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オバマ・ショック(集英社新書)/越智道雄、町山智浩

オバマ・ショック (集英社新書)

越智道雄、町山智浩



最近よく思うんですが、毎日のニュースから近未来のことが予測出来ないのは、それが、同時に、近過去のことを忘れさせる効果があるからだと思うんです。

私は数年前から「ニュースは寝かせて読め」をモットーにしてますw といっても、新聞を取っておくという意味ではなく新聞はすぐに捨てます!行政指導により一週間に一度しか捨てられませんが、出来るなら毎日捨てたいと思っていて、読んでもいないのですがw。

本書は2009年の新書。ちょうどイイ感じの漬かり具合が予想され、著者は2人とも「アメリカ通」ですし、過去において、町山本がハズレたことは一度もないので、すっごく期待して読みました!

下記は、町山氏による前書きから。

「Finally!」(やっとだよ!) ー 2008年11月、カリフォルニアの夜9時の「オバマが勝った」というニュースへの興奮、勝利演説の前に流された、同年3月のフィラデルフィア国立憲法センターでの演説。

私の兄弟は、姉妹は、姪や甥や、おじやいとこは、あらゆる人種、あらゆる肌の色で、3つの大陸に住んでいます。そして、私は、生きている限り決して忘れません。
私の物語が可能な国は、この世界でアメリカだけだということを。(オバマ演説より)


「私の物語」とは「私のような出自の者がその国の国家元首になること」という意味だ。この演説を聞いたとき、僕がアメリカに来た理由がひさびさに蘇ってきた。僕は自分が何人なのか分からないまま、大人になった。母は日本人で、父は韓国人だったが、韓国の言葉も文化も歴史も何一つ、子供に教えなかった。韓国について話すことすらなかった。

中学の頃に父母は離婚し、それ以降、父にはずっと会わなかった。にもかかわらず国籍は韓国で、名前も韓国名だったので、周囲からは韓国人として扱われた。18歳になったときに日本に帰化したが、父が外国人だと語ると、周囲はやはり僕を外国人として見た。

父は韓国のことを何一つ教えない代わりに、ハリウッド映画を見せ続けた。アフリカ系、イタリア系、アイルランド系、ユダヤ系、中国系、日系、ありとあらゆる「系」がいて、それぞれの国の苗字を持ちながら、みんな等しくアメリカ人として、刑事をしたり、ギャングをやったり、ラブロマンスを演じていた。そこには自分の居場所があるように感じた「日系日本人」以外登場しない日本のテレビや映画よりも。

10年ほど前、ついに僕はアメリカに渡った。妻はアメリカの会社に就職し、子供が生まれ、家を買い、イタリアやドイツやイランやクウェートやガーナやトルコやマーシャル諸島やインドや中国や韓国やモンゴルやグァテマラやメキシコから来た人々と近所付き合いしながら、ようやく自分の居場所が見つかったように感じた。

ところが、9.11テロ以降、アメリカはどんどん壊れていった。合衆国はブッシュを支持する田舎とブッシュに反対する都市部との2つに分かれて対立し、世界一の大国の威信は地に落ち、努力すれば豊かになれるはずのアメリカン・ドリームは住宅&金融バブルとともに粉々に砕け散った。

新しい大統領オバマは、バラバラになったアメリカを再び統合し、壊れたシステムを変革し、希望を取り戻せるのか?

自分では手がかりさえつかめないこの問いに答えて頂けるのは、越智先生の他にはいないと思った。先生はやはり、この歴史的な政権交代を、細かい政策論議をはるかに超えた人類的視点に立って俯瞰していらっしゃった。この1冊は、これからの世界を展望する大いなる助けになるはずだ。(ここまで省略して引用しましたが、町山氏の前書きは下記で全文読めます)

◎オバマ・ショック(集英社新書)

オバマ大統領の誕生から、数ヶ月で出版されたタイムリーな本にも関わらず、語り手、書き手、編集者としても一流である町山氏が、その知識だけでなく、経験も通してアメリカを語るだけでなく、稀有な研究者である越智氏の引出しを開けまくり、高レベルの対談がまとめられています。

第1章 オバマがチェンジ(変革)するもの—レーガン連合の28年
第2章 失われた八年—ブッシュとは何だったのか
第3章 アメリカン・ドリームという博打—サブプライムと投機国家
第4章 覇権国家の黄昏—衰える軍事、経済、文化のヘゲモニー
第5章 異端児か、救世主か—オバマが選ばれた理由
終 章 彼の「強運」は世界の味方なのか—オバマの未来、アメリカの未来


◎mm(ミリメートル)
◎杜父魚文庫ブログ

☆下記は、上記ブログに書かれている以外で、極私的にメモしておきたかったこと

(第4章「覇権国家の黄昏」スクリーンの彼方のアメリカから)

町山:父は強烈な「アメリカかぶれ」でした。そうなったのはアメリカ映画のせいだそうです。まだ10代の頃にハワード・ホークス監督の『暗黒街の顔役』を見ておかしくなっちゃったと。

越智:スカーフェイスですね。ジョージ・ラフトがギャングをやる。

町山:イタリア移民のギャングが貧乏からのし上がっていく物語です。まぁ、裏のアメリカン・ドリームですね。これを見て父は「アメリカはすごい」と思ったそうです。それからはもうアメリカ一辺倒で、戦後は進駐軍にくっついて英語を勉強しながら、ヤミ物資の横流しをして儲けました。

町山:西部劇とギャング映画が好きでしたねぇ。たとえば『俺たちに明日はない』とか。主人公が警官隊にマシンガンで撃たれて蜂の巣になって死んでいくギャング映画ですよ!それと、自分が見てきた映画の話もよくしていました。「今日、父さんは『ソルジャー・ブルー』という映画を見てきた。騎兵隊がインディアンを虐殺するんだ。手がこんなふうにバーンを斬られて....」とか身振り手振りで延々と語る。どうかしてますよ。おかげで、こっちはトラウマです。

越智:子どもが分かる、分からないは抜きなんだよね。親っていうのは、若ければ若いほど、子どもを自分の自我の延長として見てしまうから。

町山:それにしたって、子どもに『ソルジャー・ブルー』はどうかと思いますけど(笑)『ダラスの熱い日』も見せられました。ケネディ暗殺はCIAと軍産複合体の陰謀だという話ですが、小学校5年生にそんなものを見せても分かるわけがない(笑)。

越智:でも、そういう幼児体験が、いまの町山さんのお仕事に結びついているんだから。

町山:渡米してから、2年ほどコロラドのボルダーに住んでたんですが、そこにサンドクリークの大虐殺の慰霊碑が建っていました。なんと『ソルジャー・ブルー』の史実の現場だったんですよ「あっ、ここでつながってくるのか」と思いました。父は2006年に亡くなりましたけど、最後に見舞いにいった行ったら「お前はモニュメントバレーに行ったか」と聞くんです。行ったよ、と返すと「そうか、俺はあそこに立って写真を撮りたいんだ。映画みたいだろう」って。

越智:お父さんは行ったことがなかったんだ。

町山:実は一生で一度もアメリカには行ってないんですよ。死ぬまで、バーチャルなアメリカを生き続けた人でした。

◎『ソルジャー・ブルー』goo映画

ーーーーーーーー

越智:ローマ帝国が衰退し、四分五裂していったときに、どうやって生き延びたかと言うと、結局、芸術・文化で生き延びたわけです。その遺産を発展させたルネッサンスで磨かれたイタリアという文化的価値を周りに評価してもらうことによって、しのいできたんですね。アテナイが生き延びた背景も、ほぼ同様です。政治力や経済力は、衰えると廃墟しか残らない。しかし、廃墟には文化が残る。つまり、文化の方がうんと寿命が長い。ならば、文化を残してやれば、覇権が失われても子孫はそれで食っていける。じゃあ、これから落ちぶれていくアメリカが、アテナイやルネッサンス・イタリアのような生き延び方ができるかどうか。

町山:できないと思っていらっしゃる?

