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久しぶりの「座頭市」。そういえば、プリンスも、勝新に座頭市としてビデオ出演のオファーをしていたとか・・・

1974年から始まったTVシリーズとしては一番古い『座頭市物語』では、勝新が監督した回は6本あるのですが、今回紹介する『心中あいや節』は、その6本目の作品で、当時自分の付き人だった松平健をデビューさせた作品。

映像と音、その両方を先鋭的に追及した勝新ですが、三味線に関しては、彼自身が名手ということもあるので、瞽女を主役にした監督作品は特に見逃せないんですよね!

* * *

はなれ瞽女おさわ(浅丘ルリ子)は、手引き役の若い娘(吉沢京子)と二人で雪国を旅する道中で、市に出会う。

三味線と歌で諸国を遍歴する盲目の女芸人を瞽女(ごぜ)といい、彼女たちにとって恋はタブーであり、掟を破った瞽女は仲間はずれにされ、“はなれ瞽女”となる。おさわが、“はなれ瞽女”になったのは、彼女たちを仕切る瞽女宿の息子・佐八(松平健)が、彼女を見初めてしまったから。


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妻子を捨てて、おさわの後を追う佐八を連れ戻すため、父である瞽女宿の主人(加藤嘉)は、おさわ殺しを、生首の加平次(石橋蓮司)に依頼する・・・


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白く透き通る女の肌と、零れ落ちる涙、
人の心の純粋さと、邪悪さが、雪と風と涙と氷柱になって、刀が舞う。



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白い雪に赤い血というコントラストはよく使われているけど、この作品では「透明感」をもっとも重視していて、「赤」が意識的に使われていない。



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それと同じく、自ら汚れを背負っていると感じている座頭市自身もこの作品では一歩引いた存在になっていて、そういったところも勝新自身が監督でなければ、できなかった作品でしょう。



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そんな勝新の映像へのこだわり具合からか、このあとの「新・座頭市」シリーズの傑作『折れた杖』の原点と感じられる部分もありますが、ここで心中できなかった女を描いたともいえる『雪の別れ路』の習作という方が近いかな。



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このシリーズは、毎回の豪華キャストに加え、音楽を冨田勲が担当していて、座頭市のJehovah(唯一神)とも言える「おてんとさん」が主題歌になっている。

1966年『交響詩 ジャングル大帝』、1969年から『新日本紀行』のテーマ音楽を担当していた冨田勲は、1974年、シンセサイザー音楽作品としてのデビュー・アルバム『月の光』を制作して、初めてグラミー賞にノミネートされ、コッポラも『地獄の黙示録』(1979年公開)で音楽を依頼しようとしている頃、勝新も初のTVシリーズの座頭市の音楽を冨田勲に依頼していたんですね。

『心中あいや節』では、「おてんとさん」は流れず、勝新自身の音のセンスが際立つ作品なんですが・・・



おてんとさん(作曲:冨田勲)




歌詞「おてんとさん」(作詞 麻里あさみ)




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by yomodalite | 2016-06-20 12:02 | 映画・マンガ・TV | Trackback | Comments(0)
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とうとう、こんなものまで。。

定価よりも大分高い金額だったけど、どうしても勝新が欲しい!
そんな夜に、ついポチってしまったのだけど、


買ってよかったぁーーー。


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素晴らし過ぎる帯コピー!!と寸分も違わない内容ww

酒も薬も愛もお金も... 勝新のデンジャラスな魅力と、

勝新を愛さずにはいられない人々の愛がいっぱい詰まってて、

とにかく、ラブリー!


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この絵は特殊マンガ家、根本敬氏の絵ではなくて、、
勝新が突然入れられた “別荘” で描いた「仏陀が見えた部屋」

このあと、デニス・ホッパーによる序文「宇宙船因果号の邂逅」があり、勝新ディナーショーの魅力を語りつくした、横山剣(クレージーケンバンド)による「モミアゲハンサムワールド」や、


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漫画家やまだないと氏による絵と文「ろくでなしの男」、勝新フィギュアの制作者である高杉涼氏の談話、また、かつての「オリーブ少女」にはたまらない仲瀬朝子氏による『悪名』シリーズはかわいいなどの素敵な文章に、勝新映画のビジュアルが盛りだくさん!



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ページを押さえるのは、煙管か、煙草入れか、白飯のおにぎりにしたかったんだけど
本が分厚かったので、家になぜかいっぱい転がってる空き瓶を使いましたw



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表紙にも使われてる、この写真は『喧嘩屋一代・どでかい奴』
モミアゲの小デブ感と墨流しのネクタイ... たまらんっ



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『駿河遊侠伝・賭場荒し』


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『座頭市血笑旅』この作品はまだ観ていないなぁ....



ビジュアルは、映画作品だけでなく、勝新が発売したレコード、勝新が撮影した写真集など、多岐にわたっていて、まさに「図鑑」!


そして、極め付きのレヴューは、吉田豪氏による、タレント本山脈に燦然と輝く勝新伝説

タレントが書いた本に登場する勝新エピソードが13冊分紹介されていて、どれも面白い。勝新自身の対談集『泥水のみのみ浮き沈み』は絶対に手に入れなくちゃ。。

最後に、

幻の名盤解放同盟のおふたり、特殊漫画家・根本敬氏と音楽評論家・湯浅学氏による対談「勝新太郎が目指した世界」より、省略して紹介します。

湯浅:俺が勝さんを意識したのは、やっぱりアヘン事件だな。俺が大学生のときだった。

根本:勝さんが知らないような法律、作る方が悪い(笑)。

湯浅:そうだよな(笑)

根本:俺の友だちがテレビで「マイウェイ」を歌う勝新を見て、それを口で説明された瞬間に、今までごっちゃになってたいろんな勝新太郎がーーアヘン事件も含めて、小学校の頃にテレビの年末特集で観た「悪いんだけど、いい人」という座頭市像もーーものすごい勢いで集約された(笑)。

湯浅:シド・ヴィシャスより勝新の方がパンクだよ。

根本:内田裕也さんが’79年に武道館でやった「ロックンロールBAKA」じゃ、20分「マイウェイ」を歌ったんだってね。

湯浅:客席に降りて、客と握手して。そのときは途中からロックに変わった(笑)。

根本:80年代は「マイウェイ」の最後がディスコになるんだよ。

湯浅:90年代は「ボレロ」になる

根本:時代を反映して、アレンジが少しが変化していく。

湯浅:歌だと、一応演技じゃないじゃん。自分の仲にあるものをどんどん出していけるからさ、どんどん煙くなっていくわけ、勝さんの周りが。その「煙」をみんなが吸うから。

根本:ジミ・ヘンドリックスじゃないけど正に「紫の煙」だよね。

湯浅:そういうでかいスケールで聴ける歌手って、いないでしょ。英語で言うとサイケデリック。本来は精神を拡張することだから。そういう意味で勝新太郎はすごくサイケはわけ。

湯浅 美の立った世界でも通用するようなことをしておきながら、わりと場当たり的なデタラメな世界で生き続けていっても、全体を見ると「勝新太郎という世界」に統一されているかのように俺らに思わせる力があるんだ。だってさ、『警視-K』(80)って、普通、企画の段階でうまくいきっこないことが分かるじゃない。

