2016年 06月 02日
それでも花は咲いていく/前田健 |

でも、突然の死の報道で、親友だったというカンニング竹山氏が、まえけんさんが監督脚本を手がけた映画のことを語っているのを偶然TVで見て、初めての小説を完成させ、そこから映画を創ったあとに亡くなられたのだと知って、私は、ああ、なんか上の方から呼ばれちゃったんだと思ったのだ。
神が愛そのものだというなら、天使は、エンターティナーのような人ではないかと私は思っている。そういう人は、ある程度の役目を果たすと、天から呼ばれて、「よくやった。そろそろこっちに戻って来い」って言われるんだと。
天使がそこで、「もう少しやってみたい」とか、「まだまだ」とか、即答すればいいんだけど、ちょっぴり疲れていて、「そうだなぁ」なんて一瞬でも思ってしまうと、天の方では、可愛い天使たちを、すぐに休ませてあげたいから・・・それで、突然旅立ってしまうなんてことが起こるような気がするのだ。
ファンの人に怒られるかもしれないけど、マイケルがショーを目前にしていたとか、プリンスが倒れた「ペイズリーパーク」とか、神は、彼らが一番働いている場所をよく知っているから、そこには何度も現れて、同じことをずっと聞いてきたのだと思う。
短編集であるこの本には、それぞれの章に花の名前がついている。
エーデルワイス
家庭教師をしている12歳の少女を愛している37歳の男
ダリア
安全なセックスだけを楽しみたいと「秘密乱交クラブ」に入会した平凡なOL
ヒヤシンス
他人の部屋に忍び込み、彼らの生活を感じることが好きな男
デイジー
マンガの中の登場人物を愛し続けてきた29歳の女
ミモザ
SMの「ご主人様」を求め続けるエステ業界で成功した女性経営者
リリー
性的欲求や嗜好がまったくない32歳の女
パンジー
美しい母に恋心を抱いたまま、30歳を過ぎたピアノ教師
カーネーション
老作家に恋した、本ばかり読んでいる20代の女
サンフラワー
鏡に映る自分を好きになれない、ボクシング嫌いのボクサー
主人公は全員、世界と折り合いがつかず、生きづらさを感じていて、罪とのギリギリを行き来してしまう危うさを抱えているけど、まえけんさんは、それぞれの「咲き方」を模索していて、文章は、章を追うごとに凄みを増していく。とても処女作とは思えないような作品を読み終わると、巻末には「本書は、書き下ろしです」という文字。
文章力もスゴイけど、これを映画にしたいと思い、監督まで務め、またそこに、素晴らしい俳優たちが集まったことが、とても納得できる作品で、本当に多才な人だったことがよくわかって、
マイケルやプリンスが旅立つ場所が、そこしかなかったように、まえけんさんが、新宿が倒れたということには意味があるということも、この小説を読んで、強く感じました。

by yomodalite
| 2016-06-02 12:00
| 文学
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