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マリファナも銃もバカもOKの国 言霊USA2015

町山 智浩/文藝春秋



記録しておきたいと思う良本が溜まる一方なんですが、町山氏の米国カルチャー本は、かの国の歴史をふりかえるときの資料としても欠かせないので、個人的に興味がある部分のみ、ちょっぴりメモ。。

色々と驚いたことの中で、もっとも気軽なきもちでいられたのは、あの「イート・イット」のアル・ヤンコビックが2014年にビルボードで1位になってたことかなw

◎まえがき

「ガンズ&ウィーズ(銃と大麻)自由への道」というドキュメンタリー。

プロ・ガン(銃所持の権利擁護派)は、プロ・ライフ(人工中絶反対派)と共に、保守的で、右翼的で、キリスト教への信仰心が強く、南部や中西部の田舎、共和党支持者が多い「赤い州」に住み、白人のブルーカラーが多い。同性愛者同士の結婚に反対し、進化論を学校で教えることに反対するキリスト教保守と重なる。イメージとしては拳銃をぶらさげたカウボーイ。

マリファナ擁護派は逆で、平和主義でリベラル。同性婚や人工中絶には寛容。東部や西海岸の都会、民主党支持者が多い「青い州」に住む。マイノリティやゲイ、インテリが多い。イメージとしてはピースフルなヒッピー。
この左右の対立は激化している。。。

◎12 O’clock (バイクをウィリーさせて、ほとんど垂直に立たせたまま走ること)

12 O’clock Boysとはモトクロス暴走族のこと。人工に対する殺人率で、シカゴ、デトロイトに次ぐ第3位の危険地帯メリーランド州ボルチモアで問題化している。作家ポーが亡くなった場所で、現在は立派な墓も立てられている。そこから歩いて20分ぐらいの場所が「ウエスト・ボルチモア」というギャング抗争の激しい場所で、2000年代の傑作TVドラマで、オバマ大統領も大好きな『ザ・ワイアー』(彼はオマール・リトルのファン)の舞台だった。

◎Groundhog Day(春の到来を意味する欧米の「啓蟄」のこと)

ゴーストバスターズの主演俳優、ハロルド・ライスミスが監督した映画『Groundhog Day(邦題:恋はデジャブ、ビル・マーレイ主演)』。ラブコメでありながら、カフカ的な不条理ドラマ。ニーチェの永劫回帰にヒントを得て、未来のために現在があるのではなく、今日のために今を生きる。というテーマ。カミュの『シーシュポスの神話』。。。

◎Act of Killing(殺人の演技、殺人という行為)

『アクト・オブ・キリング』は、1965年9月30日から1〜2年の間にインドネシアで100万人が虐殺された出来事を、半世紀後の今、虐殺者自身が演じてみせるドキュメンタリー。当時の大統領スカルノは、宗主国オランダと戦って独立を勝ち取った建国の父だったが、50年代の冷戦下で、米国に追従しない独自路線を取り始め、中国とつながるインドネシア共産党の指示を得るようになった。スカルノが貧しい農民から人気のある共産党を味方につけたのは、大統領と拮抗する勢力である軍部と対抗するためだったが、9・30事件が起こり、スハルトは、スカルノを軟禁して実験を握る。

監督は、虐殺された遺族とは接触できなかったものの、虐殺の実行者たちは、得意気にその経験を語り、虐殺に積極的に加担したインドネシアの新聞経営者は「敵に対する憎しみを煽るのがマスコミの役目だ」と誇らしげに語った。

◎Washington Redskins original Americans Foundation(ワシントン・レッドスキンズ・アメリカ先住民基金)

アメフトのチーム名レッドスキンズは、そのチーム名がずっと問題視されてきた。レッドスキンズとは、インディアンの差別的蔑称だから。改名を拒否してきたオーナーは、抗議運動を交わす目的で「ワシントン・レッドスキンズ・アメリカ先住民基金」を作り、またもや世間は首をかしげた。コメディアンで、「コルベア・レポート」のキャスター、スティーブン・コルベアの対応は、、、

◎Normcore(ノームコア=ノーマル+ハードコア。過激に普通。ファッションの最新トレンド)

オレゴン州ポートランドについて、映画『ベルベット・ゴールドマイン』や『エデンより彼方に』の監督ヘインズは、「僕みたいにニューヨークやハリウッドから引っ越してきたアーティストや作家は多いよ、チャク・パラニュークとか、ガス・バン・サントとか、、」と言う。ポートランドはゲイだけでなく、ヒップスターと呼ばれるアートや音楽が大好きで資本主義と暴力を嫌い、エコロジーやフェミニズムに関心の強い自由人が集まる街。

2011年に始まった『ポートランディア』というコント番組はヒップスターが主役。「あの街には90年代の夢がなだ残っているんだ。覚えているかい?地球を救う歌を歌っていた時代を、ブッシュ政権なんかなくて、かわいい女の子はみんなメガネっ子。。」

彼らは、レストランで野菜の産地や、飼育方法を聞き、ゴミ箱に大量廃棄されている食物に抗議し。。。

◎Backfire Effect(バックファイア〈逆発〉効果/自分が信じるものを否定する証拠を突きつけられると、それを拒絶し、さらに信じるようになる心理)

税金で嫌でイギリスから独立したアメリカでは、国に何か取られるのも国からもらうのも嫌われる。国民健康保険をはじめあらゆるものが「共産主義的」と罵倒される。水道水のフッ素陰謀論、ワクチン陰謀論、今盛り上がっている陰謀論は「アジェンダ21」国連がエコロジーの名のもとに世界国家をつくるための共産党宣言だと騒がれ始めた。

◎Meninism(メニニズム、アンチ・フェミニズム運動)

◎Orange Is The New Black(オレンジ色は新しい黒)

『Orange Is The New Black』は、ネット映像配信サイトがはじめたオリジナル・ドラマ。オレンジは囚人服の色で、黒はファッションの基本という意味で、女子刑務所を舞台にした実録コメディ。レズビアンシーンが多く性転換者をリアルに描いている。

◎China is like Hollywood in the 1920s(中国はまるで1920年代のハリウッドだ。元コロンビア映画会長)

2014年、コメディ映画が消えた。アメリカ人が笑いを求めなくなったのではなく、中国が原因。中国ではシネコンが次々に建設され、スクリーン数で米国を抜いて世界一になるのは確実で、ハリウッドのSFX満載のアクション大作に人気が集中している。コメディは、風刺やゴシップ、時事ネタがわからないと笑えないからウケない。

◎Word Crimes(言葉の犯罪)

あの『今夜はイート・イット』のアル・ヤンコビックのアルバムが2014年の7月、ビルボードNo.1に輝いた!一曲目はHappyの替え歌『Tacky(ダサい)』♪俺は靴下はいてサンダル履く、だってダサいから。デートの勘定でクーポンを出す、だってダサいから、葬式でツイートして、死人とツーショットで写メする、だってダサいから…




ロビン・シックのメガヒット「ブラードライン」の替え歌で『Word Crimes』

間違った英語を使うと「言葉の犯罪だ!」と小うるさい奴の怒りを代弁する「Itの所有格で It'sとアポストロフィをつけるな。それは It is の略だろ」Literally(文字通り)をただの強調につかう奴にもご立腹。「LITERALLY couldn't get out of bed(文字通りベッドから出られなかった)」なんて言う奴の顔を文字通りバールでこじ開けてやりたいよ。バールのようなものじゃなく(笑)。




『ミッション・ステイトメント(企業の経営理念)』の歌詞は、

「常に効率良く企業戦術を機能化させねばなりません。国際規模のテクノロジーに投資し、核となる人材能力にレヴァレッジをかけるのです。並外れたシナジーを全体的に管理するために」歌っているアルも意味がわからないらしく、馬鹿げたダブルスピークやバズワードを歌にしたらしい。




『ファースト・ワールド・プロブレムス』は

「メイドが風呂を掃除しているからシャワーが使えない。満腹でティラミスが入らない。食料品を買いすぎて冷蔵庫に入らない。家が広すぎて無線LANが届かない。Amazonの送料を無料にするために欲しくないものを買わなきゃ。