湯浅 無理あるよね。事件そのものがよく分からなくなっちゃうんだもん、途中で。

また、『警視K』はリアリティを追求するあまり、自然にしゃべった音声が聞き辛いという苦情がテレビ局に殺到したという。役者・勝新太郎の遺作となった黒木和雄監督作品『浪人街』(90)においても、勝さんの台詞だけすごく聴き取り辛くなっている。

湯浅 晩年の勝さんは「空間のノイズ」を気にしていたんだよね。物が伝わるのって耳だけの問題だけじゃないから。その場の空気をリアルに描こうとすると、どうしてもそうなっちゃう。

根本 皮肉なことに、勝さんが下咽頭がんに侵されたことにより、実生活でもどんどんどん声が枯れて、ファズがかかり、聴き取りにくなり、俺らも「絶対聴き逃しちゃいけない」と緊張するようになった。

でも、これってすごい重要なことでさ。中村玉緒さんと最初で最後の舞台となった『夫婦善哉 東男京女J(96)なんて、大阪公演は勝さんの歌う劇中のジャズソングが2曲だったのに、その後の横浜では3曲になっていたの。楽屋へ行ったらさ、「痛いから余計に歌った」という。治療だったんだ。と同時に「哲学」ともいえるが。

湯浅 あの舞台のときはしゃべってるっていう感じじゃないね、もう。全体に歌ってるみたいになっていた。

根本 その前の『不知火検校』(94)の舞台のビデオをでっかい音で再生してみると、一番最後に勝新が見えない神に断罪されるシーンなんだけど、「俺のことを人非人と言ったな。人でなしと言ったな」という台詞の「俺」の「お」っていう声が出る前に、意識してないとます聴こえない音が聞こえるんだよ。振動が。あれが大事なんだよ。

湯浅 おそらく三味線の弦鳴りみたいのものなんだよ。しゃべる前にアタックの音がある。たとえば、「か」だと、普通は「Ka」と発音するだけなんだけど、勝さんの場合は「K」の前に音がいっぱいある。「か」の原型みたいな音を、いちいち言葉の頭にもお尻にもどんどん付けていく。母音の中にまた母音があるような構造。それでセリフの中に音がいっぱい入ってくるからさ、舞台がどんどんどんどん延びちゃう(笑)。

根本 勝新太郎はそういう形で完成されていこうとしていたんだよ。

湯浅 入院する2年前ぐらいだっけ。「『不知火検校』(60)をもう1回映画にするから、アイデア出せ」って呼ばれて行ったんだけど。勝さんは脳の中にあるイメージを画像化する研究所へ何回か行ってて。「それを映画に使いたい」っておっしゃってた。そういう素粒子みたいな世界にもう入ってたんだよね。

根本 だから、「この空気の中に電気菩薩みたいなのがいるんだよ」(根本敬著『電気菩薩 豚小屋発 犬小屋行きの因果宇宙オデッセイム)って発言も出てくるんだよ(笑)。


(引用終了)


ブルース・リーよりも前に海を渡ったアジア発の最初のヒーロー「座頭市」その魅力にとりつかれた人はワールドワイドなためか、本書の文章は、すべて英語が併記されているので、楽しい英語学習本としての価値も高いのですが、

勝新は、一度その味を知ってしまったら、もうそれなしでは生きられないような劇薬なので、服用には充分にご注意ください。

すでに依存症であるわたしは、今、勝新の音楽ものが欲しくてたまらず、あちこち徘徊してしまいそうです。


◎[Amazon]勝新図鑑―絵になる男・勝新太郎のすべて


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◎[関連記事??]【悲報】ワンピース休載の原因はやはり勝新だった


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by yomodalite | 2013-05-21 09:47 | 現代文化・音楽・訳詞 | Trackback | Comments(0)

ポップ中毒者の手記(約10年分) (河出文庫)

川勝正幸/河出書房新社



3ヶ月前に On Sundays で購入して、寝る前にときどき思い出しては、ほんの少しづつ読んでいた本。

私は、川勝氏が活躍した雑誌を熱心に読んでいたわけでもなく、特別に興味をもっていたわけでもありませんが、2012年に氏が亡くなったとき「雑誌は死んだ」と思いました。もちろん、まだ多くの雑誌が刊行されてはいますが、川勝氏のように、自らの魂を燃え尽くすような仕事をし、その時代の文化に大きな影響を与えられるような「雑誌の時代」は終わったのではないでしょうか。

それと同じように、

野沢尚氏が亡くなったときに、TVドラマは死を迎え、
マイケル・ジャクソンが亡くなったときに、音楽産業は死んだのだと思います。

それは見方を変えれば「業界に殺された」と言えるのかもしれません。

しかしながら、その業界に命を賭け、中心にいたようなひとの死に対し「誰かに殺された」というような被害者観で語られるのは、故人の名誉に相応しいとは思えません。

生きる場所は、それぞれが戦場で、その最前線で、大勢を引っ張っている人間に、
自らそこから去ることができるでしょうか。


1996年に出版された『ポップ中毒者の手記』が、2013年に文庫で再販されるというのは、同じ戦場にいた人々なら羨ましいような、素晴らしい供養のように思えます。

人生の勝利は、その長さでも、死に方でも、
もちろん裁判の結果などで左右されることではなく、

同じ戦場を生きた人々に遺したもので、決まるのではないでしょうか。


偉大なライター、川勝氏の10年分が詰まった本書は、サブカルチャーの目利きとして、大勢の素敵な人々が紹介されているだけでなく、それらすべての人々に愛情をもって接してこられたことが感じられ、どこを紹介しようか迷ってしまいますが、

自ら選んだベスト仕事40選に2回登場したデニス・ホッパー、そして勝新(川勝氏は『勝新図鑑 絵になる男・勝新太郎のすべて』という本も編集されている)も登場する「問題オヤジ研究」から、少しだけ。

(引用開始)

やはり、問題オヤジは問題オヤジを呼ぶ。1994年2月。ロジェ・バディム、勝新太郎、デニス・ホッパー。超ヘヴィ級の問題映画監督トリオが全員集合。ご存知、ゆうばりファンタの審査委員として呼ばれて、コカインの、もとい雪の降る町で意気投合。が、その後、東京で3人が密談していたことは公にされていない。

現代日本の、問題オヤジに対する認識の成熟

2月24日の朝。新聞を見てビックリー『フォーカス』(3月2日号)の広告の見出しに、「アブないオッサン、大集合!!映画祭審査委員の勝訴、ホッパー、ヴァディム」とあるではないか。僕は『ゆうばり国際冒険・ファンタスティック映画祭94』(以下ゆうばりファンタ)のヤング・ファンタスティック・グランプリ部門の審査委員として彼らが呼ばれていたことは事前に知っていたが、新潮社の大人向け雑誌にいきなり現われた「アブないオッサン、大集合!!」という切り口。現代日本の問題オヤジに対する認識の成熟ぶりにニンマリしたのであった。

記事自体もクスリとオンナの2点に的を絞った「分かってらっしゃる内容」で、まず、勝訴が開会式で「雪を見ると昔を思い出す。鼻いっぱい吸い込んで、ハイになっちゃう、ゆうばりはそんな気分にさせる……」とかましたら、ホッパーがその場で彼を抱擁したというエピソードを枕に、二人のヤク中対決話あって……。
 