越智:と思うんですが、どうですか。果たして、アメリカのポップカルチャーが古典化できるのかどうか。

町山:ギリシャにはアリストテレスのイデア思想があって、それがルネッサンスでヒューマニズムとして蘇ってくる。アメリカのカルチャーにも同じ部分があるんじゃないですか

越智:たしかに、一種の理想主義、イデアはありますね。

町山:いわゆる「アメリカン・ドリーム」という理想主義。とくに、ハリウッド映画とポップ・ミュージックには、それが濃厚にあります。Love Conquers All(愛はすべてに打ち勝つ)とよく表現されます。恋人同士が境遇と戦って結ばれてハッピーエンド。Love Conquers Allという言葉はもともと古代ローマの詩人ウェルギリウス(バージル)の『牧歌』の一節だそうですから、まさにローマン主義、ロマンチックですよ。


◎ウェルギリウス『牧歌』

越智:それが、どのように古典化されるのか。文化というのは、最初はどんなものでも新しい形として出てくるんだけれども、古典化されたものには、初めから、時代を超えて生き延びられる要素がすでにデザインの中に入っていたと思いませんか。それはおそらく、芸術と永遠とをつなげたいという衝動があって、その衝動がタイムレスな要素をデザインの中に呼び込んだのではないか。じゃあ、アメリカのポップカルチャーの中に、永遠性を志向するという側面はどのくらい入っているんだろうか。

町山:『スターウォーズ』に限って言えば、ルーカスにとって、ダースヴェイダーというのは父親なんですね。ルーカスの実際の父親は田舎町で文具店を経営していたんですが、共和党員で厳格なキリスト教徒で、ものすごくシビアで暗い運命観を持った人だったそうです。世の中には運命というものがあって、そこからは逃げられないんだ、という....

越智:予定説的なプロテスタンティズムですね。

町山:だから、ダースヴェイダーは主人公ルークに言うんです。「私はお前の父親だ。私の味方につけ。これは運命だ」と。ところがルーカスはそれに反発して.....「どこにいちばん感動した?」ってアメリカ人に聞くと、たいていは1作目で百姓をしていたルークが地平線に沈みゆく二重太陽を眺める場面なんです。「このまま自分は田舎で働いて死んでいくのか」と絶望的な気持ちで、一生行けないかもしれない宇宙を見つめる。

町山:運命を超えていく物語と考えると、アメリカという国の成立ちに思い当たるんですね。アメリカは国が始まった段階ではプロテスタンティズムが厳しくて、予定説で、将来への希望といったものはほとんど考えられないような社会だったでしょう。

越智:そう、あの時代の墓石にはフード付きのマント姿に大鎌を持った髑髏や、翼が生えた髑髏などが描かれています。それが霊魂。ボストンあたりへ行くと、古い墓はみんなそれです。

町山:でも、アメリカを最初につくったのは、そういう暗い世界観を持った人たちなんですね。神というものが頭の上にどんと乗っていて、身動きがとれない。ところが、新大陸に住んでから、まったく違う明るい思想が出てきた。マニフェスト・ディステニーとか、フロンティア・スピリットとかアメリカン・ドリームとか、信じていればうまくいく。愛は勝つという予定説の楽観的解釈みたいなものが。厳格で暗い運命論者の先行世代にあとの世代が理想主義で反発した歴史が『スターウォーズ』などのハリウッド映画で反復されていると思うんです。

越智:ハリウッドというのは、政府の助成金にまったく頼らないで、ロシア・ユダヤ(東欧系ユダヤ人)たちが自己資金で始めて、自分たちの金を動かしてやってきたわけです。そのためには世界中、どこに持っていっても面白がってもらえるような内容にしなければならない。ヨーロッパのように助成金で映画をつくっている国は「これが我が国の文化です」というものを平気で出してくる。じゃあ、アメリカが覇権国でなくなって「これがアメリカなんだ」という作品を発信して商品価値を持ちうるんだろうか。

町山:ハリウッドは生まれたときからずっとグローバルでした。サイレント時代にドイツで『カリガリ博士』や『ノスフェラトゥ』がつくられると、すぐにその監督やらスタッフを引き抜いちゃう。ハリウッドはもともとユダヤ系がつくったので、ユダヤ系を中心に世界中のアーティストの亡命先みたいなことになってました。

ハリウッドは、アメリカにとって異端の集団で、保守派とずっと対立していますが、世界が考えるアメリカの良いイメージ、理想というのは、ほとんどハリウッド映画がつくったものですよね。世界で差別や圧政に苦しむ人々は少なからず、その映画をまぶしく見上げていたと思います。(引用終了)

越智氏の本をもっと活発に出版して欲しいと思うような内容でしたが、この後、あまりそうなっていないように思われるのが残念です。

◎『オバマ・ショック』(アマゾン)
_______________

[内容紹介]彼の演説に、なぜ白人も涙したのか。ベストセラー「アメリカ人の半分はニューヨークの場所を知らない」の著者が、師と仰ぐアメリカ研究者と白熱の対論!

史上初の黒人米国大統領に就任したバラク・オバマ。疲弊する大国は、なぜいま、彼を選んだのか? 覇権国家の衰退を歴史軸で考察する研究者(越智)と、合衆国を駆け巡るフィールドワーカー(町山)が、岐路に立つアメリカの過去・現在・未来を縦横無尽に語り合う。サブプライムローンの 現場 やハリウッド空洞化の実情など、アメリカが陥った病の症例を容赦なく暴き出し、多様な人種がオバマを「支持」した理由を明らかにする!

