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性欲の文化史[2]/井上章一(編)

性欲の文化史 2 (講談社選書メチエ)

梅川 純代,申 昌浩,劉 建輝,原田 信男,平松 隆円,田中 貴子,松田 さおり/講談社




性欲の文化史[1]に続いて読んでみました。

[1]には納められていなかった、編者である井上章一氏の「桂離宮にエロスを読む」が収録されています。

2巻を通読して、全体の感想としては、分冊化しないで出来のいいものに限ってまとめた方が良かっただろうと思う。編集者も熱意がなく、来た原稿そのままノータッチで本にした、という感じ。

第1章は、学者にはめずらしく読者を意識した文章が書ける井上氏による、『桂離宮にエロスを読む』はとても興味深かったものの、第3章『韓国整形美人事情』(申 昌浩)や、第6章の『「ギャル男」のいる光景』(平松隆円)、第8章の『ホステスたちは、何を売る?』 (松田さおり)は、題材が、風俗としてよく知られたものにも関わらず、研究の到達点が低く、ごく普通レベルの学生論文としか読めなかった。

第7章『男から生まれた女』(田中貴子)は、現在、批判者がまったく見当たらない白洲正子氏への反論を試みた論考で、『両性具有の美』について主に論じているのですが、興味深い指摘が多く、新書などであらためて読んでみたいと思った。

編者の井上氏の、若い研究者にチャンスを与えたいという気持ちがこもった2冊だと思うのですけど、その気持ちに答えられていない研究者が目立ち、読者としてはツライ部分もある一冊。

【目次】
まえがき 性のなかに文化を読む(井上章一)
1.桂離宮にエロスを読む(井上章一)
2.神仙の証―中国古代房中術にみるセックスと飛翔(梅川純代)
3.韓国整形美人事情(申 昌浩)
4.摩登(モダン)上海にうかぶ女体の群れ(劉 建輝)
5.映画のなかの性―戦後映画史における性表現と性意識の変遷(原田信男)
6.「ギャル男」のいる光景(平松隆円)
7.男から生まれた女(田中貴子)
8.ホステスたちは、何を売る? (松田さおり)
あとがき(井上章一)
__________

【BOOKデータベース】パンチラに感謝するフランス人と、平気で見すごす中国人—何に性感を覚えるかは、時代により民族により異なる。人間の性欲とは、きわめて文化的な心の持ちようなのだ。桂離宮から渋谷センター街まで、射精抑圧から女体観察まで、感じて、そそられて、満たされる、秀逸の論究集。 講談社 (2008/11/11)

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by yomodalite | 2009-07-20 19:28 | 評論・インタヴュー | Trackback | Comments(0)

性欲の文化史[1]/井上章一(編)

性欲の文化史 1 (講談社選書メチエ)

永井 良和,澁谷 知美,原 武史,唐権,三橋 順子,川井 ゆう,西村 大志,露木 玲/講談社




女性がパンツ(下着)を履くきっかけとなったのは、1930年代、白木屋百貨店の火災の際、火を避けて下に降りようとしたが、裾が風でまくれると下にいる野次馬にのぞかれてしまう。そのとまどいにより何人もの店員が命を失うことになった。パンツが普及したのは、その教訓からだった。という白木屋伝説を知っている人は多いと思う。わたしも、そう信じていました。

ところが、本書の編者、井上氏によればそれは事実ではないという。実はその伝説はまったくのつくり話で、井上氏は、以前『パンツが見える。』(2002年)で、それを実証しているらしい。では、パンツを最初にはきだしたのは、誰だったのか?

