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芸能人はなぜ干されるのか?/星野陽平

増補新版 芸能人はなぜ干されるのか

星野 陽平/鹿砦社



そろそろ、ヤクザ本を読まなくちゃ、ということで選んだ本。最近の新書のような軽い内容を想像していたのですが、ちょっぴり大きめサイズの本を開けてみると、著者の熱が直に伝わってくるようなずっしりとした二段組みで、いくつかの章は最近の新書なら、それだけで1冊になるぐらいの内容でぐいぐい読ませるのですが、読了後はぐったり疲れてしまうという感じの力作。


でも、ぐったり疲れてしまうのは、芸能界の闇が深いというよりは、国民の奴隷化が日に日に進んでいる時代に、芸能界だけを特殊化しているような記述になのかもしれません。芸能界の常識は社会の非常識だった時代は終わり、今や、それは日本社会の縮図になっているんじゃないでしょうか。


芸能プロダクションの経営者が集まって作った《音事協》の初代会長は、中曽根康弘でしたが、小泉純一郎が行った派遣事業の改正は、労働者全体を奴隷契約にしました。恫喝で動いていたり干されたりするのは、芸能人だけではないですよね。


プロローグ 北野誠事件

第1章 干された芸能人

第2章 「芸能プロダクション」とは何か?

第3章 抵抗の歴史

第4章 「ナベプロ帝国」の落日

第5章 ジャニー喜多川の少年所有欲求

第6章 「免許のないテレビ局」吉本興業

第7章 バーニングプロダクションと暴力

第8章 韓国、ハリウッド、声優業界

第9章 芸能と差別

付録 カリフォルニア州労働法・タレント斡旋業規制条項


第1章に登場した名前は、鈴木亜美、セイン・カミュ、ボビー・オロゴン、(元AKB48で卒業後AV女優になった)やまぐちりこ、加護あい、水野美紀、松方弘樹、川村ゆきえ、眞鍋かおり、小林幸子、(ユニット羞恥心の)野久保直樹、水嶋ヒロ、沢尻エリカ・・・


第2章では、「ナベプロ帝国」とまで言われた巨大芸能事務所を最初に創り上げた「渡辺プロダクション」の戦略と存亡、バーニングの躍進とレコード大賞の裏側など盛りだくさんな内容で、登場したのは、大原みどり、森進一、ピンクレディー、竹中労、泉ピン子、浜崎あゆみ、五木ほろし、八代亜紀、中森明菜、近藤真彦など・・


ナベプロは、自社タレントのレコーディングの際に、作曲、編曲をおこなって原盤にかかる費用を負担することで《原盤権》を保有し、それまで利益のほとんどがレコード会社に入る仕組みを変え、レコード会社と芸能事務所の立場が逆転した。71年に著作権法が改正されると、レコードを使用したり、演奏した際にも《音楽著作権》が認められるようになり、さらに利益が拡大する。またその利益によって、他の事務所タレントの《音楽著作権》をも取得するようになり、ますます勢力が拡大していった。


当時の職業安定法32条第3項には、


「有料で又は営利を目的として職業紹介事業を行う者は、労働大臣の許可を受けた金額を超える手数料その他の報奨金を受けてはならない」


とあり、手数料の上限は10%とされていたが、法律通り10%のマージンで経営していたのは、ごく少数の芸能プロダクションに過ぎず、タレントとの契約で、タレントが1割という実態もあるほどの奴隷契約だった。一方、力をもたない事務所と、売れっ子タレントの場合、事務所はパワータレントになめられる。という問題もあり、ナベプロが指揮を執る形で、独立や移籍をしようとしたタレントを、業界全体で徹底的に干し上げるという目的で、プロダクション経営者による《音事協》が設立され、元首相・中曽根康弘が初代会長の椅子に座った。


これによって、業界全体で、独立しようとするタレントを干すことが出来るようになったものの、《音事協》に加盟するには、3名の承認が必要で、会費も高く、弱小プロダクションには入会も困難なうえに、ポッと出は守ってくれない。《音事協》は、意に沿わない報道をしたマスコミに対しても力を発揮し、タレントを多数抱えるプロダクションは、「バーター」「共演拒否」という手段で、番組への影響力を増していく。


ドラマの世界で「バーター」が力を持ち始めると、番組とタイアップした曲が売れるようになる。音楽業界に芸能プロダクションの影響が顕著に見られるようになったのは、90年代の中頃で、ここで、現在の芸能事務所の頂点にたつバーニングが躍進する。バーニングパブリッシャーズは、エイベックス所属の有名アーティストの音楽出版権のほか、所属タレント以外の音楽出版権も多数もっていた。大手事務所は、弱小事務所からタレントを引き抜くことがますますしやすくなり、弱小事務所は、大手に上納金を納めなくてはビジネスにならない。