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by yomodalite | 2011-12-16 17:00 | 歴史・文化:美術 | Trackback | Comments(18)

秘密結社―アメリカのエリート結社と陰謀史観の相克/越智道雄

陰謀論とか、アメリカのことも、越智道雄氏の本を読めば、カンタンにわかるような気がして(ずっとそんな気はしていたものの、未読だったので)ざっくり2冊読んでみました。

まずは「秘密結社」の方から。

古い翻訳本ばかり読んでると、なかなかわからないことが多いせいか、自分が途方もなくアホなような気がしてくるんですけど、新書って1、2時間ですぐに読めて、内容が凝縮されているせいか、すぐに頭が良くなれそうな気がしてしまいます。

また、B選書と言っても、B層向けというわけではなくw、ビジネス社という素敵な出版社の「選書」で、確かに見た目は安っぽいのですが(失礼)、一見上品そうな装幀でありながら、詐欺まがいのタイトルで売ろうとする、どこかの有名出版社の新書とは真逆で、B選書には、山本七平氏の「日本の歴史」「旧約聖書物語」「日本資本主義の精神」などの素晴らしいラインナップがあり、

また、単行本としては、本書のあとがきで、越智氏も触れられていますが、アメリカで20世紀末、一般読者が選んだ百冊の第一位に選ばれているにも関わらず、日本では、これまでまったく無視されてきた、アイン・ランドの「水源」「肩をすくめるアトラス」という小説を2冊も出版し、そのうえ「利己主義という気概」というランドの政治思想エッセイ集まで出版されるという、本気で素晴らしい出版社だったりするので、

もう、すっかり読む前から「陰謀論」とか「秘密結社」など、もっと詳しく知りたい方にオススメーー!!! なんて、ブログに書く気満々で読みはじめました。

下記は、本書の目次。

[序章]今日のアメリカ秘密結社の機能と日本
アジアでの自国の相対化を先読みできる日本版CFRは?
「アジア新三国志」は日中印? 米中印?
現代人は「市民」で同時に「結社員」?

[第1章]アメリカ建国とフリーメースン
ーなぜ「野党型秘密結社」を必要としたのか?

・大英帝国への反逆の核になったフリーメースン
・海賊になった十字軍、陸にあがった海賊
・合衆国を「巨大ロッジ」として建国したメースンたち
・ワシントンの就任式、合衆国建国?メースン建国?
・首都に浮かび上がる「悪魔の五芒星形」
・「議事堂フクロウ」と「トリプル・タウ」
・なぜ多数のメースンがアメリカ建国に関わったのか?
・奴隷取引で蓄財した今日の銀行群
・阿片の富が流れ込んだアイヴィリーグ
・メースンの使命終了と新たな結社の登場

[第2章]スカル&ボーンズ
ー野党型から与党型への変遷の背景

・なぜ他愛もない学生クラブがアメリカ秘密結社の代表なのか?
・「人肉を喰らう」とは「弁証法的手口」?
・ボーンズマンは敵味方の境界を越えて一枚岩か?
・表の世界と裏の世界の価値観を入れ換える儀式
・ボーンズマンが陰謀史観論者らにネタを提供するシニシズム
・ブッシュ息子が政権に登用したボーンズマンは十一名
・7人の大統領に仕え、反日を説いた「日本の宿敵」
・「スティムスンの幼稚園」と「園児」たちの中核
・「後期スティムスン・グループ」と「ヴェトナム瓦解」
・「与党型秘密結社」が見切った現下のアメリカの宿命

[第3章]世界統治面での「均衡保持型秘密結社」の原型
―「セシル・ローズの秘密結社」と「ミルナー・グループ」

・古今未曾有の「大英帝国連邦」妄想に取り憑かれた男
・「セシル・ローズの秘密結社」の存在理由
・アルフレッド・ミルナーと彼の「幼稚園児たち」
・国際連盟を舞台に帝国連邦が米ソの均衡をとる野望
・「フォーニー・ウォー」がなぜ起きたのか?
・与党型秘密結社から均衡保持型秘密結社への移行

[第4章]今日の均衡保持型秘密結社
―「国際関係審議会(CFR)」「ビルダバーグ(BB)」「日米欧委員会(TC)」

・米行政独自の「政治任命職」は陰謀史観の温床?
・CFRの成立とその生みの親ハウス大佐
・情報ゼロの政権に驚嘆すべき巨資的展望を提供
・CFR案(米中復交)を横取りしたニクスンたち
・ニクスンの疎外感と陰謀史観論者らの疎外感
・EUやNATO関係諸国と合衆国を連結するビルダーバーグ
・BB創設者レティンガーと「ヨーロッパ合衆国」
・「国家群の経済的越境」とTC誕生の背景
・TC三角形の日=欧を結ぶ辺の糞詰まり
・レーガン政権に噛み付いた均衡保持型結社としてのTC
・同一シンクタンク・メンバー同士が現実政治の場に立つと
・何がカーターに火中の栗を拾わせたか
・「強化合宿型折衝」、稲妻と雷雨のうちに終了

[第5章]陰謀史観論的結社としてのキリスト教右翼
―パット・ロバートスンの場合

・「頭脳」のネオコン、「手足」のキリスト教右翼
・「新世界秩序」、ブッシュ版とロバートスン版
・「大淫婦」と「再臨のキリスト」、湾岸戦争
・諸問題の現実的解決の不在につけこむ幻想的解決
・最低線のキリスト教徒を政治家した「支配神学」

[終章]「9.11」
―日常化された「秘密結社衝動」再度の非日常化

・秘密結社衝動の日常化と「新世界国家」
・今日のフリーメースンと「9.11」で震撼した結社衝動


上記の目次からも、秘密結社をどろどろとした「悪の組織」として描くのではなく、「現実的な世界戦略を立てるエリート層の組織」と定義づけ、9.11まで、現実の政権にどのように関わって来たかを端的に説明された内容ではあるのですが、、、

わたしは「陰謀論」「陰謀史観」と呼ばれるものは、現在の報道に疑問をもつという意味では、非常に大きな力があると思いますが、それ以上の現実的な「力」となると、その方向性に、かなり疑問を感じるところがあり、

もう少し正確に「敵」を知ることが必要なのではないかと思ってみたり、また、日本でのそれらの扇動者は、いい加減な輸入知識を応用しただけで、怠慢な商売をしている人が多いなぁとも感じていました。

著者は、序章で、

私たち日本人は「日本が中心にいないアジアの近未来」を想定できる視点をもっているだろうか?と疑問を投げかけ、「CFR(国際関係審議会)」の機関誌、編集長の予測を紹介し、こういう想定を精緻にさぐる機関が日本にあるだろうか?と問い、中国にはあるはずだ。インドにも生まれつつあるだろう。

しかし、日本人に代わって、日本がアジアにおける「新三国志的状況」を真剣に考えてくれているのは「CFR」だけで、それこそが「安保ただ乗り」で、先読みすらアメリカ任せなのだ。

もうひとつ言えば、日本ではこういうことを日々考察している組織は、毎日陰謀を企てているようなもので、今日の日本人にはかなり不気味な存在であり、民衆の間にアメリカ以上に「陰謀史観」をあおりたててしまうのではないか。(中略)もしそういう組織があれば、秘密結社的に活動するしかなくなるだろう。

本書で扱う「アメリカの秘密結社」の機能の根本はここにある。つまり、アメリカが世界戦略をどれくらい秘密結社に頼って来たか、その歴史を概観することによって、迫り来るアジアにおける新三国志的状況への日本人の自覚の覚醒に役立てて頂きたいのだ。


と書いておられるのですが、実際のところ、どう役立てていいのかわからないというか、(私が、フツーの主婦であることを脇においてもw)、ところどころで、陰謀論に傾倒せざるをえない民衆に対して、侮蔑感が感じられたり、

