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発売前からとても期待していた本ですが、実際に手にしてみると期待以上の内容。プリンスに興味を持ちつつある人にも、永年プリンスファンだった人にも、どちらにとっても素晴らしく、数多のプリンス本の中でも最優先で読むべき本だと思いました。

マイケルのメッセージは、今でも大勢の人の注目を集めています。MJには世界をより良くした人だという尊敬があるからでしょう。でも、日々、マイケルの言葉に注目し、彼と読書に関するブログを書いている私でも、彼が素晴らしい言葉を多く残しているとは言えないと思うことがよくあります。マイケルは、自分への夥しい数の言及に対して、ほとんど言葉で説明しようとしなかったし、メディアで発言しなかっただけでなく、ファンが集まるライブでも、世界中で同じほんのわずかのコール&レスポンスしかしなかった。

私たちは、ブカレストライブでの冒頭の2分間も、「THIS IS IT」までのあまりにも長い沈黙も、未だに言葉にすることができないまま、MJを語ろうとすると、それを語る人を「鏡」のように映しだすか、もしくは「神の言葉」のように、自分の日常から遠ざかっていくことも・・

彼は素晴らしい言葉を残したのではなく、
永遠に素晴らしいメッセージを「体現」した人なんですよね。

でも、プリンスは・・

どんな楽器も演奏できて、デヴュー作からセルフプロデュースという音楽の天才で、驚異的なダンスパフォーマンスを含む圧巻のステージで魅了しながら、夥しい量の曲を書き、そのほとんどすべてを自分で作詞している。プリンスはMJの長い沈黙期間もずっと言葉を探し続け、

彼は「言葉」において、マイケルとは比較にならないぐらい「創造」している。

マイケルの名言のような言葉を、彼の音楽に乗せられた言葉から探すのは難しい。マイケルの音楽とダンスの素晴らしさは「沈黙」にこそ相応しく、それは、喧騒と混迷を深める時代に永遠の価値をもたらしたけど、

プリンスは、彼が生きた時代に必要な「自分の言葉」を最後まで探し続け、私たちにたくさんの声をかけてくれている。

著者のNew Breed with Takki は、格闘技医学を開拓したドクター。1985年プリンスに衝撃を受け、ペイズリー・パークやファースト・アベニューでのライヴを経験し、プリンス関連のアーティストのツアードクターもされている方で、プリンスの言葉を8つの章にまとめられています。

chapter 1:生きる
chapter 2:自分を創造する
chapter 3:音楽
chapter 4:苦難と戦い
chapter 5:神と愛
chapter 6:時代
chapter 7:勇気と救済
chapter 8:永遠

歌詞やインタヴューなど、パブリックな言葉が中心となっている上記の章以外に、プリンスに大きな影響を受け、プリンスファミリーでもあったアーティストへの貴重なインタビューが5本もあり、彼の優しい人柄やプライヴェートも垣間見れます。

とかくプリンスを語ると、マニアックな話題になる人が多いのですが、著者はこれからのファンに向けて、とても深い内容を優しくわかりやすく書かれています。ビギナーにも、より深く聴きたい人にも、どこをとっても満足度の高い、もっともすばらしい解説本だと思いました。

Must buy!!!

◎[Amazon]プリンスの言葉 Words of Prince



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by yomodalite | 2016-10-17 13:20 | 現代文化・音楽・訳詞 | Trackback | Comments(3)

書店主フィクリーのものがたり

ガブリエル・ゼヴィン/早川書房

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プリンストン大学の大学院でエドガー・アラン・ポーを研究していたフィクリーは、妻の助言から、アリス島でたったひとつの小さな書店アイランド・ブックスを経営することに。しかし、売り上げは観光客が訪れる夏だけ・・妻を事故で失ったあとは、ひとり売れない本に囲まれる毎日だった。


アメリア・ローマン(エイミー)は、ナイトリー・プレスという出版社の伝説の営業担当の後任として、アイランド・ブックスに赴いた。彼女は、長年独身で通してきた老人が78歳で結婚し、その花嫁を二年後の83歳で亡くすという、80歳の老人の回想録『遅咲きの花』を売り込むが、フィクリーに「好みではない」と言われてしまう。どんな本がお好みなのか?と聞くと、フィクリーは、「お好み」を嫌悪をもって繰り返し、


「お好みでないものをあげるというのはどう? ポストモダン、最終戦争後の世界という設定、死者の独白、あるいはマジック・リアリズム。才気ばしった定石的な趣向、多種多様な字体、あるべきではないところにある挿絵ーー基本的には、あらゆる種類の小細工。ホロコーストや、その他の主な世界戦争の悲劇を描いた文学作品は好まないーーこういうものはノンフィクションだけにしてもらいたい。文学的探偵小説風とか文学的ファンタジー風といったジャンルのマッシュ・アップ。児童書、ことに孤児が出てくるやつ。うちの棚にヤング・アダルトものは詰めこみたくない。四百頁以上のもの、百五十頁以下の本はいかなるものも好まない。リアリティ・テレビの番組に登場する俳優たちのゴーストライターによる小説、セレブの写真集、スポーツ回想録、映画とのタイアップ、付録のついている本、言うまでもないが、ヴァンパイアもね。デビュー作、若い女性向けの小説、詩、翻訳書。シリーズものを置くのも好まないが、こちらのふところ具合で置かざるを得ないこともある。そちらのことをいうなら、次の長大なシリーズものについては話す必要はない・・・。とにかく、ミズ・ローマン、哀れな老妻が癌で死ぬという哀れな老人のみじめったらしい回想録なんてぜったいごめんだ。営業が、よく書かれていますよと保証してくれても、母の日にはたくさん売れると保証してくれてもね」


アメリアは、顔を紅潮させ、当惑というよりは怒りを感じながら、このせいぜい十歳ほど年上の相手に、再度聞く。「あなたはなにがお好きなんですか?」

 