第3章は、戦前の映画業界の五社協定を崩壊させた、銀幕のスター俳優たちの歴史。


第4章は、ナベプロ帝国に挑んだジャーナリスト竹中労、日本テレビ「スター誕生」の成功、アグネス・チャン、森進一、沢田研二、小柳ルミ子というナベプロ独立が成功した理由など。


第5章は、この本の出版社「鹿砦社」のドル箱でもあるジャニー喜多川の少年愛疑惑が中心。


第6章は、お笑い界を独占する吉本興業の始まりから、現在の繁栄まで。興味深かったのは、2012年にその存在がクローズアップされた吉本ファイナンスの件と、漫才ブームの頃、島田紳助が労働組合を結成していたこと。


そして、第7章が、本書の白眉ともいえる「バーニングプロダクションと暴力」


当初、南沙織を抱える程度だったバーニング事務所は、75年に郷ひろみが移籍してきたことえ、有力事務所となり、日本テレビの「スター誕生」などによって衰え始めた渡辺ブロの影響力の低下から、有能マネージャーが流出。彼らに支援を行うことで、楽曲の権利を手にしていったバーニングは、利権の獲得を広く外部に求め、業務提携によって利権を拡大させ、ナベプロのドンと呼ばれた渡辺晋亡きあと、周防は芸能界のドンとして、君臨することになる。渡辺プロが、ヤクザの商売だった芸能置屋稼業を近代的な稼業にしたとすれば、バーニングは暴力団の力を芸能ビジネスに取り込んできたーー


バーニングと、90年代活況を呈した音楽業界でもっとも時代を牽引していた音楽プロデューサー長戸大幸。彼が率いるビーインググループとバーニングの関係。顔を腫らした長戸は、こう言った(らしい。)


「・・・原盤製作で金を投じている者の権利が保護されるから、音楽著作権のビジネスは美味しい。でも、バーニングは、カネも払わず、あとから入ってきて「よこせ」と言ってくる。それじゃ、ヤクザと同じだろう。俺は東京ではもう仕事ができない。長戸大幸の名前も使えない。これからは、ビーイングに代わって、エイベックスというレコード会社がバーニングと組んで音楽シーンを独占するだろう。松浦は連中に仁義を尽くす男だ」


登場する有名タレントは、華原朋美、小室哲哉、YOSHIKI、工藤静香、木村拓哉、GRAY、フォーライフレコードを設立した吉田拓郎、井上陽水、小室等、泉谷しげる・・・


談合が行われる中で、もっとも利益を得られるのは談合破りである。《音事協》という談合組織の仕切り役であるバーニングは、タレントの引き抜き禁止という芸能界の秩序を維持するために暴力を誇示する必要があった。周防郁雄は、汚れ役を任じ、芸能界の闇を肩代わりしたことで「芸能界のドン」となった。


第8章の「韓国、ハリウッド、声優業界」では、韓国の芸能界は、日本を手本としていること、また、アメリカのエージェンシー制度は、それとはまったく異なり、芸能プロダクションというビジネスモデルは、日本と韓国にしかないこと。ただ、ストライキやでも行進によって、粘り強く製作会社と交渉し成り立ってきた声優業界の仕組みはかなり異なっていた・・・しかし、その声優業界も、近年、芸能プロダウションの進出が激しく・・・


第9章は、「芸能と差別」という内容として、よくある伝統的なものでした。


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by yomodalite | 2016-03-16 06:00 | 報道・ノンフィクション | Trackback | Comments(0)

続 突破者/宮崎学

続・突破者

宮崎学/同時代社

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著者の話口調による文体で、濃厚な人生の記録がてんこもりな本。

地震酔いや、ツイッターの見過ぎなのか、目線を縦に動かすのもしんどかったり、ちょいとTVをつけようものなら、あんまり見たくないタイプのオヤジ達が、聴きたくないような内容ばかり話していたりして、

もう、本当にオヤジにはうんざりぃーーーなので、

キレイなこととか、オシャレなこととか、エロいことしかw、考えたくないって、わたしも思っているんだけど、ちょっと無理して、読んでいたら、

瓦礫の隙き間に「カワイイ花が咲いてたよ」って気分になったので、紹介します。

これを読むきっかけは、震災パニックでこれまでにないほどツイッターを見ていたとき、この本に関するツイートが目に留まったから。

1996年にベストセラーになった『突破者』は、なんとなく読んだような気がしていたんですが「とっぱしゃ」ではなく「とっぱもの」だったことも知らず記憶違いをしてました。

