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神々の乱心〈上〉 (文春文庫)

松本 清張/文藝春秋




松本清張が82歳(1992年)で亡くなる直前まで週刊文春に連載、五年後に(1997年)上下刊で出版された絶筆。
まだまだ清張ビギナーの私にとって、早過ぎるとは思ったものの、『昭和史発掘』シリーズでの取材力を元に、皇室、宗教といったテーマを清張がどう描いたのか、どうしても早く知りたくて、手を付けてしまいました。

(ネタバレには気をつけておりますが、今回は色々微妙な点がありますのでご注意ください)

昭和8年、特別高等警察課第一係長 吉屋謙介は、マークしていた「月辰会研究所」の建物から出てきた女を尋問することになった。女は宮城坂下門通行証を持ち、風呂敷には、月辰会の「御例示」が大事に包まれていた。

「宮内省皇宮宮職」職員、北村幸子は、深町女官の代理として月辰会に訪れたようだったが、その数日後、職を辞して郷里に帰った直後に自殺した。

皇室、謎に包まれた女官の世界、謎の宗教。。。探偵役には、華族の次男ばかりを集めた「華次倶楽部」を主催する、深町女官の弟にして萩園子爵の弟でもある萩園泰之という、これまた魅力的なキャラも登場し、とても82歳とは思えぬほど、旺盛な執筆力には今更ながら驚かされるのだけど、その溢れんばかりの執筆力が凄すぎて、魅惑的な謎に惹き込まれつつも、連載そのままでの単行本化だからか、文章の重複や、中国の民族問題から、大連阿片事件、満州事変、国家主義運動などなど、昭和の歴史が壮大に関わり過ぎて、歯応えの固さは半端ではありません。

そのあまりの壮大さに、音を上げて、これほどの「魅惑的な謎」にも関わらず、上巻半ばで自らネタバレ情報を探ってしまったのですが、なんとそこには、「未完」の文字が!。読書前にできるだけ、情報を仕入れない主義なので知らなかったのですが、晩年の作とはいえ、やはり清張の作品としては、完成度に疑問を感じる読書だったので、「やっぱり」という感じも否めませんでした。

ただ、謎のすべてが解らずじまいというわけではなく、事件は最終章で一応解決していますし、未完後の内容には、編集部註によるまとめがついているので、クライマックスは想像できます。

小説としての完成度には残念な点が多いものの、挑戦する価値は大いにある特別な作品です。

☆判定不能

「MuBlog」
http://asajihara.air-nifty.com/mu/2007/08/1_ac33.html
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上巻【BOOKデータベース】昭和8年。東京近郊の梅広町にある「月辰会研究所」から出てきたところを尋問された若い女官が自殺した。特高課第一係長・吉屋謙介は、自責の念と不審から調査を開始する。同じころ、華族の次男坊・萩園泰之は女官の兄から、遺品の通行証を見せられ、月に北斗七星の紋章の謎に挑む。—昭和初期を雄渾に描く巨匠最後の小説。

下巻【BOOKデータベース】昭和8年の暮れ、渡良瀬遊水池から他殺体があがった。そして、もう一体。連続殺人事件と新興宗教「月辰会研究所」との関わりを追う特高係長・吉屋謙介と、信徒の高級女官を姉に持つ萩園泰之。「『く』の字文様の半月形の鏡」とは何か?背後に蠢く「大連阿片事件」関係者たちの思惑は?物語は大正時代の満洲へと遡る。未完の大作。

【帯情報】
<上>宮中に何事か画策する謎の新興宗教
昭和8年。東京近郊。梅広町の「月辰会研究所」から出てきたところを尋問された若い女官が自殺した。自責の念と不審から「月辰会研究所」をマークする特高課第一係長・吉屋謙介。やがて渡良瀬遊水池から、2つの死体が……
巨匠松本清張が渾身の力を揮った絶筆1700枚。

<下>満洲に暗躍していた教祖の野望とは
自殺した女官の兄から、月に北斗七星の紋章が入った通行証を見せられた華族の次男坊・萩園泰之。「『く』の字文様の半月形の鏡」とは何か? 事件の背後に見え隠れする十数年前の「大連阿片事件」の影。「月辰会研究所」の謎を追って、物語は大正時代の満洲へ遡る。



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by yomodalite | 2009-05-11 16:15 | 文学 | Trackback | Comments(0)

Dの複合 (新潮文庫)

松本 清張/新潮社



『黒い画集』のあとに何を読もうか迷いましたが、夥しい量のTVドラマなどで、なるべくネタに見覚えがなさそうな作品ということで本著を選びました。タイトルの意味はちょうど半分ほど読み進むと登場します。北緯35度、東経135度の英訳 North Latitude 35 degrees East Longitude135 degrees 4つの「d」が重なり合っているから「Dの複合」(中略)それに緯度・経度は地球をたてとよこにそれぞれ2つに割っているから、そのかたちからしてもD形の組み合わせになっている