それは、カフェーの女給たちだった。彼女たちはパンツを性的な武器に仕立てていた。つまり最初から、パンツは見せることを前提にしていたのだ。

確かに、この件に限らず、歴史には性的なことを隠しやすい性質がある。

「歴史の影に性あり」という、編者の「まえがき」に惹かれ、本書を読んでみました。

下記の目次から章タイトルの中身を短くまとめると、

第1章は、近代日本の遊郭と、欧米との違い
第2章は、1910〜40年代の男子への禁欲とは何だったか。
第3章は、出口王仁三郎『霊界物語』から恋愛・男女観を探る
第4章は、中国の日本風俗史にみられる特徴
第5章は、女装の男娼の実態
第6章は、孕み女(模型)の見せ物史
第7章は、人形、ロボットの愛と性
第8章は、兄妹性交は古今東西、すべての社会で禁じられているわけではない。

こんな感じでしょうか。最後まで読んでも「性欲」と関係ある?と思ってしまう内容も多く、執筆者は、ほぼ全員が大学関係者で、内容はかなり固め。興味を惹かれた内容とは、かなり異なった読後感ではありましたが、バラエティに富んだ内容なので、続けて『性欲の文化史2』も読んでみます。

性欲の文化史【2】/井上章一(編)に続く

【目次】
まえがき−文化のなかに性を読む(井上章一)
1.遊廓の形成と日本文化−「囲い込み」と取り締り−(永井良和)
2.性教育はなぜ男子学生に禁欲を説いたか−1910〜40年代の花柳病言説−(澁谷知美)
3.出口王仁三郎の恋愛観・男女観−『霊界物語』を中心として−(原 武史)
4.日本女性は不淫不妬?−中華文人の日本風俗観察史−(唐 権)
5.女装男娼のテクニックとセクシュアリティ(三橋順子)
6.「胎内十月」の見世物を追って(川井ゆう)
7.「人体模倣」における生と死と性(西村大志)
8.兄妹性交の回避と禁止(露木玲・青木健一)
あとがき(井上章一)

【BOOKデータベース】
洋装下着を流行らせたのは、ほんとうに勤労女性だったのか?なぜ戦前の男子学生は「したくてもじっと我慢」でいなければならなかったのか?歴史の陰に、性あり。人間の本質を見ずして、ほんとうの歴史は語れないのだ!大本教から球体関節人形まで、「魏志倭人伝」の日本女性論から女装男娼まで、時代も地域も縦横無尽に論じ尽くす、珠玉の論考集。講談社 (2008/10/10)


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by yomodalite | 2009-07-13 21:51 | 評論・インタヴュー | Trackback | Comments(0)

名古屋と金シャチ/井上章一

こんな本を読んでしまうのもわたしが名古屋育ちだから。。。
陽の光が金シャチの光とともに届けられる、名城公園まで徒歩数分というような地域に住んでいて、城にも金シャチにもうんざりだった住人時代ですが、名古屋三大ブス説を覆した井上章一氏なら今までにない名古屋文化論が期待できるかもしれません。


第一章 世界のなかの名古屋のシャチ
「イタリアにも、シャチホコはいる。」 ヴェネチアングラスの工芸品、ローマのバルベリー二広場のトリトンの泉。。。空想のイルカはシャチとそっくりだという発見から、シャチの由来を探る。

第二章 シャチの都を取材して
名古屋取材。市役所のバッジ、交通局のマスコット、サッカーチーム「グランパスエイト」(グランパスとはシャチのこと)、市職員機関誌「シャチ」、遊覧船「金鯱号」、陸上自衛隊第十師団のマーク、名古屋牛乳のシャチ印、「シャチボン」(シャチの形のシュークリーム)、名古屋に溢れるシャチと、そのキャラクターの変遷。

第三章 シャチの背後に歴史を読む
金シャチは、尾張徳川家の威光を人民に見せつけていた。黄金の輝きを日常的に見せつけられていた人民の欲望は1782年に上演されていた芝居『けいせい黄金の鯱』にも表れていた。。。

第四章 金シャチ美人
かつて一世風靡した「名古屋美人」は、なぜ「日本三大ブス」の産地へと変遷したのか、ミス名古屋からその謎を解く。

著者は、執拗に名古屋城の金のシャチホコが持つ名古屋での意味と価値について、歴史を遡り、周縁を探っていく。第4章の「名古屋芸者」の話は、『日本の女が好きである。』でも書かれていた話の更に詳細な記述で、著者の本により初めて聞く話でしたが、全体を通して、名古屋人気質や名古屋文化論ついて語られている部分が少なく、浅薄な名古屋文化論を覆すような視点がないのが、すこし残念。

