビングのソファで野球を見ていて

二階のベッドで飛び跳ねる息子に、父親は我慢しきれず怒鳴る。


Father : Turn that noise off!

父親:その雑音を消せ!


それでも止まらない音楽、父親は階段を上って息子の部屋へ行きドアを開ける。


Father : I thought I told you to turn that thing off! It's too late, and it's too loud!

父親:消せって言っただろう、もうこんな時間なのに、うるさすぎるぞ


Kid : But Dad, this is the best part.

子供:でも、パパ、今いいとこなんだよ


Father : You are wasting your time with this garbage. Now go to bed!

父親:こんなくだらないもので時間を無駄にするな、とっとと寝ろ。


ドアを強く締め部屋を出ていく父親。その拍子にドアにかかっていた大きなフレーム入りのマイケルの写真が落ちてガラスが割れる。


Kid : OK

子供:オーケー


息子は、ニヤリとし、リビングに巨大スピーカーを運び、ギターをアンプにつなぎ出力を最大限にする。目盛りの端にはバカじゃないの?(Are you nuts?)と書かれている。


Kid:Eat this.

子供:これでも食らえ


息子がギターをかき鳴らすと、父親は椅子ごと別世界へと飛んでいく。


Mother : I'm afraid your father's gonna be very upset when he gets back.

母親:お父さん、帰ってきたらカンカンよ


(ここから曲がスタート)


[Verse 1]

I took my baby on a Saturday bang

Boy, is that girl with you?

Yes, we're one and the same

Now, I believe in miracles

And a miracle has happened tonight


土曜のパーティーに彼女を連れてった

おい、あの子が君の彼女なのか?

そう、僕らはふたりでひとつ、等しく結ばれている

僕は奇跡を信じてたけど、

奇跡は今夜起きたんだ


[Hook]

But, if you're thinking about my baby

It don't matter if you're black or white


でも、君は僕の彼女のことを考えているんだろう

黒人か白人かなんてどうでもいいことをさ


[Verse 2]

They print my message in the Saturday sun

I had to tell them I ain't second to none

And I told about equality

And it's true, either you're wrong or you're right


僕のメッセージが土曜のサン紙に載ってる

僕は彼らに自分が一番だと言わなきゃならなかった

そのうえで平等についても話したよ

人は「正しい」と同時に「間違ってる」こともある。それだけは真実だよ


[Hook]

But, if you're thinking about my baby

It don't matter if you're black or white


それなのに、君は僕の彼女のことを考えているんだろう

黒人か白人かなんてどうでもいいことをさ


[Coda]

I am tired of this devil

I am tired of this stuff

I am tired of this business

So when the going gets rough

I ain't scared of your brother

I ain't scared of no sheets

I ain't scared of nobody

Girl, when the going gets mean


こんな悪意にはうんざり

こういった雑誌や

こういった商売のすべてにうんざりする

たとえ、状況が悪くなったって

おまえの仲間なんて怖くないし

シーツをかぶった奴ら(KKK)のことも怖くない

僕は誰も恐れない

どんなに卑怯なことをされてもね


[rap lyrics by Bill Bottrell]

Protection for gangs, clubs and nations

Causing grief in human relations

It's a turf war on a global scale

I'd rather hear both sides of the tale

See, it's not about races

Just places, faces

Where your blood comes from is where your space is

I've seen the bright get duller

I'm not going to spend my life being a color


ギャングや様々なグループ、そして民族のための防衛が

人々の間に深い悲しみをもたらしている

それは世界規模での縄張り争い

話は両方から聞かないと

ね、人種の問題じゃないんだよ

縄張りとメンツなんだよ

俺は優秀な奴がだめになっていくのを見てきた

おまえのルーツは、おまえがいる場所なんだよ

俺は色分けされて生きていくつもりはない


[Verse 3]

Don't tell me you agree with me

When I saw you kicking dirt in my eye


「君の意見に賛成だ」なんて気安く言うなよ

君に汚されたときのことは目に焼き付いているんだから


[Hook]

But, if you're thinking about my baby

It don't matter if you're black or white

But, if you're thinking about my baby

It don't matter if you're black or white

I said if you're thinking of being my brother

It don't matter if you're black or white


君はただ、僕の彼女のことを考えているんだろう

黒人か白人かなんてどうでもいいことをさ

君は僕の彼女のことを考えているんだろう

黒人か白人かなんてどうでもいいことなのに

教えてあげるよ

君が僕の仲間になりたいと思うなら

君が黒くても白くてもどうでもいいよ


[Outro]

It's black, it's white

It's tough for you to be(*)

It's black, it's white

It's tough for you to be

It's black, it's white


黒でも、白でも

キツイよね

黒でも、白でも

楽じゃないよ

黒でも、白でもさ


Alright, alright

Ooh, ooh

Alright

Yea, yea, yea now

Alright, alright

Ooh, ooh

Yea, yea, yea now

Alright

It's black, it's white

It's tough for you to be

It's black, it's white, whoo

It's black, it's white

It's tough for you to be

It's black, it's white, whoo・・・


曲が終わりモーフィング部分が終わると、監督(ジョンランディス)が女の子に近寄って、「カット!完璧だよ、君どうやって姿を変えたの?(Cut! That's perfect. How do you do that? )と声をかけた後、パンサーパートが始まり、最後はシンプソンズのアニメ。


Father : Bart, turn off that noise!

父親:バート(子供の名前)、その雑音を消せ!


Kid : Chillout, homeboy.

子供:おまえこそ、落ち着けよ。


父親、無言でテレビの電源を切る。


(和訳:yomodalite)


(*)CDでは、to get by ですが、マイケルが実際に歌っているのは、to be で、デンジャラス~ショートフィルムコレクションの歌詞表記でも、to beになっています。





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by yomodalite | 2018-04-07 12:03 | ☆マイケルの言葉 | Trackback | Comments(0)

旧「読書日記と着物あれこれ」。歴史/文学/お笑いを好み、着物生活をしていたはずが、いつしかマイケルジャクソンのように本を読もうになってしまったブログ。永年暮らした東京を離れ、現在は大阪を満喫中。


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