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木暮実千代さん第二弾!

以前こちらで書いたのですけど、実千代さまの魅力的なお姿をなかなか捕らえきれられず不満だったので、再度の挑戦。

木暮実千代さんのことが気になって仕方ないのは、彼女が全盛期に、その魅力を本当に理解していた創作者が居なかったんじゃないかと思うからです。女優として大成功されているのですが、それでも「早過ぎた個性」だったんじゃないかと。。。



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ウィキペディアの出演映画作品中、1948年の黒澤明『酔いどれ天使』、1949年今井正『青い山脈』、1950年溝口健二『雪夫人絵図』、1951年吉村公三郎『源氏物語』、1952年小津安二郎『お茶漬けの味』を観ましたが、ヴァンプ役、芸者、十二単のコスチュームプレイも、ちゃぶ台も、やっぱり「木暮実千代」を捉えきれていないように思います。

木暮実千代は、当時はほとんどいない大学出身の女優で、女子学生といえばセーラー服の娘しかイメージできない時代にあって、娘にしては大人っぽく、顔の雰囲気は上流婦人なんだけど、それにしては、普段の態度がサバサバしていて男っぽい。進んでいる感じなんだけど、妖婦には上品過ぎる。キモノが似合うんだけど、江戸と繋がっているところがなくて、芸者でもない。。。

当時あっさりと、たった1人で、現代女性だった実千代さまは、男に頼ってもいないけど、特に1人で生きようとも思っていない。。。

プロフェッショナルな方なので、それぞれ評判のいい演技をされているのですが、作品と本人が一体となるような、女優「木暮実千代」のイメージを決定づける「形」にはなっていないように思います。それは、本人のキャラが時代が認知している役柄にないからだと思うんです。



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着物への興味から1940〜60年代の映画を観るようになったのですが、この頃の映画をものすごく大ざっぱに言うと、

これでもかというぐらい首元をつめた着物に、ヒステリックともいえる貞操観念の若い女と、帝大出身の男を中心に、脇役は男の場合は職人、女の場合は芸者や女将といった男社会で働く女で構成されています。着物の衿を抜いて着ているような女は、ネクタイを締めた男とは結婚できないというファッションのルールがものすごくハッキリしています。



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成功した男の妻になる女、妾になる女、馴染みの店を仕切る女や、家の中を仕切る女中から実母まで、1人の男に必要な女の数は、かなり多くて、1人の女の中に色々な顔が
あるとは考えないんですね。


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共演している杉村春子は元妾の役なんですが、杉村春子は、この時代、本当に様々な監督から必要とされていますが、どの監督からも同じような役を求められている。

それは一言で言うと、仕事をもった女の役で、そういう女は、きっと男の仕事を理解してくれるはず。という期待があるようです。

それがどのように反映されるかというと、

昔観て驚いた映画のひとつに、小津安二郎の『浮草』(1960)という作品があるのですが、そこでは、旅芸人の中村鴈治郎の妾が杉村春子で、本妻が京マチ子!



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杉村春子は確か小間物屋をやっていて、その息子は大学生(もしくは予備軍)になっている。京マチ子はキレイで一座の看板女優ですから、華もある美女なのに、徹底的に地味で、所帯染みた杉村春子の妾に嫉妬するという、今ならそれって、フェミニズム?と勘違いしてしまいそうですけど、そうではなくて、おそらくこれは当時の男の夢なんですね。



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逆に言うと、結婚すべきような女には、男の仕事を理解するなんてことは、あってはいけないというか、それは美人にはして欲しくない。現代からは想像つきませんが、杉村春子が男の夢の女であったのは、たぶん、そういうことだと思います。



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で、木暮実千代さんはと言えば、美人女優に違いないのですけど、着物は着物で、それが一番キレイに見える着方で着ていますし、洋装姿はもっと美しく、ファッションだけでなく、表情や、媚態も今見ても古びてないというか、時代的なところがなくて、むしろ今風。

よくある女優のプライドのようなところからも自由で、その後のテレビやCM出演(女優のCM第一号)など、映画全盛期以降の方が、生き生きと見えるのは、そのせいなのかもしれません。