金シャチに興味がある奇特な方へ
★★★☆

_____________

【MARCデータベース】名古屋は街中、シャチだらけ。シャチを愛好する市民感情は、どのようにしてはぐくまれたのか。その都市論的な背景をさぐり、名古屋という街の文化史をうきぼりにする。ファンシー革命、美人説…鯱都の謎を解き明かす。 NTT出版 (2005/02)





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by yomodalite | 2009-06-30 22:47 | 歴史・文化:美術 | Trackback | Comments(0)

日本の女が好きである。/井上章一

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17年前に『美人論』が評判になった著者ですが、私は本書がお初。本書は2008年出版。本家を見ていないのですが、多分こちらの方がずっと軽い読みもののようです。

←女性の後ろ姿写真は、幅広帯です

平均的な文庫本の厚さの単行本なので、あっという間に読めてしまいますが、本格的考察のラフというか、いろいろ興味深いテーマが散りばめられています。下記の【内容紹介】以外で、興味深かった点を、順に挙げていくと、

「性格美人」は日本にしかいない。
姦通罪は不美人に集中していた
7歳までには美醜の判断は出来上がる
教育を受けられたのは不美人だけだった
高群逸枝は男女平等になれば美人の勢力は拡大すると予言していた
名古屋こそが群を抜く美人の都だった
明治期の新橋は名古屋女の天下だった
昔の絵画はみな下ぶくれだが骨格はそうではない
浮世絵から当時の美人の姿を想像するのは間違い
日本の英雄は「女」を武器にする
遣唐使は「容姿」と「器量」で選ばれていた
男っぽい女装者がふえてきた理由
  。。。などなど。

高群逸枝は意外と美人だったようですが、確かに予言は当たっていて、もうどんなドラマや映画の端役でも美人ばかり。これでもか!という美人が、キレイになるための本を出版して、その努力すら公開する時代。東大生には不細工な男はいますが、ブスな女はいないというのは、駒場、本郷に棲息していた私の経験ですが、スポーツ選手から、AV女優、弁護士にいたるまで、とにかく美人ばかりの世の中になってしまいましたから、アニメに群がる男が増えるのも仕方がないでしょう。

著者には本書のような軽い読み物から、桂離宮や伊勢神宮、霊柩車に関しても何冊か出版されており、学術書から風俗本まで、色々興味深い本があるようなので、また別の本も近日中に読んでみたいと思います。

★★★☆
情報考学 Passion For The Future
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/06/post-1010.html

続たそがれ日記
http://plaza.rakuten.co.jp/junko23/diary/200803120000/fbb92/
______________

【目次】
1「美人」という言葉に、まどわされ
2 誰がいちばんきれいなの
3 かしこい女、それともきれいな女
4「美人」東西物語
5「美人」今昔物語
6 男もはたして顔なのか
終章 ブスをブスと言って何が悪い!

【内容紹介】
賛否の両論を巻き起こした問題の書『美人論』から17年。再び挑む、美しい人とそうでない人の研究。なぜ日本人は、女性のうなじや脚首に魅力を感じるのか? 小野小町はほんとうに「美人」だったのか? 不美人ほど不倫をすると言われた理由は? 「秋田美人」「新潟美人」が生まれた深い事情とは? ミス・ユニバースとK-1の共通点とは?……フェミニストとの心理戦の裏話や、美人の研究を始めるきっかけとなった自らのコンプレックスなど、美人研究にまつわるさまざまな豆知識やこぼれ話を紹介する1冊。楊貴妃からかぐや姫、ミス・ユニバースに女子大生、さらにはアニメの美少女キャラまで、古今東西の資料に基づき、「美人」「美女」ついでに「美男」について、マジメに深く深く考察します。人はほんとうに「見た目」がすべてなのか? PHP研究所 (2008/1/17)





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by yomodalite | 2009-06-18 19:17 | 評論・インタヴュー | Trackback | Comments(0)

旧「読書日記と着物あれこれ」。歴史/文学/お笑いを好み、着物生活をしていたはずが、いつしかマイケルジャクソンのように本を読もうになってしまったブログ。永年暮らした東京を離れ、現在は大阪を満喫中。


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