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数日前にアップされた、Soul Train Awards のテディ・ライリーのショー、ご覧になりました?

MJメドレーはもちろん、こちらも最近ますます元気なティト兄のギター参加もあって、とにかくテディが今でもすっごくカッコよくて、なんか元気出ちゃったんですけどぉ・・


この頃の黒人音楽には言葉の壁を感じなくてイイよね。

ヒップホップ時代は、メロディよりラップが重要視されるようになって、世代間の差とか、地域差も激しくなり、歌の中に暴力とドラッグが蔓延して、実際に亡くなったラッパーも・・・

それなのに、どうして、これまでの音楽ジャンル以上のビッグビジネスになったのか?

そんな疑問を解いてくれる本になかなか出会えなかったのだけど、この本は、ヒップホップの歴史が丹念に描かれていて、色々と参考になりました。


なじみのないカタカナ用語が多い上に、厚みが5センチぐらいある大書なので、想像以上に時間がかかって、なかなか読み終わらなかったんですが、ようやく、「ミリオン・マン・マーチ構想」が登場する(P643)頃から興味深い記述が増えてきて面白くなってきたんですが、


それにしても、全756ページ(注釈をのぞく)もある本を、643ページまで読んで、ようやく「ミリオン・マン・マーチ」(1995年)って!、ジェイ・Zや、ノトーリアス・B.I.G.が出てくる前に、ヒップホップの歴史ってそんなに長くあったっけって思いません?

記憶の中では腑に落ちなかったものの、スパイク・リー監督の出世作『ドゥ・ザ・ライト・シング』は1989年で、映画では、それまで同じ地区の住民という関係だった韓国系やユダヤ系と黒人たちが分離していく状況を描いていて、その後さらに黒人とユダヤ人の連携関係が崩壊したことがヒップホップ文化の発展にとっては重要なポイントになったことや、

MTVで初めてかかった黒人音楽がマイケルとプリンスだった、というのは有名ですが、そのときMTVや、流行の仕掛け人たちが嫌っていたのは、黒人だけでなく「都会」だった。という話も、なんだか納得するものがありました。

マイケルのヴィデオを初めて見たとき、それを都会的だとは感じなかったけど、当時の他のアメリカンアーティストたちはもっと「カントリー」な感じの人が多くて、「ライブエイド」はロックアーティストたちが仕切った若者のイベントという印象だったけど、「ウィ・アー・ザ・ワールド」は、紅白歌合戦みたいで、なんか古臭い・・・と当時の私は思っていたのですが・・

そんな風に思えた時代のアメリカは、今のようには「分断」しておらず、ヒップホップの仕掛け人たちによる、MTVでラップを流す計画は、マイケルがMTVに登場した数年後にはあって、マイケル以降、それまで消費社会の中心にあったカントリーミュージックは消え、都会中心になっていったんですね。

とにかく取り上げたくなるポイントが多すぎてピックアップするのも大変な大書なんですが、押野素子氏の翻訳がスムーズで読みやすく、ヒップホップの資料という以上に、アメリカの歴史に迫った本だと思いました。


そして、私がヒップホップに四苦八苦しているとき、ダーリンがときどき笑いながら読んでいたのがこちら。

空手バカのダーリンは、読む本の6割以上が「格闘技関係」なんだけど、この分野には、いろいろと変わった方が多くて、この本の著者の保江邦夫氏も数理物理学・量子力学の教授で、少林寺拳法や、大東流合気武術などさまざまな武術を学んだだけでなく、イエス・キリストが直接使用した(!)活人術まで伝授されて、『人を見たら神様と思え』なんていう本も書いておられたり、

比例代表で、日本のこころを大切にする党から立候補されて、落選されていたり、とにかくてんこ盛りな人生を歩まれている方なんですけど、

物理学用語をテキトーに利用して、宇宙の真理を語ってしまうスピリチュアル本は多いですが、理論物理学者の著者が書いたこの本では、受験生時代からここまで、自分の人生がいかにツイていて、スゴい奇跡にいっぱい遭遇してきた、という話が満載の・・・ナンダカンダ笑える本でした。


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by yomodalite | 2016-12-03 07:00 | 読書メモ | Trackback | Comments(0)

誰が音楽をタダにした? 巨大産業をぶっ潰した男たち (早川書房)

スティーヴン ウィット/早川書房

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最近では、ついにSpotifyも日本上陸。本当に様々な音楽配信サービスが登場して選択肢に迷うほどですが、音楽をタダにしたというと、昔ナップスターってあったなぁなんてことを思い出す人も多いですよね。結局そのサービスは日本では見られなかったので、当時の米国の実態はよくわからなかったのですが、この本は、そのナップスターを立ち上げた男の話だけではなく、ナップスターが立ち上がる前からネット上にあった音楽ファイルは、そもそもどうやって?という歴史と謎に迫ったもの。

翻訳がとてもスムーズで読みやすく、

・音楽圧縮技術であるmp3の生みの親
・ビッグ3と言われるレコード会社を次々に経営し成功を収めた音楽エグゼクティブ
・音楽をリークするグループで市場最強と言われた男たち

上記の3人を軸として、ナップスター全盛時代に大学生活を送り、パソコンに聴けないぐらい大量の音楽ファイルを溜め込んでいたという著者の軽妙な語り口で、リーク軍団が群雄割拠した時代が描かれています。

すでに販売されている音楽や映画の海賊版が販売されているというのは、販売する人の利益になるので理解出来るのですが、CDの発売前にリークされるということがどうして起こるのか? しかも無料で? ということがずっと不思議だったのですが、この本ではその謎の一端が明かされているだけでなく、マイケルファンにとっては、『インヴィンシブル』以降の音楽シーンを振り返る意味でも興味深い事柄が満載。

とりあえず、マイケルの名前が登場した、本書の主人公の一人である音楽エグゼクティブ、ダグ・モリスの言葉をメモしておくと、
・・モリスは音楽泥棒を牢屋にぶち込むことに大賛成だった。しかし、彼は違法テープ売買の時代からまったく違う教訓を学んでいた。警察を呼んでも問題は解決しない。解決策は「スリラー」を世に出すことだ。モリスから見ると、本当に音楽業界を救ったのは、マイケル・ジャクソンの1982年の大ヒット曲だった。足りないのは法律じゃなくてヒット曲だ。・・・モリスは「スリラー」に関わっていなかったが、ほかの音楽エグゼクティブと同じく、スリラーを特別な1曲として絶賛していた。このアルバムは企業努力の成果を表すもので、歴史に永遠に名を刻む名曲だった。
音楽著作権の危機が、音楽ビジネスを破壊するという認識があったのですが、意外にもレコード会社の重役達はしぶとく生き残り、アーティストには不利益がのしかかる。リークするグループの目的はいったいなんなのか? 業界全体の大混乱を経て、最終的に勝利したのは?