それとは逆に、著者がこれまで熱心に研究されて来たWASPに対しての親近感が、著者の意図とは逆に作用しているように感じられる点など、結局、これでは、現状維持で変化を望まないだけの「体制派」を応援しているというか、陰謀論の効果的な面を無力化するに留まっているように感じられました。

陰謀論への傾倒を、侮蔑されているように感じられる点さえ我慢すれば、著者は、真面目にその背景を研究されている、日本では他には見当たらないような研究者なので、その知識を学ぶことで、陰謀論者も、そこから啓示を受けた方も、一層、それらを深めていくことが出来ると思うのですが、、、

越智氏ほどの知識がある方なら、もう少し異なるまとめ方をすることで、もっと広汎な読者にウケたのではと、ちょっぴり残念な思いを抱きつつ、

その4年後の2009年に出版された『オバマ・ショック』に続きます。

◎「秘密結社」越智道雄(アマゾン)

______________

[BOOKデータベース]アメリカを悩ませてきた頭脳(結社)と手足(陰謀史観派)の相克を初めて解決できた政権こそブッシュ政権。頭脳に結社(ネオコン)、陰謀史観派(キリスト教右翼)を手足、米系多国籍企業を心臓と胴体、腕力を軍産複合としている。ビジネス社 (2005/06)





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by yomodalite | 2011-12-11 15:08 | 政治・外交 | Trackback | Comments(0)

『松嶋×町山 未公開映画祭』

今、地上波、地底派(?)も含めて、もっとも面白い番組『松嶋×町山 未公開映画を観るTV』で紹介された海外ドキュメンタリー映画が、今日からWEB配信中。

東京でも忘れがちな、地味なローカルチャンネル、東京MXテレビの番組なので、東京以外にお住まいの方は必見。こちらで、予告編が観られます。

◎『松嶋×町山 未公開映画祭公式サイト』

12月25日(土)から、渋谷を皮切りに、厳選9本は全国でも劇場公開があるみたいですけど、この9本以上に興味深い作品もすごく多かったので、いくつか下記に書き出してみました。

(『金正日花/キムジョンギリア』など、見逃しているのも多いんですが)

☆リンクページの各作品の説明の「この作品の関連ネタを見る」に
更に詳しい情報があります。


フォックスニュースチャンネルと、その創設者ロバート・マードックが
いかに巨大メディアを統率・操作してきたか。
そして視聴者の意識をいかにコントロールしてきたかを描いた、
◎『アウトフォックス Outfoxed』〜イラク戦争を導いたプロパガンダTV

アメリカ議会史上最悪のスキャンダルと言われた、大物ロビイスト、
ジャック・エイブラモフの議会わいろ事件、およびカジノ関連詐欺事件を描いた、
◎『カジノ・ジャック Casino Jack & US of Money』〜史上最悪のロビイスト

1世帯あたり平均9000ドル以上のカード負債があるアメリカ。そんなクレジットカード漬けになっているアメリカ人の借金の実態と金融業界の真の姿に迫り、貧しき者がさらに貧しく、富めるものがさらに豊かになる仕組みを解き明かした、
◎『マックスト・アウト Maxed Out』〜カード地獄USA

笑いとともに、世界に対して挑戦を続けるアクティビスト集団イエスメン。
本作では、イギリスのBBCまでもが完全に騙されてしまうほどに巧みな『でっちあげ』会社や団体を立ち上げ、特定の企業やアメリカのニューオリーンズ州を相手取って、
皮肉たっぷりに戦いを挑んだ、
◎『イエスマン2 The Yes Men : Fix The Would』〜今度は戦争だ!  

「ボラット」の監督でも有名なラリー・チャールズが、世界中の宗教と信仰にメスを入れる。毒舌コメディアンのビル・マーによる“決して相手にパンチを出させない”巧みなインタビュースタイルで、世界中の宗教やその神々、信仰厚き人々に迫った、
◎『レリジュラス』〜世界宗教おちょくりツアー

エクアドルの熱帯雨林で起こった「アマゾン・チェルノブイリ」とも呼ばれる
石油メジャー・シェブロンによる世界最大級の環境汚染と、それに対する訴訟を追った、
◎『クルード』〜アマゾンの原油流出パニック

日本人なら誰もが当たり前のようにきれいな水が身近にあると思っている。しかし世界に目を向けてみると、8秒ごとに子どもが汚い水を飲んだことで死んでいる…。アメリカの大企業がインドで水を取り込んでびん詰めして売っている、現地の人々は地下水位の低下に悩み訴訟に発展している、などなど、当たり前と思っている水の裏側を追った、
◎『フロウ』〜水が大企業に独占される!  

また、MJ関連では、

以前、「マイケル・ジャクソンの顔について(15)」で、紹介した『グッド・ヘアー』や、来週、後編が放送される下記も、すっごく面白かったです!

クリス・ロックが、自らの娘からの「何で黒人の髪はチリチリなの?」という子どもならではの素朴な疑問をきっかけとして、一気にアフロアメリカンのルーツに迫った、
◎『グッド・ヘアー Good Hair』〜アフロはどこに消えた?


前編は終わってしまいましたけど、今週金曜日(11/19 23:30 ~ 0:30)に後編が放送される「DEFAMATION」も傑作!MJの「They Dont Care About Us」を差別だと訴えた圧力団体(ロビイスト)が登場します。後編からでも、観た方がイイかも。。

ホロコーストの悲劇がイスラエルのパレスチナ弾圧の正当化に利用されているのでは?
疑問を抱いたユダヤ系イスラエル人監督が追及する
◎『ディファーメイション DEFAMATION』

☆関連本
『イスラエル・ロビーとアメリカの外交政策[1]』  
『イスラエル・ロビーとアメリカの外交政策[2]』 

☆参考サイト
◎日々の雑感 76:
著書『イスラエル・ロビーとアメリカの外交政策』について





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by yomodalite | 2010-11-17 16:50 | 映画・マンガ・TV | Trackback | Comments(0)

世界権力者人物図鑑/副島隆彦

世界権力者 人物図鑑 世界と日本を動かす本当の支配者たち

副島 隆彦/日本文芸社



金融本以外の、副島本を読んでいる人には、文章部分は特に目新しい点はないのだけど、日頃、愚民化政策として、テレビ、雑誌などのメディアを指示している方々を、逆に、週刊誌的切り口で取り上げた、画期的なオールカラー人物図鑑。世界の権力者が53人掲載されています。

主要人物は、見開き2ページで紹介。

世間が誰もオバマを知らなかった頃から、次期大統領予想をピタリと当てた、副島氏は、現在はオバマの失脚時期と、次にヒラリーが出てくることも予言されていますが、そのヒラリーに関しては、こんな感じ↓


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これも↓(旦那より遥かにブサイクな愛人の写真も)
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あと、小沢一郎逮捕を画策したのは、この人で
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愛国者の中川昭一を、失脚させ、死に追いやったのは、この人。
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田中眞紀子が外相時代、会わないといったのは、“麻薬王”のこの人で、
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子分の売国奴の日本人も実名で掲載されてます。