本書は『突破者』の後から、現在までの15年を記した本ですが、前作を読んでいなくても、問題のない内容で、

栗本慎一郎、白川勝彦、野中広務、円より子、田中康夫、鈴木宗男、辻元清美...など、政治家との関わりや、

盗聴法、住専、田中義三と偽ドル札事件、橋田信介、差別問題、田中森一、三井環....など、15年間、新聞を賑わせた話題の多くに、著者にしか、語られないであろう視点で記されています。

この震災に、時代の替り目を感じている方は多いと思いますが、本書は、昨年の11月に出版されているのですが、なんだか、今の状況を察知していたような「悪い予感」は、あとがきの、こんな言葉にも。

この15年間の私の迷走のなかで、私は今、1つの確信を得たことがある。それは、この国や社会が歪なものであるということ、そして、その歪さゆえにもう永続きはしないということである。わたしの命と同じくらいの寿命しかないと思われる。

そうであるなら、その断末魔に自分の手で末期の水を与えてやるのも悪くないと思い始めている。これが今の私の正直な気持ちである。


著者は、2005年に癌の手術をし、2010年に、ホテルのロビーで大量の血を吐いて緊急入院され、そうした状況を察知した古くからの友人の「生きているあいだに」という勧めにより、完成された本のようです。

宮崎氏には「政治的なひと」というイメージを持っていましたが、想像以上に「時代」に関わってこられたんだということを、あらためて知り、

読む人それぞれの15年を思い出させ、そのときには感じなかった「裏面」を通じて、今、時代を振り返るに相応しい本だと思いました。

他の誰にも書けない、他にはない本というのが、わたしの中では一番高い評価基準なんですが、これは、まさに、そういう本で、

女の人生からは、決して学ぶことの出来ない「男」にしか書けない貴重な本です。

宮崎氏の縦横無尽な、政治への関わりは、そういった手法に慣れていない、一般のひとにとって、今までは、関係なかったかもしれませんが、これからを考えるうえでは、参考にすべき点が多いのかもしれません。

☆☆☆☆★(老若男女におすすめ)

◎『続 突破者』/宮崎学(アマゾン)
__________________

衝撃のデビューから15年。ベストセラー自伝の書き下ろし続編! 「正義」をかざすインチキ漢、脱獄計画で俺を助けた闇の将軍、どうにも手が付けられないアホ、清く正しい市民の群れ、刑務所で出会った男と女……。奈落の闇を、俺は野蛮の声をあげて泳いできた。孤立を恐れず、進むほかないだろう。同時代社 (2010/11/26)



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by yomodalite | 2011-04-28 11:54 | 報道・ノンフィクション | Trackback | Comments(0)

憚りながら/後藤忠政(得度名:忠叡)

憚りながら (宝島社文庫)

後藤 忠政/宝島社

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日本女子として、今、やくざの本は、猪木の本より読まなくてはと思っているのですけどなかなかイイ本がありません。どうして読まなくてはならないかは、

松岡正剛「千夜千冊」で語られているように

・日本の「侠」の歴史と動向と思想
・「侠」や「組」の発想は、アジアに通じる本質のひとつ。
・ヤクザが明治政府にも戦後の保守政治にも深く絡んでいたこと

と、現在9冊ある“やくざ”タグの中で、唯一の良本、猪野健治氏の『山口組概論ー最強組織はなぜ成立したのか』で、語られた、山口組の1人勝ちが、現在の官吏との最終局面において、これまでとは違った意味を帯びてきていることに対しての危惧からです。

本書は、山口組内で、マスコミ的にもっとも有名だった、後藤組元組長による、回想録。聞き書きの形式で、「○○の野郎も....ヤるだけヤって....グズグズした話を...バチっとかまされ、最後にはギャンと言わされて、クシュってなってたんだよ(笑)。。」みたいな感じの文章で、1942年生まれの、後藤氏の極道人生が語られています。

◎第一次頂上作戦(1964年の暴力団壊滅作戦。1940年頃まで国家も警察も必要悪として認めていた“やくざ”に対して、博打を非合法化などから国家の締め上げが激しくなった。山口組は、次々と解散に追い込まれる組織に反比例して、拡大していく。)

◎年末に行われた3つの格闘技イベント。(2003年)

◎「日韓青年交流」で、自民党の静岡県連と一緒に、当時の韓国大統領、朴正煕と会う(祖父とも知りあい)