と、作中の作家によって説明されるのですが、北緯35度、東経135度でなくても「D」は4つ。重なり合っているというのも(?)なんですが、ストーリーには様々な「複合」があり清張作品の中では特に謎解きの面白さが味わえる作品ではないでしょうか。

島田荘司のデビューが、松本清張の流行により衰退していた「本格ミステリ」の復興の先駆けになったという知識などから(私はお二人ともリアルタイムに読んでいませんが)清張には「ミステリ」の印象があまりなく両者は対極の存在と思っていたのですけど、「Dの複合」には、島田作品の手触りとかなり近い感触があって、宮部みゆきだけでなく、松本清張の影響の大きさというか巨人ぶりをあらためて実感。

本著の検索をしていて不思議だったのですけど、清張ファンの人はネタばれに関して気にしない方が多いようなので、未読の方はお気をつけくださいませ。

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【BOOKデータベース】作家の伊瀬忠隆は雑誌の依頼を受けて「僻地に伝説をさぐる旅」の連載を始めた。第一回浦島伝説の取材地丹後半島いらい、彼の赴くところ常に不可解な謎や奇怪な事件が絶えない。そして突然の連載打切り。この企画の背後に潜む隠された意図の存在に気づいたとき、伊瀬は既に事件の渦中に巻き込まれていた。古代史、民俗説話と現代の事件を結ぶ雄大な構想から生れた本格的長編推理小説。新潮社:改版版 (1973年、光文社1968/12初版)



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by yomodalite | 2009-01-29 12:34 | 文学 | Trackback | Comments(0)

黒い画集 (新潮文庫)

松本 清張/新潮社



大みそかに、久しぶりに「紅白」を観ました。下品な番組という感想はもう何年も変わらないのだけど、『天城越え』の石川さゆりが素晴らしくて、これはやはり「紅白」という「舞台」がもつ格が相応しいとも思えるのだけど、番組全体としては、なるべく下品に演出するようにと、NHKは毎年「闇の勢力」から、脅されているんでしょうかww

『天城越え』はもう十年以上前から名曲だったはずだけど、年末に観たそれは、名曲として以上に「古典」として完成されていてさらに大輪の華を咲かせたようだった。イチローが、現在これを使用したのも、この完璧さが気に入ったのだろうと思う。

そんなことを思いつつ、私が録画した『天城越え』を何度も観ていたら、ダーリンから「清張に『天城越え』という作品があるんだよね」と、めずらしく(!)有意義な一言。

久しぶりに松本清張の作品を読んでみました。

本著は『天城越え』を含む7編による短編集。「天城越え」はその中では短い方なのだけど、どの作品も、描写がすばらしく、著者も書込むことにより筆が乗って来るという感じで惹き込まれるだけに、長い作品ほど満足度が高くなるので、読了後もっと続きが読みたいと思ってしまう。また、あらためて驚いたのは、全作品が自分が生まれる前に書かれたものだったこと。昭和33〜34年に書かれたものなのに、この現代性は驚嘆するしかありません。まだ東京オリンピックも始まっておらず、新幹線ひかりも走っていないなんて。

また近日中に、清張作品を読まずにはいられないと思う。


【目 次】
「遭難」
同じ会社の3人が鹿島槍の登山をするが、遭難して一人が死んでしまう。。。
「証言」
エリート銀行員は保身の為、殺人事件の偽証をする。。。
「天城越え」
少年は家出の途中、色っぽい女に出会い。。。
「寒流」
銀行支店長が上司である常務に愛人を奪われてしまう。。。
「凶器」
容疑者の家から凶器は発見できなかった。刑事は後日、凶器が何であったか気づいた。。
「紐」
島の神主が川べりで死体で発見された。被害者はある事業計画のため多額の借金を抱えていたが。。。
「坂道の家」
雑貨屋の店主が若いキャバレーの女性に手玉に取られてゆく。。。

【本の内容】
身の安全と出世を願う男の生活にさす暗い影。絶対に知られてはならない女関係。平凡な日常生活にひそむ深淵の恐ろしさを描く7編。新潮社: 改版版 (1971/10)



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by yomodalite | 2009-01-21 13:53 | 文学 | Trackback | Comments(0)

旧「読書日記と着物あれこれ」。歴史/文学/お笑いを好み、着物生活をしていたはずが、いつしかマイケルジャクソンのように本を読もうになってしまったブログ。永年暮らした東京を離れ、現在は大阪を満喫中。


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