ちょっぴり懐かしいライス↓
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黒人のライスが、ブッシュの愛人というのは、意外に思う日本人は多いと思うけど、お金持ちの家の子供の保育は、ナニーと呼ばれる乳母(黒人女性が多い)に任せられていることから、金持ち家庭のボンボンには、よくありがちの性癖らしい。。(とまでは、本書には書かれてないけど)

ニュースを読むのにたいへん役に立つので、一家に一冊は必要。
副島氏は出版にあたり、何が起こってもいいという覚悟をされているようですので、ご購入はお早めに。


2010年3月5日(金)TBSラジオ「ペラ☆ペラ」の、水道橋博士の紹介が面白いので、ポッドキャストが聞ける方は、そちらもご参考に♡

☆シリーズ第2弾!『ヨーロッパ超富豪権力者図鑑』
___________

[内容紹介] 副島隆彦 アメリカ研究30年の成果を凝縮! 世界帝国アメリカの没落、新興国の台頭、そして日本の民主党政権転覆の謀略――。激しく変化する世界の裏側で、いったい誰が暗躍しているのか?
ベストセラー連発、オバマ大統領の誕生、リーマン・ショックなど、数々の予言を的中させてきた副島隆彦が、世界の政治・経済・金融を支配する最重要人物76人をカラーの顔写真とともに解説。
世界覇権をめぐるロックフェラー家とロスチャイルド家の歴史、次の超大国を中国動かす人々、ドル崩壊に直面する米金融・財界人たち、迫り来るオバマ大統領の辞任と次の大統領ヒラリー、激しく対立するアメリカのグローバリストとポピュリスト、アメリカ処分案を検討する新興大国BRICsと欧州の指導者たち、属国・日本に総攻撃を仕掛ける日本操り班(ジャパン・ハンドラーズ)の正体――。権力者たちの動きがわかれば、世界が見える!
政治・経済ニュースの裏側がわかる!

「この本で、今のアメリカ政財界(最高支配者たち)と世界の動きが大きくわかる。そうすれば私たちの日本国の運命もわかる。(中略)私のアメリカ研究30年の成果をあえてこの一冊の写真集(グラビア)に表した」――副島隆彦(はじめにより) 日本文芸社 (2010/2/25)

[収録人物] バラク・オバマ、ヒラリー・クリントン、デイヴィッド・ロックフェラー、ジェイ・ロックフェラー、ズビクニュー・ブレジンスキー、ビル・クリントン、ミシェル・オバマ、コンドリーザ・ライス、ジョージ・W・ブッシュ、ティモシー・ガイトナー、ポール・ボルカー、ラーム・エマニュエル、ベンジャミン・バーナンキ、アラン・グリーンスパン、ロバート・ルービン、ラリー・サマーズ、ポール・クルーグマン、ジョゼフ・E・スティグリッツ、ウォーレン・バフェット、ビル・ゲイツ、レオ・メラメッド、ミルトン・フリードマン、ジョージ・ソロス、サンフォード・ワイル、ジェイコブ・ロスチャイルド、ナット・ロスチャイルド、イブリン・ロスチャイルド、ダヴィド・ロスチャイルド、アル・ゴア、ヘンリー・ポールソン、ルパート・マードック、胡錦濤、温家宝、江沢民、曽慶紅、習近平、李克強、ウラジミール・プーチン、ドミトリー・メドヴェージェフ、マンモハン・シン、ルーラ・ダ・シルバ、ニコラ・サルコジ、ゴードン・ブラウン、ロン・ポール、ディック・チェイニー、ドナルド・ラムズフェルド、ジョゼフ・ナイ、リチャード・アーミテージ、マイケル・グリーン ほか 計76人



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by yomodalite | 2010-03-15 18:16 | 政治・外交 | Trackback | Comments(0)

アメリカを支配するパワーエリート解体新書/中田安彦

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『ジャパン・ハンドラーズ』『世界を動かす人脈』など気鋭のアメリカ研究家、中田安彦氏の新刊。陰謀論とは一線を画す、真実のパワーエリートの世界。

筆者は、はっきりと言う。
大統領となったオバマは、“見えない鎖”でつながれている。彼の行動を決めているのは、側近たちであり、これらの財界人たちである。大統領選挙のシナリオを書いたのもこの人々だ。


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by yomodalite | 2009-09-06 22:30 | 政治・外交 | Trackback | Comments(0)

マイケル・ジャクソン観察日誌/エイドリアン・グラント

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マイケルが亡くなって、1ヶ月以上経ちました。

生前熱心なファンでなかったくせに、この間、私のようにマイケルに夢中になっていた人は多いと思うけど、彼の死を残念がり、残された作品への賛辞で溢れていた現象も少し落ち着いたところで、ひっそり追悼したいと思います。

本書は、マイケル・ジャクソン公認ファン雑誌の編集長である著者が、1958年8月29日の誕生日から1995年9月24日までのマイケル観察日記を箇条書きにしたもので、訳者により1997年の夏のヨーロッパツアーまでが加筆されています。

(この本は『マイケル・ジャクソン全記録』の初版ヴァージョンです)

読了したのは、1ヶ月前ぐらいなのだけど、なかなかブログアップできませんでした。

生前のマイケルに対して、誤解が多かったことに衝撃を受けつつも、死後の賛辞一辺倒への急激な変化にも乗せられたくない。まずは、私の中で彼に抱いた謎に決着をつけてからという思いでした。

そもそも、わたしのマイケルへの最大の誤解は、彼の容貌が「人間離れ」していった時期の作品がつまらないと思っていたことでした。

しかし、その誤解は作品に触れることですぐに解消されました。2001年10月に発売された「Invincible」も、1997年の「Blood On The Dance Floor/HIStory In The Mix」もマイケルが亡くなってから真剣に聞き直して、そのクオリティに驚かされたのだけど、

もっとも衝撃的だったのは、ニューヨークでソロ30周年を祝うコンサート「Michael Jackson : 30th Anniversary Celebration, The Solo Years」の再放送を観たときでした。

前半は、デスティニーチャイルド、アッシャーなど、今をときめくスター達が次々と、特別観覧席にいるマイケルの前でショーを行なっていき、マイケルの側には、エリザベス・テーラーや、マコーレー・カルキンも同席し、遠目に見ても人間離れの激しい彼の顔は、そんなに近くで見て大丈夫なの?カルキン!と心配したくなるほどでしたが、マイケルは一向に構わぬ様子で、まるで「異形の王」のように存在していました。

ところが後半、エリザベス・テーラーの紹介により、再結成したジャクソンズとして、マイケルが登場すると、今までのスター達は一体何?と言うか、比較することがバカバカしいほどの圧倒的な輝きを見せ、マイケルだけでなく、兄弟たちすべてがまったくブランクを感じさせない素晴らしいパフォーマンスで、会場の老若男女すべてを熱狂させる。

ヒット曲に事欠かないジャクソンズとはいえ、メンバーすべてが懐かしさではなく、今現在これほどまでに輝いた演出が実現できたことに、本当に驚かされたのだけど、その驚きがまだ覚めやらない舞台に、今度はマイケルが1人で登場する。ジャクソンズのときよりずっとシンプルなブルーのシャツで。。。

もうここからは、口をぽかんと開けたままで観ていたかもしれない。このときの「Billie Jean」の素晴らしさを言葉で表現できる人がいるだろうか。何度観ても色褪せないとは、よく言うけど、このときの彼の姿は、観るたびに、新しいマイケル狂を作り出していくと思う。すでにある“伝説”の遥か上をいくレベルを、30周年記念という、功労賞のようなコンサートでやり遂げるスゴさ!