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大女優には、名監督とのコンビというのがつきもので、田中絹代と溝口健二、原節子と小津安二郎、高峰秀子には松山善三、木下恵介、成瀬巳喜男、乙羽信子と新藤兼人、若尾文子と増村保造など、職場恋愛、結婚が多いのですけど、木暮実千代さんには、監督や共演者とも男女の仲になった気配が感じられないんですよね。

実際に彼女は女優になってから、従兄弟と結婚していて(コメント欄参照)、そんな所も女優としてはめずらしいのですが、有名になる前も後も変わっていないからなんじゃないでしょうか。



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とにかく型にはまっていないので、ウィキペディアにある「ヴァンプ女優として有名」いうのも、たまたま記述者が観た作品のイメージでしかなくて、木暮さんを撮った監督たちの様々な要求をこなし、美人女優としては、かなり幅の広い役柄を演じられています。



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この映画では、太田夫人と呼ばれる木暮実千代が、第一妾で、杉村春子が第二妾というか、、木暮実千代によって、杉村春子は永く努めた旦那から捨てられたという過去があり、木暮実千代の美しさと、杉村春子の怖さが爆発していて、この時代の映画としては、めずらしく退屈しないストーリー。



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純粋に愛に生きる太田夫人(木暮実千代)は、旦那の死を受け入れられず、その息子に面影を発見し、息子(森雅之)への愛に燃え上がる。それを放っておけないのは、かつて、太田夫人に男を取られ、現在は茶道の師範として生きる栗本ちか子(杉村春子)。捨てられた後も、現在はその息子が住む家に頻繁に出入りし、息子のお見合いをも画策する栗本には、太田夫人の息子への想いだけは絶対に許せないーー。

実千代さまの役柄は、古い女のタイプですけど当時の美しさがよく撮れています。木暮実千代さんに関しては、まだまだ追いかけたいと思います。


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『千羽鶴』goo映画
http://movie.goo.ne.jp/movies/PMVWKPD23567/

制作/1953年
監督/吉村公三郎
原作/川端康成
脚本/新藤兼人

《キャスト》
太田夫人:木暮実千代
太田文子:乙羽信子
栗本ちか子:杉村春子
三谷菊治:森雅之
三谷浩造:清水将夫
稲村ゆき子:木村三津子
婆やとよ:英百合子

【あらすじ】★ネタバレあり★(goo映画より)

三谷菊治は亡き父浩造の愛人、お茶の師匠ちか子の茶会で稲村ゆき子と見合いをしたが、席上、これも父の愛人の太田夫人とその娘文子に会った。童女のような心情の持主太田夫人は、忘れ得ぬ浩造の面かげを菊治に見出して、彼に傾く心をどうする事もできない。菊治を軽井沢の別荘に招いた一夜、ついにその胸へ身をなげた。太田夫人を憎むちか子はゆき子と菊治の仲を急速に進めることで、彼女を苦しめようとするが、若い二人の節度は崩れない。一方、ともすれば菊治の許へ走ろうとする母を押さえているのは、これも節度を知るけなげな娘文子だった。菊治は稲村家を訪問し、いよいよ縁談も定まりかけた矢先、ちか子の術策から惑乱に陥った太田夫人は、三谷家茶室での菊治との出会を最後に、毒をあおってしまった。一人残された文子に同情したゆき子は、菊治に彼女との結婚を勧め、自分は身を退いたが、その文子もまた、菊治への抑えに抑えた思慕を断って、さびしく去ってゆくのだった。

※1969年に増村×若尾コンビ20作目としてリメイク。脚本:新藤兼人 
出演:平幹二朗/若尾文子/京マチ子/船越英二/北林谷栄



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by yomodalite | 2009-06-22 19:37 | 美男・美女 | Trackback | Comments(8)

旧「読書日記と着物あれこれ」。歴史/文学/お笑いを好み、着物生活をしていたはずが、いつしかマイケルジャクソンのように本を読もうになってしまったブログ。永年暮らした東京を離れ、現在は大阪を満喫中。


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