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争うは本意ならねど/木村元彦

争うは本意ならねど ドーピング冤罪を晴らした我那覇和樹と彼を支えた人々の美らゴール

木村 元彦/集英社インターナショナル



木村元彦氏の本を1冊でも読んだことのある方なら、木村氏がめったにいない素晴らしいジャーナリストで、期待を裏切らない著者であることをご存知だと思います。

また、読書好きで知られる長谷部誠選手(日本代表キャプテン)も、本書を絶賛していました(勇気に感謝!)。

『争うは本意ならねど』というタイトルは、元サッカー日本代表・我那覇選手の言葉で、沖縄方言でもあるのだけど、多くの日本人のメンタリティに響く言葉だと思います。正当な理由もなく制裁を受けても、愛するサッカー、Jリーグ、そして、自らを貶めた人間に対しても、その罪を問うことを目的にしない.... そんなメンタリティに共感する日本人は多いでしょう。

また、素晴らしいプレイだけでなく、立派な人柄をもった我那覇選手の戦いには、多くの支援者が集まり、莫大な費用の寄付も、無償の好意も多く寄せられ、日本人の人情も捨てたものではないと思わされる部分も大いにありました。

でも、そんな立派な精神も、多くの人々の無私の行為によって得られた「結果」も、踏みにじられているという怒りが、著者の筆先から伝わって来るような本書は、我那覇選手のドーピング冤罪事件を知らなくても、サッカーに興味がなくても、スポーツを愛する人には、全員読んでもらいたいと思う本です。

その理由のひとつは、

◎ベストセラー『オシムの言葉』の著者が描く、我那覇ドーピング冤罪事件の真実!

上記インタヴューで、著者が語っているように「我那覇があのとき立ち上がらなければ、日本代表の南アW杯のベスト16も、なでしこのドイツW杯の優勝もなかったかもしれない」と言うように、我那覇選手が、自分の名誉のためだけでなく、多額の自己負担金(数千万!!!)を覚悟し、プロのサッカー選手としての将来への悪影響など、さまざまな葛藤を乗り越えて、立ち上がらなくてはならなかったのは、何故なのか?という理由を知ってもらいたいこと。

また、もうひとつは、

本書を、スポーツを愛していない人にも読んでもらいたいと思う理由なのですが、我那覇選手へのドーピング判定には、その当初から、我那覇選手を知る選手たちからも、Jリーグ各チームドクター全体からの強い反発があったにも関わらず、あまりにも杜撰な判定が覆されることなく、最後までミスを認めなかったのは、何故なのか?という理由について、著者が一歩踏み込んで「示唆」しているからです。

著者は、誰がどう見ても無罪の我那覇選手を、なぜ青木委員長(青木治人)はドーピング違反にしたのか?と問い、それは「意図的」で、故意にドーピング違反に仕立てられたのではないか?という疑惑を強めていく。

我那覇選手は、作為的なトラップによって、限りある選手生命を疲弊させ、何千万も投じて、日本の裁定機関でなく、海外の「CAS」にまで行かなくてはならなかった。。。我那覇選手の人徳とその判定へのあまりの理不尽に、支援の輪は拡大し、善意の資金も、無償で協力した大勢の有志にも恵まれ、正当な判定結果を得たものの、失ったものは大きく、覆った判定を真摯に報道したメディアも、間違った報道を謝罪したメディアもなく、青木委員長も、Jリーグも誤った判定で課した制裁金さえ、返金に応じようとしなかった。

◎CAS・スポーツ仲裁裁判所(ウィキペディア)

著者は、本書の終盤で、2007年のドーピングをめぐる事件とは「我那覇問題」ではなく、「青木問題」であり「鬼武問題」であり「川淵問題」であると言う。

川淵氏は日本サッカー協会名誉会長、鬼武氏はJリーグチェアマン、青木氏は、当時日本サッカー協会(JFA)スポーツ医学委員長と、Jリーグ・ドーピングコントロール委員長を兼任し、医科大学長を務める聖マリアンナ大学は、2007年アジア初のFIFAメディカルセンターに認定されていた。

権力をもつ者が、自分の思う通りの報道を流し、裁判さえ思う通りの結果が出ることに、驚くほど自信をもっているということは、川淵三郎、青木治人、鬼武健二といった、選手を食い物にしているサッカー関係者だけでなく、毎日の報道でも、すでにありふれた事態になっていますね。