「今あげたもの以外のすべて、短篇集はたまにごひいきなやつがあるけど、客は絶対に買わない」・・・



偏屈な書店主と、出版社の営業と、島の数少ない住人・・未読のものや、昔読んで思い出すのに時間がかかるような海外作品もたくさん登場し、果たしてこれから面白くなるのか、あまり期待できないような序盤とはうってかわり、物語は徐々にラブストーリーのようでもあり、父と娘の話でもあり、大雑把なあらすじとしては、ベタといってもいいような展開を見せつつも、最初にフィクリーが「好みでない」と言っていたことがフリになっていたかのように、「本好き」が楽しめる要素が何重にも仕掛けられていて最後まで楽しめます。


13章あるものがたりには、すべて短編のタイトルが掲げられ、フィクリーによる短いコメントがついているのですが、物語の始まりは、ロアルト・ダールの『おとなしい凶器』。



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翻訳者のあとがきには、これらの短編はすべて読んでいなくてもいいけど、オコナーの『善人はなかなかいない』だけは読んでいた方がいいかもしれない。と書かれていますが、




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この本を読んだあと、『善人はなかなかいない』を読んでも、二度楽しめると思います。私はそうでした。




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ある日、書店の中にぽつんと置かれていた小さな女の子マヤ。フィクリーは彼女を娘として育てる・・・




そして、最後もロアルト・ダールの『古本屋』


「・・・人生を長く続ければ続けるほど、この物語こそがすべての中核だと、ぼくは信じないではいられない。つながるということなんだよ、ぼくのかわいいおバカさん。ひたすらつながることなんだよ。



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◎[Amazon]書店主フィクリーのものがたり


1. おとなしい凶器 ー ロアルト・ダール

2. リッツくらい大きなダイアモンド ー F. スコット・フィッツジェラルド

3. ロアリング・キャンプのラック ー ブレット・ハート

4. 世界の肌ざわり ー リチャード・ボーシュ

5. 善人はなかなかいない ー フラナリー・オコナー

6. ジム・スマイリーの跳び蛙 ー マーク・トウェイン

7. 夏服を着た女たち ー アーウィン・ショー

8. 父親との会話 ー グレイス・ペイリー

9. バナナフィッシュ日和 ー J.D.サリンジャー

10. 告げ口心臓 ー E.A.ポー

11. アイロン頭 ー エイミー・ベンダー

12. 愛について語るときに我々の語ること ー レイモンド・カーヴァー

13. 古本屋ー ロアルト・ダール



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by yomodalite | 2016-03-24 06:00 | 文学 | Trackback | Comments(0)

ラスト、コーション [DVD]

トニー・レオン,タン・ウェイ,ワン・リーホン



ようやく観ることができた、2008年公開のアン・リー監督の映画の感想です。

原題は、Lust, Cautionで「LAST」ではない。過激な性描写が話題になっていたけど、あのトニー・レオンがこんなことを、、とか、この映画でデヴューした清楚なお嬢さま風のタン・ウェイがそんなことまで、、といった期待はおそらく裏切られる。そして通常の映画では見ることのない、ひどく生々しいSEXシーンは、それが「エロス」なのかどうかさえよくわからない。

物語の舞台は、1942年、日本占領下の上海。人々のきもちを、演劇を通して上演するだけでは物足りなくなった学生たちは、抗日運動の敵である政府高官のイー(トニー・レオン)に、ハニートラップにかけ暗殺することを計画し、学生演劇の主演女優のワン・チアチー(タン・ウェイ)は、その目的のためにSEXを覚える。


イー:私の周りは高官ばかり

国の重要な問題や将来について語る

だが、何を言おうと、彼らの目に浮かぶものは同じ

チアチー:何です?

イー:恐れだ。

でも、君はまるで違う 恐れていない。違うかな?

チアチー:あなたは?

イー:君は聡明だが麻雀は弱い

チアチー:そうね、いつも負けるわ。あなたには勝ったけど


イーを食事に誘うことに成功し、殺害を準備した自宅の玄関まで連れて来たチアチーだったが、イーは家には上がらなかった。彼はとても慎重だった。

チアチーたちの計画は破綻し、仲間たちもバラバラになった3年後、街中に餓死する人々が溢れる上海で、チアチーはかろうじて復学し、授業では日本語がその素晴らしさとともに教えられている。束の間の娯楽を求めて入った映画館で、ケーリー・グラントが主演する「愛のアルバム」を観ていると、映画は途中でカットされ、

「500年間、英米の抑圧を受けてきたが、全アジアの民族は、ついに苦しみに勝ち、自由を手にいれた。アジアをアジア人の手に取り戻すため、我々は1日もひるむことなく奮闘し、、、」

というナレーションに変わる。

映画館からの帰路、チアチーはかつての仲間、クァン・ユイミンに再会し、自分の思いから危険な目にあわせたことを詫びるユイミンは、再び、チアチーをスパイ活動へと導いていく。「君を傷つけることはさせない」と言って。

危険な任務だということはわかっているはずの彼女は嫌がることもなく、イーの自宅で下宿する身となる。そして、イーはついに、チアチーを抱くことになるが、そこで、激しい情欲をむき出しにしているのは「政府高官」のイーで、目的のために愛人を演じているはずの「女優」は演技を忘れている。

日本の降伏は目前に迫り、崩壊寸前の南京国民政府の高官であるイーを「殺害する」という役目に意義はなく、そこにあるのは「危険」だけ。しかし、チアチーをレジスタンス活動に誘ったユイミンや、彼らを指導する反政府の軍人には、自分の信じる道しか見えていない。

でも、チアチーは何も信じておらず、ただ、イーに会いたいという思いさえも、自覚できていない。そして、その「目的のなさ」が疑うことしかできないイーの心を揺るがすことになる。

チアチーが、イーをハニートラップにかける作戦に参加したのは、ユイミンへの愛ではなく、そこには、祖国への愛や、アジアをアジア人の手にというスローガンも、政府の任務といった「理由」もない。ただ激しく肉体を求めあったイーとチアチーの間には、むきだしの「真実」だけがある。

