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宗教の倒錯/上村静

宗教の倒錯―ユダヤ教・イエス・キリスト教

上村 静/岩波書店

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本書について、著者は、「宗教は人を幸せにするためにあるはずなのに、なにゆえその同じ宗教が宗教の名のもとに平然と人を殺してしまうのか?」という、素朴な問いに答えることを目的としていると言う。

宗教関連の本として、私にとって、ここ数年のベスト本なのですが、それゆえ、思うところが多過ぎて、なかなか感想を書けずにいました。


世界の不公平や悪の原因をユダヤのせいにし、激しい敵意をむき出しにして、「正義」や「真実」を語り、「洗脳」されていると煽る本が現代日本でも数多く見られます。


キリスト教では、ユダヤ人は、イエスを十字架にかけたと憎みますが、キリスト教ができた後、イエスと同様、様々な異端を弾圧し、処刑し、異教徒と激しく戦争してきたのも、キリスト教会です。


数多の陰謀論にも見られる「反ユダヤ主義」の原因について、一般の読者が理解できるように書かれている本は稀で、ユダヤ教にも、キリスト教にも精通した聖書研究者で、特に日本人による著作となると、本当に希少だと思います。


著者が説明しようとした「倒錯」は、私たち日本人のほとんどが意識することなく過ごしていることですが、それは特定の宗教の問題ではなく、一神教の問題として、遠くから眺めていられる時代は終わり、私たちは欧米で行なわれてきた歴史から、何も学ぶことなく、同じ過ちを繰り返そうとしているようです。


答えについては、本全体から読み取るべきですが、

購入の際の立ち読み箇所としては、

第16章「キリスト教のユダヤ教からの分離」からがお奨めです。


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by yomodalite | 2014-07-28 22:27 | 宗教・哲学・思想 | Trackback | Comments(0)

2014年上半期読書メモ《思想・宗教関連》

7月になってから大分過ぎていますが、今年の上半期までに読んだ本の中で、
思想・宗教関連の本をまとめてメモ(つまらなかった本と古典はのぞく)。


フリーメイソン=ユニテリアン教会が明治日本を動かした/副島隆彦ほか

去年の7月から、エマソンを読み始め、それ以来「ユニテリアン」と「理神論」のことばかり考えてきたので(嘘)、この中では、出版前からもっとも期待値が高かった本。

副島氏の教育者としての姿勢に感動し、本著もそれぞれの執筆者への指導の賜物であり、『説得する文章力』のスゴさも感じておりますが、例えば「ズバリと書く」というような文章は、副島氏のパーソナリティあってこそのもので、副島隆彦の著作が分業体制になるのなら別ですが、個々の名前で発表するのに、その書き方はないのではないか(妙なところで笑いをとらないでくださいw)と思ったり、

明治を創った人々が、メーソンに影響を受けていることを疑う理由はないのですが、個々の人々がメーソンだった。という証拠は弱いので、その部分への断定口調はいらなかったのではないかとか、

細かい部分に気になる点はあるものの、近代日本を創造した明治の人々が、西欧に何を学び、何に抵抗しようとしたのかについて、現代の日本人は真剣に振り返るべきであり、取り上げられている明治の偉人たちの物語は、日本の未来のために重要な内容だと思いました。





フリーメーソン/吉村正和(写真は旧装釘)

フリーメーソンについて書かれたシンプルでレベルの高い新書。1989年初版(上記の副島本で引用されていた新書は、荒俣宏氏の角川新書「フリーメーソン」でしたが、私はこちらの方が良書だと思いました)。





秘密結社イルミナティ入会講座《初級編》

フリーメーソンより、今は「イルミナティ」でしょ?という方へ。なぜ「イルミナティ」が注目されるようになったかと言えば、「フリーメーソン」が長い歴史の中で実態が明らかにされていて、ネタが尽きたから。実体として現在存在しているかどうかわからない「イルミナティ」には、いくらでも「ファンタジックな味付け」ができるからです。フリーメーソンの起源は、16世紀後半から17世紀初頭と言われていますが、イルミナティの創始者と言われるアダム・ヴァイスハウプトは1748年から1830年を生きた人。本書はヴァイスハウプトによる著作の初訳で、ドイツ語の原典からの翻訳のため(まともな英語翻訳がないからでしょう)、固い文章ではあるものの、「啓明思想」を立ち上げた人のただならぬ知性と熱気が伝わります。