◎Fappening(ファプニング=ハリウッド女優たちの女優自撮りヌード流出事件)

◎Narco Corrido(ナルコ・コリード=メキシコの麻薬カルテルを賛美する歌謡曲)

腕にはAK-47ライフル、
肩にはバズーカ背負って、
お前らの首を切り落とす
俺は殺しが大好きだぜ

こんな歌をナルコ・コリードと呼ぶ。コリードはスペイン語でバラード、ナルコは麻薬、残虐な現実とかけ離れた陽気な音楽

◎Fresh Off The Boat(船から降ろしたての活きのいい魚。アジア亭移民への蔑称)



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by yomodalite | 2015-06-27 20:00 | 現代文化・音楽・訳詞 | Trackback | Comments(0)
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名古屋旅行で中断していましたが、ヒューズ探求の旅は、まだまだ終えられそうにありません。

私も知らないうえに、おそらく読んでくれている人も知らない。資料は少ないうえに、古いものばかりというヒューズについては、調べることだけでなく、どう書けばいいのかもわからないんですが、

でも、、MJから「大好きなんだ」「ぼくの先生かもしれない」を聞いてしまうと、それもちょっと秘密なんだけど。というニュアンスで漏らされると、もうどうしようもなくて、あっという間に、デスク周りは、ヒューズ関連のものばかりになり、暇な時間のすべてをどっぷりとヒューズに浸かっています。

彼が「大好きだ」というヒューズに辿り着けるのは、まだ先のことかもしれませんが、ひとつひとつ、ツブしていく感じで、この映画も観てみました。





『ザ・ホークス』の監督は、『ギルバート・グレイブ』や『マイライフ・アズ・ア・ドッグ』のラッセ・ハルストレム。

ディカプリオが最初にオスカーに近づいた作品を撮ったハルストレム監督も、ヒューズに関しての映画を撮っていたんですね。こちらが公開されたのはイタリアでは2006年、米国では2007年。『アビエイター』は2004年末の映画でした。

『アビエイター』は、TWA(トランス・ワールド航空)が国際線に進出するといった1950年あたりで終わるのですが、『ザ・ホークス』で描かれているのは、それからずっとあとの1970年代。

この2作の映画を観てつくづく思ったのですが、2時間映画でヒューズを描くのは至難の業で、両方見ても、元々ヒューズについて知らない人が彼を理解するのはむずかしい。


この頃のヒューズは人前に出なくなっていたものの、人々の彼への関心は強く、ヒット作を探していた、売れない作家アーヴィングは、贋作画家の伝記を取材していた経験から、ヒューズの伝記を「創作」することを思いつき、

企画を持ち込まれた出版社の編集者は、ヒューズの自伝は、聖書よりも売れることを確信し、出版社も、連載を見込んだ「LIFE」誌も、その興奮の渦に巻き込まれて行く。

物語の終盤では、その本が「ニセモノ」であると、ヒューズ自身が語っている電話の音声が流れ、アーヴィングは「ニセ伝記」を創作する過程で送られてきた資料から、ヒューズとニクソン大統領の関係において、自分の「ニセ伝記」が利用されたことを示唆し、また、アーヴィング自身がヒューズと同化していく様子や、彼の一番の理解者のつもりでいたことなども。。

アーヴィングはこの詐欺事件の主犯でありながら、この事件の真相本も出版していて、それがこの原作なんですが、この事件以前にアーヴィングが取材して本にした贋作画家の話も、あのオーソン・ウェルズが『フェイク』という映画にしていたり、







上の動画で、町田氏が語っている以外にも、アーヴィングは詐欺事件で服役後、日本でも翻訳されるほどヒットした小説も書いてたり、彼自身も、何人もの女や、男を虜にしてしまう人物のようです。

この映画を観ただけでは、この「ニセ自伝」に老舗の出版社や、マスコミ人が惹き付けられた事情についても、アーヴィングがこの大胆な計画に突き進んでしまった理由についても理解しにくいのですが、

私が、原作本の『ザ・ホークス』を駆け足で読んだ印象では、アーヴィングは、当時人々がヒューズに抱いていた「奇行で人生に落ちぶれた大富豪」というイメージに疑問を抱き、小説家の空想力によって、むしろ「真実」にせまろうとしていたように思いました。

(原作本は上下刊で長いうえに、中古本でしか手に入れられませんが、ヒューズに興味がある人にはオススメの面白い本です)

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下記は、アーヴィングが「創造した」ヒューズのインタヴュー

ヒューズ「わたしは奇行で有名らしいが、その点はなんとも思っていない。奇行は卓越した知性の証だ。いや、自分に卓越した知性があると言いたいのではない。自分にそんなものがあるとは信じていないからな。本当だ。ただ、わたしは、、、そうだな、このように表現しようか。奇行を嘲る者は、、、奇行を嘲ることは、劣る知性の証だと。(中略)わたしの奇行は注意深く見てみれば、人生にはありふれた危機に対する知的な防御に過ぎないことだ。

それ以上に、どんな人間でも奇行はやるものだ。どんな人間も、いわゆる変わった態度を取ることはある。必ずしも、わたしの行動と同じではなくても、その人間なりの変わった態度があるんだ。その人間に勇気さえあればな」

アーヴィング「そして金があれば」

ヒューズ「そう、金だ。欲望の思いのままにふけることのできる金、気に入らなければ他人に地獄へ堕ちろと言えるだけの金だな。(中略)わたしの変人ぶりだけがわたしの個性だ。ほかの者が表現不可能、あるいは肝っ玉が小さ過ぎて表現できないときでも、わたしには表現できる余裕がある。(中略)正直に表現していればーーどれだけ変わっていても構わない。芸術家に近い考え方だな。そのあたりの感覚から見ると、芸術家はわたしのように裕福な男に近い。芸術家は個性の感覚を高度に磨き上げているし、ためらわずに世界にくそくらえを言える(後略)」

引用終了(『ザ・ホークス』上巻、275〜277ページから)

この映画は、ヒューズを描いた映画ではなく、

ヒューズをネタにした詐欺事件を描いているのですが、ディカプリオがヒューズを演じるために、若くして神経症にかかり、早々に破滅したかのような『アビエイター』に比べれば、

MJが仕掛けをしたと言っている「ヒューズの策略」についてや、人々のヒューズへの関心や、ねじれた愛情をも織り込まれ、わずかではあるものの、実際のヒューズの映像や彼の声も記録され、ヒューズ現象の一端が垣間みれます。

ハルストレムは、この映画を「コメディ」と捉えていて、ニクソンとの関係についても、アーヴィングの妄想や、70年代に作家が飛びつきそうなネタとして扱っているように思えますが、そんなところも、私には、社会派として骨太さがなくなっているスコセッシよりは「大人向け」の映画に思えました。

私が観た「レンタル版DVD」に納められた関係者インタヴューで「作品の教訓について」聞かれた、アーヴィングの妻を演じたマーシャ・ゲイ・ハーデンは、

ウソをつくな、なんて言うつもりはないわ。伝えたいのは、そんな平凡なことじゃなくて、人は自分の信じたいものを信じるということよ。

と答えていました。マーシャ・ゲイ・ハーデンの言っている意味とは違うかもしれませんが、私にとって、この映画では、何が正しいかをジャッジせずに描かれているところが魅力的で、マイケルのヒューズに対しての感情に、スコセッシよりは、近い人々によって創られているようにも思えました。


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クリフォード・アーヴィング(Clifford Irving)


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by yomodalite | 2014-04-26 10:26 | MJ考察系 | Trackback | Comments(0)

トラウマ恋愛映画入門 (集英社文庫)

町山 智浩/集英社

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恋愛映画にちっとも興味が無い人のための、ホラーより怖くて、コメディより笑えて、ミステリーより謎で、AVよりエロくて、アクションより勇気が出る、恋愛映画地獄めぐり!