誰かが、誰かを裏切るのではなく、
誰もが、国や政府や思想に裏切られているけど、
自分の心を、自分で裏切ってもいることに、誰もが気づいていない。

それゆえ、アン・リー監督は、この映画の中で一切「愛」を描こうとしないのだ。

漢字によるタイトルは、『色・戒』。

「色」には様々な意味があり、Lust, Caution の「Lust」にも、肉欲だけでなく、征服欲、金銭欲、名誉欲、、など、さまざまな意味があって、

この映画には、すべての「色」と「Lust」と「Coution(警告)」が織り込まれている。

世界的に評価の高いアン・リーですが、本当にスゴイ監督だということがよくわかって、『ブローバック・マウンテン』しか観ていなかったことが恥ずかしくなった。


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by yomodalite | 2015-05-29 06:00 | 映画・マンガ・TV | Trackback | Comments(0)

迷い鳥たち

ラビンドラナート タゴール/未知谷

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本書は、『ギタンジャリ』と同じく、タゴール自身が英訳して出版した作品集。

1916年に、タゴールが来日し、横浜の三渓園内にあった松風閣に滞在することになったとき、部屋に案内し、障子を開けると、眼下に東京湾の真っ青な海と房総の山々が窓いっぱいに拡がり、涼しい海風とともに一羽の鳥が窓の中に飛び込んできた。タゴールはそのときの感動から、「さまよえる鳥が私の窓に来る」A stray bird comes to my window という句を作り、それがこの詩集のタイトルにもなった。初版本には、三渓園のオーナーである、原富太郎への献辞も添えられていたようです。

また、この本の詩の形式はアフォリズムというか、2〜3行ほどの短い詩で構成されているのですが、それも日本の俳句に影響を受けたものらしく、タゴールは、早くから日本に関心をもち、日本人の自然を愛する美意識を高く評価していました。

しかし、その後、彼は日本の帝国主義に失望し、来日中の講演でも批判をしたため、当時の日本政府から疎まれるようになり、日本のアジア初のノーベル賞受賞詩人に対する歓迎の熱も潮が引くように冷めていったようです。

でも、マスコミの熱狂は冷めても、本書にはいつの時代にも人の心を動かさずにはいられない「名言」のような言葉があふれていて、

1992年の「EBONY/JETインタヴュー」で、マイケルが引用していたと思われる詩も。。

本書の訳詩に、英詩も併記して、いくつかメモしておきます。

IT is the tears of the earth that keep her smiles in bloom.
大地を花ほころばせるのは、大地の涙があればこそ

IF you shed tears when you miss the sun, you also miss the stars.
太陽をみうしなって涙をながすなら、あなたは星たちをもみうしなう。

"WHAT language is thine, O sea?"
"The language of eternal question."
"What language is thy answer, O sky?
"The language of eternal silence."

「海よ、あなたの言葉はどのような言葉ですか」
「永遠の問い、という言葉です」
「空よ、あなたの答えはどのような言葉ですか」
「永遠の沈黙、という言葉です」

WHAT you are you do not see, what you see is your shadow.
あなたが何者なのか、あなたには見えない、あなたが見るのはあなたの影法師にすぎない。

MAN is a born child, his power is the power of growth.
人間は天性の子どもであるがゆえに、その持てる力とは成長する力のことなのです。

MAN does not reveal himself in his history, he struggles up through it.
人間とは、じぶんの歴史のなかにおのずと姿をあらわすというのではなく、それを通じて努力して進むことそのものなのです。

THE Perfect decks itself in beauty for the love of the Imperfect.
完全者は、不完全者への愛のために、美でもって自身を装う。

WRONG cannot afford defeat but Right can.
悪は敗北する余裕をもつことができないが、正しきことはそれができる

EVERY child comes with the message that God is not yet discouraged of man.
子どもは、どの子も、神はまだ人間に失望していないというメッセージをたずさえて生まれてくる。(*)

TO be outspoken is easy when you do not wait to speak the complete truth.
率直に話してしまうのはたやすい、あなたがほんとうの真理を語りかけたいというのでなければ。

IF you shut your door to all errors truth will be shut out.
あなたがすべての誤りにたいして扉を閉ざすならば、真理も閉め出されることになる。

THE world has kissed my soul with its pain, asking for its return in songs.
世界はそれがもつ苦痛でわたしの魂に口づけし、その返礼を歌にするようもとめた。

THE service of the fruit is precious, the service of the flower is sweet, but let my service be the service of the leaves in its shade of humble devotion.
果実の役目は貴重であり、花の役目は甘美なものであるけれど、わたしの役目は、つつましい献身で木陰をつくる、樹木の葉のようでありますように。

MEN are cruel, but Man is kind.
「人びと」は残酷だ。しかし「人」は優しい

LIFE has become richer by the love that has been lost.
人生は失われた愛によっていっそう豊かになる。

THAT love can ever lose is a fact that we cannot accept as truth.
愛が負ける、などということは事実としても、真理とみとめるわけにはいかない。

MAN'S history is waiting in patience for the triumph of the insulted man.
人間の歴史は忍耐づよく待っている、侮辱された人間が勝利するのを。

LET this be my last word, that I trust in thy love.
わたしはあなたの愛を信じます。これをわたしの最後の言葉とさせてください。

________

(*)マイケルのインタヴューでは、"When I see children, I see that God has not yet given up on man." 「子供たちを見れば、神は人間を見捨ててはいないことがわかる」ですが。。。



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by yomodalite | 2015-05-28 06:00 | ☆マイケルの愛読書 | Trackback | Comments(0)

プロレス少女伝説 (文春文庫)

井田 真木子/文藝春秋

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著者である井田真木子氏は、2001年に、44歳という若さで亡くなられたノンフィクション作家。それなのに没後10年以上経った2014年に、井田真木子著作撰集というものが出版されているということを知り、どんな作品を書いておられた方なのか知りたくなって、1991年に大宅壮一ノンフィクション賞を受賞した本書を読んでみることにしました。