◎富士宮における、創価学会との攻防

◎「山一抗争」(戦後最大の抗争事件。1981年。後藤組は、この抗争のきっかけとなった四代目、竹中組長の杯により、山口組直系組長になっている。)

◎廣済堂(櫻井義晃)、地産グループ(竹井博友)との出会い。経済ヤクザと呼ばれるようになる。

◎野村秋介との出会いにより、石川重弘カメラマン救出に関わる。糸山栄太郎襲撃事件も野村氏との関係が大きい。

憚りながら、として、実名で激しく批判されているのは、
・池田大作
・糸山栄太郎
・武井保雄(元「武富士」会長)
・御手洗富士男(経団連・キャノン会長)
・小泉純一郎、など。

第十章「渡米肝移植」では、日本のやくざが、アメリカに入国して移植手術を受けられた奇跡に関して、日米両国で汗をかいてくれた人たちがいると書かれている。戦後の占領統治に“やくざ”と“在日”と“元A級戦犯”は、重要な役割を果たしていた。後藤氏は、山口組の急成長時代をきっかけに、その歴史の一端を担い、統治側の“やくざ”切り捨てに、肝臓移植という「取り引き」が行われたのでは。という印象をもちました。

小泉氏のブッシュへの媚の売り方、御手洗氏の売国を、情けないと感じ、自分と同じ「チンピラ」だと言うのは、同族嫌悪の感情からでしょうか。

ナルシズム溢れる憂国的主観にも、元やくざの奔放な物語にも、チューニングを合わせることなく、冷静に読んでいたつもりでしたが、第6章「生涯の友・野村秋介」で、野村氏が27、8歳の頃、河野一郎宅への放火により、千葉刑務所に収監されたときの“句”が、目に飛び込んできたときは、思わず涙が溢れました。

「俺に是非を説くな 激しき雪が好き」

_________

[内容紹介]かつて伊丹十三監督・襲撃事件などで日本社会を震撼させた武闘派団体・後藤組の後藤忠政組長。08年10月に山口組を電撃引退し、翌年には天台宗系の浄発願寺で得度(得度名=忠叡)。日本中をあっといわせたのは記憶に新しい。それから1年……財界・政界にも大きな影響力を発揮し、山口組の直参として、日本の深層を生き抜いた後藤忠政とは、いかなる人物なのか?
本書は、半年にわたる延べ50時間のインタビューを構成したもので、これまでその人物像が明かされることのなかった伝説の組長の生い立ち、静岡県富士宮を舞台にした愚連隊時代、山口組直参昇格、竹中正久4代目の思い出、山一抗争、伊丹十三襲撃事件、孤高の民族派・野村秋介との交友、企業社会への進出、政界との交流、武富士との攻防、山口組引退の真相、そして自身の人生哲学から女性哲学までが、たっぷりと語られる。
激動の半生を送ってきた人物が語り下ろす、今年、注目度ナンバーワンのノンフィクション!!宝島社 (2010/5/15)



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by yomodalite | 2010-07-02 14:26 | 報道・ノンフィクション | Trackback | Comments(5)

三浦和義 敗れざる者たち/三浦和義、河村シゲル

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本書は、2年前に出版されているんですが、全く注目していませんでしたし、当時、書店で見かけたとしても、絶対手に取ってないと思います。だって、三浦氏の顔のアップとか、あえて、ひらがなの“ぶんか社”とか、もう、何もかも恥ずかしくて、手に取ることも、ましてや、レジに持ってくなんて、絶対無理ですよね?(笑)

☆続きを読む!!
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by yomodalite | 2010-06-07 09:35 | 裁判・法律・犯罪 | Trackback | Comments(4)

歌舞伎町・ヤバさの真相(文春新書)/溝口敦

歌舞伎町・ヤバさの真相 (文春新書)

溝口 敦/文藝春秋



なんだかB級親父週刊誌っぽいタイトルですが、

そういえば、歌舞伎町ってどうして、そんな名前なの?
新宿の花はなぜ「ツツジ」?
ツツジと、歌舞伎町の暴力とのつながりとは?・・・

歌舞伎町や新宿の歴史に興味がある人には興味深い内容。著者は、食肉の帝王、魔女の履歴書(細木数子)、サラ金の帝王などで裏社会やタブーを扱うことに手慣れた溝口氏ですが、すでに歌舞伎町の本は無数にあり、テーマを絞り込むことに迷った末に「歌舞伎町の怖さの起源」というテーマに辿り着いた。