私は、『THIS IS IT』を見た日の帰り道と同じように、またもや、マイケルの完全勝利を感じましたが、そんな結末だったのかどうかは、各自確認してくださいw

1章 mp3が殺される
2章 CD工場に就職する
3章 ヒットを量産する
4章 mp3を世に出す
5章 海賊に出会う
6章 ヒット曲で海賊を蹴散らす
7章 海賊に惚れ込まれる
8章 「シーン」に入る
9章 法廷でmp3と戦う
10章 市場を制す
11章 音楽を盗む
12章 海賊を追う
13章 ビットトレント登場
14章 リークを競い合う
15章 ビジネスモデルを転換する
16章 ハリポタを敵に回す
17章 「シーン」に別れを告げる
18章 金脈を掘り当てる
19章 海賊は正義か
20章 法廷で裁かれる



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by yomodalite | 2016-10-19 06:00 | 現代文化・音楽・訳詞 | Trackback | Comments(0)
昨晩は、MBSソングタウンという関西の番組でも、マイケル特集をやっていた。

出演していたのは、このブログでも何回か紹介したテンダラー浜本と、デンジャラスツアーのステージでマイケルに会っている関根麻里の夫でもあるシンガーのKと、ジャクソンズと共演もしている福原美穂。

おなじみスムクリのゼログラビティで登場したテンダラー浜本は、この格好でロケにも行っていたという赤のスリラージャケットがすごく似合っていて、相変わらずビートイットのギャングがちょけているシーンについて流暢に語り、Kはキーボードを傍において、この曲のメロディはこうなんだけど、マイケルが歌うとこうなる・・・ヒューマン・ネイチャーは息継ぎでさえ、リズムになっている、なんてことを優しく解説し、福原美穂はマライヤの「アイル・ビー・ゼア」からジャクソン5が好きになって・・・などなど、三者三様のマイケルが熱く語られ、福原とKによるブラホアもすごく素敵だった。

先日、少年隊ヒガシが出演した番組でも流された、あの二分間のことや、ムーンウォークのバリエーションについての話もあったのだけど、本当に何度聞いたかわからない話を、日をおかずにまたもや聞くことになったのに全然飽きてないし、こんなふうに大勢の人が何度も繰り返したくなるというのは、何度言葉を尽くしても、きっと説明しきれないと感じるからかな、と思う。会いたいって思う気持ちや、美しいって思う感情を説明することって出来ないから。

それと、地上波でこんなにも長くマイケルが語られるのは、TVで活躍する芸人や芸能人という人々に特別な刺さり方をしている人が多いからだと思う。マイケルはマスメディアの最大の被害者であることも確かだけど、マイケルほど、マスメディアを研究し尽くしたアーティストもめずらしく、彼らには、マイケルがマスメディアにしか出来ないと思っていたことが伝わっていて、7年経ってもまだ・・というよりは、7年経ってようやく気持ちの整理がついて、余計に語りたいということもあるのだと思う。最近ファンになった人にはわからないと思うけど、「インヴィンシブル」から「THIS IS IT」まで、本当に長い長い8年があった。


1998年の宇多田ヒカル (新潮新書)

宇野維正/新潮社



「ロッキング・オン・ジャパン」「CUT」等の編集部を経て、現在は「リアルサウンド映画部」で主筆を務める著者が、今年(2016年)1月に出版した本をようやく読み終えた。

著者は、「はじめに」で、この本を書きたいと思った理由を3つ挙げている。

1998年という年が、この先、未来永劫に塗り替えられることがない日本の音楽業界史上最高のCD売り上げを記録した年だということ。

2000年、2005年、2010年も、そして現在においても、グループ、バンド、ソロを問わず、性別を問わず、日本の音楽シーンにおけるトップ3の才能だと自分が考えている音楽家、宇多田ヒカル、椎名林檎、aikoという3人がすべて1998年にデビューしている。

この3人について、自分はそれを書くのにもっとも相応しい場所にいた、という自負がある。

そして、「日本でもっとも多くのCDが売れた年」と「日本で最も多くのアルバムを売った音楽家」をタイトルに並列させた本書は、結果的に長いようで短かった「CDの時代」へのレクイエムのような本になった、と。

そんなわけで、タイトルとは異なり、第1章は、家庭用CDプレイヤーが発売された1982年のことから始まり、第2章では、小室ブームや渋谷系やSMAPについても触れられ、第3章で、ようやく宇多田ヒカルらがデビューした1998年のことが語られる。

この間のことは私にとってすべてリアルタイムで、深夜に宇多田ヒカルのPVを初めてみたときのことも、すごく覚えている。

でも、、

1998年は、まだ『インヴィンシブル』が発売になっていなくて、それが「オートマティック」よりも後だったということが、自分の記憶の中でなんだか一致しない。

好きな音楽が好きなだけ聴けるということだけが「自由」だった職場では、誰もが自分のお気に入りのCDを持ってきていて、みんなプリンスが大好きだった。私も好きだったけど、インクロのリミックス版3枚を私が1日中かけ続けた日をきっかけに、マイケルも解禁になって、、私は「XTC」をかける係でもあったのだけど、みんな職場の近所にいっぱいあった流行りのクラブより、ここの方が熱気があると感じていた。

そうして、みんなが競って残業していた時代、深夜遅くに帰宅してテレビをつけると、宇多田ヒカルの「オートマティック」のPVが流れていたような気がする。深夜なのにどうしても彼に電話したくなってしまう曲だったけど、彼女の音楽をCDで聴いたのはそれからずっと後になってからだった。

私にとって、彼女の音楽は、いつもFMとかテレビから聴こえてくる音で、だから時代の記憶とマッチしているように感じるのかな・・。

『インヴィンシブル』はなかなか発売されなくて、待っている間に、私は独立し、離婚し、発売後に、再婚して、それから、MJが歌わなくて踊らなかった長い長い間に、私も引退して、そうして2009年がやって来て・・・。

それからまた何度も何度も繰り返して聴いているせいなのか、『インヴィンシブル』は「あの時代の音」とは言えなくて、全然古くもなっていない。でも、あまりにも何度も聴いているから、宇多田ヒカルのデビューよりも、ずっと前からあったようにも感じていた。

