2014年 06月 30日
いじわるな天使/穂村弘 |
女の子のいじめ方のなかで、一等おもしろいのは、宇宙船の中でいじめるやり方だ。
四月のお天気の朝、ポニーテールが自慢の女の子といっしょに卵とシュリンプのサンドイッチを持って宇宙港を見学にいこう。宇宙港には、最新型の宇宙船が巨大なペンギンの家族みたいに並んでいるだろう。ぴかぴか光っているだろう。女の子を見学用の宇宙船に乗せてしまうまでは、ちやほやちやほやしよう。
「ポニーテールとかけてなんととく? 猫のトイレの砂ととく。そのこころはどちらも風にさらさらさら」
なんていいながら女の子のまわりをくるくる回ろう。女の子はうれしくなってにこにこするだろう。女の子はほめられるのが大好きだ。いいお天気が大好きだ。
見学用の切符を買ったら、空の色を映して真っ青なエアーチューブのなかを、ふたりでシューと滑って、コックピットに乗り込もう。ハッチを閉めたら、無重力ボタンを押してしまおう。なにもかもふわふわ宙に浮かぶだろう。女の子はあわててスカートの裾を押さえるだろう。ふわふわ宙に浮かんだら、さあ、もうこっちのものだ。それまでのにこにこ笑顔をひっこめて、大昔の花王石鹸のお月様マークみたいに意地悪な顔になって、
「よく見るそのリボン似合わないね」とか、「楽しそうに遊んでるけど宿題はもうすんだの?」とか、ものすごく意地悪なことを、いっぱい言おう。
女の子は悲しくなって、うつむくだろう。ふわふわ浮かんでうつむくだろう。女の子がうつむいたら、調子にのって、
「貧乏大臣おお大臣、貧乏大臣おお大臣貧乏。びんぼーだ。びんぼー。きみはびんぼーだ」と大騒ぎしよう。
ふわふわ浮かんだまま大騒ぎしよう。女の子はうつむいたまま肩をふるわせるだろう。そしたらその耳元で、
「白鯨モビーディックがエイハブ船長のあんよをぱくり」とか、「二十面相の水責めにあって小林少年と少年探偵団はあっぷあっぷ」とか、「インデアンのふんどし」とか、
思いつく限りのこわいことをいおう。あまりのこわさに女の子はこらえきれなくなって、涙をぽろりとこぼすだろう。そしたら….(「宇宙船で女の子をいじめる方法」より)
ホムホムの “いじめ” は、このあといっそう激しくなって、ついに・・・
by yomodalite
| 2014-06-30 08:24
| 文学
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