伝説は、長与千種、神取忍という女子プロレスをあまり知らない人でも、名前と顔がわかる人が多いふたりと、海外から日本にやってきた、天田麗文と、デブラ・ミシェリーという4人の少女たちによるもの。

天田麗文は、外務省職員として旧満州に渡った父親が、中国人と結婚して生まれた子供だったが、父がガンで亡くなった後、12歳で、中国から日本に帰国することになった。言葉も通じず、地域にも家族にも溶け込めず、終日テレビの前に座っていた彼女を惹きつけたのは、女子プロレス。それから、彼女はプロレス雑誌をよむことで日本語を覚えるようになり、女子プロレスラーになれたら、南京に帰れる。それが彼女の唯一の夢となった。

デブラ・ミシェリーは、イタリア人の父と、アメリカ・インディアンの母、共に黒い眼と黒い髪のふたりから、ブロンドで青い目をもって生まれてきた。父は少女の美しさを偏愛し、その嫉妬からか、母からは虐待をうけ、7歳で両親が離婚すると、彼女は祖父母と同居しながら、アルバイトに精をだし、10代で起業家となるほどだった。その後、モデルにもなった彼女は次第にエンターテイメントの仕事に惹かれるようになり、その1ページを女子プロレスラーから始めた。

神取忍は、高校時代、女子柔道体重別選手権に出場し、3年連続で優勝していた。柔道の天分は明らかだったものの、キツくパーマのかかった金髪のカーリーヘア、なかば剃り落とされているような眉の彼女は、その試合内容よりも異彩を放ち、卒業後は大学の推薦入学をすべて断り、その後は、独自の練習方法で国際大会に出場した。彼女の肩書きは、当時から1985年に引退するまで「無職」だった。

そして、天田麗文がテレビを見て憧れ、デブラが「外人レスラー」として対戦して、これまでにない感覚を味わったのが、クラッシュ・ギャルズで旋風を巻き起こしていた長与千種だった。

長与千種は、元競輪選手で、引退後の商売に失敗した父親から空手を習っていた。1964年に大分で生まれた彼女は、『月刊平凡』の女子プロレス募集要項の “月収10万以上”という記載を見て、「こりゃあ、牛ば買えるわぁ!」と思った。その頃の彼女は、「土地を持っているんが金持ちで、10万円で土地を買って、そこに牛を飼ったら、もう絶対に金持ちにきまってる」と。「プロレスばぁなって、月に10万円の半分は仕送りしたる。その金でオヤジに牛買ってやる」本気だった。

私がこの本をのめり込んで読んだのは、貧しい境遇から這い上がった姿ではなく、自分の居場所を探し求め、人とは違った場所でそれを見つけ、大勢の人を熱狂させたこと。そして、それが厳しい練習量とか、根性などといったものよりも、彼女たちひとりひとりが新たに「創造」した物語によるものだったこと。

長与千種がもっていた部活の先輩のような明るさを、彼女自身がどのように演出していたか、また、「ミスター女子プロレス」「女子プロレス、最強の男」と言われ、男性のプロレスラーにさえ勝利した神取忍のことを、これまで、私は男になりたかった女性だと思っていた。

でも、彼女は、自分が「女」であることに強いこだわりを持っていた。

そして、現在よく使われるようになった「心が折れる」という表現は、今まで一度もギブアップで負けたことのなかった、女子プロレス草創期のスター、ジャッキー佐藤と神取忍の試合から生まれた言葉だった。

大宅壮一ノンフィクション賞を受賞したとき、選考査員だった立花隆は、『私はプロレスというのは品性と知性と感性が同時に低レベルにある人だけが熱中できる低劣なゲームだと思っている。もちろんプロレスの世界にもそれなりの人生模様が様々あるだろう。しかし、だからと言ってどうだと言うのか?世の大多数の人にとってはそんなことはどうでもいいことである』と言ったらしい。

プロレスが重要だったことは、私にもないですが、2015年の今、井田真木子の重要性は、立花隆の遥かに上をいっていると思う。『井田真木子著作撰集』も絶対に読まなければと思った。



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by yomodalite | 2015-05-26 13:09 | 報道・ノンフィクション | Trackback | Comments(0)

アメリカの反知性主義

リチャード・ホーフスタッター/みすず書房

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反知性主義が、現代日本を象徴する言葉として、取り上げられるようになり、元外務省職員で作家の佐藤優氏は、それを「実証性や客観性を軽んじ、自分が理解したいように世界を理解する態度」と語りました。

本書は、1963年に書かれ、ピュリツァー賞を受賞した古典的名著ですが、描かれているのは、もっと古い時代、アメリカ建国期のピューリタリアニズムの再検討から始まり、反知性主義の源流を、キリスト教信仰復興運動と関連づけている。本書が、今読んでも、驚くほど古さを感じないのは、名著であるだけでなく、何十年も遅れて、キリスト教がほとんど信仰されていない日本に「反知性主義」が起っているせいで、それが、多くのプロテスタントにも、聖書にも、イエスにも、実際には、あまり関係がなかったことが理解できるからでしょうか。

建国時には、社会の各分野をしめていたジェントルマンが凋落し、知識人を敵だと考えるようになっていった背景には、キリスト教を母体とした信仰復興運動があり、キリスト教を滅亡させようとする陰謀の告発や、王制を復活させ、英国の傘下に置こうとしているという策謀があると考える人々の歴史が順を追って描かれています。彼らが、どれほど教育を嫌い、知性を敵視してきたか。反知性が、多くの面で反ユダヤと重なっている理由にも、思い当たる点があるでしょう。そして、こういった知的な著書を読むとき、これも、常に感じてしまうことですが、著者は、やはりユダヤ系らしい。

反知性主義が、日本を覆うようになったのは、バブル世代が、土台のない知性しか持たなかったからかもしれません。80年代以降に生まれた人たちは、まともな知性に出会うことはなかった、かわいそうな世代だと思いますが、今のアメリカのような社会に住みたくないのなら、古典を読んで、土台のしっかりした知性を身につけるしかないと思う。