さらにホッパーが5年前の初来日の時には30歳以下の四度目の妻と来たが、今回は25歳の女優の卵といっしょだったというフリの後で、ヴァディムの華麗なるラヴラヴ歴ーー19のブリジット・バルドーと結婚/離婚し、16のカトリーヌ・ドヌーブと出会い正式な結婚はしていないが子供がいて、27のジェーン・フォンダと結婚/離婚し、3人を自分の映画に出演させていい女に変身させ、現在は五度目の妻である女優のマリー=クリスティーヌ・バローと結婚中と紹介。二人のプレイボーイ度を比較するツボを押さえた問題オヤジ研究ぶりなのであった。
 
しかし、勝新とホッパーは名うての映画バカで、それゆえに地獄を見た男たち。ヴァディムも『バーバレラ』(67年)をはじめ、セックスやエロティシズムをポジティヴに描いた作品が多いのは、「ナチスによるフランス占領時代の体験の反動から生まれた、社会や人間のダーク・サイドを映画に持ち込まない姿勢によるものだ」と自らコメントしている男である。夕張シティの雪に閉ざされた5DAYSで、3人は映画、そして人生についてディープな話をバリバリしていたのではないだろうか。

地獄を見た2人は、エンターテインメント派

という次第で、「ゆうばりファンタ」のチーフ・プロデューサー小松沢陽一さんに、ご当地でのトリオの様子を伺った。

ーーそもそも、なぜこの濃ゆい3人が審査員に?! 狙い、だったんですか(笑)。

小松沢 はじめは座頭市対スーパーマン(笑)というコンセプトだったの。ところが、クリストファー・リーヴが急にNGになって、ホッパーになったという。

ーーひょうたんから夕張メロン、ですね。

小松沢(笑)結果オーライ。ゆうばりファンタは若い才能を発見する場なんだけど、5周年目なんで、ヴァディムや勝さんといった娯楽映画の大先輩を迎えて、敬意を表したかったんです。勝さんに審査委員のお願いに行ったら、いきなり「俺が審査委員長か」と言われて冷や汗をかきましたが(笑)。『レザボア・ドッグス』が賞(93年ヤング・ファンタスティック・グランプリ部門批評家賞)を取った映画祭というので、即ノー・ギャラで出席を快諾してくれたのがうれしかったな。

ーー勝さんが、クエンティン・タランティーノのファン?!

小松沢 そう。ホッパーがゆうばり行きを決めたのもタランティーノが電話でプッシュしたせいだし。

ーー奴は勧誘員なのか(笑)。

小松沢 「自主的」なね(笑)。

ーーやはり、審査会はモメましたか?・

小松沢 それが、勝さんとホッパーの地獄を見て今は丸くなった二人組はエンターテインメント系を押すんだ。ところが、これから上り調子のホウ・シャオシェン(『悲憤城市』などで有名な台湾の映画監督)はアヴァンギャルドな映画のほうを評価する。この違いが面白かったなあ。

ーーええ話や(笑)。ところで、川島なお美が自分のヌード写真集を配った話は?

小松沢 ホッパーは恋人の前で「ナイスバディ」と感想を言ってツネられてたよ。

オヤジ・ギャグの応酬で、東京の夜は更けて

さて、2月23日。ゴキゲンで北海道から帰って来たホッパーと僕たちは浅草の米久でスキヤキを食べた。「僕たち」というのは、89年、デニス・ホッパーの映画祭を手作りした同志たちのことである。そこで披から衝撃の事実を知らされた。なんと「明日、ミスター勝からディナーに招待されている」というではないか! もちろん、[ヴァディムさんも一緒に」だ。

嗚呼、3人のプライヴェートな会話が聴けるなら、死んでもいい〜。
 
僕は勝さんが一席設けた飯倉の老舗のイタリア・レストランCに盗聴マイクを仕掛けようかと思ったが、幸いなことに同志・谷川健司君(映画ジャーナリスト)が通訳として同席するというので『ラジオライフ』のページを閉じることにした。
 
以下、私的な集まりでのことを活字化するのは失礼なこととは知りつつ、ホッパー自身も帰りの成田で「むっちゃ楽しかったで」と言っていたし、問題オヤジ研究史上、いや映画史上またとない場における貴重な会話ということで、ここに公にすることを笑って許していただきたい。

ーーまず、今世紀に二度とない惑星直列ばりの現場にいた感想からお願いします。

谷川 とにかく、勝さんの気配りに感勤しました。まず、ラス・ヴェガスでの英語の失敗談でみんなを和ますんですよ。「ディーラーの女性が『アー・ユー・レディ?』と言ったんで、俺は『アイム・ジェントルマン』と言った」とか(笑)。

ーー(笑)二人とも黙ってないでしょう。

谷川 そう。いつしか筆下ろしの話になってね。ヴァディムが「俺は16の時に浜辺の小屋で年上の女性に童貞を切ってもらったんだ。ところが、射精した後に、地震が起こって。こりゃ、神様が怒っているとビビって、ドアを開けたら、戦車がドカドカやって来る。ノルマンディー上陸の日だったんだ」と口火を切って。

ーーう〜ん。相当、練られた話ですなあ。

谷川 そしたら、勝さんが「俺は14の時かな。日光でことが終わったら、いつの問にか太平洋戦争も終わってた」って返して。ヴァディムがデニスを「お前は俺だちより若いから戦争中は毛が生えてなかったろう」とからかったら、「いや、俺は6歳の時に……」 って言いかけて。

ーー「コラコラ」となった、と。ヴァディムが66、勝さんが63、ホッパーが58ですからね。それにデニスはヴァディムに頭が上がらない。ヴァディムがホッパーとマブダチの、ピーター・フォンダのお姉さんと結婚してたわけだから。

谷川 デニスはヴァディムとジェーンの秘密にやった結婚式に出席してたんですよ。

ーージェームス・ディーンの話は出た?

谷川 うん。勝さんが「長唄の公演でアメリカに行った時、ロスの撮影スタジオでディーンに会ったのが、俳優になろうと思ったきっかけだった」とおっしゃってた。となると、『理由なき反抗』の時だから……。

ーーホッパーとすれ違っていたかもしれない。55年の話だから、勝さんが24、デニスが19だね。

谷川 それで、ホッパーが「先日、ワーナーのスタジオの近くに行く用事があったんで、『理由なき反抗』の頃にたむろしていたカフェをのぞいたら、昔のままでね。ディーンもナタリー・ウッドもサル・ミネオも死んで、生き残ったのは俺だけだとしみじみしたって、話をして。
 
ーー再び、ええ話や(泣)。この3人が出会えてよかった。ちなみに、デニスに勝さんが監督した『座頭市』(89年)のヴィデオを渡したので、次回、会った時はさらにツッコんだ話ができるはず。そして、勝新太郎とデニス・ホッパーの共演を妄想する僕であった。(P283ー289)


1990年、デニス・ホッパーの自宅の訪問記「崖っぷちを踊る男」の最後、川勝氏が、ホッパーの親切に平身低頭してお礼を言うと、ホッパーが、

「日本で君たちにしてもらったことは… 返そうとしても返しようのない体験だった。あんなによくしてもらったことは生涯初めてだった。マサ(川勝氏のこと)。君の世話はAMAGINGだったよ」

