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ナンパを科学する/坂口菊恵

ナンパを科学する ヒトのふたつの性戦略

坂口 菊恵/東京書籍




こちらは、ダーリンが日経新聞の書評に惹かれて図書館から借りてきたもの。きっと、ナンパが成功しないのはどうしてなんだろう?と昔から疑問に思っていたに違いない。本を読んだところでナンパを成功させるのは無理なんですけど、一体どんなことを学ぼうとしているのか興味があったので、中味を覗いてみると、 「序章」は、“ナンパ・痴漢をどうやって研究するか”というタイトルなのですが、

著者は小学生高学年頃から頻繁にナンパに遭っていたらしく、非常に不快に感じていたが、大学に入った後、魅力的な女子でもナンパにあった経験はほとんどないという人が少なくないことや、また痴漢にはよく遭うが、ナンパはほとんどないなど、どういった要因が「標的」になるのか?が気になった。

(P13〜)本書の目的は、望まぬ性的アプローチの是非や社会的取り扱いのしかた、一般的解釈について議論しようとするものではない。(中略)どういう女性が性犯罪の被害にあいやすいかなどということを詮索するよりも、女性を人格を剥奪された性的な対象物として見なすような男性の視点を銃弾すべきだという主張がある。(中略)

(P15〜)それよりも、自分が性的な対象として見られる可能性があるということを認識させ、どのような状況がリスクを高めやすいのか客観的なデータを蓄積する方が即効性のある対処法だと思われる。(中略)
 
また、特に痴漢に関する議論をすると、痴漢被害などよりも痴漢冤罪の方がよっぽど大きな問題である、被害を訴えるような女性は潜在的な加害者もしくは狂言者である、という論調の人を決まって見かける。(中略)なぜ性犯罪もしくは望まぬ性的アプローチという現象が生じるかということには共通する根もあるだろうが、基本的に別の問題である。本書で取り上げられるのは、冤罪の方ではなくて、なぜそもそも一方が望まないのにもう片方が性的なアプローチをしようと望むようなことが起こるのか、またそうしたアプローチをする側は何を基準に相手を選択しているのか、選択の基準のアプローチの種類によって異なるのか、という問いに対する検討である。

できるだけ中略しても「本書の目的」が語られる箇所まで、ずいぶんと無駄に文章が長いんですが、、、下記が章タイトルのどうやっての部分↓

(P16)探求をはじめるにあたって、私は特定の時代の思想や学問伝統になるべく影響されない方法を取りたいと思った。一般的な人文社会科学の研究手法では、特定の主義主張に色つけされた社会的構成概念を理論構築のための基本用語として用いている場合が少なくない。これでは時代や社会が変わった場合に通用しないし、そもそももととなっている構成概念の妥当性が客観的に吟味されたものでない場合が多い。標準的な社会科学のモデルは人の行動に及ぼす人為的な文化の影響をとても重視するために、文化や環境による規定を越えた要因に関する検討をおこなうのは守備範囲を越えている。(中略)もっと普遍的な視点から人の社会行動を調べる方法があるのだろうか。

一つの方法として、(中略)人間行動学(ヒューマン・エソロジー)という分野がある。(中略)人の行動に関する進化的適応に関する探求を、心理学的手法を用いておこなう分野を進化心理学という。

進化心理学は仮説構成のよりどころとして進化生物学や行動生態学の知見を用いる点に特徴があるのであり、それ自体でまとまりのある、確率された研究手法を持っているわけではない、実際に用いられる研究手法は多くの場合、従来の社会心理学、認知心理学、近く心理学などの分野で培われたものの援用である。(中略)

本書では、人の性行動の多様性を説明する至近要因を、各種ホルモンの行動との関係を検討する内分泌行動学の知見を用いて検討している。(序章終了)

ふぅ〜。

本書に興味をもった人は、とりあえず書店で、この序章だけは全文読むことをお薦めします。目次だけ見て、面白いかも?と思われた方は、第1章を読むのも辛いし、読了後は金返せ!となる可能性が高いので、購入は慎重に。

この後も著者は、予期せぬ性的アプローチとして、常に「痴漢とナンパ」を同様に扱っている点で「どうかしている」としか思えないんですがw、

著者が経験したナンパ方法と、ナンパ者への不快感が研究の要因にも関わらず、ナンパ手法や成功要因など、国柄による違いや大きさよりも、「私は特定の時代の思想や学問伝統になるべく影響されない方法を取りたいと思った〜」など、テーマに対してそぐわないうえに、妙な本格嗜好の研究姿勢。そのせいなのか、著者がナンパにあいやすいという当初の疑問に、この研究で答えが出ている気がしない。

結論らしき点は、全体を通して非常に少ないのですが、第2章、第3章には、

・ナンパにあう女性は短期的配偶戦略の指向性が高い傾向にある
・短期的配偶戦略の指向性が高い人はセルフ・モニタリングの傾向が強い

というデータがあります。その他、データは色々あるのですが、どれも最初の疑問の答えに、遠いながらも少しは近づいているというよりは、あさっての方向を掘っている感じ。

ちなみに、サブタイトルの“ヒトのふたつの性戦略”とは、「短期的配偶行動」と「長期的配偶行動」のことなのですが、簡単に言うと「短期」の女性は、男性から資源をすぐ引出せ、予備の相手を確保し、男性は、パートナーの数と、手に入りやすい女性の判別。

「長期」の女性は投資する余裕と意志がある男性の判別ができ、親としての能力や遺伝子の質。男性は(知らずに)自分の子ども以外に投資させられないようにすること、たくさん子どもを産む女性の判別など。

また、セルフモニタリングとは、社会的文脈に応じた感情表出のコントロールが上手い人が高セルフモニターで、苦手な人が低セルフモニター。

序章を数行読んで、センスのない研究者だなぁ〜という感想が、読み進むとますます深まるという読書経験。データにはそのものには興味深い点もあるのだけど、まとめかたが下手。この内容なら、冒頭で著者の個人的体験を語らないほうが良かった。(著者の経験したナンパにはかなり特徴があるので)

これを、一般の読者にも読ませようとする日経新聞(もちろん出版社も)は、まるで、ジャンキーを清純派アイドルにして売ろうとする芸能プロダクションと同様の手法ですね。

☆☆(イタリア人にケンカ売るつもり?ナンパを粋に袖にしてこそ、大人の女なり!)

◎日経新聞(ナンパされまくりの著者の写真。短期的配偶戦略が高い?)
http://f.hatena.ne.jp/zoe1/20090524191551
_______________

目次
序章 ナンパ・痴漢をどうやって研究するか
1章 女性にスキがあるの?
2章 ふたつの性戦略
3章 ナンパ相手の選び方
4章 悪い男がモテるわけ
5章 芸能人は離婚が多い?
6章 環境に応答するホルモン
終章 配偶行動にはコミュニケーションが必要だ

【内容紹介】
美人がナンパにあいやすいとは限らない,どうして「だめんず」好きになってしまうのかなど,ヒトの恋愛・性行動にまつわるさまざまな疑問を,進化心理学の立場から,豊富な研究結果を用いて解き明かす一冊。 東京書籍 (2009/4/17)

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by yomodalite | 2009-08-10 21:30 | 科学・環境問題 | Trackback | Comments(0)

旧「読書日記と着物あれこれ」。歴史/文学/お笑いを好み、着物生活をしていたはずが、いつしかマイケルジャクソンのように本を読もうになってしまったブログ。永年暮らした東京を離れ、現在は大阪を満喫中。


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