二段組みで厚み3センチほどありますが、この手の本にはめずらしいほど読みやすい翻訳!今のアメリカがどうやって創られていったのかに関心がある人にとっては必読本。プロテスタントの宗派に興味がある人にも。



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by yomodalite | 2015-02-04 01:16 | 宗教・哲学・思想 | Trackback | Comments(0)

小説 外務省-尖閣問題の正体

孫崎 享/現代書館

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2014年4月に出版された本。サブタイトルは「尖閣問題の正体」ですが、そこから考えることで、今起こっている「イスラム国」への対応や、安倍首相の役割についてもよくわかる本です。

◎防衛大学学群長を退任後『戦後史の正体』を出版し、12万部を突破するほどヒットした元外交官・孫崎享氏の告発小説が出版拒否されまくりの真相(▶▶超面白いけど出版拒否の嵐…)

なぜ、出版拒否されたかがよくわかる箇所を少しだけ抜粋します。

(引用開始)

石原慎太郎東京都知事は2012年4月16日午後、米国の研究所、ヘリテージ財団主催のシンポジウムで講演し、尖閣諸島の一部を都が買い取る意向を示した。

西京寺がこの話を聞いた時、最初の反応が「なんで、ヘリテージ財団だ?」であった。ヘリテージ財団は、共和党系で最も力の強い、軍の補強を強く主張する研究所である。しかも、昔から「闇の世界」と関係しているのではないかと噂され、CIAや軍諜報機関のDIAを経験した者が勤務している。ニュースサイト「watch pair」は、1980年代、韓国のKCIAは、ヘリテージ財団に寄付を行い、ヘリテージ財団は、統一教会の活動家を研究所で勤務する者として受け入れていた」等の記述をしている。ヘリテージ財団は単なる研究所ではない。スパイ活動と関係しているのだ。

スタンフォード大学名誉教授のメイは、ヘリテージ財団での石原の演説を聞いたあと、ボアーズ・ヘッド・インの夕食会に来た。米国国防情報局DIA招待である。米国国防省は、将来の国防政策を中国の脅威を軸として構築する予定だった。そのとき、日本と韓国を米国の尖兵として中国に対峙させようと思っていた。日中間に緊張をもたらすために、石原知事をヘリテージ財団に呼んで演説してもらうことを計画した。

バンダービルド大学のジェームズ・アワー教授(元国防省日本部長)と、リチャード・ローレス元国防副次官も参加した。ふたりは日本を手玉に取る「ジャパン・ハンドラー」と呼ばれるグループの中心人物である。

1990年代後半、さまざまな形でCIA協力者リストが公表された。そのひとつであるクローリー・ファイルには、POCAPON(暗号名)=緒方竹虎(朝日新聞社主筆吉田内閣時の副総裁)、PODAM(同)=正力松太郎(読売新聞社社主)POHALT(同)=柴田秀利(正力松太郎の右腕)だけでなく、メイの名前が出た。「CIAのスパイ」と指摘されて、日本で活動できるはずがないと、メイは思ったが、読売新聞も、メイも日本で追求されることはなく、それどころか、日本の政界、財界、言論界の上層部との接触の密度が逆に濃くなった。

石原慎太郎は、メイと密接な関係をもっていることを自慢している。メイは石原を熟知している。彼には米国で評判が高くなることを教えればいい。(P68〜73を省略して引用)

2005年に「ゲームの理論を通じて、紛争と協調への理解を深めた」功績でノーベル経済学賞をもらったシェリング教授は、そこで、こんな理論を展開している。『勝利と言う概念は、敵対するものとの関係でなく、自分自身が持つ価値体系との関係で意味を持つ』

欧州政治の専門家である青山学院大学の羽場久美子教授は、

「日本政府は尖閣諸島などを『固有の島』と言っていますよね。でも、これはおかしいんです。私は民族・地域紛争を研究していますが、『固有の島』という論じ方はおかしいと思います。日本は尖閣諸島を1895年に自分のものにしたと「固有の領土」と言っていますが、ヨーロッパでは、19世紀や20世紀の問題で「固有の領土」という言い方はしないのが普通です。19世紀末ののヨーロッパでは、一方が「固有の領土」と言ってしまうと、ほとんどが戦争になってしまっています。国境線の引き直しを巡って、約2千年に及ぶ紛争が続いてきました。国境の取り合いは「ゼロ・サム・ゲーム」です。取った、取られたでは終わらず、そこから次の戦争が始まります。」(P85〜P88を省略して引用)

日本ではCIAはよく聞くが、DIAが言及されることはあまりない。ヘリテージ財団のクリングナー上級研究員(東アジア担当)は、財団の会議室にCIAやDIAの面々を集め、メイ教授も招待した席で、こう口火を切った。

「尖閣諸島では日中間の緊張が起こっている。我々の狙い通りの現象だ。今日の緊張をつくってくれたことに関しては、前原氏が国土交通大臣の時に、タイミング良く漁船衝突事件に誘導した功績が大きい。さらに言えば、わがヘリテージ財団で石原都知事が「東京都で尖閣諸島を購入する」と言うアイデアを出してくれたのがよかった。これはメイ教授の尽力も大きい。2012年12月に16日、衆議院選挙がある。民主党が大敗して、自民党が政権をとるのは確実だ。」

CIA職員のマークが言う。「民主党に食い込ませていたからな。前原、野田、管がクーデターをやり、特捜部と新聞社が援護射撃した。日本国民を誘導するのは易しいからね」

「メイ教授、自民党の総裁選挙はどうなるでしょう」クリングナーの質問に、メイ教授は自信たっぷりに「安倍になります」と述べた。

マーク「尖閣諸島で火がついている間は、日本人の中で反中感情は燃え上がります。NHK。読売、朝日、日経これらは皆「日本固有論」で展開しています。異論をはき続ける人間は所詮一匹狼で、大手マスコミは使いません。それでも続ける人がいえば、人物破壊で始末するだけです。マスコミには人物破壊を行えるよう手を打ってあります」