という、町山氏の2013年に出版された映画本をようやく読むことができました。
紹介されている映画は22本。観ていた映画は、もう一度観たくなり、観ていない映画は、観なくちゃ。。と思わされる本書のまえがき「恋愛オンチのために」には、

『隣の女』には恋愛について奥深い思索に満ちたセリフがちりばめられているが、トリュフォーとつきあった女性たちは「あれって私が彼に言ったことよ!」と言っている。恋愛に関しては世界の巨匠も女性には及ばない。なにしろ男はみんな紙クズとデンデンムシでできているんだから。

と書かれていて、確かに、女は男がどれほど美女に弱く、巨乳や太ももには、確実に惹き付けられることを知っているし、痴漢や露出狂に会ったことがない女性もめずらしい。

でも、美女で、巨乳で、頭も性格にも問題がなく、高収入… それなのに、恋愛下手な女も多く、なんで、この娘が。。という女が意外とモテているということも多い。

私は、女優やモデルの恋愛について取り上げられいても、まったく興味がもてなくて、才能もスキルも違い過ぎる彼女たちの話のどこが参考になるのか。と思うし、そもそも、彼女たちが「本当のこと」を言うわけないと、よく思う。

でも、男が美女が好きという以上に、女は美女が好きで、美女になりたいもので、映画好きの男を理解しようとは・・あまり思わない。

でも、恋愛って、男を知ることだからね。(恋愛対象が同性という人もいると思うけど「他者」ってところが重要だから)

で、知れば、知るほど、知りたくなくなったり、男は裏切るけど、仕事は裏切らない。という結論に至る人も多いけど、裏切られたり、傷ついたり、一見プラスにならないと思えても、上昇するだけのジェットコースターが面白くないように、それでは、人生もつまらなくなってしまうし、「トラウマ」になるぐらい不幸な恋愛をしたって、損するとは限らないのだ。

そんなわけで、

本書で紹介されている22本の映画には、それぞれ素敵なサブタイトルがついているだけでなく、一部、古典からの引用が添えられているものを下記にメモしておきます。

美女になる夢は、一生諦めがつかないまま、終わりそうだけど、
死ぬまでに、古典をざっくり理解することは、少しは叶いそうなのでw。


オクテのオタク男はサセ子の過去を許せるか?
『チェイシング・エイミー』


ウディ・アレンは自分を愛しすぎて愛を失った
『アニー・ホール』


忘却装置で辛い恋を忘れたら幸福か?
『エターナル・サンシャイン』

幸いなるかな科なき尼僧
世界を忘れ 世界に忘れられ
一点の汚れなき心の永遠の陽光(エターナル・サンシャイン)!
すべての祈りは受理され
すべての願いは諦められ

(『エロイーザからアベラードへ』アレクサンダー・ポープ 著者訳)


愛を隠して世界を救いそこなった執事
『日の名残り』

恋愛とは自己から脱け出そうとする欲求である(シャルル・ボードレール)


女たらしは愛を知らない点で童貞と同じである
『アルフィー』


恋するグレアム・グリーンは神をも畏れぬ
『ことの終わり』


ヒッチコックはなぜ金髪美女を殺すのか?
『めまい』


愛は本当に美醜を超えるか?
『パッション・ダモーレ』


嫉妬は恋から生まれ、愛を殺す
『ジェラシー』

映画オープニング
人は恋した時、憂鬱が始まる(トム・ウェイツ「ブルースへの招待」)


トリュフォーも恋愛のアマチュアだった
『隣の女』

恋愛は戦争のようなものだ。始めるのは簡単だが、止めるのは難しい(H.L.メンケン)


不倫とは過ぎ去る青春にしがみつくことである
『リトル・チルドレン』

ボヴァリー夫人は私だ(ギュスターブ・フローベール)


セックスとは二人以外の世界を忘れることである
『ラストタンゴ・イン・パリ』

完璧な恋人は、NOと言わない男である
『愛のコリーダ』

君を抱く 君に触れる 迷い込んだ迷路のなかで
君を思い 君を飲む 僕は盆に盛られて君の食卓に出される
それが毎日続く これでいいの? 
つねってみて きっと夢だ
夢なら覚まさないで 僕は溺れていく 
救わないでいい それが僕の望みだ
半分殺して そうしてくれ 愛のコリーダ
僕は何も考えられない 君の他には何も
何もない (チャズ・ジャンケル『愛のコリーダ』)


愛は勝ってはいけない諜報戦である
『ラスト、コーション』


幸福とは現実から目をそらし続けることである
『幸福』

幸福な家庭は皆、似通っているが、
不幸な家庭はそれぞれに違う(トルストイ『アンナ・カレーニナ』)


最大のホラーは男と女の間にある
『赤い影』


キューブリック最期の言葉はFUCKである
『アイズ ワイド シャット』

結婚前は目を大きく開けて互いのことをよく見ておきたまえ。
そして結婚したら目を半分閉じておくんだ(トーマス・フラー)


結婚は愛のゴールでなく始まりである
『ブルーバレンタイン』

結婚は、熱病と逆に、
発熱で始まり、悪寒で終わる(ゲオルク・クルストフ・リヒテンベルク)


恋におちるのはいつも不意打ちである
『逢びき』

映画オープニング
ラフマニノフ「ピアノ協奏曲第二番」


フェリーニのジュリエッタ三部作は夫婦漫才である
『道』

※古典ではなく、冒頭ではなく、本文中の言及ですが。。

『道』のジェルソミーナを復活させ大ヒットした『カビリアの夜』。誰もがカビリアを愛したが、石原慎太郎だけはそうではなく、彼が同年に発表した『完全な遊戯』は『カビリアの夜』の反発だと思われる。


認知症の妻に捧げる不実な夫の自己犠牲
『アウェイ・フロム・ハー』

愛されることは素晴らしいが、
愛することのほうがもっと素晴らしい(ヴィクトル・ユーゴー)


苦痛のない愛はないが愛のない人生は無である
『永遠の愛に生きて』

本文から ー
(バスが海兵隊候補生の隊列につっこんだ事故を聞いて)もし、神が実在するなら、なぜバスを止めなかったのか?神は我々をなぜ苦しめるのか?」18世紀の懐疑主義者でヴィッド・ヒュームが『自然宗教に関する対話』で提起した問い。主人公は無神論者だったが、神を信じる人々がそれによって死ぬなら、神は不在だろう。と思っていた。だが、オックスフォード大学の先輩で、世界各国の神話を基に『指輪物語』を書いていたJ・R・R・トールキンが、他の教授との論争中に「神話は嘘ではない。真実だ』と主張するのを聞いて、悩み抜いた末に、30代半ばでキリスト教徒になった。

「神は我々の成長を望んでいるのです。苦痛は人間に与えられた神の励ましです。我々は石の塊として生まれ、苦痛によって人間の形に刻まれるのです」

しかし、人生最大の不幸は、そのあとに訪れる。。

愛しただけ悲しみが大きくなるのに、なぜ人は愛するのか? その問いに、私はもう答えることはできない」

どれほど愛しても別れは必ず来る。でも、愛さずにはいられない。誰も愛さない人生は、誰かを愛して傷つくよりも不幸だから。


◎おわりに

ダメな男たちの品評会みたいになりました。ここで紹介した映画の男たちはみんな、少しづつ自分だと思います。本当にすみません。偉大な映画を作ってきた天才や巨匠ですら、愛についてはどうもわかってない。いや、そもそも愛について人に説教できる達人など、少なくとも男性にはいない、と知ると、ちょっとホッとしませんか? あ、女性はがっかりですね。本当にすみません。(中略)

ウディ・アレンの大ファンだった故・川勝正幸さんに捧げます。
2013年8月 町山智浩



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by yomodalite | 2014-03-28 08:56 | 映画・マンガ・TV | Trackback | Comments(0)
2012年の12月は、本を読むより、自分を読む方にずっと時間がかかってしまう。。
と思った最大の1冊は、実は本書かも。。

著者のこれまでのアメリカ政治本シリーズは、『底抜け合衆国ーアメリカが最もバカだった4年間』『USAカニバケツ』『アメリカ人の半分はニューヨークの場所を知らない』『キャプテン・アメリカはなぜ死んだか』また、アメリカ政治研究者である越智道雄氏との共著『オバマ・ショック』も、読んでいるけど、本書の内容は、これまでで一番辛いものでした。