僕はうれしかったが、半面、困った。日本での恩返しをここで独り占めしたら、他の同志たちに嫉妬で殺されるに決まっている! 居心地が悪いのでフォローに出た。

「僕はたまたまフリーで時間の都合がつくので、会計係としてお供し、英語ができないので荷物運びをやって目立っただけです。あなたのお礼を、日本のスタッフみんなや、舞台挨拶を観るために劇場前に長い長い行列をつくってくれたファンの人たちに、どうして伝えようかと悩んでいます」

「君はNOTHING SELFISHだ。ブッダみたいな男だ」

まいった。泣いてしまった。ブッダマンとまで言われちゃ、もう取材どころではない。(P271)

書き起していて、私も泣きました。。

◎[参考記事]町山智浩が涙して語る『故・川勝正幸ってどんな人?』

本書の目次

まえがき
日本語のアカすり職人たち
街と人が音楽を作る
世界同時渋谷化
リメイク・リモデル、または若いのに巧い人々
パリのアメリカかぶれ
趣味の良いバッド・テイスト
問題オヤジ研究
臭いモノのフタを取る人
文科系男の性的ファンタジー
音楽極道のシノギ
ロック少年の老後
謝辞
インタヴュー:小泉今日子
著者略歴改め「川勝仕事ベスト40」(自選)
インデックス

◎[Amazon]ポップ中毒者の手記(約10年分)河出文庫


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by yomodalite | 2013-05-15 10:35 | 現代文化・音楽・訳詞 | Trackback | Comments(0)
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今回の引越しをきっかけに、資料関係の整理もしまくった。雑誌に関しては、書籍よりも迷うことが多くて、この部分だけ切り抜いておくべきかと迷ったり、残しておいた目的が文章ではない場合が多いので、目次からは判断できないことも多い。

1995年7月の『SWITCH』は、ハーヴェイ・カイテルが表紙の地味さから、中身を見ずに処分しかけたのだけど、ペラペラしてみたら、日本一カッコいい写真家・操上和美氏による「勝新」が現れて驚いた。

また、インタヴュアーは秋元康。彼が勝新を天才として語っていたエピソードはこのときのことだったんですね。

当時読んだ記憶はなかったのですが、今になって発見できるなんて、
これも「偶然完全」なんでしょうか。。



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(インタヴューは抜粋して引用しています)

俺は監督をやりだしてからものの見方が違ってきた。例えば、役だけを演じる場合は、自分と違う人生経験をしている監督の演出の目で、俺がキャメラに撮られていく。監督としてキャメラを覗く立場になってからは、自分が芝居していてもその自分をもう一人の自分の目で撒っている。と同時に、自分を自分の目で演出すると、偶然の芝居ってできないんだよ。みんな知ってるから。だからラッシユ見ててもつまんない。みんなわかっちゃってるから。

そういう意味では勝新太郎という監督も、勝新太郎という役者も不幸だ。いっぺんドキュメンタリー手法で勝新太郎の映画を撮ってみたい。いつ、偶然完全の間だとか、いつ偶然完全の失敗だとかが出るか、わからないだろ。ラッシュ見るとき、きっと面白い偶然完全がフィルムの中に納まっていくんじゃないかと思う。


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監督は役者にインタビューしなくては駄目だ。「こういうことになってきたけど君ならどうする」というインタビューをして、俳優、女優たちの個性を引き出していく。芝居の上手下手は二の次だ。俳優の捨て台詞を言っているところの表情を丁寧に撮らなくちゃいけない。テーマの台詞を、さりげなく捨て台詞のように撮らなくちゃいけない。映画ってえのは、誤解する演技をカットバックに使ったら、とってもいい効果が生まれる時があるんだよね。例えば、ポルノフィルムを見せてそれぞれの表情を映しておく。それをカットバックに使うんだが、実際は見るに堪えない、人間が人間を殺しているシーンとか。


北海道でデニス・ホッパーに会った時、俺が雪を見て「好きなだけ侍ってけよ」って目で言ったら、彼も雪を見て「サンキュー」って目で答えてくれた。言葉でなく目で話し合えることは嬉しいね。


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この間テレビ見てたら、100幾つのおじいさんが、「もう〜」という言葉を使う人が多いという話をしていた。「幾つですか」と凪ねると「もう70です」とね。彼は「まだ、100歳です」と答える。「もう」っていうのは牛の返事だ。そのおじいさんが喋る言葉というのは、今の渋谷、六本木の連中が喋ってる言葉じゃない。江戸時代の言葉なんだよね。


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今ちょっと作りたい作品は、偽物の勝新太郎の話。もしかしたら、ここに来てるのも偽物かもしれないっていう話さ。人の言うことに異を唱えない、使いやすい勝新太郎。その偽物の勝新太郎が売れていく話さ。本物の勝太郎が一日5万円もらうか、10万円もらうかわからないけど、場末の見せ物小屋や、旅館のショーなんかに出て物真似をする「偽物」として生きていく。

島倉千代子や三船敏郎、錦之助、高倉健の偽物が集まっている一座なんだ。で、その偽物連中に言われるんだ、「似てないね、勝新に」って。


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こんなストーリーも浮かんでるんだ。俺が東京から九州までカンガルーを運ばなくちやいけないって話。カンガルーをどうしても連れて行かなくてはいけないんだよ。それも人間扱いして。

そのカンガルーのお腹に国連が関与している大事な物が入ってるんだよ。それを知らずに俺はカンガルーを連れて九州まで行かなくてはいけない。しかも新幹線で。
 
で、カンガルーが何だか知らないけど、俺のこと好きになっちやってね。何かというと、俺をこう見つめてね。嫌なんだよ俺は、カンガルーが。そういうような企画もあるんだ。

飯田橋の警察病院で、頭から背広を掛けられ両手にタオルを掛けられて手錠を隠しエレベーターに乗って降りたところで、俺は背広とタオルを振り落として一般の患者の待合所を花道の出のように歩いていった。患者たちは、勝新だ、勝新だって騒いで嬉しそうに俺を見ている。手錠姿で歩いているところを一般の人たちに見せることしか、今の俺には楽しませることはできないんだから。その夜、俺は逮捕された。理由は病院の検査の結果、「お前の体が悪いからだ」。ああ、これは面白い台詞だな。おかげで今、こうして元気でいられるんだ。俺の人生経験で損をしたってことは、一回もない。


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黒澤さんのおかげで日本映画は世界にしらしめることができた。俺は尊敬してた。してた故に、本当にがっかりしちゃった。「俺はお前に負けないぞ、俺の作品だ」という態度が嫌になった。自分の演出のいいところを見せたいって言うんだけども、俺は武田信玄やってんだから。武田信玄と黒澤じゃあ、格が違うんだからさ。
 
俺ねえ、今だったらいい男に撮ってほしいの。女の人も俺も綺麗に撮ってもらいたい。今度やる映画はまさにそうであってほしいね。二人の勝新太郎のも。構想はすっかり練れてるんだよ、警視庁のシーンも拘置所に住んでた時の場面も。あの部屋に入ってくる風。拘置所のコックのおかげで俺の体は健康なんだ。

あっ、そうそう、看守でさ、俺のファンがいたんだよ。周りに人がいる時は、「コラーッ!坐ってろ、ここは楽をするところじゃないっ」って怒鳴ってた男が人がいなくなったら急に「すいません、今人がいたもんですから。あの、私、勝さんのファンで。ハッパなんて皆やってますよねえ」なんてさ。あいつに俺、祝儀やりたいんだよ。あの看守どうしたよ。探しといた? 探してない? お前、俺の言ったこと何もやってねえじゃねえか。あいつに祝儀上げたいんだよ。

(インタヴュー終了)

この上の写真で、手にしている煙草は「キャスター・マイルド」...