「オートマティック」を初めて聴いたときの自分に戻ることの方がずっとむずかしいのに。

「インヴィンシブル」から「THIS IS IT」までは本当に長くて、宇多田ヒカルが休業宣言したのは、私にとってはついこの間のように感じるけど、実際は2010年で、もう6年も経っていた。

そんなことを書いてアップするときに、このブログのアクセスレポートを見たら、気づかない間に、累計の訪問者数が100万を超えていた。訪問者数は、ひとりが1日に複数ページ見ても1カウントで、ここにはスマホのアクセスは含まれていないので、アクセスカウンターなら、200万以上にはなってると思う。ブログをやっていない人には結構多い数字に思われるかもしれないけど、気がついたら9年もブログを書いていたってことなんだよね。

時代が流れていくのと、自分の歩みとは、ますます乖離していくような・・・
_______

1998年の宇多田ヒカル[目次]

第1章 奇跡の1998年組
第2章 1998年に本当は何が起こっていたのか?
第3章 1998年の宇多田ヒカル
第4章 椎名林檎の逆襲
第5章 最も天才なのはaikoなのかもしれない
第6章 浜崎あゆみは負けない
第7章 2016年の宇多田ヒカル

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by yomodalite | 2016-09-09 23:04 | 日常と写真 | Trackback | Comments(0)
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始まる前は、特に気にしてなかったオリンピックだけど、選手たちの真剣勝負に夢中になって見入ってしまって、手に汗を握り、一喜一憂したり、叫んだりしています。

4年もの間、この大会を見据えて日々努力した選手たちの中には、4回もこの世界最高峰に君臨し続けてきたレジェンドと言われる選手もいて、16年も・・・と本当に驚いてしまうんですが、マイケルが世界一にこだわってきた年数は、その倍以上。聖誕祭で各時期のマイケル写真を整理していると、彼のスター人生の長さだけでなく、時代ごとに彼がどんなことを考えていたのか、そんなことも思い返してしまいます。


「SMAP×SMAP」が始まったときの衝撃は今でも覚えています。

このブログには、その素晴らしさについて言及された本として、今は亡き「広告批評」の1997年から2008年8月までの連載を集成した橋本治氏の『明日は昨日の風が吹く』という本をメモしていたのですが、橋下氏によれば、「SMAP×SMAP」がとてつもなく素晴らしかったのは、1999年だったとのこと。

私が感激したのがいつ頃だったのかは覚えていませんが、テレビ草創期や全盛期の伝説的なバラエティ番組に匹敵し、凌駕するほど素晴らしいバラエティーショーを5人のアイドルが作り上げたことの輝きは、2010年にその本を読んだときには、すでに色褪せていて、彼らにはマイケルの自伝『ムーンウォーク』で、「ジャクソンズ・バラエティショー」を辞めたときのことを読み返して欲しいとずっと思っていたのだけど、

SMAPはその後、さらにお昼のバラエティショーにまで出演するようになり、せっかくここまで成功した彼らが、こんな露出を続けることを残念に思い、そしてついに、その国民的番組の終焉までつきあってしまったことに不安を覚えただけでなく、出演していたメンバーがその終焉に対して、想像以上のショックを受けていた様子に、もっと心配になっていた。

終わり方というのは、本当にむずかしい。

彼らには、マイケルがモータウンを離れ、ジャクソン5という名前を奪われ、ソロとしてこれまでとはまったく違った顔を手にいれたことを思い出して欲しいと思うけど、ただ、それが出来たのは世界中でマイケルひとりだけだったとも思う・・・

今日は「終戦の日」。

私が生まれたときから、毎年のようにやってくる「終戦」の日だけど、戦争が始まりそうになって、ようやく今までやってきたことの中に、何が欠けていたのか少しだけ見えてくるような・・・マイケルがいなくなって、初めてその喪失感の大きさに気づいたように。

7年のときを経ても、相変わらず、何もかもMJ絡みで考えてしまう自分に、

日々呆れつつ・・・

これを聴いてもマイケルを感じてしまうという曲。


七尾旅人 "サーカスナイト"










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by yomodalite | 2016-08-15 10:30 | 日常と写真 | Trackback | Comments(0)

映画『ソウルパワー』

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1974年、“キンシャサの奇跡”と言われたモハメド・アリ対ジョージ・フォアマンの対戦の前には、アフリカ系ミュージシャンたちの “ブラック・ウッドストック” とも言える『ザイール'74』と題された音楽祭が行われていた。

差別を乗り越え、成功をおさめた米国のアフリカ系ミュージシャンと、解放運動を戦ったアフリカン・ミュージシャンが共に同じステージに立った歴史的なコンサートのことは、JBに興味をもったときから、いつか見てみたいと思っていたのですが、ドキュメント映画公開や、モハメド・アリへの追悼企画も重なって、今回ようやく見ることができました。

この映画は、『モハメド・アリかけがえのない日々』(1997年アカデミー賞ドキュメンタリ部門受賞作)の編集をしていたジェフリー・レヴィ=ヒントが、1974年のコンサートフィルムが撮影されていたことを知って、2009年に編集し直したもので、最初からドキュメント映画として撮影されたものではない。

最初、私はこの映画を1974年という時代に巻き起こった「ブラックパワー」の一端をとらえた映画だと思っていたのだけど、残されたフィルムを2009年に編集した監督の意図はそうではないようで・・・

映画が始まるとすぐ、少し前に見た『ミスター・ダイナマイト』のときよりも、だいぶグッチ裕三っぽくなったJBが現れるのだけど、股割ステップを含む短いステージシーンが終わってしまうと、しばらくJBの姿は見られなくなり、キンシャサの街や、コンサート会場が建設されていく様子、米国の黒人ミュージシャンたちが、自らのルーツだと感じているアフリカでコンサートを行うことを、故郷への帰還だと感じて高揚しているところや、対戦前のアリのアジテーションなどが淡々と移し出されていく。

時折現れるほんの小さな瞬間から、1974年当時、JBがモハメド・アリと同様か、それ以上に人々から尊敬され、愛され、ソウル界や、黒人だけでなく、白人からも「ゴッドファーザー」のように慕われていたことが伝わるシーンがあり、また、彼が想像していたよりもずっと小柄な人だったことにも気づいた。

ようやくコンサートが始まると、期待以上に音が良く、今実際にフェスに行って聞くよりもずっと「生の音」のように感じられ、これまで名前ぐらいしかわからなかった70年代のアーティストや、まったく知らなかったアフリカンミュージシャンたちが身近に感じられる。