このシリーズの最初から、米国衰亡史として読んでいましたが、米国に起こったことは、10年後には日本に起こるということもあり、この流れから、日本が逃れられるように。と願ってきたけれど、残念ながら、今後の日本の行く末もそのセオリーのままに進んでいく。ということが、もうどうしようもないほど明らかになってきた矢先でしたし、

辛かったのは、その流れから日本が逃れられないというだけでなく、あらためて、民主主義や、平和や、格差のことについて、深く考えさせられ、そういった思いを「深く考えさせられた」と書くだけではもうどうしようもないほど、突き刺さった刺が大きかった。

そんなわけで、本書は素晴らしい本なのですが、お奨めしたいとか、著者に感謝したいとか、内容を記録しておきたい。という、いつもの動機ではなく、刺のように突き刺さった部分を少しだけ、個人的にぐだぐだと書いておくことにします。


(引用開始)省略・要約して引用しています。


第1章 医療保険改革とティーパーティーの誕生

「医療保険改革もそうだが、成功した人から多くの税金を取って、貧しい人に施すというのは、努力した人に不利だし、努力しない人を甘やかすことになる。君はアイン・ランドの『肩をすくめるアトラス』という小説を読んだかね?あの本に我々、ティーパーティーの思想が書かれているよ」

第4章「ティーパーティーの女神」アイン・ランドが金融崩壊を招いた

ティーパーティーには、アイン・ランドという女神がいる。1982年に亡くなった彼女が書いた小説『肩をすくめるアトラス』はティーパーティーの聖書と呼ばれている。「私が政治家になろうとした理由がアイン・ランドです」ティーパーティー派のポール・ライアン下院議員は、05年、アイン・ランドの生誕100年記念パーティーでそうスピーチした。

ライアンは、財政赤字解消のため、ソーシャル・セキュリティ(社会保障)、メディケア(高齢者・障害者向け医療保険)、フード・スタンプ(貧困層向け食費補助)などの福祉削減を主張した。その一方で、彼はブッシュ政権が行なった富裕層の遺産相続免税に賛成した。ライアンは富める者から税金を取って貧しい者たちに与える「富の再分配」を激しく憎んだアイン・ランドに影響されている。

ティーパーティーの先駆者の異名をとるベテラン、ロン・ポール下院議員も同じだ。

(中略)

アラン・グリーンスパンは50年代からランドの弟子であり、74年にフォード大統領の経済諮問委員会の議長に就任した際の宣誓式でも、横に付き添っていたのはランドだった。ランドの思想に従ってグリーンスパンは19年間にわたって自由市場を放任し続け、レーガンからブッシュ・ジュニアまで、政府は富裕層への減税を続け、アイン・ランドが「寄生虫」と呼んだ庶民はどんどん貧しくなった。その結果暴走した金融業界は、貧しい人々に無理矢理住宅ローンを押しつける詐欺まで行なって、それが08年の金融崩壊を引き起こし、20年におよぶ富裕層への減税は莫大な財政赤字を生み出した。アイン・ランド的社会は失敗に終わったのだ。

(引用終了)


この後も、激しいランド批判が続くのですが、これでは、あまりにもランドが可哀想だと思う。思想が単純化されて、政治に利用されることはしばしばあることで、ランドがティーパーティに利用されたのは、ニーチェが、ナチスに利用されたのと同様ではないか。ティーパーティの先駆者と言われてしまっているロン・ポールや、リバータリアンや、小さな政府ですが、ロン・ポールは国内第一主義で、アメリカの対外政策を批判している。

ネオコンの源流がトロツキズムで、その元祖ネオコンのフランシス・フクヤマが『歴史の終わり』を書いたときだって、現在のアメリカの姿を予想できておらず、その後『アメリカの終わり』を書いて転向を表明した。ランドの弟子だったグリーンスパンも、1990年代から、株式市場の熱狂に危惧を表明していたけど、住宅バブルは止められなかった。

貧しい人も借りられるというサブプライム・ローンは、ランドの思想とは真逆だし、金融崩壊のあと、国民の税金で、破綻した企業のCEOにボーナスまで支払われたのも、ランドとは無関係で、富裕層の減税、増税という選択より、企業がそこで働く人々よりも、株主のためにある。という徹底した株式市場主義は、グリーンスパン1人の手綱さばきでどうにもならないほど膨れ上がり、その膨張を支えたのは「富裕層」だけでなく「富裕層」を夢見た人々でしょう。

国内では、ニーチェのいたこを気取る適菜収氏が、B層というキーワードで同じように煽りだした。彼もティーパーティでのアイン・ランドの使われ方と同様にニーチェを使っている。ネトウヨやB層もポピュリズムという言葉も、国民分断のために利用させられてる。ホントに未だにポピュリズムなんて言葉で、何かを批判したつもりになっている人は、自分が大衆ではないと思っているのだろうか。権力者でもないのに。

町山氏は、

FOXニュースのコメンテイターが『肩をすくめるアトラス』を振りかざして「規制と福祉ばかりの国をオバマは実現しようとしているんです!」と叫んだことを、それは話が逆で、アイン・ランドの理想の方が先に実現したのだ。80年代レーガン政権移行の新自由主義によるアメリカとして。

と言う。そうかもしれない。

でも、企業献金ではなく、国民からの小額募金によって誕生したオバマ政権によって、選挙資金はますます高騰し、メディアの選挙運動は酷くなる一方。その中で勝利したオバマが、結局なんの公約も実現できずに、超格差社会を温存し、世界中で民主主義政策という名の武力行使を行なうことも止められず、

ヒラリーが、女性の地位向上で勝ちとったものは、より多くの女性が、AIGの幹部社員に税金という形で、お金を貢げる権利だったり、多くの女性がヒラリーや、ライスのような気分で軍隊を使うか、もしくは軍隊に行くかという選択を迫られるようになり…

誤解されたくないけど、FOX-TVが言ってるようなことを支持する気持ちなんてないし、ティーパーティに関しては、数年前に、片山さつきが日本に紹介しようとしていたときから嫌な予感がバリバリとしていて、その後、彼女が生保に噛み付いたときも、案の定という気がした。

ただ、もうそういった「選挙」のための二分化も、
自分が二分化のどちらかの「極」に立つことも、嫌だ。

たかだか、政府の仕事のあれこれについて考えることで、無駄な競争を煽り、
国民の意識を分断しているだけじゃないか。(本当の目的はそっちか。。)

性的嗜好も、思想・宗教といったものも、本来すべて「あやふや」なもので、人種ですら、それを決める基準をはっきりすることができないのに、少年期から選挙に異常なまでの興味を抱かせ、常に自分を分類して「自己の確立」を強化していくような現在の社会では、もう世界の平和には至らない。。

私の個人史の中では、今ほど、国民すべてに「一票を無駄にするな」とか「選挙には必ず行くべき」いうメッセージが虚しく響いたことはないけど、

それでも、何度銃弾に倒れてもという経験も、米国の方がずっとタフに経験してきているので、今後、日本社会の方がダメージを受ける人が多いだろうなぁという自分の予測にもうんざりした。

でも、どこまでも暗くなりそうな気分に、意外にも役にたったのは、ローマ帝国史本で、
全然面白くなかったけど、本書と併読して読むことで、多少は心が癒された。


ローマ人の「パンとサーカス」とか、富の分配とか、
その時代の奴隷制と比較して、、とかね(泣)

もうひとつ癒されたのは、12月に行ったジャクソンズのコンサートでも歌われ、
マーロンのツイートに、今もよく書いてある
Study PEACEという言葉が登場する「Man of War」という曲。




大雑把な和訳ですが。。。

Man of War

You think your way is the best way for all
You don't know everything so you don't know it all
You got respect a man for the way that he feels
And you can't make people do things against their will

あなたは、自分の方法が正しいのだと思っているけど
あなたはすべてを知らないし、何もわかっていない
人の感情を尊重し、人々の意志に反することをしてはいけない


Man of war, don't go to war no more
Why don't you, why don't you study peace?
Man of war, don't go to war no more
Study peace 'cause peace is what we need

