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嗤う伊右衛門/京極夏彦

嗤う伊右衛門 (角川文庫)

京極 夏彦/角川書店



タイトルの印象とは異なり、大人が泣ける悲恋物語。お岩の美しさを描き、伊右衛門のみならず登場人物の魅力は格段に増している。

物語のリズム感も素晴らしい、めったにない傑作!

★★★★★(満点)
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【Amazon.co.jp】ミステリー作家京極夏彦が、斬新な解釈を施して現代に蘇らせた「四谷怪談」。4世鶴屋南北の最高傑作とされる『東海道四谷怪談』とは趣の異なる、凛とした岩の姿が強く心に残る作品である。直助やお袖、宅悦や喜兵衛、お梅といった南北版の登場人物に、自身の著作『巷説百物語』の主人公又市をからませながら、伊右衛門とお岩が繰り広げる凄惨な怪談話を、悲恋の物語へと昇華させている。第25回泉鏡花文学賞受賞作品。

小股潜りの又市は、足力按摩の宅悦に、民谷又左衛門の娘、岩の仲人口を頼まれる。娘を手ごめにされた薬種問屋の依頼を受け、御先手組与力の伊東喜兵衛に直談判した際、窮地に立たされた又市らを救ったのが又左衛門だった。不慮の事故で隠居を余儀なくされた又左衛門は、家名断絶の危機にあるというのだ。しかし、疱瘡(ほうそう)を患う岩の顔は崩れ、髪も抜け落ち、腰も曲がるほど醜くなっていた。

岩を裏切る極悪人である南北版の伊右衛門を、著者は大胆にも、運命に翻弄される不器用で実直な侍として描く。また、幽霊や怪異を持ち出すことなく、人間の心のおぞましさを際立たせることよって、最大の恐怖を生み出しているのも大きく異なる点だ。首を吊った妹の仇を討つ直助の慟哭、喜兵衛に犯されたお梅の悲劇、悪逆非道な喜兵衛の卑劣さ、「伊右衛門様は何故幸せにならぬ」と叫びながら鬼女と化す岩の狂気。彼らの情念のおどろおどろしさを重層的に、丹念に描写することによって、著者は奥行きの深い、きわめて現代的な怪談を作りあげている。(中島正敏)


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by yomodalite | 2007-03-17 20:36 | 文学 | Trackback | Comments(0)
日本の神々を私はよく知らない。ただ、かろうじて出逢う事ができた明治の人を思い出すとき、それが何だったのか探っている状態です。

あらためて、この本を読んで感じるのは226事件に対して見せた天皇の怒りは本物だったということ。昭和天皇は科学的知性の人でした。

青年将校たちは、天皇を勝手にイメージし「神」という名で崇拝していましたが、明治以降に急速に始まった、未熟で疑似的な一神教では、神に見捨てられることは想像できなかったのでしょう。

青年将校たちも、また知識人を含む多くの日本人も、天皇に求めていたものは、完全無欠な“父親”でした。事件直後の昭和天皇の一切迷いがない決断と、開戦時のそれを比較すると、天皇が日本の敗戦を利用した疑惑については今後も検証を要しますが、戦後に生まれた私はそれを天皇の裏切りとは思わない。

日本の王の判断として、磯辺の革命が成功していたら、日本は国際金融資本にではなく、アジアの闇に沈んだはず。科学と宗教を分けざるを得ないのも、政治に嘘が必要なのも、人間社会の限界でしょう?

三島は、仮に自衛隊での決起が成功してもいずれ散る運命であることは知っていたのではないかと思う。散ることの意味と、狂気の系譜に連なることの方を欲したのではないか。

出口ナオは、今甦ったならグーグルに八百万の神を発見しただろうか?

昭和天皇は、皇室の未来の繁栄を願っていたのだろうか。国民に自然な形で徐々に天皇を必要としない国になることに反対する意志はなかったのではないか? 皇室に男児が生まれない不思議に、生物学者でもある天皇が疑問を持たなかったとは思えません。

今上天皇は、滅びの美学や伝統への批判精神に本来は感性を合わせやすい人だと思う。しかし開かれた皇室という、かつてないストイックな皇室生活に長年耐えることで、昭和天皇の罪を償おうとされたのではないかと思う。今でも忘れられないのは、悠仁様の誕生時の笑顔。。。あの笑顔はこれまで見たことのない、天皇としての“顔”ではなかった。