勝新も、渋澤龍彦、立川談志、そして清志郎も、咽頭がんで亡くなっているんだなぁ。喫煙してなければ・・・なんていいたいんじゃなくて、健康とか長生きを目的に生きてカッコいいわけないってこと。


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by yomodalite | 2013-05-08 19:31 | 評論・インタヴュー | Trackback | Comments(3)
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年末とか、お正月に観た映画から良かったものをちょっぴりメモ。HDに溜まっていた録画からなので、新作映画ではありませんが。。

『ノルウェイの森』

私はそんなに村上春樹のファンというわけではないので、映画化と聞いても「むつかしそうだなぁ」と思ったぐらいで、そんなに注目していたわけでもなく、公開後、いくつかのレヴューを目にしているうちに、ますます興味が薄くなっていたのですが・・とても見事な作品でした。

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そんなにファンではないといっても、村上作品は結構多く読んでいて、なかでも「ノルウェイの森」は、もっとも印象に残っている作品。でも、熱心なファンのひとのように、あの場面とか、あのセリフが、ということはなくて、ただ、主人公が、私の「初めての男」によく似ていて、登場人物に、自分が投影できる人物がいて、、それで、他の作品より印象に残っているんですね。

出演された俳優は、全員がこれ以上は考えられないほど、ベストな配役で、観る前は「どうなの?」という感じだった、菊地凛子は、登場した瞬間、彼女でよかった。と思うぐらい素晴らしく、主人公の松山ケンイチは「私の男」にそっくりで、、

わたしは、自分の「恋愛」のことをたくさん思い出して胸が熱くなりました。

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事前に情報を何も知らなかったのだけど、観終わった後、トラン・アン・ユンの脚本・監督だと知って納得。彼の『青いパパイヤの香り』は、その雰囲気が大好きで、めずらしく何度も観てしまった映画。まだ観ていない『夏至』も観てみなくちゃと思いました。

◎映画『ノルウェイの森』オフィシャルサイト



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「ハーブ&ドロシー」

現代アート界のアイドル。といっても作家ではなく、コレクターの老夫婦の話。

郵便局員のハーブと、図書館司書のドロシー、ふたりの楽しみは現代アートを買うこと。購入する作品を選ぶ基準は、自分たちのお給料で買える値段と、1LDKのアパートに収まるサイズであること。そして、彼らは購入した作品を決して売らない。。

30年の間、買い集めた作品は慎ましい部屋の隅々にまですき間もないぐらい詰め込まれ、ソファの置き場所もないぐらいになっていた。そして、ついに、アメリカ国立美術館が動く。これまで、どの美術館からの話も断ってきたふたりでしたが、、



ふたりが買ってきたアートは、いわゆるコンセプチュアルアートとか、ミニマルアートと呼ばれるようなもので、一般的に難解だとか、これが芸術だとは!と、批判されることが多い。

私は、美大出身だとわかったとたんに「どうしてピカソの絵はあんなに高いのか?」という質問をされた経験が何度もあるのだけど、そういう質問を「堂々とする」人は、私の経験では100%、K大の経済学部の人で、

たぶん日経新聞などで、オークションの記事を見て疑問に思ったのだと思うのだけど、株式市場の上下動や、実体経済とはかけ離れた市場を見ていて、どうしてピカソの絵の値段だけを「高い」と思うのか、不思議でしょうがなかったけど、当時は、私自身もよくわからなかったので、大抵の場合は「美術史上の価値なら少しはわかりますが、価格に関しては、マーケットを創っている人たちによるものなので、わかりません」と答えていた。

私が会ったK大経済学部の人たちとはまた別の人たちは、現代アートはユダヤ人による「マーケット」でしかない。と思っている人も多い。

いずれにしても、彼らはそれらの作品に疑問をもっていて、それが不当に高いと思う感情から、嫌悪感を抱き、作品も、作品を創る人も「詐欺」だと感じているのだ。

価値がわからないなら、買うこともないわけで、それなら騙されて買わされるという「詐欺」にあうこともないのに、世の中に、自分の価値観にそぐわないものに高値がついていることが許せないと思う人は多いようで、日本でも、村上隆氏を批判する人は多い。

現代アートは宗教だ。という人も多い。彼らは、概ね宗教を「詐欺」か、前近代的な遺物だと思っていて、意識的か、もしくは無意識に、科学やお金を信仰している。

わずかな収入のほとんどを現代アートを買うことに費やす、
ハーブとドロシーが何を買い、何で魂が満たされていたのか? 
それを知りたい人はぜひ!

◎『ハーブ&ドロシー』公式サイト

◎映画「ハーブ&ドロシー」日本公開版予告編



◎[Amazon]ハーブ&ドロシー(DVD)



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『人斬り』

去年から「日本映画チャンネル」では、やたらと勝新が登場して、今までなかなか見られなかった『警視K』が始まってしまったり、我が家の録画機の、勝新占領率はますます増えていく一方。。

そんな大好きな勝新ですが、座頭市にハマり過ぎているからか、目が開いているときの彼に違和感を感じることが多いんですね。勝新は、顔が可愛らしすぎるというか、子供っぽくて、現代劇でも、時代劇でも、座頭市のような人間的な深みに到達するのは、他の役ではむつかしいと感じてしまうことが多い。。


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この映画で、勝新が演じているのは、司馬遼太郎の小説から「人斬り以蔵」の名で有名になった岡田以蔵。私は司馬史観で、幕末を見ることに飽き飽きしているのですが、この映画では、大好きな勝新が岡田以蔵を演じているだけでなく、大好きな三島由紀夫が「人斬り新兵衛」こと田中新兵衛を演じ、劇中で切腹シーンもあるので、絶対に見逃せない作品だったんです。


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監督は五社英雄、脚本は、黒澤映画の数々の傑作を書いた橋本忍、龍馬役の石原裕次郎や、仲代達矢も重要な役で共演し、その他の豪華キャストが華を添えているだけでなく、すべて意味のある出演となっていて、流石、勝プロダクション制作!