戦争をする人々、もう戦争をするのはやめにして
なぜ、平和を学ぶことをしないんだ
戦争をする人々、もう戦争をするのはやめて
平和を学ぼう。ぼくたちが望んでいるのは平和なんだから


Just because your army gives you strength, gives you might
Truth is gonna win, wrong will never conquer right
Every man has the right to think and be free
You're like a spoiled brat, you want everything, you see

軍隊をもって、強さと力を得られても
真実はいずれ勝利する。間違った権利を主張しても正義は得られない
どんな人にも自由に、自分で考えるという権利がある
君たち(戦争をする人々)は甘やかされ過ぎて、
見えるものは何でも欲しがってるみたいだ


Man of war, don't go to war no more
Why don't you, why don't you study peace?
Man of war, don't go to war no more
Study peace 'cause peace is what we need

戦争をする人々、もう戦争をするのはやめにして
なぜ、平和を学ぶことをしないんだ
戦争をする人々、もう戦争をするのはやめて
平和を学ぼう。ぼくたちが望んでいるのは平和なんだから


You think your bombs guns, and planes make you a big man
When you attack and invade on another man's land
Tryin' to make him be what you want him be
Make him do what you want him to
Make him say what you want him to say
It wasn't meant to be that way

爆弾とか銃とか、飛行機をもっていたら、強い男になれるなんて
他の奴の土地を攻撃して、侵略したいのさ
人を自分の思いどおりに動かして、
自分の言うとおりにしたいんだろう
そんなことに、どんな意味があるんだ


You think your way is the best way for all
You don't know everything so you don't know it all
You got respect a man for the way that he feels
You can't make people do things against their will

あなたは、自分の方法が正しいのだと思っているけど
あなたはすべてを知らないし、何もわかっていない
人の感情を尊重し、彼らの意志に反することをしてはいけない


Man of war, don't go to war no more
Why don't you, why don't you study peace
Man of war, don't go to war no more
Study peace 'cause peace is what we need

戦争をする人々、もう戦争をするのはやめにして
なぜ、平和を学ぶことをしないんだ
戦争をする人々、もう戦争をするのはやめて
平和を学ぼう。ぼくたちが望んでいるのは平和なんだから


◎歌詞参照 http://www.metrolyrics.com/


適当な知識で意見をいうより、学べ!自分。

そんなわけなので、
この虚しさをバネに、ミケランジェロを読もうと思う。

あきらめるな、自分!

☆巨大資本に操られるインチキ政治運動、デマだらけの中傷CMをぶつけ合う選挙戦、暴走する過激メディアまで日本人が知らない「アメリカの内戦」を徹底レポート。


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by yomodalite | 2013-01-08 08:00 | 現代文化・音楽・訳詞 | Trackback(1) | Comments(5)
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マイケルが『葉隠』を愛読していたということから( 『マイケルからの伝言』)、三島由紀夫の『葉隠入門』のことも考えてみようと思って書き始めたのですが、「葉隠」も「三島由紀夫」も「マイケル・ジャクソン」も、あまりにも誤解が多いうえに、この3つすべてに興味がある方も少ないと思います。

どうか「私のマイケルと違う」と感じた方は、無視してくださいね。

では、、

葉隠は、海外でも何種類か出版されていて、MJが読んだのがどの本なのかわからないのですが、米国Amazonや、Wikipediaの情報から(はっきりわからないのですが、)1979年の William Scott Wilson 訳が1番古く、年代的に、MJが読んだのも William Scott Wilson 訳ではないかと、、、

後日註:MJの書棚の本として認定されているのは「Hagakure : The Book Of The Samurai, by T. Yamamoto」で、この書名検索で出てくる本は、やはりWilliam Scott Wilson 訳なので、日本MJファンが読むべき「葉隠」としては、下記の『対訳 葉隠』がもっともお奨めで、三島ー Wilson ー MJ の流れも、私の妄想だけではないと思います。

◎Hagakure(Wikipedia)
◎Hagakure(Amazon.com)

William Scott Wilsonの『対訳 葉隠』のまえがきによれば、

私が本書に興味を抱いたのは、カリフォルニアのモントレーで日本語を勉強していた1972年のことである。私が三島由紀夫を作品を愛読しているのを知った日本の友人が、それなら『葉隠』も面白いはずだと勧めてくれた。数週間後、三島由紀夫の『葉隠入門』を含む数種類の版を日本から取り寄せると、、(引用終了)

とあるように、三島由紀夫が「きっかけ」だったようです。(三島由紀夫の『葉隠入門』も1977年に Kathryn Sparling によって翻訳出版されている)


松岡正剛氏は、「千夜千冊」で、三島の『葉隠入門』について、

三島の生き方と『葉隠』に何が書いてあるかということは、必ずしもぴったりは重ならない。ところどころは、逆向きになっているところさえあった。

三島だけではなく、多くの者が『葉隠』を本格的な武芸書と勘違いしてきた。

「武士道というは死ぬ事と見付たり」や「武士たる者は死に狂ひの覚悟が肝要なり」に最大絶無のメッセージがあると思いこみすぎていて、その部分の拡大解釈ばかりが強調されることが多い。三島も「死に狂ひ」の言葉から「正しい狂気というものがあるものなのだ」と書いた。(引用終了)


と書かれていて、

三島の『葉隠入門』が「武士たる者は死に狂ひの覚悟が肝要なり」ということを第一に、人々を狂気に駆り立てるような「煽動」を目的に解説していると思われそうなんですが、三島の生き方と「逆向き」かどうかということを置いても、ここで、松岡氏が『葉隠』について語っている、

『葉隠』は武士道の心得や心掛けを語っているのはむろんだが、どうもそれ以外のことをいろいろ書いてもいて、われわれがすっかり忘れてしまいそうになっていることを暗示しているのである。

とか、

常朝は「忍恋」ということを頻りに重視した。そう、恋である。しかも「忍ぶ恋」だ。三島由紀夫はほとんどそのことにふれていないのだけれど...

ということはなく、三島も暗示しているし、触れてもいるんですよね。

おそらく、松岡氏は、三島の最期の行動への嫌悪感から、その行動と『葉隠』が言わんとしていることは違うと言いたいのだと思います。 『日本という方法』 という素晴らしい日本文化論を書かれた松岡氏には、日本の素晴らしさはよく見えていても、三島が感じていた、日本と西洋との違いや、西洋に侵蝕されたことによる「日本文化」への危機感は、あまり感じられなかったからでしょう。


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わたしが、松岡氏と同じぐらい尊敬している町山智浩氏も、最近、三島の『葉隠入門』を薦めていました。

☆ “通過儀礼” について、島田裕巳『映画は父を殺すためにある』5:30~
◎タマフル 町山智浩推薦図書① 2012年3月31日

☆『葉隠入門』については、6:30~
◎タマフル 町山智浩推薦図書② 2012年3月31日

町山氏は、

欧米には「通過儀礼」をテーマにしたストーリーが無数にあり、アメリカ映画は、まさに「父を殺すためにある」と語り、また、人がヒーローになる瞬間とは、自分のことばかりを考えていた状態から、誰かのために生きることを決断した瞬間であり、葉隠の「武士道とは死ぬことと見つけたり」と言うのは、

二者択一の選択肢というのは「自分の責任」か「他人の責任」かの選択で、そのときに、必ず身を捨てて「自分の責任」の方を選択するということで、それは「頭のいい」選択ではないけれど、誰も「卑怯者」とは言わない! それが「武士」の選択すべき道である。


と力説されていて、三島も本書で同様に述べています。

でも、アメリカ映画の多くのストーリーの基本である「通過儀礼」や、ヒーロー物語を、町山氏がアメリカ映画を観る際に重要なことだと、力説しなくてはいけないのは、現代の日本に、それがまったくないからですよね。

三島由紀夫という芸術家の自決は、

・武士がいかに主君に仕えるかという処世訓である『葉隠』を巧妙に利用し、
・芸術とは真逆と思える「軍隊」のスタイルをもち、
・昭和天皇批判という「父殺し」を孕んでいる