テーマへの逡巡のためか、溝口氏のタブーへ斬り込んだ、今までの著作とは少し趣きが異なってはいますが、歌舞伎町の表と裏の両面史がざっくりと理解できます。

ヤクザ、華僑・韓僑系企業、東声会や外国人の動向、特に、中国系マフィアに関しては、昨今いろいろ話題になりましたが、華人(台湾人)マフィアに関しては、本書で初めて詳しく知ることができました。

因みに、歌舞伎町では最盛期の半数に減ったとはいえ、08年の調査で百ヵ所程度の暴力団事務所が600メートル四方の狭い町内に存在しているそうです。
____________

【BOOKデータベース】欲望・エロス・犯罪の都は、いかに生まれ、どこに向かうのか。恐怖の根源をたどり、歓楽の核心・我われの心性に迫る。六百メートル四方の「世界一ヤバい街」の正体とは―。 文藝春秋 (2009/06)



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by yomodalite | 2009-09-16 16:13 | 報道・ノンフィクション | Trackback | Comments(0)

猛牛(ファンソ)と呼ばれた男—「東声会」町井久之の戦後史/城内康伸

猛牛(ファンソ)と呼ばれた男―「東声会」町井久之の戦後史

城内 康伸/新潮社




元公安調査庁の菅沼光弘氏は、日本の裏社会の構成要素として「やくざ・同和・在日」の3つを挙げて、その経済力に関しても、トヨタ自動車の純益が1兆円だったのに対し、山口組は8000億円の収入と語られたとか。。。

町井久之(本名:鄭建永)は、在日のヤクザの大物として、戦後の昭和史に度々名前が登場する人物ですが、まとまった本としては、こちらが初めてのもののようです。

ただ、残念ながら、山口組や、保守(右翼)系人物との関係にしても、登場人物が少な過ぎて、南北朝鮮の政治家との交流に関しては、大統領にまで及んでいるにも関わらず、在日社会は、力道山や張本(巨人)などスポーツ界が主で、日本国内の財界や政界との交流に関しては、ほとんど書かれていません。

著者は、88歳の町井の未亡人 保予(やすよ)への面会から、取材を進めているのですが、夫人の話はどうも素直に納得できないというか、違和感を感じる点が多い。

p67で、傍聴席の最前列で見守っていた保予のことに触れ、弁護士が町井に「わたしに礼はいいから、奥さんに感謝しなさい」というくだりなど、どこか唐突で、著者が未亡人への感謝を表すことにページを使っているように感じました。

また、町井の親分のような存在であった児玉誉士夫と同じく、町井もアメリカが育てた人材であったことを示すエピソードとして、

(P57)
町井の事件を担当した検事(伊藤栄樹。後にロッキード事件など大事件を手がける)は、
他界する直前に朝日新聞に寄せた回想録「秋霜裂日」で次のように振り返っている。

「彼(町井)には、連合国軍の庇護があて、それまで二度殺人などで逮捕されても、すぐに釈放され、起訴されても一度は無罪になり、一度は執行猶予となっていた。そこで、長い兼治生活の中で一度だけうそをつかせてもらった。すなわち、傷害にあたるものに、殺人未遂の罪名を、傷害・恐喝にあたるものに強盗傷人の罪名を与えるなど、本来の法律的評価よりも一段ずつ上の罪名にすることにより、連合国軍からの干渉を防ぐとともに、保釈を阻止しようとしたのである。」 朝日新聞 1988年5月11日朝刊

伊藤本人がいささか強引な手法を用いたことを認めているのだが、保予によれば、町井はこの記事が載った当時これを読んでおり、「他の作り事はいいとしても、私に連合国軍の庇護があったとは・・・・」と憤り半ばにあきれ果てていたという。

 
この町井の反応は、保予の真実の記憶だろうか。一度目の殺人は、保予にからんだ酔漢を蹴飛ばしたところ酔漢が転倒し頭を打って死亡した、というもので、二度目は差別的な発言を投げつけた人力車夫を勢い余って殴殺した、というもの。これで、無罪や執行猶予とは、庇護でなければ、生まれついての「在日特権」か、と言いたくなる内容。保予が日本人なら疑問をもたなかったとは考えにくい。

保予が1946年に、函館の実家を離れて、東京で予備校に通っていたというのも、比較的裕福な家庭を想像させるが、拉致誘拐のような形で、町井と結婚することになったエピソードなど、著者は「ストックホルム症候群」を思い出したと説明しているが、私には、よど号の妻たちの結婚エピソードが思い出された。ちなみによど号妻たちは、チュチェ思想研究会や統一協会であったが、保予は熱心は創価学会員である。