誰かが『週刊新潮』と『週刊文春』はいい仕事をしている。と言うと、別の人間が「読売新聞の貢献に比べれば、足もとにも及ばないよ」笑いと拍手がおきた。

国際的にも、情報機関が女性の問題で重要な人物を追いつめるケースが続いた。ウィキリークスの組織を立ち上げ、タイム誌の2010年「パーソンズ・オブ・ジ・イヤー」の読者部門で一位に選ばれたジュリアン・アサンジは、スウェーデン滞在中の女性支援者から裁判をおこされたことで、ウィキリークスの活動は止まり、フランス代表選では、サルコジを破る可能性が高かったストロス・カーンがニューヨーク訪問中のホテルで、清掃作業員の女性に性的暴行を加えたと訴えられ、立候補を取り下げられた。

CIAは胸を張って言う。「日本は今やすっかりわが国のいうとおりに動く国になった」2013年4月現在、各国の米国債保有額は、億ドル単位で、中国12649、日本11003、英国:1634、ドイツ:640。日本はドイツの20倍もの米国債を買わせている。この知恵は、英国が植民地インドに使った手段と同じである。1996年、橋本首相はコロンビア大学での講演で「米国債を売ろうという誘惑にかられたことはある」と述べた翌年に内閣崩壊し、その後、汚職問題で議員辞職に追い込まれ、2006年に腸管虚血で死亡した。

日本の検察は説目説目で、対米自主派を潰してきた。(P114〜120を省略して引用)

(引用終了)

ここまでで、本書のまだ半分以下。

このあとも、鳩山、森元首相などなど、多くのキーパーソンが実名で登場し、マスコミ報道とは異なる姿や、勇気をもって真実を伝えようとした人々のことも書かれ、主人公である外交官・西京寺は孫崎氏自身を投影する外交官でありながら、孫崎氏自身も登場し、

2009年防衛大を辞め『戦後史の正体』を出版したとき、民主党が政権を取り、日米関係が見直されようとしているときだったので、大変な関心を呼び、ツイッターを始めるきっかけにもなった。ソーシャルネットワーク(SNS)は誰でも始められる。政府と異なる意見を発信していくのは、大変なことだ。2011年、「ウォール街を占拠せよ」を合言葉にした抗議行動は、全米に広がり、1%の富裕層が国全体を支配している。我々は99%だという主張は支持を拡大したものの、デモの中に紛れ込んだ警察官が意識的に先導し、警察を衝突させた。

SNSは重要な役割を果たすようになり、2013年の米国民の世論調査では、新聞・テレビへの信頼はわずか23%だった。

と、本書の、孫崎氏は、SNSに期待を寄せる発言をしていますが、主人公の西京寺は、すでに、日本のSNSにも、大手マスコミや、諜報機関による誘導がなされていることも覚悟して行動しようとしているようです。

ダンテの『神曲』にこういう言葉があるらしいよ。『地獄のもっとも暗黒の場所は、道徳的危機のときに、中立を保っていた(何も発言しなかった)人のために用意されている」

西京寺が引用した言葉は、この物語を読む私たちにとっても痛烈な言葉です。

その気持ちに突き動かされて、多くの人が間違った情報を拡散し、憎しみを煽り、差別を助長するだけの「偽の真実」でネット空間を埋め尽くし、自分の良心を表現する以外になんの効果もない祈りを捧げ、、、

そうして、一神教は、世界の対立の元凶で、、などと言っていた、その場の空気以外に信じるものをもたない「日本教」の信者である私たちは、戦う理由もなく、戦争に協力させられ、培ってきた価値観も、お金も、命も、奪われていく。

戦争なんか絶対にしたくないと思っているのは、アメリカでも、ヨーロッパでも、アジアでも、アラブ諸国でも、本当は一番多いはずなのに。。


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by yomodalite | 2015-02-02 13:28 | 政治・外交 | Trackback | Comments(11)

タゴール詩集 ギタンジャリ―歌のささげもの

ロビンドロナト・タゴール/風媒社

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去年読んだ本で、ブログに記録しておかなくちゃと思う本が溜まり過ぎていて、2015年の最初に紹介する本を何にしようか迷ったのですが、こちらは、私が思う『ギタンジャリ』のベスト翻訳本。

ディーパック・チョプラ氏が、マイケルが旅立つ2週間前の会話で、彼がタゴール詩集を読んでいたと明かしていたことで(『ギタンジャリ』かどうかはわからないのですが…)、この詩集を読んでみたという方も多いと思います。


私もそのひとりで、多くの翻訳本がある『ギタンジャリ』をすべて読み比べてみたわけではないのですが、本書は、一般的な単行本よりも一回り小さく、厚み1センチのコンパクトサイズ。タイトル部分は、銀箔押しで、ベッドサイドやお気に入りの読書スペースに置いておくのにも相応しい素敵な装幀で、平易な言葉で散文的に訳されているだけでなく、英語詩も併記されています。

本書の「はじめに」から、要約して引用します。

タゴールの詩稿は、画家のウィリアム・ローセンスタインの奔走によって詩人のイェイツや、エズラ・バウンドに見出され、英語詩集『ギタンジャリ』は、イェイツの序文とともにロンドンのインド協会から発行され、その数年後、タゴールは、アジア人として、最初のノーベル文学賞に輝く。英語版の『ギタンジャリ』は、小説家のアンドレ・ジッドによるフランス語訳をはじめ、世界各国で翻訳され、詩人の増野三良が日本語に訳した『ギタンジャリ(歌の祭贄)』が出版された翌年の1916年に、タゴールは初めての日本訪問を果たしている。タゴールは詩作のかたわら、演劇、小説、評論、作曲、教育、絵画といった分野でも活躍し、20世紀前期のヨーロッパ、アジア、南北アメリカなどの諸国を歴訪しながら東西文化の交流にひと役買った。