B・Bキングが、ギターを弾く人だってことさえ知らなかったけど、彼の指から奏でられる音にグッと来たり、ダニー“ビッグ・ブラック”レイのコンガや、ミリアム・マケバの「クリック・ソング」に魅了され、楽屋でアフリカの女性アーティストたちと仲良くじゃれあっている往年の女性ディスコグループというイメージしかなかったシスター・スレッジがまだすごく幼くて、こんなムサい男たちの中で大丈夫なの?と心配になったり・・

そんな感じで、すっかりどこかの夏フェスに行ったような気分で見ていた画面に、ついにJBが登場すると、私だけでなく、会場の雰囲気が一気にヒートアップする。みんな素晴らしかったのに、やっぱりパワーが全然ちがうのだ。

ようやく登場したJBのステージシーンもあまり長くはないけど、曲が終わると、JBはその曲と同じぐらいシビれることを言って、エンディング・ロールが始まる。バックステージの彼の姿が映し出され、彼はもうこれで本当に最後という感じで、頭を下げたりするけど、エンドロールがすべて終わった後、再度JBからグッとくるメッセージがあるので、最後まで見逃さないようにね。

これは、彼のメッセージで始まり、彼のメッセージで終わる映画なのだ。

『ジェームス・ブラウン 最高の魂を持つ男』でも、『ミスター・ダイナマイト』でも、JBがメンバーにずいぶんと厳しかったことが描かれていたけど、この映画では、何気ないシーンに、彼の優しさや繊細さが伝わってきて、もっと好きになった。

今まで、プリンスのパフォーマンスがJB直系だとは思っていたけど、プリンスの小柄で中性的な容姿は、ソウル界のゴッドファーザーとはだいぶ異なると思っていた。でも、JBもまた小柄な人で、「パープルレイン』以前のプリンスは、ファッションも音楽も想像以上にJBの姿を追っていたように感じられた。

また、JBとは正反対ともいえる声のマイケルが、色々と苦心して、キャリアの最後まで、JBの音楽に近づく努力をしていたんじゃないかと思ってしまったのは、私が、MJの「アンブレイカブル」へのこだわりについてばかり、考えているせいかな。

でも、ショウビズ界一と言われた自分以上によく働いたふたりのことを、JBはすごく可愛く思っていたと思う。彼がメンバーに厳しかったのは、自分より全然働いていないと感じていたからだと思うから。

通常の劇場公開は終了していますが・・


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by yomodalite | 2016-08-03 06:00 | 映画・マンガ・TV | Trackback | Comments(0)

ミスター・ダイナマイト ファンクの帝王ジェームス・ブラウン [DVD]



ブログアップするのが遅くなっちゃいましたが、『AMY エイミー』 を観た日に、こちらも観に行ったんです。1日で2本の映画を観るなんて、めったにしないことなんですが、『エイミー』同様、こちらも大勢の証言者が登場するドキュメンタリでありながら、どちらも製作者も上から目線の物語を避け、アーティストへのリスペクトが伝わる作品になっていて、行った甲斐がありました。

ちょうど1年前に公開された『ジェームス・ブラウン 最高の魂を持つ男』は、JBの人生を圧縮して、2時間の物語にしたもので、チャドウィック・ボーズマンの熱演によって、若くてカッコイイJBを見事に現代に蘇らせた素晴らしい音楽映画でした。

それで、実を言うと、カラーの2時間映画で、JBの音楽を堪能するには、チャドウィックの方がイケメンだから良いかなぁなんて思っちゃってたんですけど、浅はかでした。やっぱ、本物のJBの方が、めちゃくちゃカッコいいっ!ダイナマイト感ハンパない!

両作とも、ミック・ジャガーのプロデュースで、こちらはドキュメンタリなので、『最高の魂を持つ男』よりも音楽を楽しめるシーンが少ないのではないかと思っていたんですが、この映画でも、JBの音楽や、素晴らしいショーを捉えたシーンがたくさんあって、当時の観客が熱狂する場面で、白人のティーエイジャーの女の子がたくさん映っていたり、あの伝説になっている、ステージに観客が押し寄せたときに、JBが警察の力を借りずに、みんなを制する場面とか、モハメド・アリと同様に、JBが音楽界だけでなく、時代のリーダーだったことがよくわかります。

『最高の魂を持つ男』では、バンドメンバーで親友のボビーバードとの物語が中心でしたが、『ミスターダイナマイト』では、ボビーバードや、後にプリンスと共演することになるメイシオ・パーカーなど脱退メンバーが実際に語っていて、その後の新生バンドの中心メンバーであるブーツィー・コリンズの証言も面白い。

MJのハーレムスピーチや追悼式、オバマ大統領の誕生にも大きな影響を与えたアル・シャープトン師によって語られる、60年代、70年代の政治の季節、ブラックパワーを牽引するアクターでもあったJB自身の「パワー」との違い。

そして、あのMJとプリンスが飛び入り参加するシーンも映し出されるのですが、あのときプリンスが、MJよりも緊張していたのは、プリンスの方が、大方の人々に実際の後継者と目されていたことが大きかったのではないかと改めて思ったり・・・

これから、どちらかの映画を見てみようという方には、『ミスターダイナマイト』の方がオススメかな。


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大阪・テアトル梅田に設置されていた、JB神社



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二礼はなんか違うような気がしたので
「大阪締め」でお参りしておきました!




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by yomodalite | 2016-07-28 11:47 | 映画・マンガ・TV | Trackback | Comments(2)
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photo https://twitter.com/kornerupine1



[モニター撮りですが、ステージ写真追加しました!]

TBSチャンネル1で、高橋大輔がダンス・パフォーマンスショー『LOVE On The Floor』出演するまでのドキュメントと、実際の公演を見た。

氷上のダンサーと謳われた彼は、プロのダンサーたちの中で、想像以上に苦しんでいたけど、実際の公演では、そういった練習の成果がすべて生かされていて、またひとつステップアップした姿に、ファンとしてひと安心したのだけど、

彼の魅力以上に目を見張ったのは、『LOVE On The Floor』というショー自体の素晴らしさ。

構成・演出・主演をつとめたのは、米国の人気ダンス番組でチャンピオンになったシェリル・パークなのだけど、高橋以外にも、クリスティ・ヤマグチや、アイスダンスの金メダリストの、チャーリー・ホワイトと、高橋も大ファンだというメリル・デイヴィスが出演していて、想像どおり、メリル・ディヴィスがものすごく魅力的だったんだけど、チャーリーの素晴らしさは予想の遥か上で、ダンスが素晴らしいだけでなく、いつからこんなイケメンに?という驚きも加わってもう大変(笑)