著者は「エピローグ」の鬼武Jリーグ・チェアマン(当時)へのインタヴュー(川淵、青木両氏には断られた)で、鬼武氏から、こんな言葉を引き出しています。

ーーなぜ青木さんがここまで(JFAスポーツ医学委員会)委員長におられたんですか。わたしはそれが不思議なんですよ。こんな問題を起こしておいて、まだ2008年の9月ぐらいまでやられていましたよね。ほんと公正に、中立に書きたいものですから、青木先生にも取材を申し込んだんですよ。しかし、鬼武チェアマンのように逃げも隠れもせずに出てこられるのではなく、断られましたが(笑)。

鬼武 だから、それは時間の問題だったんじゃないですか。

ーー時間の問題でしたか(笑)

鬼武 だからタイミングというのがあったんじゃないですか。時間の問題というのは変な意味じゃないですよ。タイミングの問題があったんだろうと思いますよ。私の記憶ではそうですよ。

ーーこのCASの裁定後の、会長ご自身に対する処分は、譴責処分という処分だったと。

鬼武 うん。

ーーこれは、当時のJリーグ広報の方に聞いたんです。なぜチェアマンの処分がこんなに軽いものなのかと。で、当時の広報の方が言うには、これはお一人で決めたわけでなく、法務委員長の堀田力(ほったつとむ)とご相談されて決めたと。これは事実でよろしいでしょうか。

鬼武 いいです。

ーーご自身はどう思われました。この譴責処分について。

鬼武 (前文省略)でも私は堀田先生を信用していましたし、裁定委員長としてすばらしい人だ。過去もそれはすばらしい実績をお持ちの方だから。

ーー田中角栄を論告求刑で追い込んだ特捜部検事のね。



下記は、著者が「あとがき」で、我那覇と彼を支えてともに美らゴールを決めた人々のことを思って記したゲーテの言葉。

財産をなくしたら、また働けばよい。名誉を失ったら、挽回すればよい。しかし、勇気を失えば、生まれてきた価値がない 2011年11月 木村元彦

誰が見ても無罪で、優秀で、一途なサッカー選手を襲った悲劇。
もはや裁判では「正義」は争えない!

☆☆☆☆☆(満点)

☆参考サイト
◎ウエストコースト日日抄

☆『争うは本意ならねど』書評
◎ドーピング冤罪証明 元川崎F我那覇が負担した費用3500万円

☆本書の収益の一部は、CAS裁定費用を援助するために再度開設された
「ちんすこう募金」の一環として我那覇選手に送られるそうです。

◎『争うは本意ならねど』(アマゾン)

☆我那覇選手の自己負担金はまだ600万円余...
◎これまでの「ちんすこう募金」の報告

☆選手を食い物にする、ク☆ジジイたちの参考記事
◎Jリーグバブルを崩壊させ日本代表人気も絶惨破壊中の川淵三郎会長は
院政に向けて今日も元気です


◎[川淵三郎]Jリーグが非を認めないのは次期会長選のため
◎[青木治人]今さらながら我那覇ドーピング問題を考える(2007.9.6)



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ロッキード事件でアメリカの手先となり、その後の「売国=出世の道」というお手本の先頭に立って、絶大な権力を得ただけでなく、司法を私物化・腐敗させ、公益ではなく私益を目的とした「さわやか福祉財団」(おぇっーー!!!)の理事長として、国民の税金を交付金という形で高額な報酬を受けとり、復興推進委員会委員として、震災義援金をも懐に入れ、まだ足りないと増税まで主張する、ク☆ジジイたちの中でも最も「極悪人」のような気がする・・・堀田力(ほったつとむ)氏。

[内容紹介]2007年5月、サッカーJリーグ、川崎フロンターレ所属の我那覇和樹選手がドーピング禁止規程違反として6試合出場禁止、チームは罰金1000万円の制裁を受けた。風邪で発熱、脱水状態で治療を受けただけなのに……。そんな我那覇のもとに、一通の手紙が届いた──。

ベストセラー『オシムの言葉』の著者が4年にわたる取材を経て読者に贈る渾身のノンフィクション!自らの手で無罪を証明した我那覇和樹選手と、組織の枠を超えて彼を支えた人々の、勇気と友情の物語。 集英社インターナショナル (2011/12/15)


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by yomodalite | 2012-02-20 22:47 | スポーツ | Trackback | Comments(0)

オシムの言葉(集英社文庫)/木村元彦

オシムの言葉 増補改訂版 (文春文庫)

木村 元彦/文藝春秋



新しい日本代表監督に、ザッケローニが決まって10日余り。南アフリカW杯も、岡田監督のことも、すっかり過去のことになり想像していたより、ずっと早く、中村俊輔の笑顔も見ることができた。今なら、、、思う存分言える!