座頭市以外では、なかなか魅せられることができない純真さと凶暴さをあわせもつ、勝新に相応しい役で、1969年の公開当時は8月だったようですが、わたしはお正月映画としてとても満足しました。

◎勝新太郎「人斬り」テレビ初放送
◎『人斬り』goo映画

*全部観たわけではありませんが、この映画の三島は、これまでになく自然な演技で魅力的。切腹シーンも残酷な場面に弱い私が見てもだいじょうぶで、素晴らしい演技でした。

*勝新お奨め情報/作品数が多い勝新ですが、最初に見るべきなのは「座頭市」で「兵隊やくざ」「悪名」は見なくていい。また、座頭市は、初期より後期が完成度が高く、映画より1時間のTVシリーズ『新座頭市』は、マイケル・ジャクソンのダンスに匹敵するような彼の完成された立ち回りと、凝縮された脚本、さらに勝新の監督した回なら、彼の類いまれな音や映像のセンスにも驚かされるはず。

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by yomodalite | 2013-01-06 16:51 | 映画・マンガ・TV | Trackback | Comments(0)
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2011年12月に出版された、現在もっとも新しい勝新太郎の伝記。

プロローグで、著者は、

ぼくは勝新太郎の最後の弟子だった(中略)かつて、勝は週刊誌で人生相談を連載しており、ぼくはその担当編集者だった。週1回、2ページの連載にもかかわらず、ほぼ毎日彼のところに通った時期もあった。(引用終了)

と書かれていて、根本敬氏の『特殊まんが家 ー 前衛の道』で、勝新太郎の「偶然完全」という言葉に出会い、この「人生相談」のことを知っていた私はものすごく興奮しました。

さらにプロローグから引用します。

勝は不当に軽んじられていると思う。代表作の『座頭市』の映画は全部で26本作られた。これは渥美清の『男をつらいよ』三益愛子の『母もの』、森繁久彌の『社長』シリーズに続く数である。『座頭市』と同時期に、勝は『悪名』と『兵隊やくざ』シリーズを持っていた。悪名は16本、兵隊やくざは9本、それぞれ製作されている。こんな俳優は他にいない。

年若い編集者と座頭市の話をしたことがあった。その編集者は「座頭市と言えば(北野)武さんですよね」とさらりと言った。世間では勝は忘れられつつあるのかもしれない。そんな気持ちに後押しされて、勝のことを改めて調べ始めた。短い期間とはいえ、ぼくは濃厚な時間を勝と過ごし、様々な話を聞いたつもりだった。しかしそれはあくまでも、つもりだった。知らない話が次々と出てきた(中略)ぼくは思った。この生き様こそ、勝の最大の作品ではないか、と。(引用終了)


うーーん、勝新の天才性への一般社会での評価はまだまだ低いとはいえ、「座頭市と言えば北野武さんですよね」というような「若い世代」と言えなくもない春日太一氏(1977年生まれ)の『天才 勝新太郎』も絶賛されていますし。。

◎博士の悪童日記(2010年02月05日)
◎博士の悪童日記(2010年02月24日)

著者は、春日氏よりだいぶ年上(1968年生まれ)なのに、同世代にも、若い世代にも勝新以上に知られていない、三益愛子、森繁久彌と比較して「こんな俳優は他にはいない」と言われてもなぁと、ちょっぴり不安になりつつ、

それでも、巻末の参考文献に、春日太一氏の本だけでなく、わたしがこれまで読んできた本もズラリと並んでいることから(吉田豪、水道橋博士が紹介している本はリストアップされているものの、根本敬氏の名前はない)勝新伝の「決定版?」という期待で読み始めましたんですが、、、率直な感想を言えば、本書の大半が、どこかで読んだ話がまとめられているという印象でした。

勝新に思い入れがない人なら、こういった「アンカーマン」としてまとめたような内容(≠決定版)でも満足な読書ができると思いますが、水道橋博士も言われているように、

勝新は、「勝新大陸」「勝新山脈」と呼ぶべき、常人が住む娑婆とは隔離された、芸能の真理を身に纏う偉大なる無法者で、この一般には見えざる概念上の、大陸、山脈は、特殊漫画家・根本敬氏らの研究、紹介により、昨今、その存在が多くの人に知られるように....

なっているだけに、著者は、勝新の天才性を紹介しているつもりでも、本当にその大きさが見えているのかどうか疑ってしまう部分や、巻末に引用図書はリストアップされているものの、その大半は現在でも入手可能なものであるにも関わらず、本文では、それらの紹介も、引用もきちんとされずに、ただ、まとめて1冊にしていると感じられるようなところも多くあり、著者の本づくりの姿勢にはあまり感心できませんでした。

ただ、博士も言われているように、読み始めたら止まらなかったことは確かで、

◎博士の悪童日記(2012年02月01日)

連載担当になってからの話が始まる、第12章「今度はパンツをはかないようにする」からの内容は、著者が直接、勝新と出会った部分で、週刊ポストで「人生相談」を始めた頃の勝新の日常に触れられたような気がしました。

偉大なひとは、偉大なひとから学んでいるし、賢人たちはみな「答えは目の前にある」ということを繰り返し、説き続けるものですし、根本敬氏の「ソウル電波」もそうですが、エラい人はみんな同じようなことを言い、エラい人から感じる「気」は、だいたい同じなので、『傷痕』を書いた桜庭和樹氏が、読書日記で、水木しげる氏の言葉、

「この世に生まれて楽園で生活しないなんて、バカだよ」

という、MJの「Are You Listening」(『Dancing the Dream』)と、ほとんど同じ言葉が紹介されていたり、勝新は自伝『俺、勝新太郎』の中でも、マイケル・ジャクソンに言及していましたが、本書にも、MJが登場してました。

(P284)第11章「神が降りて来ない」ー 六本木に座頭市を歩かせたい より

88年9月19日、渋谷のディスコ「Jトリップバー」で『座頭市』製作発表記者会見が行われた。皮のハーフコートを着た勝、着物姿の樋口可南子、そして緒形拳たちが壇上に並んだ。勝は、再び『座頭市』を撮ることになった理由を説明した。

「海外の映画、最近の日本映画を見ていると、その人しか持っていないものを作るのがいいんじゃないかと。勝新太郎というと座頭市になる。座頭市の映画は16年もやっていない。(アイデアが)溜った引出し、世間の流れも変わっている。今の世の中に座頭市を入れたらどうだろう。六本木に座頭市を歩かせたらどうだろう、と」

この考えは、スタッフルームに貼られていた紙により踏み込んで書かれている。

六本木、原宿、永田町界隈に座頭市がイーグルスの曲に乗って現れたら、マイケル・ジャクソンが座頭市をやったら、どんな座頭市映画ができるだろう。(引用終了)



著者は、この1989年の『座頭市』に関して「映画としての出来はそれほどでもない」などと言うような芸術音痴な方なので「勝は音の使い方が上手い」とか書いていても、実際のところ、他の人の受け売りで、あまりわかっていないようなんですが、

勝新は言葉的な面白さで、そう言っているのではなくて、、そんな発言を知らない私が、最初に観たときも、はっきりマイケルを感じたんだから… 本当にスゴいと思う!

☆勝新が、著者にも言ったように、その人しか持っていないものを作って欲しかったという不満はあるものの、勝新の優しさ、可愛らしさはよく表現されているので、一般的にはイイ本だと思います

◎『偶然完全 勝新太郎伝』(アマゾン)


☆参考サイト
◎『偶然完全 勝新太郎伝』現代ビジネス・立読み電子図書館
◎BOOK asahi.com「存在そのものが作品のような男」
◎本書の表紙写真の写真家・操上和美のサイト。撮る写真も本人もすべてがカッコいい


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by yomodalite | 2012-02-27 19:05 | 報道・ノンフィクション | Trackback | Comments(0)
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☆新座頭市『雪の別れ路』[2]のつづき

1977年の『雪の別れ路』出演時、小百合さんは31歳。’73年に結婚し、’85年の『おはん』『天国の駅』で日本アカデミー賞最優秀主演女優賞を初受賞されているのですが、わたしは、冒頭のシーンから、小百合さんの可愛らしさには、目がくぎ付けになったものの、流しの三味線弾きの女が、こんなに少女っぽいなんて...という目線もあったんですね。

でも、小百合さんが演じていたのは「流しの三味線弾き」が生きて行くために身につけてきた「外側」ではなくて、どんな「属性」の女にも、息子の墓に赴いた母たちにさえある「内面」の処女性であって(『人の子イエス』より)小百合さんはそれを演じるために、芸を磨いてこられたんだなぁということに、今回、初めて気づきました。


かかあがいるんだ....という宇乃の言葉(市による嘘)に、お雪は....