ショーは、「LOVE」をテーマに、ロマンス、情熱、悼みという3部に分かれていて、22のシーンに、それぞれ1、2曲の音楽が選ばれているのだけど、ニーナ・シモンの「Feerin Good」や、ナットキング・コールの「スマイル」といった往年の名曲から、最近のヒットチャートまで、ボーカル曲が解禁になったことで、今後フィギュアスケーターたちからますます支持されそうなポップソングが中心なので、見るだけでなく「スリラーライブ」のように楽しめるショーにもなっていたような・・・


ACT1 ROMANCE(ロマンス)
Scene 1 出会い

Scene 2 散歩

Scene 3 雨に唄えば

Scene 4 ラブレター

Scene 5 初めてのデート

Scene 6 薔薇園


ACT2 PASSION(情熱)

Scene 7 欲望

Scene 8 あこがれ

Scene 9 セラピー

Scene 10 オフィス

Scene 11 心の迷い

Scene 12 実験

Scene 13 対峙


ACT3 HURT
(悼み)
Scene 14 失った愛

Scene 15 セラピー

Scene 16 悼み

Scene 17 自己破壊
Scene 18 攻撃
Scene 19 自由
Scene 20 物語の終わり
Scene 21 パワー
Scene 22 鏡に映る自分

EPILOGUE LIFTED

こういったシーンの中には、マイケルや、プリンスの曲も選ばれているわけなんだけど、予想通り、プリンスは「パープル・レイン」で、これは「Scene 16 悼み」のテーマ曲。

それでは、マイケルの曲は、どんなシーンで、どの曲が使われたんでしょう?


答えは、、、


「ダーティー・ダイアナ」で、「Scene 8 あこがれ」

この場合「Yearning」の日本語が「あこがれ」でいいのかな?という疑問はさておき、ついに、私の念願だった、「ダーティー・ダイアナ」と高橋大輔の組合せが実現・・・とはならなくて、残念ながら、このシーンには出演してない。



このショーで、彼がこの曲と自分との相性の良さに気がついてくれるといいんだけどなぁ。。

とにかく、「LOVE」というテーマで、「実験」や「対峙」などを含む、22のシーンを表現するっていうのは、2時間映画のストーリーでは無理だけど、ダンスショーではそれがすべて出来るっていうところに、あらためて、ダンスの素晴らしさを発見したり、22のシーンすべてに「マイケル・ジャクソン」を感じて、LOVEでこれだけ幅広い表現が出来たアーティストはやっぱりMJとプリンスぐらいだなぁとか、どちらかというと、私は、このイベントでは、大輔以外のところで、感動してたみたいw


私が素敵って思ったシーンは動画になかったので・・
「公開ゲネプロ」




◎各シーンの使用曲


OPENING

曲1: Elizabeth : The Golden Age Soundtrack - Opening by Craig Armstrong and A.R. Rahman

曲2: Din Da Da by Kevin Aviance


PROLOGUE LOVE

ビデオモノローグ 髙橋大輔 「愛は・・」

曲: A Song For You by Donny Hathaway


Scene 1 出会い

曲: Powerful by Major Lazer feat. Ellie Goulding & Tarrus Riley


Scene 2 散歩

曲: Smile by Nat King Cole


Scene 3 雨に唄えば

曲: Dancing and Singing in the Rain remix


Scene 4 ラブレター

曲: Feeling Good by Michael Buble


Scene 5 初めてのデート

曲:I Wanna Dance With Somebody by Whitney Houston


Scene 6 薔薇園

曲: Roses by The Chainsmokers


Scene 7 欲望

ワンダイレクションを脱退したザインの曲なんだけど、メリル・ディヴィスがものすごくセクシーで、マイテ(プリンスの元嫁)みたいだったw

曲: Pillowtalk by Zayn



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大輔&メリル





Scene 8 あこがれ

「パープルレイン」の曲終わりは、プリンスのボイス付きなんだけど、「ダーティーダイアナ」の曲終わりのセクシーボイスはMJじゃない(残念。使用料のせい?)

曲: Dirty Diana by Michael Jackson


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Scene 9 セラピー

曲: Make It Rain by Ed Sheeran


Scene 10 オフィス

曲: Ghost and Haunted by beyonce


Scene 11 心の迷い

曲: Sail by AWOLNATION


Scene 12 実験

曲: Time Is Running Out by Appollo 440


Scene 13 対峙

曲: The Way (Instrumental) by Zack Hemsey


Scene 14 失った愛

これは、メリル・ディヴィスとチャーリーがペアで魅せた曲。

アイスダンスでもやっている曲なんだけど、その何十倍も素敵でびっくり!

曲: Say Something by A Great Big World & Christina Aguilera



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Scene 15 セラピー

「HURT 悼み」のパートは、チャーリーが中心になっているんだけど、これはシェリル・パークと絡んだ曲

曲: Breathe me by sia


Scene 16 悼み

これもチャーリーがソロで魅せた曲!大輔もちょっぴり絡むんだけど、彼を見にきたのに、チャーリーにハマってしまった人もいそうw

曲: Purple Rain by Prince


Scene 17 自己破壊

ここからは、ダンサーたちが大勢出演して、徐々に盛り上がっていく感じ

曲1: Martin Garrix by Animals

曲2: Fall Into The Sky feat. Ellie Goulding by Zedd&Lucky Date


Scene 18 攻撃

シェリルのフラメンコに大輔がちょっぴり絡む!

曲1: Ameksa by Taalbi Borthers

曲2: Malagueña by Brain Setzer


Scene 19 自由

曲: I Want U by Alison Wonderland


Scene 20 物語の終わり

白い衣装の大輔によるソロダンス

曲: Hometown Glory by Adele


Scene 21 パワー

赤い衣装のシェリルと、白い衣装の大輔による情熱的なダンス

曲: A Song for You by David and Devine


Scene 22 鏡に映る自分

シェリルが自らの決意をダンサーたちと表現

曲: Rise by John Dreamer


EPILOGUE LIFTED

フィナーレでは、ランニングマンの動きも。

曲: I Get lifted by Barbara Tucker



◎『LOVE On The Floor』の舞台ノーカット版の再放送
7/31(日)午後3:00〜午後5:00

◎初稽古から本番初日まで 完全密着SP『高橋大輔 in LA 120分完全版』の再放送
8/7(日)午後6:30〜午後8:30




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by yomodalite | 2016-07-27 06:00 | 現代文化・音楽・訳詞 | Trackback | Comments(0)
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亡くなったという報道を聞く前に、私が知っていたまえけんさんは、見た目から何から、とにかく何もかもが違うのに、あの天才アイドル松浦亜弥の超ド級の可愛らしさをまったく損なうことなく、同じぐらいの可愛いらしさでモノマネされたことと、マイケルの誕生日へのメッセージぐらいでした。