その他、町井の市井のイメージを覆すとして紹介しているエピソードも、在日社会の裏のヒーローとして君臨した人物のエピソードとしては、物語の厚みに欠ける。

生前、半世紀執筆の要請を何度受けても、町井は、「自分のやってきたことを決して、表に出すな」と在日社会に至上命令を出していたらしい。取材対象が難しいことは理解できるものの不満が残る内容。

__________

【BOOKデータベースより】“アンダーグラウンド”から照らし出す昭和史。復興著しい東京で、1500人の構成員を束ね夜の六本木を闊歩した鄭建永(チョン・コンヨン)=日本名・町田久之。右翼の大立者・児玉誉士夫と日韓を股に掛けて暗躍し、ヤクザでありながら政財界に根深く食い込んだその存在は、やがて「フィクサー」と畏れられるまでになった—。盟友・力道山との絆、芸能・スポーツ界でのタニマチぶり、ようやく語られた秘話の数々。急成長を遂げる日本と共に生き、そして消えていった男の人生を描く。 新潮社 (2009/02)




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by yomodalite | 2009-03-08 23:09 | 報道・ノンフィクション | Trackback | Comments(0)

山口組概論ー最強組織はなぜ成立したのか(ちくま新書)/猪野健治

山口組概論―最強組織はなぜ成立したのか (ちくま新書)

猪野 健治/筑摩書房



ある日、気がつくと隣に“やくざ”が住んでいた。ということはありませんか? 私はあるんです。

なんだかんだありまして、ひょんなことから、私は、その“やくざ”の事務所と思われる、隣の部屋でカルピスをごちそうになったり、そこで働く若者から暴対法への悩みを聞いたり。。。

部屋のど真ん中に屹立していた、どでかいレジスターから想像すると、そこは多分「テキヤ」系の組だったのではないかと思うのですけど、なんとなく今でも、ヤクザと聞くと当時ツッパリと呼ばれていた若者より遥かにさわやかさが溢れていた、あの悩める青年の顔を思い出してしまいます。

今から考えると、暴対法というのは山口組を一人勝ちさせるためだったんですね。
それと、あの振込め詐欺による収入って、一体どこに流れているんでしょうね。


本書はそういった「真実」には触れられていないものの、著者は松岡正剛氏により、日本のヤクザ研究の第一人者と称される猪野健治氏。

大衆週刊誌的ヤクザ・ドキュメントと違い「教養としてのヤクザ」を求める、
日本女子には必読の入門書です。

ヤクザと「侠」を知らずして、「日本」や「粋」を語るなかれ。

☆参考サイト
「松岡正剛の千夜千冊」(『やくざと日本人』/猪野健治)
「404 Blog Not Found」
_________________

【目 次】
序章 ヤクザとは何か
第1章 六代目体制の衝撃
第2章 山口組誕生と近代やくざ
第3章 三代目と全国制覇
第4章 カリスマなきあとの分裂抗争
第5章 バブルと暴対法の時代
第6章 山口組はどこへいくのか

【BOOKデータベース】やくざ人口八万人のうち、約半数が山口組系である。熾烈を極める警察の取締まりのなか組織は揺らぐことがない。そもそも、やくざはなぜ存在するのか?山口組とは何なのか?神戸の小さな組が最強軍団に成長した背景とは?山口組九〇年の歴史をたどることで日本社会の深層をえぐりだす。いま格差社会の波と暴対法下の重包囲網をまえに、山口組は少数精鋭化への道を歩み始めたともいわれている。巨大組織の歴史と現在、今後を展望する。




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by yomodalite | 2009-02-15 23:14 | 歴史・文化:美術 | Trackback | Comments(0)

東京アンダーナイト—“夜の昭和史”ニューラテンクォーター・ストーリー/山本信太郎

東京アンダーナイト―“夜の昭和史”ニューラテンクォーター・ストーリー

山本 信太郎/廣済堂出版

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ロバート・ホワイティング著「東京アンダーワールド」に似てますが、あちらは六本木ニコラスで、こちらは、赤坂ニューラテンクォーター。

お店の格として、断然ニューラテンクォーターの方が上ですけど、アンダー具合はどうなんでしょう?