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宇乃と再会した酒場....


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市の脅しから逃れた宇乃が、金蔓として手放せないお雪のもとに戻ってくる



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市「お雪さん、その櫛をずっと持ってるつもりですかい」


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小百合さん自身「永遠の処女」として、多くのファンを魅了されてきた方で、もちろん、それは、生まれ持った資質に負うものも大きいとは思いますが、これほど完璧にスクリーンにそれを刻まれているのは、相当の信念に基づくもので、

小百合さんの涙は、本当に「至芸」としか言いようがなく、、これほど美しい涙を流せる女優さんは、世界中探してもいないでしょう。

今まで、そんな風に思ったことがなかったんですけど、
ものすごく玉三郎に似ていると思いました。

勝新もスゴいけど、、吉永小百合もホントにスゴい!!!

(知らなかったのは、私だけかもしれませんが....)


◎新・座頭市(ウィキペディア)
◎新・座頭市(第1シリーズ)放映リスト

☆春日太一氏の『天才勝新太郎』によれば、台本が完成してなくて... という記述があるのですが、完成品からはまったくそうは見えない。
◎新・座頭市「日曜日にはTVを消せ」




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by yomodalite | 2012-02-16 09:05 | 美男・美女 | Trackback | Comments(0)
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☆新座頭市『雪の別れ路』[1]のつづき

『雪の別れ路』は、勝プロダクション制作により、1976年から1979年まで放映されたテレビ時代劇「新座頭市」第1シリーズ ('76~'77)の作品。テーマソングを石原裕次郎が歌っていたり(出演は第4話)主演映画があるような豪華なゲスト俳優にも、もちろん、勝新が演じる座頭市のカッコ良さにも魅了されっぱなしなんですが、

特に見逃せないのは、勝新自身が監督した作品のときで、もう冒頭のシーンから、テレビとは思えないような緊張感溢れる鮮烈な映像、音にも気を配った演出で、普段より何十倍も楽しめるんですが、黒澤や北野武にはない、勝新監督の特に優れたところは、女優を撮るのがすごく上手いところ。

出演している女が、みんな市に優しくて、市を好きになってしまうということの多い「座頭市」なんですが、勝新が監督のときは、むしろ、そーゆーことはなくて、いずれの女優も、その魅力を最大限引き出していて、どの女優を撮ってもすごくイイっ!(このすぐ後の真野響子さんがゲストの回は女優の美しさだけでなく「傑作」でした)

でも、小百合さんは....

録画した「絵」をスローで見て、これほど一瞬一瞬が「完璧」だったのは初めての経験でした。


お雪は、3年間ずっと忘れられなかった男(宇乃)に偶然出会い、
再会したふたりは並んで蕎麦を食う....


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宇乃「櫛やろうか」


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お雪「前にもらったのがあるわ」


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お雪「これだけは大事にとっておいたの」

市と一緒に泊まっている宿に戻った、お雪....


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十三のときからよ。
おとっつぁんが唄を歌って、
わたしが三味線を弾いて....
旅から旅へと、あちこち流して歩いた...
今でも目に残ってるわ。
おとっつぁんの背中と砂ぼこり...


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寒くてね、
野良犬抱いて寝たこともあった....


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そんときだったわ、宇乃さんに会ったの....
ふたりで身体を暖っためながら生きていこうって...
だけど、おとっつぁん倒れちまって...


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わたしの身体の中は、
いつも、宇乃さんでいっぱいだった...



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三年もよ、
わたし、あのひとのことばっかり
思って暮らしてたの...


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ね、市さん、飲んで。
わたしと一緒に喜んでちょうだい。


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女たらしの宇乃の嘘に気づいた市は、
宇乃を脅し、
お雪のために「別れ」を演出する....


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宇乃「俺には、かかあがいるんだ...」


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☆新座頭市『雪の別れ路』[3]につづく


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by yomodalite | 2012-02-15 09:43 | 美男・美女 | Trackback | Comments(0)
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このブログの「美男・美女」のカテゴリは、現在、あまり見られないようなタイプや、ちょっぴり忘れられている方々を記録しておこうと思って始めたので、この人を取りあげるとは、思ってもみませんでした。本日の「美女」は誰もが知っているのに、自分だけが知らなかったという懺悔の気持ちで....



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私は吉永小百合さんの映画を、ほとんど観たことがないんですが、玉三郎が好きなので、彼が監督し、小百合さんが主演した『外科室』『夢の女』は観たことがあったんです。

で、そのときは、小百合さんはもちろん美しいのだけど、でも、やっぱり舞台で観る玉三郎ほど感動できる美しさではないと感じ、玉三郎が、小百合さんを主演に選ばれたのは、自分の芸を、小百合さんの「顔」で演じさせてみたいと思われたからなのかなぁと思ってました。

新座頭市『雪の別れ路』を観るまでは....



冬の朝、市は、どこからか聴こえてくる三味線の音に耳を奪われる。
すると、突然、頭上に小さな鳥が落ちてくる。
市はその小鳥を下駄で踏みそうになりながらも、
寸でのところで気づいて救出する。


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市「そそっかしいんですよ。この鳥、空から落っこちてきたんですよ。姐さんの三味線を聴いてるうちにイイ気持ちになって、空の上で寝ちまったんですかね」


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お雪(小百合)「まだ、赤ちゃんみたい。お腹好いてるの?お水が飲みたいのかしら。よしよし....」(自分の水筒から小鳥に口移しで水を飲ませようとする)


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市「さぁ、早く飛ぶんだ。雪でも降ってきたら凍え死んじまうぞ」


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市「早くおとっつぁんやおっかさんのところに帰って、な、暖っためてもらうんだよ」


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お雪「飛んだ....」



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男(宇乃)「しばらく....」


☆新座頭市『雪の別れ路』[2]につづく



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by yomodalite | 2012-02-14 09:13 | 美男・美女 | Trackback | Comments(0)
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89年版『座頭市』のサントラが欲しくて仕方ないんだけど、なかなか見つからない。。

3本の映画の感想に続いて、今度は「自伝」です。

勝新のスゴさに気づいたのも、まだ、ほんの数日前ですけど、この本は、3本の映画を見終わってから、そういえば、まだ読んでいなかったということに気づき、軽い気持ちで、読み始めました。このブログで、勝新太郎が初めて登場したのは、2007年に読んだ、森繁久彌の『品格と色気と哀愁と』という本で、松岡正剛氏が言っている、

勝新太郎と森繁久弥の関係は、日本の男と男が組合わさった最高の「バサラ数寄」をしでかせる無類の組み合わせなのである。

という感じを実感したいとずっと思っているのですが、森繁久彌氏のことはまだ全然わかりません。

その次が、同じ2007年の水道橋博士の『本業』で、そこで、紹介されていた、山城新伍氏の『おこりんぼ さびしんぼ』で、勝新太郎と若山富三郎の兄弟の物語に感動し、吉田豪氏にも、間接的に影響を受け、春日太一氏の『天才 勝新太郎』と、根本敬氏の『特殊まんが家-前衛の-道』を経て、ようやく、本当に『座頭市』に出会うことができました。