◎我が親愛なるマイケルジャクソン様

でも、突然の死の報道で、親友だったというカンニング竹山氏が、まえけんさんが監督脚本を手がけた映画のことを語っているのを偶然TVで見て、初めての小説を完成させ、そこから映画を創ったあとに亡くなられたのだと知って、私は、ああ、なんか上の方から呼ばれちゃったんだと思ったのだ。

神が愛そのものだというなら、天使は、エンターティナーのような人ではないかと私は思っている。そういう人は、ある程度の役目を果たすと、天から呼ばれて、「よくやった。そろそろこっちに戻って来い」って言われるんだと。

天使がそこで、「もう少しやってみたい」とか、「まだまだ」とか、即答すればいいんだけど、ちょっぴり疲れていて、「そうだなぁ」なんて一瞬でも思ってしまうと、天の方では、可愛い天使たちを、すぐに休ませてあげたいから・・・それで、突然旅立ってしまうなんてことが起こるような気がするのだ。

ファンの人に怒られるかもしれないけど、マイケルがショーを目前にしていたとか、プリンスが倒れた「ペイズリーパーク」とか、神は、彼らが一番働いている場所をよく知っているから、そこには何度も現れて、同じことをずっと聞いてきたのだと思う。

短編集であるこの本には、それぞれの章に花の名前がついている。

エーデルワイス
家庭教師をしている12歳の少女を愛している37歳の男

ダリア
安全なセックスだけを楽しみたいと「秘密乱交クラブ」に入会した平凡なOL

ヒヤシンス
他人の部屋に忍び込み、彼らの生活を感じることが好きな男

デイジー
マンガの中の登場人物を愛し続けてきた29歳の女

ミモザ
SMの「ご主人様」を求め続けるエステ業界で成功した女性経営者

リリー
性的欲求や嗜好がまったくない32歳の女

パンジー
美しい母に恋心を抱いたまま、30歳を過ぎたピアノ教師

カーネーション
老作家に恋した、本ばかり読んでいる20代の女

サンフラワー
鏡に映る自分を好きになれない、ボクシング嫌いのボクサー


主人公は全員、世界と折り合いがつかず、生きづらさを感じていて、罪とのギリギリを行き来してしまう危うさを抱えているけど、まえけんさんは、それぞれの「咲き方」を模索していて、文章は、章を追うごとに凄みを増していく。とても処女作とは思えないような作品を読み終わると、巻末には「本書は、書き下ろしです」という文字。

文章力もスゴイけど、これを映画にしたいと思い、監督まで務め、またそこに、素晴らしい俳優たちが集まったことが、とても納得できる作品で、本当に多才な人だったことがよくわかって、

マイケルやプリンスが旅立つ場所が、そこしかなかったように、まえけんさんが、新宿が倒れたということには意味があるということも、この小説を読んで、強く感じました。



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まえけんさん、ありがとう!


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by yomodalite | 2016-06-02 12:00 | 文学 | Trackback | Comments(0)

レクイエムの名手 菊地成孔追悼文集

菊地 成孔/亜紀書房

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この本は発売直後2015年の11月に買ったのだけど、最後まで読むのに時間がかかって、読んだあとも、なかなかブログアップ出来なかった。例のごとく、あの人のことで手一杯だったwというのもあるのだけど、この本をどう感じたかとか、どこをピックアップするかとか、そういったことのすべてがむずかしくて、他にも、すごく面白かったのにブログに書いていない本が、菊地氏の場合は特に多い。


以前、山口瞳氏が書かれた『追悼』を読んだときも、まったく知らなかった人の話で泣いてしまうことが多くて、それで本書のことも、少し身構えるような感じでページをめくったのだけど、一番最初の追悼である、「二つの訃報」には、菊地氏の父親と、かつて演奏した経験のある店のマスターの死、そして、次の「というわけで、今週は当欄お休みします」というタイトルの内容は、菊地氏が忙しく(そして喪中のため)ブログの更新ができない、という内容で、その次の「今日で君とお別れ」は、eMacとの「別れ」・・・


若干、気が抜けたというか、追悼って色々あるのね・・なんて思ったのもつかの間、その後はやっぱり、どんどんと人が亡くなっていく。追悼集だから、あたりまえなんだけど・・・


菊地氏にとって、身近な存在だった人と、遠くから影響を受けた人、忙しい日々の中で、様々な人が亡くなって、それに心を動かされながら、今日を過ごしている菊地氏の「生」が生々しく感じられることも・・・


本書に登場したのは、


マイケル・ブレッカーアリス・コルトレーン/植木等/清水俊彦/カール・ゴッチ/ミケランジェロ・アントニオーニ/イングマール・ベルイマン/テオ・マセロ/蒼井紅茶/ウガンダ・トラ/マイルス・デイヴィス/飯島愛/エリオ・グレイシー/忌野清志郎/マイケル・ジャクソン/三沢光晴/平岡正明/武田和命/ジョージ・ラッセル/加藤和彦/クロード・レヴィ=ストロース/浅川マキ/アレキサンダー・マックィーン/今野雄二/谷啓/キャプテン・ビーフハート/エリザベス・テイラー/団鬼六/ギル・スコット=ヘロン山本房江(仮)/ジョン・コルトレーン/ビリー・ホリデイ/レイ・ハラカミ/エイミー・ワインハウス/柳ジョージ/立川談志/川勝正幸/伊藤エミ/桜井センリ/コーリー・モンテース/大瀧詠一/井原高忠菊地潔藤村保夫中山康樹DEV LARGE菊地雅章/相倉久人



山口氏の本と同様、菊地氏の本にも知らない名前がいっぱい登場する(太字が知らなかったひと)、と思ったのだけど、あらためて追悼されている人を書き出してみたら、思ったよりも知っている人の方が断然多かった。追悼の主役以外でも知らない人がたくさんいて、それでそういう印象をもったのかな。


知ってると思ってた人だって、亡くなってみたら、全然ちがう感じで、出会えた。ということを毎日のように経験しているからか、常に身近にいる人以外の「死」は、その人に出会えなくなったわけではなく、これから出会える人、ということもあるのだと思う。