この伝説的なコンサートの翌日にあの“アメリカ同時多発テロ事件”が起こったことは、彼を攻撃し続けた相手の正体と無関係ではないでしょう。間違いなく奇跡の復活を遂げるはずだったマイケルのその後の活動はマスコミによって更に無視されることになる。

それにしても、どうしてマイケルは、不可解な整形を繰り返したと思われるような精神状態で、これほどクオリティの高い作品を生み出し続けられたのか?

「白人コンプレックス」
「女性になりたかった」

上記2つの意見はすでに真実であるかのように言われています。確かに、白人より白い肌になり、二人の妻も白人で、子ども達も白人のように見える。30周年コンサートでも、エリザベス・テーラーや、ライザ・ミネリは彼の整形の見本になっているようにも感じました。それでも、あの鼻は白人ではないし(とにかく人間が見本ではない)、子どもの養育権を実の母親にしたことは理解できるとしても、どうして3人の白人の子どもたちの後見人が、黒人のダイアナ・ロスなんでしょうか?

女性願望についても、最初の結婚前ぐらいから、かなり赤味のある口紅もつけるようになったり、30周年記念コンサートでの、まったく年をとっていないライザ・ミネリと、マイケルの整形には似通った点が感じられたが、それなら何故「バッド」の頃に入れた男性らしさの象徴ともいえるアゴの中裂がそのままなんでしょうか?

彼はイイと思ったものすべてを自分に取り入れることに、ひたすら一生懸命で、まるで、「Black or White」でのモーフィングのように、自らの容貌に非常に自由な感性でいたかったのでしょうか。

黒人でもあり白人でもあり女でもあり男でもある、そういう存在になりたかった彼の尋常でない一途さは、不世出の天才ならではですが、彼の「人種や、肌の色にこだわっていない」と言う発言は、一般的に日本人が考えるほど気軽な発言ではありませんでした。「世界平和」というのも同様に危険な発言です。マイケルの場合は発言だけでなく、その活動への熱心さ、影響力の凄まじさが、あれだけのバッシングを生んだのでしょう。

本書を読むとよくわかるのですが、子どもへの寄付活動は、その額も回数も半端ではありません。マイケル1人で、これほど熱心な寄付活動をされては、大手・老舗の宗教関係者はどう思ったでしょう。

アニメキャラの鼻、舞台女優の眼、男らしい顎。。。人間を見本としないアニメの鼻だけが、今の形成外科医のテクニックにないため、なかなか思うように行かなかった。。。彼が自分が受けた手術の回数を「鼻は2回」と言っているのは、デザインの変更のことで、黒人風の広がった鼻を細くまっすぐにしたのが1回。アニメ風に変更したのが2回目ということなら理解できます。鼻先の両側に穴があることなど、彼には問題ではなかったんでしょう。

彼の形成手術への傾倒は、女性願望でも人種でも醜形でも、およそ通常のコンプ解消といった文脈で語られるものではないことは明らかだと思います。ただ、彼は年をとることだけは、きっと嫌だったのかもしれません。

残念ながら(?)本書には、○月○日、××形成外科に行く。なんていう記述はありませんが、マイケルのパブリックな歴史のすべてをかなり忠実に追うことができます。彼の作品を見れば、これほどまでに永く超一流の創造期間を保つことができたアーティストはいないということがよくわかりますが、「scream」「You Are Not Alone」や「They Don't Care About Us」など、幼児虐待事件の凄まじい逆風のころに、これほど完成度の高いPVを制作していたなど、改めて彼の精神力の強さに、驚愕せずにはいられませんでした。

また、マイケルの死因ともされている鎮痛剤中毒。デメロールという歌詞が登場する「Morphine」は、1997年発売のアルバム「ブラッド・オン・ザ・ダンス・フロア」の2曲目に収録されていますが、その4年前の1993年の11月12日に鎮痛剤中毒の治療に専念するために、ツアーを途中でキャンセルすることを発表しています。

鎮痛剤中毒発表から16年。スターから、とにかく金を毟り取ろうとする大勢の人々、わずか5週間で750万枚も売れた『ヒストリー』の成功を無視したマスコミ、そして、その作品を宣伝するよりも、妨害しようとしたSONY。。。あまりにも巨大に膨れ上がった金の亡者と、世界を戦争状態にしておきたい勢力に囲まれながら、これほど永く、そして力強く戦ったアーティストはもう2度と現れることはないでしょう。

彼は、アメリカが生んだ最大のスターであるだけでなく、神にもっとも近づいた人間だったと思う。

☆鼻、眼、顎の変化にこだわっていますので、白班症、全身性エリテマトーデス(全身性紅斑性狼瘡:SLE)の影響に関しては、美容整形の理由に含めませんでした。

追記(2009.12.7)

彼の顔へのこだわりについて、現在は少し異なる感想を抱いています。私は、完璧主義者である彼が目指した“顔”がどういうものだったか?にとても興味があったのですが、むしろ、彼はそこにはあまり興味がなかったのではないかと思うようになっています。

特に、鼻梁がどんどん細くなっていった理由は、彼の美的な“こだわり”ではない可能性に思い至り、「マイケル・ジャクソンの顔について」というエントリを書き始めることにしました。

____________

【BOOKデータベース】本書は、イギリスのマイケル・ジャクソン公認のファン雑誌オフ・ザ・ウォールの編集長である著者が、マイケルの歩みを極めて丹念に調査し、それを日付によって時系列で並べた詳細な“観察日誌”である。何年何月何日にどこで何をしたか。あるいは、何月何日にどの曲がチャートに入り何位まで上がったか。何月何日にどの国のどの都市で公演をしていたか、などが非常にわかりやすいスタイルで記されている。マイケルの歩みを知るには非常に便利な、資料性の高い著作である。

インタヴューや声明からの抜粋も収録されていて、彼の生の言葉が時系列に沿ってまとめられたという意味でも、非常に貴重なものである。 小学館 (1996/12)





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by yomodalite | 2009-08-07 15:59 | マイケルジャクソン書籍 | Trackback | Comments(2)

日米同盟の正体ー迷走する安全保障/孫崎享

f0134963_12162425.jpg著者は外交官として、ソ連、アメリカ、イラク、カナダ勤務の後、ウズベキスタン大使、国際情報局長、イラン大使を歴任し、2002年防衛大学教授という経歴。