力道山、児玉誉志夫、キャノン機関、ナット・キング・コール、トム・ジョーンズ、石原裕次郎、勝新太郎、美空ひばり、高松宮殿下、東久邇盛厚、島津久永、貴子夫妻、「天皇の料理番」四条隆貞、店の用心棒だった「プライドの怪人」百瀬博教。。。。などなどお客も、出演者にも有名人に事欠かず、華々しい歴史が語られます。

ニューラテンクォーターには、ヤ○ザ屋さんも大勢いらっしゃるのですが、著者の描き方のせいか皆さん上品に登場します。ただし、ニューラテンクォーターに最初の危機を招いた横井英樹に対しては、流石に厳しい口調で語られています。

水商売を通してみる昭和の芸能史。裏面史を期待すると少しものたらないかも。

【目 次】
第一章/証言・力道山事件 −「刺した男」と「目撃した男」の再会
第二章/.国策クラブ、ラテンクォーター −闇を牛耳るGHQと児玉機関
第三章/アメリカの夜を赤坂に −ニューラテンクォーター誕生秘話
第四章/もっとアメリカ! −来日したミュージシャンたちの舞台裏
第五章/夜の紳士録 −皇族から大スター、やくざまで
第六章/燃える赤坂 −ニュージャパン横井との闘いと売却の真相
終 章/兄弟 勝信太郎に捧ぐ
__________

【BOOK」データベース】児玉機関、GHQ、豪華ショー、芸能人、ヤクザ…“東洋一”と謳われたナイトクラブで何が起こったのか? オーナー自らが衝撃の証言で綴るノンフィクション。廣済堂出版 (2007/02)


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by yomodalite | 2008-12-18 22:48 | 報道・ノンフィクション | Trackback | Comments(0)

羊の目/伊集院静

羊の目 (文春文庫)

伊集院 静/文藝春秋




目次からは短編集のようにも見えますが、物語はすべて繋がっています。

浜嶋辰三、山尾三津男、四宮賢治、須賀正、神崎武美・・・彼らに刺青を入れた清次(彫清)が刻印したもの、俠客、博徒...そして名を変えながらも繋がっているものの共通点とは。修羅の世界で生きる男たちの抗争を描きつつも、静謐な文体と、神崎武美の存在が物語を「聖書」のような味わいにしていて、小説としては『眠る蝶』以降俄然面白みを増す。

地味ではあるけれど、大人の読書マニア向けとしては、多分今年最高の佳作でしょう。

★★★★(R40)

『牡丹の女』
深川で内股に牡丹の刺青のある夜鷹は花川戸の辰三に、些細な喧嘩で死んだ指物師の夫との子供を託す。数年後、病を患い満州から引き上げた女は、我が子が辰三の元で成長したことを知る。。。

『観音堂』
本所吾妻橋、竹町の長屋にやってきた博徒“上州のみつ山”こと山尾三津男は、辰三が率いる浜嶋組の代貸しとなり、浜嶋組は勢力を増していく。辰三の家にはタケミという名の澄んだ目をした少年がいた。。。

『ライオンの舌』
戦場で出会った日本兵の背中にはライオンに似た動物のタトゥーがあった。ロダル・マッキーオ・コルザは、シチリアマフィアと同様の掟をもつ日本のヤクザに惹かれ、老人の博徒のケンキチに会う。ケンキチの元に届け物をもってきた若い男はタケミと名乗った。

『眠る蝶』
辰三が彫清の長屋に若衆を連れてきた。若衆の背中に触れた彫清はその類いまれな肌に惹かれ、辰三と同じ刺青を入れることを引き受ける。若衆は神崎武美という20歳そこそこの男だった。清次(彫清)の道具箱には見事な銀の蝶の細工が浮かんでいた。昔、指物師から惚れた女の刺青の代金として受け取ったが、指物師はその後斬り殺されたらしい。
仕事を始めて清次は益々武美に惚れ込み、かつて武美と同じような魅力に溢れた男がいたことを思い出した。不動明王を彫ったその男は四宮賢治と言った。

辰三の息子正規は大阪に逃げていたが、武美により辰三の元に帰ることになる。辰三は正規との親子の縁を切り関東から所払いにしたが、正規は辰三の妾を人質にとり、辰三に迫った。正規が女を突き飛ばし、匕首を辰三に向けて飛び出した時、武美は二人の間に突進した。

『竜の爪』
伊佐和力は、四宮兼治に逢い伊佐和組を四宮組に預ける決心を固め、須賀は四宮組の武闘派として組をまかされ勢力拡大の先鋒となった。警察に自首し刑期を模範囚として勤めていた須賀の前に、際立った印象をあたえる若衆が現れた。須賀は、若衆が男色の趣味のある首謀者を含む5人に襲われるも、同じ房の無期役の老人と撃退したのを目撃し、その鮮やかな手腕に感心した。その若衆は神崎武美と言い浜嶋組の若頭で、辰三の倅を殺して服役し、老人は、相手のほとんどがヤクザにもかかわらず11人を殺した事件で世間を騒がせた正木千吉だった。
数日後、須賀は風呂場で神崎の背中に見事な唐獅子の刺青を見た。刺青は四宮の不動明王と同じく「彫清」のものだった。