「オシムが好きだっ!!!!!」

オシムの名前が、キャプテン(笑)から、洩れ、その後、本当に代表監督になってしまったときは、複雑だった。年を取り過ぎているし、代表監督向きではないような気がしたし、ジェフの監督でなくなってしまうのも残念だった。

脳梗塞で倒れたときは、自分の祖父が危篤状態になったときのように心配し、多くのサッカー好きブロガーと同様に、わたしのブログの顔も「オシム」になった。


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その後「SAORI」に変更したけど、また、オシムにしようか、何度も迷っている。だってオシムの顔は毎日見たいし、オシムの言葉には毎日触れていたいし、このbotをフォローしている人のきもちも、すごく、よくわかる。

◎Ivica Osim Goroku
http://twitter.com/Osim_goroku


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ホントのオシムが、毎日、つぶやいてくれたら、どんなにいいだろう♡
(でも、オシムはそういうひとではないよね。。。)

本書は、今なお、中毒患者を増やしている、オシム語録を集めた本ではなくて、その背後にある物語ついて語られたもの。2005年に出版、08年には文庫にもなって、アマゾン評価でも122件もレヴューがあって、ほとんど5つ星。今更、紹介する必要なんてないと思う。


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ただただ、ずっと言いたくて仕方がなくて、もうガマンしなくてもいいのかもって思ったら、もう歯止めが利かない。それぐらい、

「オシムが好きで好きで、たまらないっ!!!」

ザッケローニのことを、好きだって言える日は、来るのかなぁ。まさか、イタリア人の監督が来るとは思わなかった。でも、永年、セリエAで監督をやっているイタリア人で、これほどオシャレに無頓着でいられるような人は、ただ者ではないのかもしれない(あまりいい意味ではないかも)。。。っていうか、これ、本の紹介じゃなくて、「ひとりごと」にすべきだったかなぁ。。

◎オシム監督語録(ジェフ市原・オフィシャルサイト)


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[目 次]
第1章 奇妙な挨拶
第2章 イタリアW杯での輝き
第3章 分断された祖国
第4章 サラエボ包囲戦
第5章 脱出、そして再会
第6章 イビツァを巡る旅
第7章 語録の助産夫
第8章 リスクを冒して攻める
第9章 「毎日、選手から学んでいる」
第10章 それでも日本サッカーのために


[BOOKデータベース]Jリーグ屈指の美しい攻撃サッカーはいかにして生まれたのか。ジェフ千葉を支えた名将が秀抜な語録と激動の半生から日本人に伝えるメッセージ。集英社インターナショナル (2005/12/5)

「リスクを冒して攻める。その方がいい人生だと思いませんか?」「君たちはプロだ。休むのは引退してからで十分だ」サッカー界のみならず、日本全土に影響を及ぼした言葉の数々。弱小チームを再生し、日本代表を率いた名将が、秀抜な語録と激動の半生から日本人に伝えるメッセージ。文庫化に際し、新たに書き下ろした追章を収録。ミズノスポーツライター賞最優秀賞受賞作。集英社文庫(2008/5/20)


[著者紹介]きむら・もとひこ (1962年—) ジャーナリスト。
愛知県生まれ。中央大学文学部卒業。アジア・東欧の民族問題を中心に取材・執筆活動を展開。『オシムの言葉』で2005年度ミズノスポーツライター賞最優秀賞受賞。


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by yomodalite | 2010-09-09 23:38 | スポーツ | Trackback | Comments(4)

旧「読書日記と着物あれこれ」。歴史/文学/お笑いを好み、着物生活をしていたはずが、いつしかマイケルジャクソンのように本を読もうになってしまったブログ。永年暮らした東京を離れ、現在は大阪を満喫中。


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