有名人の死に対して「R.I.P」だなんて言ってるのをみると、そんなこと言わなくたって “安らかに眠っている” に決まってるって、思ってしまうのだけど、ここには、それとは真逆の〈追悼〉がある。


本書のどこかをピックアップしておきたくて、色々迷ったのだけど、「クロード・レヴィ=ストロース逝去」っていう文章にしました。理由は、読めばすぐわかります(笑)



◎クロード・レヴィ=ストロース逝去


今、これを書いておりますのは16時55分。非常に美しいタ焼けが新宿を染めています。書いている間に、宵闇は夜へと変わるでしょう。ここ1週間ほどは、映画本の追い込みで、特に、最後に書いた「大日本人」と「しんぼる」への評に時間がかかり・・(中略)・・やっと書き終わったのが11月1日の早朝でした・・(中略)・・それからワタシは仮眠をとってからシャワーを浴び、「ああ。やっと終わったよ。終わった!」とロに出しながら街を歩き、先ず西武新宿の「PEPE」でミュグレーのエンジェルをまとめ買い、それから伊勢丹メンズ館に流れて、アレキサンダー・マックイーンのムートン襟のコートを注文し、靴を2足買い、・・(中略)・・そしてそのまま「映画本が書き終わったら、先ずこれをしよう」と決めていた事を実行しに、半ばフラフラしながらバルト9に向かいました。11時25分からのレイトショーでしたが、100人近い人々が集まっていました。

 

「THIS IS IT」についての詳しい感想は、次のトークショーで松尾さんと西寺さんと一緒に話しますが、とにかく冒頭から泣きっぱなしで崩落寸前になり、物凄い元気が出て笑い。という事を往復しながら、最後はどんどん落ち着いて来て、爽やかな中にもちょっとした重さが残る。といったコースでしたけれども、何れにせよ天才は重力を超える等当たり前(合気道の達人、修行を積んだヨーギ、西アフリカのヒーラーの如く、全く体重と、その移動を感じません)で、重力どころか、「時間」をもコントロール出来るのだと言う事を、嫌と言う程見せつけられました。登場する全員がインターロックし、トランスしているこの映画では、マイケル・ジャクソンが、時間を追い抜き、時間に追い技かせ、時には遡行さえし、常に時間を生み出し、いつでも自由に止められるという様が映し出され続け、ワタシが思ったのはむしろ「よく50まで生きたな」という事でした。ずっとチャーリー・パーカーを思い出していたからです。

 

我々ジャズメン全員が、個々人の程度差は兎も角、国語の様にしてパーカーのフレーズが血肉と化している、起きたら脳内にパーカーフレーズが鳴り、それが一日中続いている。という、パーカーの子等であるのと全く同様の事が、マイケルにも起こっています。パーカーもマイケルも、先生がいません。全く独学で(ジェームス・ブラウンやレスター・ヤングなど、素材はありましたが)全く新しい身体言語を生み出したのです。そして二人とも、派手に飛んだり、浮遊したりといった、ケバケバしいスペクタクルなしの、常に地に足がついている状態で、重力も時間も完全に超越している事を我々に知らせるのです。終了後には(小さく。ですが)拍手も起こっていました。この映画が最も素晴らしいのは、神域にあろうと、人間は人間だ。という当たり前の事を、雄弁に描いている事です。

 

 本を書き終え、目的も達成し、犬荷物と深い溜息を抱え、ワタシは部屋に帰って来ました。そしてレヴィ翁が亡くなった事を、フランスにいる友人からのメールによって知らされたのです。そのメールには「悲しいかな、京都のコンサートは良くなりそうだな」と書いてありました。ペペ・トルメント・アスカラールという楽団は、ワタシの幼少期に於ける「街と映画館」の記憶と、クロード・レヴィ=ストロースの著作から受けたイメージの集積とで出来ており、そして、その初期設定を更新したのが、最新作の『ニューヨーク・ヘルソニック・バレエ』なのです。ワタシが京都公演に「悲しき熱帯〈京都〉」というタイトルをつけたのは、初期設定の更新前と更新後の境界越えを京都で行おうという意図に依る物でした。

 

 アルチュセール、バルト、ドゥルーズ等の時とは全く別の感慨に囚われているのは、神域にある能楽師の舞いにも似た、MJの姿を観て帰って来た事も関係あるかもしれません。レヴィ翁を超える、長寿の知識人は今までもいませんでしたし、これからもいないでしょう。「天寿の全う」という言葉が、どんどん重みを増して行く昨今ですが、レヴィ翁の逝去ほど、この言葉が似つかかしい物はないでしょう。翁の魂はどの地域の、どの部族の空に向かって飛ぶのか。ワタシに出来る事は地に足をつけて演奏し、その魂の行方を心眼で追う事だけです。夜の帳が降りました。ごきげんよう。


(初出「PELISSE」2009年11月4日)


この本には、「マイケルの56回目の誕生日」に引用した記事も収録されていて、その記事のように、曲が手向けられている記事も多い。例えば、エイミー・ワインハウスには、レゲエヴァージョンのクリスマスアルバムから、ザ・シマロンズの「サイレント・ナイト」、ピーナッツの伊藤エミには、ニーナ・シモンの「アイ・ラブズ・ポーギー」が選曲されている。


それで、レヴィ=ストロースの死のBGMには、『THIS IS IT』の全体が流れていると思うと、レヴィ翁の本をもっとも読め、という啓示かも、と思ったり・・・。


でも、ミュージシャンが大勢登場するこの本の中で、曲名がタイトルになっているのは、「ビリー・ジーン」というマイケルだけなのだ。


ずっと不思議だった、あの日の記事のタイトルがどうして「ビリー・ジーン」だったのかは、この本を読了したあとも、やっぱりわからなかった。


◎[Amazon]レクイエムの名手/菊地成孔追悼文集




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by yomodalite | 2016-02-26 06:00 | エッセイ | Trackback | Comments(0)
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今、日本中でかなりの人がこの本を読んで、プリンスを聴き直しているんじゃないでしょうか。私もそんなひとりで、ここ数年、圧倒的な差で独走していたMJなんですが、最近ほんの僅差でプリンスが上回っています。


ちなみに今日は、現在、絶賛骨折り中! ついさっきも、childspirits先生と、「みんな、マイケルで踊りまくってるのに、《マイケル太り》なんてしてるの、日本中で私たちだけじゃない?」などと憂いつつ、ダイソーのジャイアントコーン美味しいよね。と盛り上がってた、そんな罪つくりな『HIStory』と同年に発売された『The Gold Experience』(1995)から聴き始め、

iTunesの年代順プレイリストによって、今、『Emancipation』(1996)に移ったところなんだけど、これは、3枚組で全曲聴くと3時間ぐらいかかるんだけど、『プリンス論』では、第5章に記述があって、