かつて、この国では、磯辺の呪詛も、三島の血だらけの生首も、神にしてきた。
荒ぶる魂を奉ることは、未来にこそ必要だと思う。

★★★★☆

☆参考サイト
◎2.26事件の結末「ジャパンハンドラーズと国際金融情報」
◎シュトラウシアンの「高貴な嘘」「ジャパンハンドラーズと国際金融情報」
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【目次】
第1章 我モトヨリ生還ヲ期セズ…
第2章 孤高の神言
第3章 神々の第一陣
第4章 舞台演出家は黒幕
第5章 邪神舞踏会
第6章 黒子たちの地下工作
第7章 深層海流
第8章 天網恢恢粗ゆえに漏らす
第9章 目をそむけた親神
第10章 死屍拾うものなし
終章 失われし故郷への帰還

【MARCデータベース】三島は歴史上の反乱者たちが見せる「狂気」に注目した。それはすなわち、天皇を守る「神々の軍隊」の武士道的狂気であった。だが、天皇は「神」だったのか、それとも「道具」だったのか。最後の日本人を描くノンフィクション。




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by yomodalite | 2007-03-16 14:15 | 天皇・皇室 | Trackback | Comments(0)
めったにない傑作。ミステリーの枠を遥かに超えた水準の本格小説

日本のドストエフスキーという形容に偽りなく、最重量級の上下刊ですが、読了後も物語から離れがたい程でした。

著者は、3年半に渡り、グリコ森永事件の犯人逮捕の誤報を出した毎日新聞を取材したらしいですが、実際の事件の真相に迫ったかどうかは、もはや関係ないでしょう。

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【MARCデータベース】「要求は20億。人質は350万klのビールだ。金が支払われない場合、人質は死ぬ。話は以上だ。」 一兆円企業・日之出麦酒を狙った未曽有の企業テロはなぜ起こったか。男たちを呑み込む闇社会の凄絶な営みと暴力を描く。
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by yomodalite | 2007-03-14 15:13 | 文学 | Trackback | Comments(0)
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今日からブログ初め。(3月、4月の記録が異常に多いのは、それ以前に読んだものを記憶により保管したため)

記念すべき第一冊にふさわしい本書は、昭和の偉人伝とも言える内容。

空手、極真いずれにもあまり興味はありませんが、昭和史の一面としてたいへん興味深い内容でした。著者2人による2部校正は、時系列ではなく、各々の取材により倍達の人生を描いていて、真実の補完がされています。それだけに重複する内容も多いのですが、二人とも気迫のこもった文章で読ませ、倍達伝説の検証を細かくやっている点も文句なく、各々一冊でも出版できる内容。

歴史好きとしては、1部の塚本佳子氏の感情を抑えた文章が格調高く堪能できますが、2部の小島一志氏は、極真有段者にして、空手バカ一代の影響をど真ん中で受けた世代であり倍達の悲願であった「空手全科」の編集をまかされていたなど、晩年の倍達の生の姿や、格闘技好きな人にはお馴染みの話題の多くに、リアルタイムで接しています。

梶山一騎による一連の作品だけでなく、多くの脚色に満ちていると思っていた倍達伝説ですが、意外と真実が多いことに驚かされました。

韓国籍を隠し、日本人としての歴史を作るための嘘はあったが、格闘家大山倍達は、虚像ではなかった。

★★★★☆

◎[参考サイト]アングルのバイオリン

波 2006年8月号より
著者インタビュー『大山倍達正伝』刊行にあたって「昭和の闇に封印された真実」

小島一志・塚本佳子『大山倍達正伝』

――624頁という超大作の執筆、お疲れさまでした。
小島 いえ、どうも。大山倍達という一人の人間の生涯を追うのは、言ってみれば富士の樹海に入り込むようなものです。大変な恐怖を感じましたが、まあ死ぬことはないだろうから、と(笑)。

――本書は、塚本さんが「第一部」で人間・崔永宜(大山倍達の韓国名)の生涯を描き、小島さんが「第二部」で格闘家としての大山倍達を検証する、という構成になっていますね。

小島 はい。僕は大学で極真空手を学びはじめ、その後、空手雑誌の編集者を経て、大山総裁のライフワーク『空手百科事典』の編集のため、総裁と親しくお付き合いさせていただきました。それに対して、塚本は私が作った編集制作会社の社員第一号で……。

