2009年 05月 11日
神々の乱心(上・下)/松本清張 |
まだまだ清張ビギナーの私にとって、早過ぎるとは思ったものの、『昭和史発掘』シリーズでの取材力を元に、皇室、宗教といったテーマを清張がどう描いたのか、どうしても早く知りたくて、手を付けてしまいました。
(ネタバレには気をつけておりますが、今回は色々微妙な点がありますのでご注意ください)
昭和8年、特別高等警察課第一係長 吉屋謙介は、マークしていた「月辰会研究所」の建物から出てきた女を尋問することになった。女は宮城坂下門通行証を持ち、風呂敷には、月辰会の「御例示」が大事に包まれていた。
「宮内省皇宮宮職」職員、北村幸子は、深町女官の代理として月辰会に訪れたようだったが、その数日後、職を辞して郷里に帰った直後に自殺した。
皇室、謎に包まれた女官の世界、謎の宗教。。。探偵役には、華族の次男ばかりを集めた「華次倶楽部」を主催する、深町女官の弟にして萩園子爵の弟でもある萩園泰之という、これまた魅力的なキャラも登場し、とても82歳とは思えぬほど、旺盛な執筆力には今更ながら驚かされるのだけど、その溢れんばかりの執筆力が凄すぎて、魅惑的な謎に惹き込まれつつも、連載そのままでの単行本化だからか、文章の重複や、中国の民族問題から、大連阿片事件、満州事変、国家主義運動などなど、昭和の歴史が壮大に関わり過ぎて、歯応えの固さは半端ではありません。
そのあまりの壮大さに、音を上げて、これほどの「魅惑的な謎」にも関わらず、上巻半ばで自らネタバレ情報を探ってしまったのですが、なんとそこには、「未完」の文字が!。読書前にできるだけ、情報を仕入れない主義なので知らなかったのですが、晩年の作とはいえ、やはり清張の作品としては、完成度に疑問を感じる読書だったので、「やっぱり」という感じも否めませんでした。
ただ、謎のすべてが解らずじまいというわけではなく、事件は最終章で一応解決していますし、未完後の内容には、編集部註によるまとめがついているので、クライマックスは想像できます。
小説としての完成度には残念な点が多いものの、挑戦する価値は大いにある特別な作品です。
☆判定不能
「MuBlog」
http://asajihara.air-nifty.com/mu/2007/08/1_ac33.html
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昭和8年、特別高等警察課第一係長 吉屋謙介は、マークしていた「月辰会研究所」の建物から出てきた女を尋問することになった。女は宮城坂下門通行証を持ち、風呂敷には、月辰会の「御例示」が大事に包まれていた。
「宮内省皇宮宮職」職員、北村幸子は、深町女官の代理として月辰会に訪れたようだったが、その数日後、職を辞して郷里に帰った直後に自殺した。
皇室、謎に包まれた女官の世界、謎の宗教。。。探偵役には、華族の次男ばかりを集めた「華次倶楽部」を主催する、深町女官の弟にして萩園子爵の弟でもある萩園泰之という、これまた魅力的なキャラも登場し、とても82歳とは思えぬほど、旺盛な執筆力には今更ながら驚かされるのだけど、その溢れんばかりの執筆力が凄すぎて、魅惑的な謎に惹き込まれつつも、連載そのままでの単行本化だからか、文章の重複や、中国の民族問題から、大連阿片事件、満州事変、国家主義運動などなど、昭和の歴史が壮大に関わり過ぎて、歯応えの固さは半端ではありません。
そのあまりの壮大さに、音を上げて、これほどの「魅惑的な謎」にも関わらず、上巻半ばで自らネタバレ情報を探ってしまったのですが、なんとそこには、「未完」の文字が!。読書前にできるだけ、情報を仕入れない主義なので知らなかったのですが、晩年の作とはいえ、やはり清張の作品としては、完成度に疑問を感じる読書だったので、「やっぱり」という感じも否めませんでした。
ただ、謎のすべてが解らずじまいというわけではなく、事件は最終章で一応解決していますし、未完後の内容には、編集部註によるまとめがついているので、クライマックスは想像できます。
小説としての完成度には残念な点が多いものの、挑戦する価値は大いにある特別な作品です。
☆判定不能
「MuBlog」
http://asajihara.air-nifty.com/mu/2007/08/1_ac33.html
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上巻【BOOKデータベース】昭和8年。東京近郊の梅広町にある「月辰会研究所」から出てきたところを尋問された若い女官が自殺した。特高課第一係長・吉屋謙介は、自責の念と不審から調査を開始する。同じころ、華族の次男坊・萩園泰之は女官の兄から、遺品の通行証を見せられ、月に北斗七星の紋章の謎に挑む。—昭和初期を雄渾に描く巨匠最後の小説。
下巻【BOOKデータベース】昭和8年の暮れ、渡良瀬遊水池から他殺体があがった。そして、もう一体。連続殺人事件と新興宗教「月辰会研究所」との関わりを追う特高係長・吉屋謙介と、信徒の高級女官を姉に持つ萩園泰之。「『く』の字文様の半月形の鏡」とは何か?背後に蠢く「大連阿片事件」関係者たちの思惑は?物語は大正時代の満洲へと遡る。未完の大作。
【帯情報】
<上>宮中に何事か画策する謎の新興宗教
昭和8年。東京近郊。梅広町の「月辰会研究所」から出てきたところを尋問された若い女官が自殺した。自責の念と不審から「月辰会研究所」をマークする特高課第一係長・吉屋謙介。やがて渡良瀬遊水池から、2つの死体が……
巨匠松本清張が渾身の力を揮った絶筆1700枚。
<下>満洲に暗躍していた教祖の野望とは
自殺した女官の兄から、月に北斗七星の紋章が入った通行証を見せられた華族の次男坊・萩園泰之。「『く』の字文様の半月形の鏡」とは何か? 事件の背後に見え隠れする十数年前の「大連阿片事件」の影。「月辰会研究所」の謎を追って、物語は大正時代の満洲へ遡る。
下巻【BOOKデータベース】昭和8年の暮れ、渡良瀬遊水池から他殺体があがった。そして、もう一体。連続殺人事件と新興宗教「月辰会研究所」との関わりを追う特高係長・吉屋謙介と、信徒の高級女官を姉に持つ萩園泰之。「『く』の字文様の半月形の鏡」とは何か?背後に蠢く「大連阿片事件」関係者たちの思惑は?物語は大正時代の満洲へと遡る。未完の大作。
【帯情報】
<上>宮中に何事か画策する謎の新興宗教
昭和8年。東京近郊。梅広町の「月辰会研究所」から出てきたところを尋問された若い女官が自殺した。自責の念と不審から「月辰会研究所」をマークする特高課第一係長・吉屋謙介。やがて渡良瀬遊水池から、2つの死体が……
巨匠松本清張が渾身の力を揮った絶筆1700枚。
<下>満洲に暗躍していた教祖の野望とは
自殺した女官の兄から、月に北斗七星の紋章が入った通行証を見せられた華族の次男坊・萩園泰之。「『く』の字文様の半月形の鏡」とは何か? 事件の背後に見え隠れする十数年前の「大連阿片事件」の影。「月辰会研究所」の謎を追って、物語は大正時代の満洲へ遡る。
by yomodalite
| 2009-05-11 16:15
| 文学
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