だから、これらの方すべてがバトンを繋いでくれたおかげで、『座頭市』には、出会うことができたんだって感謝していて、水道橋博士が、吉田豪氏を、

吉田豪は相手の99の力を引き出し、100の力で書く、
そして読者に200以上を夢想させる。
 
だからこそ、芸能本史上、最強の聞き手として、300%推薦するしだいである


と評しているように、勝新太郎のスゴさを「本」にするには、きっと、本書きのプロの力が必要だよねって思い込んでいて、本人が書いた「自伝」のこと、すっかり忘れてたんですね。

☆この感想は、図書館で借りた、単行本によるもので、文庫本にある、吉田豪氏の解説はまだ目にしてません(現在、注文中)

ところが、読み始めたら、、、

上記の方々の本はすべて、すごく面白かったのですが、この本はそれらとは別次元。89年の『座頭市』に、どれほど感動したか、表現できないぐらいだって、言った、その感動すらも上回るかと思うぐらい感動してしまって.....

ホントに、もう、どうしたら、いいんだろう。。。(笑)

いったい、どこがって思われている方も多いと思いますけど、勝新がどれほどの「天才」だったかって考えると、比較したくなるのは、もう、あの人ぐらいで、まさか、そこまで天才だったとは====!!!!って、いう感じなんですよねぇ。。。

Usherや、NE-YOは、本当にMJのことリスペクトしてると思うし、真面目だし、ダンスもめちゃくちゃ上手いと思うんですけど、どうして、MJのように感動できないんだろうって不思議に思ったことないですか?

同じ動きの、キレの良さだけなら、Usherの方が、MJより、キレイなんじゃないかと思うこともあるんですけど、でも、どういうわけなのか、MJを観たときと同じような「感動」を得ることはできない。。。(ごめんね。アッシャー♡)

彼らだけじゃなくて、ダンスミュージックの人はみんな「振付け」をこなしているけど、MJだけが違うっていうのは、ファンならわかりますよね?

勝新が、座頭市でやろうとして、実際に完成させたことは、通常の「殺陣」とは、全然ちがっていて、「殺陣」だけじゃなく、セリフも、映像にしたかったものも、音も、とにかく、MJの感覚に限りなく近いと、映画を観終わってから思っていたんです。でも、勝新自ら書いた本から、さらに、そのことが、はっきりと伝わって来ました。

それは「音楽に思考をはさんではダメだ」とか「僕はリズムの奴隷......僕は音になる。ベースになったり、とにかく聴こえてくるいろんな音になって、それを体で表すんだ」とか「ダンスは作るんじゃなく、勝手にできあがる」というようなことが、勝新流に「書いてある」からなんじゃなくて、

この本自体から、「音」が聴こえてきて、「リズム」があって、尚かつ、勝新が綴る文章が、歌舞伎座で、中村吉右衛門を観るよりも、遥かに、うっとりできる「芝居」になっているからなんです。

この、文章から音が聴こえて来るというのは、どうやら、わたしの“電波”によるものだけではないらしく「あとがき」で、勝新自身も語っています。

活字を映像にしたことはある。
映像も活字にすることが出来るだろう。そう思って書き始めた。
勝新太郎の映像が、なかなか現れてこない。
勝新太郎って、どんな人間か、
想像したら、子供のころの俺が、逆回転のフィルムのように現れてきた。
逆回転で書いてみよう。
こんな書き方でまとまるのかな。まとまったらおかしいよ。
勝新太郎を書いて、まとまるなんておかしいよ。

祭り囃子の音が、頭の中で鳴っている。

テレツク テレツク スッテンテン

ドーン ドーン ドンカララ

ヒーリャリャ ヒーリャリャ テレツクテン

こんな音に乗って、赤ん坊の頃から書き始めた。
俺の文章を読んだ人が言った。

「うまく言えませんけど、どうも文章から、なんか音が聴こえてくるんです」

どういう意味なんだろう。
活字から、どんな音が聞こえて来たんだろう。皆さん、教えてよ。

平成4年10月22日 あとがきじゃないよ、音書きですよ。 勝 新太郎


この「あとがき」で、わたしは、もう完全にとどめを刺されたんですが、
(“だじゃれ”でも感動できることってあるんですね)

その4ページ前でも、すでに7インチほど突き刺されていました。

(以下、そのページから抜粋引用)

神が世界を不幸にしたのではない。
神が世界を幸せにするのではない。
神が人間をつくったのではない。
人間が神をつくり、平和をつくり、戦争を起こす。
日本が勝っていたら、
マイケル・ジャクソンが今頃、『佐渡おけさ』を歌わされていたかもしれない。
ぞおっとするね。


勝新、やっぱりMJを意識してた=======!!!

これが書かれた頃、MJはデンジャラス期で、89年は、エリザベス・テーラーが、彼を「The True King of Pop, Rock And Soul」と称した年なんですが、同じ頃、勝新は、プリンスからPVへの出演依頼も受けています。

たしかに、MJの「佐渡おけさ」は、ぞおっとするような気もしますが、日本が負けて、日本ではなくなって行く、そんな時代に、日本の伝統文化を背負っていた「最後のひと」が勝新で、彼は、それを背負いつつも、新たな試みを、たくさん成し遂げ、世界から絶賛された「スター」だったと思います。

この本は、最後の映画『座頭市』から1年後の、拘置所の中から書きはじめられた、
勝新太郎の『獄中記』と言えるもの。

この本の表紙写真も、数々の勝新伝説も、一旦すべて忘れて、
眼を閉じて読んでみてください。


勝新太郎の三味線を聴く
バルテュスと節子・クロソフスカ・ド・ローラ




◎[動画]バルテュス&勝新太郎 Balthus&Shintaro Katsu
◎[動画]竹中労語る 勝新太郎
◎[動画]竹中労語る 勝新太郎 / 芸人論

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[単行本・BOOKデータベース]執行猶予四年という手打ちをした俳優が、拘置所の中で、もう一人の自分を見た。真・間・魔・麻…。社外人として書いてみた。痛快・劇薬の書。廣済堂出版 (1992/11)

[文庫版・内容紹介]昭和の名優・勝新太郎の人生録。強烈な人生を駆けぬけた「かつしん」が、ハワイでの逮捕以後、自らの幼少期や役者時代を振り返り、書き下ろした1冊。解説はプロ書評家の吉田豪。

[文庫版・BOOKデータベース]稀代の名優・勝新太郎が書き下ろす破天荒で強烈な人生録。幼少期からの貴重写真も多数掲載。新装版刊行に際して、解説は吉田豪(プロ書評家&プロインタビュアー)が特別寄稿。4000字を超える情報量で、さらなる勝新の魅力に迫る。文庫、改訂版 (2008/8/25)





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by yomodalite | 2010-12-12 19:05 | エッセイ | Trackback | Comments(2)

旧「読書日記と着物あれこれ」。歴史/文学/お笑いを好み、着物生活をしていたはずが、いつしかマイケルジャクソンのように本を読もうになってしまったブログ。永年暮らした東京を離れ、現在は大阪を満喫中。


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