それは、日本の方法論について深く考えてこられた松岡氏にとっても、天皇神話の国に永年暮らし、民族として「父殺し」を経験して来なかった多くの日本人にとっても、遺伝子レベルでの「違和感」が感じられるのだと思います。

でも、三島の批判は、昭和天皇の「人間宣言」であって、

むしろ、天皇神話を基本とする「日本の方法」を守るために『葉隠』を利用したんですよね。。。

日本は「父殺し」をしない反面、「自らの死」を、西洋のように怖がらず、身近に接してきた。しかし、その「殉死」の精神は「西洋」によって蝕まれ、それでも依然として「父殺し」は出来ない。そうなると「奴隷化」が決定したも同然で「自由」は完全に奪われることになる。

三島由紀夫は、その類いまれな論理的知性と「芸術家としての感性」で、それがわかったにも関わらず、その表現としては、まったく相容れないような「軍隊」を纏ったことにより、戦争で「自由」を奪われていた記憶がまだ生々しい当時の「文化人」には、嫌悪感の方が先立ち、意義が理解されなかった。


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本書の「葉隠の読み方」から引用します。

「葉隠」がかつて読まれたのは、戦争中の死の季節においてであった。現在「葉隠」が読まれるとすれば、どういう観点から読まれるかわたしにはわからない。若い人は観念的に死を夢み、中年以上の人は暇があればあるほどガンの恐怖におびえている。

日本人は、死をいつも生活の裏側にひしひしと意識していた国民であった。しかし、日本人の死の観念は明るく直線的で、その点、外国人の考えるいまわしい、恐るべき死の姿とは違っている。中世ヨーロッパにおける大きな鎌を持った死神の姿は、日本人の脳裏にはなかった。

われわれは西洋から、あらゆる生の哲学を学んだ。しかし生の哲学だけでは、われわれは最終的に満足することはできなかった。また、仏教の教えるような輪廻転生の永久に生へまたかえってくるような、やりきれない罪に汚染された哲学をも、われわれは親しく自分のものとすることができなかった。(引用終了)




三島の自決の意義を「三島独自の死への美学」としか理解できなかったために、現在の日本は、欧米の「通過儀礼」も「父殺し」も「神」もなく、「葉隠」で武士が必ず選択すべきとした「自分の責任の方をとる」という方法を「頭が悪い」と忌み嫌うようになり、責任者が、誰も責任をとらない国になりました。

武士道が、新渡戸稲造により“思想書”となったように、三島がこれを書いた1967年よりも、現代の方がより『葉隠』を“思想書”として、読むべき時代なのではないかと思う。

また、まったく共通点がないように見える、三島由紀夫とマイケルですが、

私が共通していると思うのは、ふたりとも「芸術家」として、自らの意志で「軍服」を着て、

三島は平和になった日本のために、

マイケルは子供のために、

共に命令されることのない「主体」のために、闘うことを「表現」したということです。


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Michael Jackson to San Sebastian(←コメント欄参照)



矢が刺さっていても、まったく痛くないんだという点が、MJの「聖セバスチャン」の解釈なのかな。それで、羽根もあると....

☆[2]につづく



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by yomodalite | 2012-05-16 09:19 | ☆マイケルの愛読書 | Trackback | Comments(25)

さらば雑司ヶ谷 (新潮文庫)

樋口 毅宏/新潮社

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雑司ヶ谷って、どの辺なのかよくわからなくて、最初は世田谷区かと思った(東京で住んだことのない区だし、わからない地名は大抵「世田谷」だと思ってしまうのだ)のだけど豊島区でした。

そういえば、世田谷以外でも、乗っていると、いつのまにか「埼玉」に行ってしまう路線とか「池袋」周辺も苦手なのだ。

雑司ヶ谷は、副都心線で、都電荒川線の「鬼子母神前」で、1丁目から3丁目までしかない「町」なんだけど、それで人口8088人って、ホントに、東京をひとつの「イメージ」で語るのはむつかしい。

著者は、雑誌「ブブカ」や「みうらじゅんマガジン」の編集長として活躍された方。その経歴に、グッと来てしまう人には、期待を裏切らない内容で、私は町山智宏氏と水道橋博士の推薦で読んでみようと思いました。

◎シリアスか洒落なのか、「読ませる力」町山智宏
◎「キラキラ・ポッドキャスト」水道橋博士『さらば雑司ヶ谷』を語る

下記は著者による「あとがき」から。

この小説は文中に表記した以外にも、以下の作品と人物へのオマージュ、霊感、意匠、影響、引用、パスティーシュで構成している箇所があります。

『不夜城』と『私が殺した少女』にリスペクトを。

他に、開高健、『池袋ウエストゲートパーク』(ドラマ)、高倉健、『そして、ひと粒のひかり』、佐野元春、『グラップラー刃牙』『サンセット大通り』、藤本義一、『さくらの唄』、つかこうへい、『カメレオン』(マンガ)、見えないドアと鶴の空』『人間交差点』、芥川龍之介、『ドランクモンキー 酔拳』『遺書配達人』、中島みゆき、『闇の子供たち』、ランボー詩集、『悲劇の誕生』、夏岡彰、『LOST』、荒川徹、『北斗の拳』、Q・タランティーノ、『嘔吐』、みうらじゅん、『昭和の劇 映画脚本家 笠原和夫』、ZIGGY、『ぼくは微動だにしないで立ち尽くす』、増井修、『幕張』、『ねじまき鳥クロニクル』、山崎洋一郎、『ロッキング・オン』のM.I.A.インタヴュー、『ニャン2倶楽部Z』『仮名手本忠臣蔵』、保阪尚輝、『花王名人劇場』で鹿賀丈史が出演したドラマ、北野大、『ビヨンド・ザ・マット』、平井夏美、『CUT』の石岡瑛子インタヴュー、ローリング・ストーンズ、シェークスピア、コーネリアス、浜田省吾、『わが谷は緑なりき』、バービー・ボーイズ、『虐げられた人びと』、電気グルーヴのオールナイト・ニッポン、山口絵里子、『さらば、わが青春の少年ジャンプ』、松本隆、『奇子』、鹿野淳、円谷幸吉と川端康成、『男樹』、GREAT3、『渋谷陽一の社長はつらいよ』、『ベイエリア在住町山智宏アメリカ日記』、ウィキペディアやgoo映画、他のサイトなどなど。(順不同)

それでは続編『雑司ヶ谷R.I.P』でお会いしましょう。

(引用終了)

続編も読みたいし、『CUT』の石岡瑛子インタヴューも読みたくなりました。

☆映画にしても楽しめそうな小説。町山智宏(1962年生まれ)、水道橋博士(1962年生まれ)に近い年齢の人は、さらに楽しめそう。

◎さらば雑司ヶ谷(アマゾン)
___________

[内容説明] 中国から久しぶりに戻った俺を出迎えた友の死と女の失踪。東京、雑司ヶ谷。狂気と猥雑の入り乱れたこの街で俺は歪んだ青春を送った。町を支配する宗教団体、中国マフィア、耳のない男… 狂いきったこのファックな人生に。天誅を喰らわせてやる。エロスとバイオレンスが炸裂し、タランティーノを彷彿とさせる引用に満ちた21世紀最強の問題作、ついに文庫化。脳天、撃抜かれます。新潮社・文庫版 (2012/1/28) 単行本(2009/8/22)


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by yomodalite | 2012-02-25 22:58 | 文学 | Trackback | Comments(0)
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バレンタイン・シーズンに、買いまくった高級チョコを食いまくる....銀座には普段から専門店が多いし、バレンタインじゃないときの方が、お買い得だったりもするのだけど、、どーゆーわけだか、この誘惑には勝てないの.... クリスマスや、バーゲンの誘惑には強いのになぁ.....

◎日経新聞[何でもランキング]心はずむ専門店チョコ

たぶん、東京の専門店で制覇してないところはないと思うんだけど.... 上記のお店以外で....なんとなく今日は....「ミッシェル・ブラン」

なめらかバニラのガナッシュ「Opera」、繊細なエレガント・ショコラ「Jasmin」、オレンジの香りの「Neroli」、強さと繊細を併せもった「Violetta」、甘い花の香り「Rosa」の6種類が入って、この順番でいただくのがオススメって書いてあって、、確かに、ショコラ、フルーティーで、最後が花の香りって素敵.....