「ワーナーでの最後の新録アルバム《カオス・アンド・ディスオーダー》の発売から、わずか3ヶ月後の1996年11月1日。」

あ、そっかぁ、『Emancipation』と『Chaos And Disorder』は同年だったっけ。iTunesの「プリンス・フォルダ」のプレイリストの表示順序を「年」に設定してあるんだけど、同年の場合は、アルファベット順が先の『Chaos〜』が先になるなんてことはないのね・・・でも、同じ「プリンス・フォルダ」に入ってるから、『Chaos〜』は、この次にプレイされるのか、、あ、、ちがうなぁ。。『Emancipation』のDisk 1の後、Disk 3、そのあと『Chaos〜』で、次がDisk 2になってる(???)。

まだ、『Emancipation』のDisk 1終わってないけど、今気づかなかったら、ずっと『Emancipation』を聴いてるつもりで、『Chaos〜』を聴くことになってたんだわ。ふぅーーー。

という具合に、とにかく、プリンスについて語るのはむずかしい(?)


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私のiTunesの「プリンス・フォルダ」には、最新アルバムの「HITnRUN Phase One」を含めて全部で18枚のアルバムが入ってて、入れてないディスクも4枚ぐらいあるはずなので(ベスト版やシングルや再発版はのぞく)、私にとって、プリンスは一番多くのアルバムを所有しているアーティストなわけですが、私にはプリンスについて語ることなんてまるで出来ないし、この程度の枚数ではファンと認めてももらえないというのが、プリンスなんだけど、本当にこんなにいっぱいあるのに、さらに、これまた山のようにある「アンリリースト」まで買う人がいるなんて、、いや、買う人がいるのはわかるけど、すべて聴き込んでいるなんていう人が、音楽を仕事にしてない人の中にいるのかな?

「プリンスは、この年のヴァレンタイン・デーに、22歳となったマイテと結婚。新婚旅行でハワイを訪れ、その2ヶ月後には、彼女が妊娠したことを発表。こうしたプライヴェートの充実が、《イマンシペイション》の持つ「祝福」のムードに拍車をかけた。

あーー『Emancipation』って祝福ムードだったんだぁ。殿下の音楽って、そーゆー感情とかイマイチよくわかんないんだけど、、そういえば、DELFONICSで有名な曲で、様々な人がカバーしてる「La-La (Means I Love U)」とか、すっごく甘い感じで歌ってる。。 でも、西寺氏が悲痛なアルバムだって言う『HIStory』だって、色々と大変な時期だっただけでなく、結婚して、長年待望してた子供ももうすぐ生まれる(と、MJは思ってた)ときのアルバムだし、そーゆー私たちのような普通の人々にとってわかりやすい “物語” を、天才と呼ばれるアーティストに適応できるのかなぁ。。

なんてことを思っただけでなく、ナンダカンダとこの間に用事を済ませてたら、あっという間に、『Chaos〜』に突入。第4章によれば、

「このアルバムの「荒削りなロック・バンド感が好きだ」と言う声を聞くこともあるが、僕はこの作品に関しては、彼のすべてのキャリアの中で最も低い評価を下している。」

えっーーー、このアルバムが西寺氏の最低なんだ。

「薔薇の花束が燃やされ、《1999》のレコード盤の瞳のイメージに涙が書かれ、踏みにじられ割られていた。しかも、その涙の中には、逆さまになったワーナーのロゴが・・・」

っていう感じは、音楽的にはあまりしないし、エレクトリックサウンドがあんまり好きでない人にとって、90年代のプリンスのアルバムの中ではとっつきやすくて聴きやすいアルバムなんだけど、それは、レコード会社の意向による大衆迎合や、移籍にともなう在庫整理・・ってことなんでしょうか。西寺氏が最低評価なのは、音楽的にちょっと昔のロック風というか、新しさに欠けるからなのかな。でもそこがまた良かったりもするので、私の不満はたったの11曲ってことぐらいなんですけどw

てなことを思いつつ、この間に一本電話受けてたら、あっという間に、また『Emancipation』に戻ってて、リスナーの方では、なかなか『Emancipation』から解放(emancipation)されませんww

「書き終えた今、あらためてこう思う。「もしも「プリンスの楽曲を一曲も知らない」という人がいたならば、その人は幸運だと。「ポップ・ミュージック史上最高の天才」の魔法を、この瞬間、ゼロから体感できるのだからー。」

何曲かわかんないぐらい知ってはいるものの、この魔法から、私が解かれる日が来る気配は全然ない。

同時代のライバルであるプリンスとマイケル。二人を語る場合に必ず言われるのは、「人種を超えた」ということ。でも、それって、つくづく「白人目線」というか、つまり、エルヴィスを見て、黒人がどう思ったかについては、「言葉がなかった」ってことなんだよね。そんな風に、確実に存在しているけど、まだ認識できないせいで、語られていないことはいっぱいあって、

ふたりは、ありきたりの物語を拒否しようとする姿勢も似通っていて、それゆえ、言葉にも慎重で、音楽評論家の手に負えないというところも・・・でも、マイケルは「大きな物語」を意識してたから、今後は長く「語られていく」と思うけど、おそらく、プリンスは老年になっても話題作を作り続ける天才であり続けるかもしれないけど、一生、言葉とは相性が悪いんじゃないかなぁ。。。

さて、これから、西寺さんのお気に入り曲をすべて混ぜ込んだプレイリスト創ってみよっと。。





youtubeでは削除されまくりのプリンスですが、やっぱり音楽がないと寂しいので、、マイテがたくさん登場するエロい曲で、この本には記述がない『The Hits 2』と『The Hits/The B-Sides』にしか入ってないシングル、"Peach" にしたかったんだけど、ニコニコ動画にしかなかったので(http://www.nicovideo.jp/watch/sm8935844)、1991年の「Diamonds and Pearls」に入ってるエロい曲、“Cream”を貼っておくので、最近のもう少し崇高な感じの曲は、アルバムを買って聴いてね。


(音楽が始まるのは1:55〜)





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by yomodalite | 2015-10-21 21:09 | 現代文化・音楽・訳詞 | Trackback | Comments(0)

旧「読書日記と着物あれこれ」。歴史/文学/お笑いを好み、着物生活をしていたはずが、いつしかマイケルジャクソンのように本を読もうになってしまったブログ。永年暮らした東京を離れ、現在は大阪を満喫中。


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