タルムードの中のイエス/ペーター・シェーファー(著)上村静、三浦望(訳)

ユダヤ教の教典である「タルムード」で、イエスはどのように描かれているのか。について、ヘブライ大学、フライブルグ大学で、神学、哲学、ユダヤ学、新約聖書学を学び、1998年からは、ユダヤ学の教授として、プリンストン大学のユダヤ学・宗教学教授を務めるペーター・シェーファー教授が2007年に書いた本。

私は『MJ Tapes』の予習として読んだのですが(笑)それはさておき、

本書から、タルムードには、実際にイエスに関して侮蔑的な表現が多くある。ということが証明されたと息巻いている反ユダヤ主義の方もいるようですが、そういった方は、キリスト教の聖書に、どれだけユダヤを侮蔑する表現があるかをご存じなく、常に自分にとって都合のいい部分だけを「証拠」として発見してしまう癖があるのでしょう。

ユダヤ教では、ユダヤ人以外を侮蔑している。という表現も多く見られますが、著者は、これ以上は無理と思えるほど公平に、ユダヤ教とキリスト教、それぞれの視点から語っていて、アカデミックな学者が書いた本になっています。また、著者は、多くのラビが語って来なかったタルムードの内容の発掘にも努めておられるようで、いわゆる聖書物語には見られないような歴史に対しての記述にも、とても興味深い点がありました。

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聖書を読む/中村うさぎ、佐藤優

前著「聖書を語る」の続編。今回おふたりが読んだのは、創世記、使徒言行録とヨハネの黙示録。

佐藤氏は、本書を日本語で読むことができる神学的な思考方法を知るための最良の手引きだと書かれています。確かに、神学的な思考方法は、西欧思想の基盤なので、ここを通過しないで「哲学」とか言っても日本以外では通じないというか、通じたとしても、それは「思想」ではない。残念ながら…

そんなわけで、本書の半分以上をしめる「創世記」に、長いなぁと何度も感じるものの、信仰としてではなく「聖書」に興味をもっている者としては、矛盾が多いこの神話を読み解くことを何世紀も続けているという点が興味深い部分でもあり、ガマンして読み進めると、気鋭の作家おふたりによる会話に、共感できる部分も多々あり、それぞれ魅力的なおふたりについても、よくわかるうえに、幕間には、岡崎京子の『へルタースケルター』、巻末には『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』を読むという対談も収録されていて、

佐藤氏が言われるように、やはり「最良」の書だと思います。




完全教祖マニュアル/架神恭介、辰巳一世

『仁義なきキリスト教史』が面白かったので、こちらも読んでみました。

キミも教祖になろう!という序章では、教祖生活の素晴らしさが語られ、本文では、ホントに信者はできるの?という不安への答えから、第一部、思想編では、神の生み出し方、既存の宗教をどう焼き直し、高度な哲学を備えるにはどうすればいいのか?そして獲得した信者をどう保持するか、など。

第二部、実践編では、不況の仕方や、甘い汁の吸い方、後世への名の残し方まで!至れり尽くせりの内容で、その他、豊富なコラムで、日本や世界の既存の宗教についての知識も深まります。著者のまとめ方の上手さで、レベルの高い新書になっています。




世界がわかる宗教社会学入門(ちくま文庫)/橋爪大三郎

各宗教に関して手堅くコンパクトにまとめられているのですが、『不思議なキリスト教』の方が面白く、師匠である小室直樹氏の『日本人のための宗教原論』より見た目も内容も薄い。






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by yomodalite | 2014-07-09 22:36 | 宗教・哲学・思想 | Trackback | Comments(0)

旧「読書日記と着物あれこれ」。歴史/文学/お笑いを好み、着物生活をしていたはずが、いつしかマイケルジャクソンのように本を読もうになってしまったブログ。永年暮らした東京を離れ、現在は大阪を満喫中。


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