本著は、日米安保体制(日米同盟)が、国民の知らない間に、完全に米国の戦争協力の道具に変えられてしまっていることを白日の下にさらし、これからの日米同盟とは、米国の「テロ」との戦いに日本がどうやって協力させられていくかという事でしかない、という内容。

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by yomodalite | 2009-05-22 12:21 | 政治・外交 | Trackback | Comments(0)

キャプテン・アメリカはなぜ死んだか ー 超大国の悪夢と夢/町山智浩

キャプテン・アメリカはなぜ死んだか (文春文庫)

町山 智浩/文藝春秋




本書は『アメリカ人の半分はニューヨークの場所を知らない』と同じく、『週間現代』の連載をまとめたもの。ベストセラーの続編ではなく、同時期のコラムの異なる編集のようです。(2ヶ月違いの発刊)

『アメリカ人〜』は、政治に関するコラム集で、こちらはそれ以外のカルチャー系のコラムなんですが、どうして『週間現代』連載で、2冊とも講談社じゃないの? なんで出版社が違うの?という疑問に関して、著者は本書のあとがきで、答えているんですが、どうやら、ブッシュ、小泉時代の大掛かりなマスコミ対策にひっかかったような。。。でも文芸春秋がOKいうのも(?)

Chapterは9編。

・Living in America
・American Nightmare
・Taking Care of Business
・Rock in The USA
・Culture Wars
・Boob Tube
・Celebrity Meltdown
・Nippon Daisuki!
・American Dreamers

「Boob Tube」の意味がわからなかったのですが、どうやらTV受像機とか、番組放送のことみたいですね。

時事ネタのコラム集ですが、今読むのはもちろん、数年後に読んでも貴重な資料になりそうな、口当たりは軽いけど濃くて深い内容は町山氏ならでは。『アメリカ人〜』を読んだ人も、読んでいない人にも!
__________

【内容紹介】★ブッシュの人生は『エデンの東』だった。★『サラ、いつわりの祈り』はいつわりだった。★プレスリーもスーパーマンもユダヤ系だった。★南北戦争で勝ったのは南軍だった?★セックスとドラッグに溺れるアーミッシュ。★ネオナチ美少女双子デュオ!★グーグル社員はブログするとクビ?『アメリカ人の半分はニューヨークの場所を知らない』に続く、「本当のアメリカ」がわかる最前線コラム100本! 太田出版 (2008/12/18)

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by yomodalite | 2009-04-10 21:38 | 現代文化・音楽・訳詞 | Trackback | Comments(0)

スモール・サクリファイス(上・下)/アン・ルール(著)、曽田和子(訳)

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全米で有名になった「ダウンズ事件」の全貌をあますところなく描いた本書は、ダイアン・ダウンズという稀有な女性がおこした1987年の事件のノンフィクション作品。

彼女は3人の我が子の命を撃った。最初の結婚で得た7歳のシェリル、8歳のクリスティ、離婚前に別の男性との間に出来た3歳のダニー。彼女にとって妊娠と出産は、自分にかけがえのない喜びをあたえてくれるものだった。

代理母としての出産も経験し、自ら代理出産事業も始めようとしていた。子供は常に自分を必要としてくれる。けれど養育にはあまり熱心ではなかった。人並み以上の知能。人を惹きつける美貌を持ちながら、彼女は何一つ成功できないでいた。

著者のアン・ルールは、陸上のコーチの父親と発達障害児を教える母との間に生まれ、親戚には郡警察長、検察官、検死官をもち、心理学、犯罪学、刑罰学を大学で学び、犯罪捜査、警察行政、捜査術、逮捕学をコミュニティカレッジで学び、実際にシアトル警察の警官になり、女子少年院で働いたこともある。という経歴で、本書で成功後も数々のベストセラーを生みだし、犯罪ノンフィクション作家として、このジャンルを確立させた人物とも言われている。また5人の子どもを育てた母親でもあり、現在は孫もいる。

この上もない悲惨な事件ですが、人一倍渇望しながらも、愛を理解できない母親に育てられ、撃たれた、娘の母親への愛、被害にあった子どもを救おうとする医療関係者も、検察も子ども達を必死に守ろうとする。クライマックスであるクリスティの裁判での場面は泣かされます。また著者の日本語版読者へのメッセージでは、クリスティとダニーのその後にも触れられ、母親が読んで気分が悪くなるだけの作品ではありません。

マスコミを賑わす要素が多過ぎる事件ではあるけれど、著者はそのすべてをあますところなく描ききる技量と研鑽を積んだ最適な作家なので、良質なミステリを求める方にもオススメです。現在、絶版のようなので、図書館を探されると良いかもしれません。

★★★★

ところで、畠山被告は無期懲役が確定しそうですね。彼女の事件もあいまいな点が多く、夥しい畠山被告のTV映像による印象報道だけでなく、畠山鈴香という女性をもっと綿密に取材した作品が読みたいものです。わたしは、彼女に、貧しい家庭に育った田舎の文学少女を感じてならないんですよね。。。

下記は、簡単なあらすじです。読んでみようと思われる方は、読まない方がいいかな。


(上巻)彼女の生い立ち、父親との関係、結婚、出産、代理母、奔放な男性関係から、事件が起こるきっかけともいえる男性との出会い。。。

事件は起こった。シェリルは亡くなり、重大な障害が残るほど重症を負ったクリスティとダニー、3人の幼児と共に撃たれた若い母親は、マスコミによって悲劇のヒロインになるが、事件を調べる刑事たちは、彼女を次第に追いつめていく。。。

(下巻)刑事たちの執念は一歩一歩ダイアンを追いつめてはいたものの、逮捕までは永い道のりだった。ダイアンはその間も新たな男を求め、妊娠を渇望し、クリスティとダニーの養育権が奪われるのも嫌だった。

事件で注目を浴びていたことで、困難に思えた新たな妊娠だったが、彼女は今までどうりハンサムで、しかも今まで以上のインテリ男性の子どもを身ごもり、その数ヶ月後に逮捕された。ダウンズ事件は再度全米を賑わす大事件となった。

検察側にとって裁判は容易ではなかった。クリスティの回復を優先し、長い準備期間をかけてようやくこぎつけた裁判での証言。しかし弁護士は、幼いクリスティにも容赦なく覆いかかる。無罪の評決には12人の陪審員の10人が賛成すればいい。だが有罪にするには12人全員が賛成しなくてはならない。陪審員は、妊婦の容疑者を有罪に出来るのか。

裁判ではいつも清楚なマタニティドレスだったダイアンは、拘置所を出る時は髪をショートにし、ピッタリのジーンズに15センチもヒールがある膝上ブーツを履いていた。裁判が終わってもダイアンの物語は終わることはなかった。。。。

「See-Saw日記」
http://see-saw.way-nifty.com/diary/2007/10/post_1db5.html
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【Amazon.co.jp】
アメリカでは、本に対する賛辞に "Un-putdownable!" という言葉がある。本から手が放せない、読み出したら止まらない、というニュアンスだが、この『スモール・サクリファイス』を評するのに、これほどピッタリくる言葉はないだろう。全米では各紙が絶賛し100万部を突破したというのも、とにかく手にとって読み始めればうなずけるに違いない。
著者のアン・ルールは、シアトルで警察官を経験した後に作家となった、女流のクライム・ライター。「犯罪ノンフィクション」というジャンルを確立した第一人者で、『スモール・サクリファイス』は、いまやベストセラーを連発している彼女の出世作である。