『ホットドッグ』
ロスアンジェルス、ワダ・ランドリー店。ケイコは母とともに、リトル・トーキョーで催される慰霊祭に出席する米陸軍第442連隊戦闘団の軍服の修繕で忙しくしていた。ある日、店に体格のいい日本人が仕事を求めてやってきた。ケイコは男が聖サンチャゴ・クニにそっくりだと思った。一方、須賀は神崎を追って、ロスアンジェルスで催される442連隊の慰霊祭の興業団の一行に加わり渡航していた。

『羊の目』
ニューハンプシャー州、コステル連邦刑務所は合衆国の中でも取分け厳しい監獄だった。規則だけでなく、1年の3分の1が凍雪に埋もれる過酷な環境、それ以上に厳しいのは囚人たちの掟だった。無期懲役囚ばかりの重い沈黙の中で、25年間服役囚たちの間でまことしなやかに伝えられている伝説があった。

だな通信 ミステリー文庫
http://danatuusinmystery.blog17.fc2.com/blog-entry-269.html
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[出版社からの内容紹介]夜鷹の女が産み捨てた男児は、闇社会を震撼させる暗殺者となった。神に祈りを捧げつつなお“親”のため人を殺し続ける男の生涯を描く。昭和8年。牡丹の彫物をもつ夜鷹の女は、後に日本の闇社会を震撼させるひとりの男児を産み落とした。児の名は神崎武美。浅草の侠客・浜嶋辰三に育てられた武美は、「親」を守るため幼くして殺しに手を染め、稀代の暗殺者へと成長していく。やがて対立する組織に追われ、ロスに潜伏した武美は、日本人街の母娘に導かれてキリスト教に接するのだが… 高潔で、寡黙で、神に祈りを捧げる殺人者。25年ぶりに日本に戻った武美が見たものとは──。稀代の暗殺者の生涯を描き、深い余韻を残す大河長篇。伊集院文学の最高峰! 文藝春秋 (2008/02)



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by yomodalite | 2008-09-29 15:48 | 文学 | Trackback(1) | Comments(0)

反転 — 闇社会の守護神と呼ばれて/田中森一

反転―闇社会の守護神と呼ばれて (幻冬舎アウトロー文庫)

田中 森一/幻冬舎




ダーリンがようやく図書館から借りてきた本。出版から1年3ヶ月を経て、未だ近所の図書館での予約数63件。この間『バブル』、『必要悪』などの著者による関連本も読了済なので、もう〜おなか一杯な気分で、読んでみたところ、やっぱり満腹感で一杯。なんというか、特捜の優秀な検事が弁護士になって闇社会の守護神となることなんて、別に不思議でもなんでもないですよね。「男」は飼い主によって行動を変えるものでしょう?

実名で登場する政治家もいつものメンバー。最近では、あまりにもしょっちゅう名前を出されている亀井静香氏などは、相当善人なのだろうなぁと思っています(笑)。

佐藤優氏の『国家の罠』が文学的だったのは、佐藤氏が日本の男としてはめずらしく「神」を主人にしているからだったけど、田中氏はその真逆ですね。これまで読んだ『バブル』、『必要悪』より面白くないと感じたのは、鮮度の違いが大いに関係しているのは間違いないですが、対談や、聞き書きといった話し言葉の方が、著者の資質にあっているせいも多分にあるでしょう。

それと、文中で、田中氏が賛辞をおくっているヤクザの組長や、若頭にはありそうな「男の色気」が、どうも田中氏には感じられませんね。それらのヤクザ美学こそ、実は田中氏とはもっとも遠いものだからでしょう。

逮捕後の活動が垣間みれる著者のサイト、釈放後もまだまだ活躍されそうですね。
http://tanaka-jyuku.net/index.html
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【日販MARCより】伝説の特捜エース検事はなぜ、「裏」世界の弁護人に転向したのか。法の世界に携わってから38年。検事として、弁護士として見続けてきた日本のひずみや矛盾を綴る。アウトローにしか生きられなかった男の自叙伝。幻冬舎 (2007/06)

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by yomodalite | 2008-09-09 13:42 | 報道・ノンフィクション | Trackback | Comments(1)

旧「読書日記と着物あれこれ」。歴史/文学/お笑いを好み、着物生活をしていたはずが、いつしかマイケルジャクソンのように本を読もうになってしまったブログ。永年暮らした東京を離れ、現在は大阪を満喫中。


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