◎[youtube]◎第27回(2011)京都賞記念講演会 坂東玉三郎スピーチ

この予告編では全然面白さがわからないと思うけど...玉三郎×鏡花の組合せぐらい最高のものってあるんでしょうか? 『天守物語』は特に「ツボ」で、最終日に3回目を観に行って「やっぱり、もう1回観ておけば良かった」と思ったくらい。 
泉鏡花の怖さや美しさを表現している作品は多いと思うんだけど、不思議な可笑しみというか、観ていて「クスクス」笑えたり、帰宅後に「高笑い」したくなるほど面白いのは、玉三郎だけって感じがするんだけど...

◎[youtube]シネマ歌舞伎『天守物語』『海神別荘』『高野聖』予告編
◎シネマ歌舞伎(上映スケジュールなど)

こちらは、DVDで発売になったばかりの映画版「天守物語」こっちはまだ観てなかった...

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by yomodalite | 2012-02-19 10:20 | 日常と写真 | Trackback | Comments(0)

オバマ・ショック (集英社新書)

越智道雄、町山智浩



最近よく思うんですが、毎日のニュースから近未来のことが予測出来ないのは、それが、同時に、近過去のことを忘れさせる効果があるからだと思うんです。

私は数年前から「ニュースは寝かせて読め」をモットーにしてますw といっても、新聞を取っておくという意味ではなく新聞はすぐに捨てます!行政指導により一週間に一度しか捨てられませんが、出来るなら毎日捨てたいと思っていて、読んでもいないのですがw。

本書は2009年の新書。ちょうどイイ感じの漬かり具合が予想され、著者は2人とも「アメリカ通」ですし、過去において、町山本がハズレたことは一度もないので、すっごく期待して読みました!

下記は、町山氏による前書きから。

「Finally!」(やっとだよ!) ー 2008年11月、カリフォルニアの夜9時の「オバマが勝った」というニュースへの興奮、勝利演説の前に流された、同年3月のフィラデルフィア国立憲法センターでの演説。

私の兄弟は、姉妹は、姪や甥や、おじやいとこは、あらゆる人種、あらゆる肌の色で、3つの大陸に住んでいます。そして、私は、生きている限り決して忘れません。
私の物語が可能な国は、この世界でアメリカだけだということを。(オバマ演説より)


「私の物語」とは「私のような出自の者がその国の国家元首になること」という意味だ。この演説を聞いたとき、僕がアメリカに来た理由がひさびさに蘇ってきた。僕は自分が何人なのか分からないまま、大人になった。母は日本人で、父は韓国人だったが、韓国の言葉も文化も歴史も何一つ、子供に教えなかった。韓国について話すことすらなかった。

中学の頃に父母は離婚し、それ以降、父にはずっと会わなかった。にもかかわらず国籍は韓国で、名前も韓国名だったので、周囲からは韓国人として扱われた。18歳になったときに日本に帰化したが、父が外国人だと語ると、周囲はやはり僕を外国人として見た。

父は韓国のことを何一つ教えない代わりに、ハリウッド映画を見せ続けた。アフリカ系、イタリア系、アイルランド系、ユダヤ系、中国系、日系、ありとあらゆる「系」がいて、それぞれの国の苗字を持ちながら、みんな等しくアメリカ人として、刑事をしたり、ギャングをやったり、ラブロマンスを演じていた。そこには自分の居場所があるように感じた「日系日本人」以外登場しない日本のテレビや映画よりも。

10年ほど前、ついに僕はアメリカに渡った。妻はアメリカの会社に就職し、子供が生まれ、家を買い、イタリアやドイツやイランやクウェートやガーナやトルコやマーシャル諸島やインドや中国や韓国やモンゴルやグァテマラやメキシコから来た人々と近所付き合いしながら、ようやく自分の居場所が見つかったように感じた。

ところが、9.11テロ以降、アメリカはどんどん壊れていった。合衆国はブッシュを支持する田舎とブッシュに反対する都市部との2つに分かれて対立し、世界一の大国の威信は地に落ち、努力すれば豊かになれるはずのアメリカン・ドリームは住宅&金融バブルとともに粉々に砕け散った。

新しい大統領オバマは、バラバラになったアメリカを再び統合し、壊れたシステムを変革し、希望を取り戻せるのか?

自分では手がかりさえつかめないこの問いに答えて頂けるのは、越智先生の他にはいないと思った。先生はやはり、この歴史的な政権交代を、細かい政策論議をはるかに超えた人類的視点に立って俯瞰していらっしゃった。この1冊は、これからの世界を展望する大いなる助けになるはずだ。(ここまで省略して引用しましたが、町山氏の前書きは下記で全文読めます)

◎オバマ・ショック(集英社新書)

オバマ大統領の誕生から、数ヶ月で出版されたタイムリーな本にも関わらず、語り手、書き手、編集者としても一流である町山氏が、その知識だけでなく、経験も通してアメリカを語るだけでなく、稀有な研究者である越智氏の引出しを開けまくり、高レベルの対談がまとめられています。

第1章 オバマがチェンジ(変革)するもの—レーガン連合の28年
第2章 失われた八年—ブッシュとは何だったのか
第3章 アメリカン・ドリームという博打—サブプライムと投機国家
第4章 覇権国家の黄昏—衰える軍事、経済、文化のヘゲモニー
第5章 異端児か、救世主か—オバマが選ばれた理由
終 章 彼の「強運」は世界の味方なのか—オバマの未来、アメリカの未来


◎mm(ミリメートル)
◎杜父魚文庫ブログ

☆下記は、上記ブログに書かれている以外で、極私的にメモしておきたかったこと

(第4章「覇権国家の黄昏」スクリーンの彼方のアメリカから)

町山:父は強烈な「アメリカかぶれ」でした。そうなったのはアメリカ映画のせいだそうです。まだ10代の頃にハワード・ホークス監督の『暗黒街の顔役』を見ておかしくなっちゃったと。

越智:スカーフェイスですね。ジョージ・ラフトがギャングをやる。

町山:イタリア移民のギャングが貧乏からのし上がっていく物語です。まぁ、裏のアメリカン・ドリームですね。これを見て父は「アメリカはすごい」と思ったそうです。それからはもうアメリカ一辺倒で、戦後は進駐軍にくっついて英語を勉強しながら、ヤミ物資の横流しをして儲けました。

町山:西部劇とギャング映画が好きでしたねぇ。たとえば『俺たちに明日はない』とか。主人公が警官隊にマシンガンで撃たれて蜂の巣になって死んでいくギャング映画ですよ!それと、自分が見てきた映画の話もよくしていました。「今日、父さんは『ソルジャー・ブルー』という映画を見てきた。騎兵隊がインディアンを虐殺するんだ。手がこんなふうにバーンを斬られて....」とか身振り手振りで延々と語る。どうかしてますよ。おかげで、こっちはトラウマです。

越智:子どもが分かる、分からないは抜きなんだよね。親っていうのは、若ければ若いほど、子どもを自分の自我の延長として見てしまうから。

町山:それにしたって、子どもに『ソルジャー・ブルー』はどうかと思いますけど(笑)『ダラスの熱い日』も見せられました。ケネディ暗殺はCIAと軍産複合体の陰謀だという話ですが、小学校5年生にそんなものを見せても分かるわけがない(笑)。

越智:でも、そういう幼児体験が、いまの町山さんのお仕事に結びついているんだから。

町山:渡米してから、2年ほどコロラドのボルダーに住んでたんですが、そこにサンドクリークの大虐殺の慰霊碑が建っていました。なんと『ソルジャー・ブルー』の史実の現場だったんですよ「あっ、ここでつながってくるのか」と思いました。父は2006年に亡くなりましたけど、最後に見舞いにいった行ったら「お前はモニュメントバレーに行ったか」と聞くんです。行ったよ、と返すと「そうか、俺はあそこに立って写真を撮りたいんだ。映画みたいだろう」って。

越智:お父さんは行ったことがなかったんだ。

町山:実は一生で一度もアメリカには行ってないんですよ。死ぬまで、バーチャルなアメリカを生き続けた人でした。

◎『ソルジャー・ブルー』goo映画

ーーーーーーーー

越智:ローマ帝国が衰退し、四分五裂していったときに、どうやって生き延びたかと言うと、結局、芸術・文化で生き延びたわけです。その遺産を発展させたルネッサンスで磨かれたイタリアという文化的価値を周りに評価してもらうことによって、しのいできたんですね。アテナイが生き延びた背景も、ほぼ同様です。政治力や経済力は、衰えると廃墟しか残らない。しかし、廃墟には文化が残る。つまり、文化の方がうんと寿命が長い。ならば、文化を残してやれば、覇権が失われても子孫はそれで食っていける。じゃあ、これから落ちぶれていくアメリカが、アテナイやルネッサンス・イタリアのような生き延び方ができるかどうか。

町山:できないと思っていらっしゃる?