題名の『ギタンジャリ』は、ベンガル語で《歌のささげもの》という意味である。

収録作の多くが、作者である「わたし」から、永遠の存在である「あなた」へとささげられた歌の形式で書かれている。「あなた」が、神であるならば、これらの歌はすべて神にささげられた詩人の祈りであるといえるだろう。

英語版の『ギタンジャリ』は、1910年に上梓したベンガル語版『ギタンジャリ』から、53篇、その前後の10年ほどの期間にものした『ささげもの』「渡し舟』などの詩集から50篇、しめて103篇のベンガル語の韻文を自選し、タゴール自身の手で英語の散文に翻訳して1冊にまとめられた。

それぞれの詩に通し番号が打たれているだけで、題名はついていないが、元々バラバラに書かれた作品である。

(引用終了)

通し番号だけでは内容がわかりにくい「目次」には、詩の冒頭が日本語と英語の両方で記されていて、


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対訳もある本文は、こんな感じ。。


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横浜三渓園で撮られたというタゴールの写真に、なぜか既視感を覚えたりw、私が海外の詩を日本語にするときに思い描いている「理想」(散文的で、詩的な印象の漢字や表現をできるだけ避けたもの)に近いからでしょうか。『Dancing The Dream』に納められていたら、マイケルが書いたと思ってしまうような詩もいくつかあって、そんなことも、「ベスト翻訳本」に選んだ理由なんですが、、



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「訳者あとがき」より、要約して引用します。

タゴールは英語の独特な擬古文で『ギタンジャリ』を書いた。少年の頃から、サンスクリット語のヴェーダ文献や叙事詩、中世インドの宗教詩に親しむとともに、シェイクスピア、バイロン、ワーズワースなどの英語の詩文にも傾倒し、青春時代には《ベンガルのシェリー》という渾名がついたという逸話もある。タゴールが詩の翻訳を試みるときに、英語の擬古文を採用したのは、自然のなりゆきだったにちがいない。しかし、わたしは英語のテキストが擬古文だからといって、日頃なじみのない古雅な日本語に訳すのではなく、水のように透き通った現代語に置き換えていくことに、ひたすら心血をそそいだ。本書を訳すにあたり、先行する訳業の数々を拝読して幾重にも敬意を表したうえで、これから初めてタゴールを読もうとしているひとの心にも自然に届くような日本語をあてはめていくことを肝に銘じた。

(引用終了)


本書から一篇だけ選ぶのに、すごく迷いました。

次に訳そうと思っている『Dancing The Dream』の “WHEN babies SMILE” や“children OF THE WORLD”を思い出す詩もあったのですが、わたしは、MJがチョプラに、「タゴールの詩を読んでいる」と言ったのは、そのこと自体が、「別れの挨拶」だったように思えて、それで、そういった詩の中から選んでみました。

*  *  *

わたしは知っている、この世が見えなくなる日が訪れることを。

いのちは無言で立ち去るだろう、わたしの眼に最後のとばりを垂らして。


それでも星は夜の見張りをして、朝はいつもどおりに起床するだろう。

海の波のように時間がうねり、愉しみと苦労を打ちあげるだろう。


わたしの時間の終わりをおもうとき、時の障壁が破れて、

死の光に照らされたあなたの世界の素朴な宝のありかが見える。

そこでは身分の低い席ほど大切にされる、卑しいいのちほど大切にされる。


わたしが無駄に待ち望んだものと、わたしが手に入れたもの ーー

それらは消えるにまかせよう。

かつてわたしが拒絶して見過ごしたものだけを、いつわりなく手元に残してくれ。



I KNOW THAT the day will come when my sight of this earth shall be lost, and life will take its leave in silence, drawing the last curtain over my eyes.


Yet stars will watch at night, and morning rise as before, and hours heave like sea waves casting up pleasures and pains.


When I think of this end of my moments, the barrier of the moments breaks and I see by the light of death thy world with its careless treasures. Rare is its lowliest seat, rare is its meanest of lives.


Things that I longed for in vain and things that I got-let them pass. Let me but truly possess the things that I ever spurned and overlooked.



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by yomodalite | 2015-01-05 13:05 | ☆マイケルの愛読書 | Trackback | Comments(0)
私がややこしい本を読んでいる隣で、ダーリンが読んでいた図書館本なんですけど、、

ちなみにこの本の前は、梶原一気の弟で、真樹日佐夫氏の『ああ五十年身に余る―真樹日佐夫ワル自伝』を読んでいて(ダーリンはすごく面白かったらしいのでこの後読むかも)、またもや下品な本を、、とは思ったものの、なんとこの本にも、朝堂院氏が登場していてw、

それ以外の13人のアウトサイダーたちも全員、さまざまな分野から選ばれた方々なのですが、知らない人も多く、極薄い興味でパラパラと斜め読みしているうちに、ずんずんと惹きこまれ、読み終わる頃には、今年読んだ本の中で、一番面白いノンフィクション本だったかも。。とさえ思えてきました。2012年に出版された本なんですけどね。

著者はヘアヌード本のプロデュースから「毛の商人」と呼ばれた方ですが、私は氏の文章を読むのは初めてで、どんな方かも知らなかったのですが、学生運動を経験した「団塊の世代」の中でも、当時の熱さや、社会への思いを持ち続けていて、もしかしたら同世代の方の中では、現在もっとも面白い仕事をされておられるのかも。それと、高須基仁氏は、高須クリニックの院長とは親戚なんだそうです。

タイトルは、歎異抄の有名フレーズ「悪人正機」から名づけられているのですが、自身を「悪名」と呼ぶ高須氏は、アウトサイダーとは、アウトローと似ているけど、ニュアンスがちがうと言う。アウトサイダーは、少数派で、何かを最初にやる人で、それが花開いたとき、その人はいないというのがアウトサイダー。

そして最初の対談者である、前田日明と、柳美里には「自分がやったことが広がっているのに、自分はそこにいない」という哀しみをとりわけ感じると。

[内容メモ]