塚本 95年から極真空手の雑誌の編集に携わりはじめましたが、私は大山総裁を直接は知らないんです。

小島 大山総裁を知らないからこそ書けること、知っているから書けること、それを二人で書き分けられるだろうと考えたんです。

――大山倍達という不世出の空手家の生涯、その実態はこれまで誰もはっきりと把握することができませんでした。それを500点余りの資料、300人近くに及ぶ膨大な証言から浮かび上がらせていくのは、気の遠くなるような作業だったでしょう。

小島 はい。僕は段ボールを6個用意して、資料にすべて通し番号を付けて、時代ごとに分けて入れていったんです。でも、一つの資料を引っ張り出すのに30分もかかったりして……(笑)。

――その結果、大山倍達の伝説が次々と覆っていく衝撃的な本に仕上がりました。そんな中でも、戦後、在日朝鮮人たちの民族運動に彼が深く関わっていたというのは驚愕の事実でした。戦後の在日社会の実態は、昭和史の闇とも言える部分でしたし……。

塚本 民団(在日本大韓民国民団)や総連(在日本朝鮮人総連合会)に関する書籍を読んでいて、たまたま総裁の本名を見つけたんです。それから民団関連の機関紙や韓国系の新聞などを集めていきました。すると、そこには総裁の名前だけではなく、写真も載っていたんです。そして当時の関係者の方々の証言をこつこつと集めていきました。戦後、在日朝鮮人たちは、南側の民族派と北側の共産主義者に別れて、激しい抗争を繰り広げていたんです。

――その戦闘の最前線に、実は大山倍達がいた、と。

塚本 はい、常に意気揚々と戦いに参加していたんです。

――彼が最も多くの実戦を重ねていたのが、この時期だった……。

小島 当時のことを知る人たちは、全員が口を揃えて、「大山倍達は強かった」と語っています。

塚本 その頃の写真を見ても一目瞭然なのですが、本当に凄い肉体をしているんですよね。食糧事情の悪かった中、肉体だけを見ても、彼は「超人」であったと言っていいでしょう。

――また、小島さんの「第二部」では、これまでずっと謎とされてきたアメリカ遠征の全貌が明らかになります。

小島 もともとは、アメリカでプロレスラーと戦ったなどという武勇伝はまったくのデタラメだろうと思っていました(笑)。ところが、そうではなかった。この章を書くにあたっては、流智美や小泉悦次などプロレス研究家の協力を得ました。今はネット社会ですから、世界中にマニアのネットワークが出来ているんです。たとえば1952年5月から7月までのミネアポリスでのグレート東郷(大山倍達と一緒にアメリカを転戦したプロレスラー)の試合の記録はないか、とアメリカのマニアに問いかけてもらったり……。さらに、当時総裁がアメリカから妻の智弥子さんや日本のメディアに送った手紙などを、僕自身、総裁から見せていただいていましたから、それらを一つずつ照合していきました。その結果、すべてがきれいに一本の線でつながったんです。

――大山倍達は祖国を捨て、日本で「世界一の空手家」の名声を手にして長年の夢を叶えるわけですが、その一方で、晩年には祖国への思いを募らせていく姿が本書では描かれていますね。

塚本 韓国での取材で、お兄さんや息子さん(大山倍達は韓国にも妻がいて、もう一つ家庭を持っていた)などに貴重な話を伺うことができました。日本での総裁は、常に公の人であり続けなければいけなかった。しかし、韓国の家族の話からは、すごく人間くさい晩年の総裁の姿が浮かび上がってきました。等身大の人間・崔永宜の居場所が、実は祖国・韓国に存在していたんですね。

(こじま・かずし つかもと・よしこ)

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【BOOKデータベース】
資料五〇〇点、証言者三〇〇人余、渾身の取材で驚愕の新事実続出!同胞同士の抗争に明れ暮れた戦後、アメリカ遠征激闘の真実、祖国のもうひとつの家庭に求めた最後の安息…。伝説の空手家の真の人生が、いま初めて明らかになる。あまりにも衝撃的なノンフィクション超大作。




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by yomodalite | 2007-03-12 15:29 | 報道・ノンフィクション | Trackback | Comments(0)

旧「読書日記と着物あれこれ」。歴史/文学/お笑いを好み、着物生活をしていたはずが、いつしかマイケルジャクソンのように本を読もうになってしまったブログ。永年暮らした東京を離れ、現在は大阪を満喫中。


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