物語は、オレゴン州スプリングフィールドの病院のER(緊急治療室)に、銃撃を受けた若い母親が助けを求めにくるところから始まる。血まみれの車内には瀕死のわが子が3人。全米を震撼させた「ダウンズ事件」だ。母親のダイアン・ダウンズは、10代のころ、父親からの性的虐待にさらされた過去を持つ女性だった。不幸な結婚ののち、わが子への虐待、代理母としての出産、乱れてゆがんだ男性遍歴を重ね、すさまじいまでの人生を送っていく。

マスコミと市民を味方につけ、「悲劇のヒロイン」を演じるダイアン。だが、幼い子どもの命を奪ったのは、実は母ダイアンではないのか? 検事ヒューギを中心とする息詰まる捜査と、事件の背後に隠された人間の病理と悲惨さを、アン・ルールは圧倒的な取材と筆力で描ききり、読む者の心を締めつけて離さない。

上下2巻、800ページというボリュームだが、達者な訳文の力もあって一気に読み通してしまう。まさに "Un-putdownable!" なのだ。しかも、最後のどんでん返しには「これが本当に実話なのか?!」と仰天すること請け合い。「どんな推理小説もかなわない迫力」(インディアナポリス・スター)の本書は、ミステリーファンにも強くすすめたい。(遠藤聖一)




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by yomodalite | 2009-04-08 14:01 | 報道・ノンフィクション | Trackback | Comments(0)

アメリカは今日もステロイドを打つ USAスポーツ狂騒曲/町山智浩

アメリカは今日もステロイドを打つ USAスポーツ狂騒曲 (集英社文庫)

町山 智浩/集英社




アメリカ在住、町山智浩氏によるアメリカ本、本書はスポーツ編。

タイトルのステロイドとは、筋肉増強剤のそれ以外にも、学習のための覚醒剤、演奏の前に飲むアガらない薬、整形...遺伝子ドーピングの時代の到来、勝つためには手段を選ばず、障害をも「強さ」で乗り切ろうとするアメリカが、これでもかと紹介されます。

アメフト、バスケだけでなく、アメリカだけで異常に盛り上がっているスポーツが網羅されていますが、スポーツに興味がなくてもカルチャー本として充分読ませる内容。流石です。

まえがき もっとデカく!強く!速く!
筋肉こそがアメリカ。デカくなるために、強くなるために、速くなるために、アメリカはどこまでも突き進んでいく!

第1章 強さこそはすべて—All You Need Is To Be Strong
ステロイド使用の蔓延が引き起こす悲劇と、すべてを犠牲にして可能性の低いスポーツ業界での成功に賭けるモンスターペアレンツ。メジャーリーガー、プロレスラー、チアリーダー、ボクサー、サーファー。。。

第2章 悪魔に挑む男たち—Daredevils
85キロ以上の距離を走るウルトラマラソン、スケボー禁止から生まれたパルクール、スタントライダー、高さ360mの綱渡り、フリースタイルモトクロス。。。ハイリスク、ローリターンな競技に人生を賭ける者たち。

第3章 スポーツ犯科帳—Sports Crime File
『リアリティTV』が生んだ悲劇、精神障害でホームレスのサッカー選手の名探偵ぶり、詐欺ストリッパー、友人を殺害してしまったボクサー、NFLのスターが運営していた闘犬、NFLのスパイ事件、ハルク・ホーガン一家を崩壊させた息子の飲酒運転など、スポーツ選手の犯罪の数々。

第4章 私を観戦に連れてって—Take Me Out To The Ball Game
スポーツ観戦にまつわる話題。NFLの定番ソング、ロケット工学者のチアリーダー、大リーグで三千個のボールを集めた男、一万敗もしたチームのファン意識。野球カードの異常な高騰。

第5章 アメリカンスポーツの殿堂—Only In America
60歳にしてガチで勝利した女子プロレス最強の選手、ぶつかるのを避けるなんて男じゃないデモリッションダービー、地獄のマリアたちによるローラーダービー、ビンボー白人運動会レッドネックゲームス、10年間で18人の死者や度重なる脳障害や耳がちぎれてもアメフトは止められない。ダンクが変えたNBA。

第6章 多民族国家のバトルロイヤル—Racism In Sports
チームのマスコットはインディアンばかり、「障害を持つ人を映画に出さずにいられない」ファレリー兄弟、NFL唯一のアジア系スターはアフリカと韓国とのハーフ、レスリングも、大リーグも試合後に宗教ショーがある、未だに黒人監督やオーナーはいない。アリのラップ、NFLのスター選手スコット・フジタはブロンドでブルーの瞳。DJの差別発言。

第7章 敗れざる者たち—The Undefeateds
『ミリオンダラー・ベイビー』原作者の人生、車椅子ラグビーは「殺人ボール」、片足のスキーヤーの壮絶ガン人生、四肢欠損のアマレスチャンプ、人民寺院教祖の息子とバスケットボール、カリフォルニア工科大学のバスケチーム、一万敗したチームが世界一に、ミッキーロークが演じたプロレスラー。

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【内容紹介】アメリカの10代のステロイド使用者数、30万人! プロスポーツ選手になれる人は、たった2400人しかいないのに。なぜアメリカ人は副作用を知りつつ、ステロイドで筋骨隆々の体になろうとするのか…。その他、娘をチアリーダーにしたくてライバルを殺そうとした母親。マラソン10回分(421.95km)を75時間で走るエリート・ビジネスマン。1枚の野球カードに3億円払う人々、などなど。
「アメリカンスポーツ=富と名誉、夢と希望、強くてカッコいい」の思い込みをぶっ壊すエピソードの数々。「アメリカ人の半分はニューヨークの場所を知らない」の著者が暴くスポーツバカ大国・アメリカの真実。

80年代は筋肉の時代だった。大リーグでは、レスラー並の体をしたホセ・カンセコとマーク・マグワイアがバットを大振りしてバカバカとホームランを打っていた。スクリーンではシュワルツェネッガーが、シルベスタ・スタローンが筋肉をうならせてアメリカの敵を倒していた。筋肉こそアメリカだった。(中略)この本は「ビッガー、ストロンガー、ファスター」という言葉に象徴されるアメリカンスポーツの世界で日夜繰り広げられる、異常な事件、笑えるニュース、悲しい出来事、感動的な物語を、アメリカに暮らす異邦人の目から見たコラムを集めています。(まえがきより抜粋) 集英社 (2009/2/25)



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by yomodalite | 2009-03-24 13:45 | 現代文化・音楽・訳詞 | Trackback | Comments(0)

旧「読書日記と着物あれこれ」。歴史/文学/お笑いを好み、着物生活をしていたはずが、いつしかマイケルジャクソンのように本を読もうになってしまったブログ。永年暮らした東京を離れ、現在は大阪を満喫中。


by yomodalite