2014年 07月 28日
宗教の倒錯/上村静 |
本書について、著者は、「宗教は人を幸せにするためにあるはずなのに、なにゆえその同じ宗教が宗教の名のもとに平然と人を殺してしまうのか?」という、素朴な問いに答えることを目的としていると言う。
宗教関連の本として、私にとって、ここ数年のベスト本なのですが、それゆえ、思うところが多過ぎて、なかなか感想を書けずにいました。
世界の不公平や悪の原因をユダヤのせいにし、激しい敵意をむき出しにして、「正義」や「真実」を語り、「洗脳」されていると煽る本が現代日本でも数多く見られます。
キリスト教では、ユダヤ人は、イエスを十字架にかけたと憎みますが、キリスト教ができた後、イエスと同様、様々な異端を弾圧し、処刑し、異教徒と激しく戦争してきたのも、キリスト教会です。
数多の陰謀論にも見られる「反ユダヤ主義」の原因について、一般の読者が理解できるように書かれている本は稀で、ユダヤ教にも、キリスト教にも精通した聖書研究者で、特に日本人による著作となると、本当に希少だと思います。
著者が説明しようとした「倒錯」は、私たち日本人のほとんどが意識することなく過ごしていることですが、それは特定の宗教の問題ではなく、一神教の問題として、遠くから眺めていられる時代は終わり、私たちは欧米で行なわれてきた歴史から、何も学ぶことなく、同じ過ちを繰り返そうとしているようです。
答えについては、本全体から読み取るべきですが、
購入の際の立ち読み箇所としては、
第16章「キリスト教のユダヤ教からの分離」からがお奨めです。
by yomodalite
| 2014-07-28 22:27
| 宗教・哲学・思想
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