前田日明
韓国に言いたいことがたくさんある。在日外国人の参政権の問題、自分はkの法案を通せば在日であるとかいろんな人に将来に禍根を残すと思っているので、大反対なんです。。

朝堂院大覚
朝鮮総連売買、朝青龍暴行疑惑、亀田問題、、、亀田問題の背後には、元の所属ジムである協栄ジムの亀田親子へのファイトマネー未払い問題があるわけです。本来コミッションは、ファイトマネーを払うようにする義務があるのに、当時のコミッショナーが仕組んだ。。。(番外編対談):ロアビルのフラワーの上にある朝堂院の息子がやっている店。。。朝堂院の息子のひとりは関東連合の頭の1人で、顔は絶対に見せない。。。朝堂院が恐喝しているとき、俺が真ん中に入って。。。朝堂院氏は、スポーツ団体のすべてのトップをやってますね。。。そういう名刺をがんがん作って作ってくるんだよな。。。任侠右翼に多い手口ですよね。。。朝堂院が去年の10月以降メディアには一切出なくなった。基本的に恐喝しにくい時代になったんだろう。俺に言わせれば、彼のはわかりやすい恐喝。ただ、ヤクザではないから、暴力装置は感じない。基本的に一匹狼の人なんだろうな。。。朝堂院さんは、企業経営者だったから、企業の不正を教えてあげて、コンサルタント料をいただいているんでしょうかね(笑)。。。朝堂院は資本主義の弊害に対して、ものを申しているだけだろう。警察は、資本主義の隙間でやってくる人間は逮捕しない。


自伝がイマイチで、少し興味を失いかけていた朝堂院氏ですが、本書でまた少しだけ理解できたというか、恐喝という言葉を、はじめて「いい意味」に捉えそうになってしまいました(苦笑)



斉藤智恵子
浅草ストリップ劇場、ロック座の会長。(北野武に)私が勝新太郎の「座頭市」を監督してと言ったんです。。。早乙女太一は私の子どもでした。。

石井和義
出所から2年。元K1プロデューサーが考えてきたこととは。。。

柳美里
キャバクラをテーマに「アサヒ芸能」で、『雨の夜、日曜の朝』という官能小説を書いているけど、今までとは読者層がちがう。これはファンに対しての裏切りというか、、、

川崎タツキ
決して後ろに下がらないボクサー。少年院、ヤクザ、薬物依存地獄を乗り越えた生き様。

戸川昌子
渋谷のシャンソンバー「青い部屋」は、従業員の持ち逃げという不測の事態で、存続の危機に陥った。。

杉浦和男
2011年は地下格闘技ブームに沸いた。中でも異彩を放ったKRUNCHを主催する足立区の伝説的不良。。。

山本直樹
連合赤軍をテーマにした『レッド』の漫画家。ママ友の中にも永田洋子はいる。。。

ルミカ
自身がいじめられた経験をもとに、「いじめ74(なし)ツアー」と題し、74カ所をツアー。。。

秋田一恵
弁護士。永田洋子の弁護をつとめる。。。

ごとう和
「りぼん」でデヴューし、現在はレディースコミックを中心に活躍。東電福島原発事故の20年前、原発の恐ろしさを描いたマンガ、『6番目の虹』を発表。

黒岩安紀子
団鬼六の未亡人。1999年に歌手デビューし、「知覧の母」「母は老いても」を発表。「団鬼六は最後までSM小説を恥じていた」。。

[番外編対談]高須基仁×平井康嗣対談
週刊金曜日の発行人、北村肇はかつて「サンデー毎日」の編集長をしていて、「週刊金曜日」に別の基軸を作りたくて、高須氏の人脈を利用しようとした。。(本書は「週刊金曜日の連載から出版されたもの)





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by yomodalite | 2014-11-18 00:29 | 評論・インタヴュー | Trackback | Comments(0)

宗教の倒錯/上村静

宗教の倒錯―ユダヤ教・イエス・キリスト教

上村 静/岩波書店

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本書について、著者は、「宗教は人を幸せにするためにあるはずなのに、なにゆえその同じ宗教が宗教の名のもとに平然と人を殺してしまうのか?」という、素朴な問いに答えることを目的としていると言う。

宗教関連の本として、私にとって、ここ数年のベスト本なのですが、それゆえ、思うところが多過ぎて、なかなか感想を書けずにいました。


世界の不公平や悪の原因をユダヤのせいにし、激しい敵意をむき出しにして、「正義」や「真実」を語り、「洗脳」されていると煽る本が現代日本でも数多く見られます。


キリスト教では、ユダヤ人は、イエスを十字架にかけたと憎みますが、キリスト教ができた後、イエスと同様、様々な異端を弾圧し、処刑し、異教徒と激しく戦争してきたのも、キリスト教会です。


数多の陰謀論にも見られる「反ユダヤ主義」の原因について、一般の読者が理解できるように書かれている本は稀で、ユダヤ教にも、キリスト教にも精通した聖書研究者で、特に日本人による著作となると、本当に希少だと思います。


著者が説明しようとした「倒錯」は、私たち日本人のほとんどが意識することなく過ごしていることですが、それは特定の宗教の問題ではなく、一神教の問題として、遠くから眺めていられる時代は終わり、私たちは欧米で行なわれてきた歴史から、何も学ぶことなく、同じ過ちを繰り返そうとしているようです。


答えについては、本全体から読み取るべきですが、

購入の際の立ち読み箇所としては、

第16章「キリスト教のユダヤ教からの分離」からがお奨めです。


◎[Amazon]宗教の倒錯ーユダヤ教・イエス・キリスト教






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by yomodalite | 2014-07-28 22:27 | 宗教・哲学・思想 | Trackback | Comments(0)

旧「読書日記と着物あれこれ」。歴史/文学/お笑いを好み、着物生活をしていたはずが、いつしかマイケルジャクソンのように本を読もうになってしまったブログ。永年暮らした東京を離れ、現在は大阪を満喫中。


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