越智:と思うんですが、どうですか。果たして、アメリカのポップカルチャーが古典化できるのかどうか。

町山:ギリシャにはアリストテレスのイデア思想があって、それがルネッサンスでヒューマニズムとして蘇ってくる。アメリカのカルチャーにも同じ部分があるんじゃないですか

越智:たしかに、一種の理想主義、イデアはありますね。

町山:いわゆる「アメリカン・ドリーム」という理想主義。とくに、ハリウッド映画とポップ・ミュージックには、それが濃厚にあります。Love Conquers All(愛はすべてに打ち勝つ)とよく表現されます。恋人同士が境遇と戦って結ばれてハッピーエンド。Love Conquers Allという言葉はもともと古代ローマの詩人ウェルギリウス(バージル)の『牧歌』の一節だそうですから、まさにローマン主義、ロマンチックですよ。


◎ウェルギリウス『牧歌』

越智:それが、どのように古典化されるのか。文化というのは、最初はどんなものでも新しい形として出てくるんだけれども、古典化されたものには、初めから、時代を超えて生き延びられる要素がすでにデザインの中に入っていたと思いませんか。それはおそらく、芸術と永遠とをつなげたいという衝動があって、その衝動がタイムレスな要素をデザインの中に呼び込んだのではないか。じゃあ、アメリカのポップカルチャーの中に、永遠性を志向するという側面はどのくらい入っているんだろうか。

町山:『スターウォーズ』に限って言えば、ルーカスにとって、ダースヴェイダーというのは父親なんですね。ルーカスの実際の父親は田舎町で文具店を経営していたんですが、共和党員で厳格なキリスト教徒で、ものすごくシビアで暗い運命観を持った人だったそうです。世の中には運命というものがあって、そこからは逃げられないんだ、という....

越智:予定説的なプロテスタンティズムですね。

町山:だから、ダースヴェイダーは主人公ルークに言うんです。「私はお前の父親だ。私の味方につけ。これは運命だ」と。ところがルーカスはそれに反発して.....「どこにいちばん感動した?」ってアメリカ人に聞くと、たいていは1作目で百姓をしていたルークが地平線に沈みゆく二重太陽を眺める場面なんです。「このまま自分は田舎で働いて死んでいくのか」と絶望的な気持ちで、一生行けないかもしれない宇宙を見つめる。

町山:運命を超えていく物語と考えると、アメリカという国の成立ちに思い当たるんですね。アメリカは国が始まった段階ではプロテスタンティズムが厳しくて、予定説で、将来への希望といったものはほとんど考えられないような社会だったでしょう。

越智:そう、あの時代の墓石にはフード付きのマント姿に大鎌を持った髑髏や、翼が生えた髑髏などが描かれています。それが霊魂。ボストンあたりへ行くと、古い墓はみんなそれです。

町山:でも、アメリカを最初につくったのは、そういう暗い世界観を持った人たちなんですね。神というものが頭の上にどんと乗っていて、身動きがとれない。ところが、新大陸に住んでから、まったく違う明るい思想が出てきた。マニフェスト・ディステニーとか、フロンティア・スピリットとかアメリカン・ドリームとか、信じていればうまくいく。愛は勝つという予定説の楽観的解釈みたいなものが。厳格で暗い運命論者の先行世代にあとの世代が理想主義で反発した歴史が『スターウォーズ』などのハリウッド映画で反復されていると思うんです。

越智:ハリウッドというのは、政府の助成金にまったく頼らないで、ロシア・ユダヤ(東欧系ユダヤ人)たちが自己資金で始めて、自分たちの金を動かしてやってきたわけです。そのためには世界中、どこに持っていっても面白がってもらえるような内容にしなければならない。ヨーロッパのように助成金で映画をつくっている国は「これが我が国の文化です」というものを平気で出してくる。じゃあ、アメリカが覇権国でなくなって「これがアメリカなんだ」という作品を発信して商品価値を持ちうるんだろうか。

町山:ハリウッドは生まれたときからずっとグローバルでした。サイレント時代にドイツで『カリガリ博士』や『ノスフェラトゥ』がつくられると、すぐにその監督やらスタッフを引き抜いちゃう。ハリウッドはもともとユダヤ系がつくったので、ユダヤ系を中心に世界中のアーティストの亡命先みたいなことになってました。

ハリウッドは、アメリカにとって異端の集団で、保守派とずっと対立していますが、世界が考えるアメリカの良いイメージ、理想というのは、ほとんどハリウッド映画がつくったものですよね。世界で差別や圧政に苦しむ人々は少なからず、その映画をまぶしく見上げていたと思います。(引用終了)

越智氏の本をもっと活発に出版して欲しいと思うような内容でしたが、この後、あまりそうなっていないように思われるのが残念です。

◎『オバマ・ショック』(アマゾン)
_______________

[内容紹介]彼の演説に、なぜ白人も涙したのか。ベストセラー「アメリカ人の半分はニューヨークの場所を知らない」の著者が、師と仰ぐアメリカ研究者と白熱の対論!

史上初の黒人米国大統領に就任したバラク・オバマ。疲弊する大国は、なぜいま、彼を選んだのか? 覇権国家の衰退を歴史軸で考察する研究者(越智)と、合衆国を駆け巡るフィールドワーカー(町山)が、岐路に立つアメリカの過去・現在・未来を縦横無尽に語り合う。サブプライムローンの 現場 やハリウッド空洞化の実情など、アメリカが陥った病の症例を容赦なく暴き出し、多様な人種がオバマを「支持」した理由を明らかにする!

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by yomodalite | 2011-12-16 17:00 | 歴史・文化:美術 | Trackback | Comments(18)
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1962年7月4日生まれで、ジョニー・デップより一歳年上の町山智浩氏が、思春期の頃に観て、衝撃を受けた映画が、あらすじと共に語られています。

選ばれたのは、下記の25編なのですが、これらの映画を、町山氏が「どう語っているか」が面白い本なので、それは、是非本書で。

☆続きを読む!!!
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by yomodalite | 2011-10-11 18:47 | 映画・マンガ・TV | Trackback | Comments(0)
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本日の名言。

TomoMachi 町山智浩
おとなげ? そんなものは童貞と一緒に捨てて来た

か、カッコいいーーー!!!
わたしも、こんなこと、言いたいっ


TomoMachi 町山智浩
女子はいいの。「〇〇君、やめなさいよー」が仕事だから。 RT @chat_le_fou: @TomoMachi たしなめ野郎で何が悪い・・・!

そーゆーの、仕事辞めたときに止めたって思ってたけど、
よく考えたら、ダーリンに毎日やってた。。Umm...


下記は、最近読んだけど、MJに夢中で、ブログに書けなかった本のメモ。

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by yomodalite | 2011-06-07 17:00 | MJ系ひとりごと | Trackback | Comments(0)

旧「読書日記と着物あれこれ」。歴史/文学/お笑いを好み、着物生活をしていたはずが、いつしかマイケルジャクソンのように本を読もうになってしまったブログ。永年暮らした東京を離れ、現在は大阪を満喫中。


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