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地政学の逆襲/ロバート・D・カプラン

地政学の逆襲 「影のCIA」が予測する覇権の世界地図

ロバート・D・カプラン/朝日新聞出版



タイトルにある「影のCIA」というのは、世界的大企業を顧客に持つ、米国の民間情報機関(インテリジェンス)かつ出版社である、ストラテジック・フォーカスティング(通称ストラトフォー)社のことで、著者はそこに所属する地政学のチーフ・アナリスト。

本書の目次には、小見出しもすべて記載されていて、それを見るだけで、興味深い本だということがわかる内容なんですが、序章には「なぜアラブの春はチュニジアから始まったか」について言及があり、

また、第一部では、現代の戦争から地理感覚が失われた理由を、ベルリンの壁が崩壊から語り、ポスト冷戦と、グローバリゼーションの関係、また、地政学の開祖といえる、マッキンダーの「ハートランド論」や、それを受け継ぎ発展させたスパイクマンの「リムランド論」や、といった地誌学の基本的な知識を交えての解説があります。

第二部で、現代の世界地図を、ヨーロッパ、ロシア、中国、インド・・といった現在の世界情勢の基本的な分析になっているので、この部分を最初に立ち読みするのがいいかもしれません。

本書には、日本がほとんど登場しないのですが、下記は少しだけ言及されている「第11章・大中華圏」から引用。

中国政府は、ゆくゆくは自国にいる数千人の脱北者を北朝鮮に送り込んで政治基盤を築き、そこを拠点として豆満江地域を経済的に支配する計画である。ここは中国、北朝鮮、極東ロシアが交わる地域であり、また日本の対岸に優れた港湾施設がある。

 中国が北朝鮮に期待しているのは、今より近代的なゴルバチョフ風の権威主義政権が誕生することだ。そうすればここを緩衝地帯として、韓国の中産階級主体の活力ある民主主義社会と距離を置くことができる。しかし北朝鮮の動向は、中国でさえ掌握でぎない。ベトナム、ドイツ、イエメンなど、過去数十年に存在した分断国家は、すべて続一に向かう力に屈した。だがいずれの場合も、統一は意図的なプロセスを通じて実現したのではなく、むしろ当事者の利益などおかまいなしに、荒々しい方法でいきなり実現したのである。
 
 中国は朝鮮再統一を恐れているが、最終的に統一は中国の有利にはたらくはずだ。統一後の大朝鮮は、韓国政府がおおむね支配し、その韓国にとって、中国は最大の貿易相手国である。再統一された朝鮮は民族主義的な国家となり、過去に朝鮮を支配、占領した隣国の中国と日本に根深い敵意を抱くだろう。
 
 だが朝鮮にとっては中国よりも、朝鮮半島を1910年から1945年まで占領していた日本への憎しみの方がずっと強い(また日本と韓国は、竹島の領有権をめぐって今も争っている)。そのうえ経済の牽引力は、日本より中国の方が強い。再統一後の朝鮮は中国寄りにシフトし、日本からは遠ざかるため、アメリカ軍の駐留を認めるべき理由がほとんどなくなる。このことは、結果的に日本の再軍備を促すだろう。

いいかえれば、北東アジアにおけるアメリカ軍の地上兵力が縮小するなか、朝鮮半島は将来的に大中華圈にくみ込まれる可能性が高い。したがって中国は、中央アジアのハートランドに食い込みつつ、リムランド(東南アジアと朝鮮半島を含む)に対しても多大な影響力をもつだろう。

◎安全な陸の国境
 
 現時点での中国の陸の国境は、危険よりも機会に満ちあふれているように思われる。シカゴ大学の政治学者ジョン・J・ミアシャイマーも、著書『大国政治の悲劇』(奥山真司訳、五月書房)でこのことを指摘している。「国際システムにおける最も危険な国は、大規模な軍隊をもつ大陸国である」。だが中国は、この説明に完全にはあてはまらない。たしかに中国は拡大を続けるランドパワー国家であり、人民解放軍の陸軍は兵力160万人と、世界最大規模だ。しかし先にも述べたように、中国はインド亜大陸と朝鮮半島を除けば、競合諸国とぶつかり合っているのではなく、単に真空を埋めているだけなのだ。
 
 それに、人民解放軍の陸軍が十分な遠征能力をもつまでにはまだ何年もかかりそうだ。人民解放軍は2008年の四川大地震やチベット騒乱、2009年のウイグル騒乱、また2008年の北京才リンピックでの安全確保に対処しなくてはならなかった。だがアメリカ海軍分析センターのエイブラハム・デンマークによれば、こうした「地域横断機動演習」によって露呈したのは、人民解放軍が大陸中国の端から端まで部隊を移動させることはできても、軍事物資や重い装備品を迅速に移動させる能力がまだ不足しているということだ。人民解放軍が中国国境を越える状況として唯一考えられるのは、誤算が生じた場合である。・・・・

日本の政治本には飽きた、という方に。



ストラトフォーの創設者
ジョージ・フリードマンの動画



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by yomodalite | 2015-11-14 19:15 | 政治・外交 | Trackback | Comments(2)

戦争はなぜ必要か/トマス バーネット

戦争はなぜ必要か

トマス バーネット/講談社インターナショナル




「非対称戦争」という流行語を生み、911以降のペンタゴンで最も良く読まれた本らしい。原題はThe Pentagon's New Map(War and Peace in the Twenty-first Century)。

本書での「戦争」とは、限定的で普遍的な命題でのそれではなく、反グローバリズムに対する戦争は必要と言う主張のようです。学問的というより、業界人(軍隊とか軍事産業界)向けのような語り口と、しつこい繰り返し、自己中心的で尊大なリヴァイアサン思想に嫌気がさすものの、敵を知るという大いなる志をもっている方にはぜひ読んで頂きたいと思う。

参考記事「株式日記と経済展望」
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[出版社/著者からの内容紹介]戦争は“文明の衝突”を、むしろ回避させる!敵はイスラムではなく“断絶”——世界が二つに分断され、それが人類に不幸と危険をもたらしている今、真に戦うべき相手は“断絶”をさらに深めようとする一団だ。全米No.1ストラテジストによるこの革命的な地政戦略の書が、21世紀の戦争と平和のルールを克明に描く。

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by yomodalite | 2008-03-28 22:07 | 戦争・軍隊 | Trackback | Comments(0)

旧「読書日記と着物あれこれ」。歴史/文学/お笑いを好み、着物生活をしていたはずが、いつしかマイケルジャクソンのように本を読もうになってしまったブログ。永年暮らした東京を離れ、現在は大阪を満喫中。


by yomodalite