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マイケルとヒップホップ(1)

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マイケルのアルバムに “ラップ” が登場したのは、1991年のアルバム『Dangerous』のオープニング曲『Jam』が最初でした。

『Bad』発売1年前の1986年は、ロックとラップを融合したRun-D.M.Cの「Walk This Way」や、白人ヒップホップの草分けであるビースティ・ボーイズ「Licensed to Ill」がヒットチャートを席巻し、スパイク・リー監督のデビュー作『シーズ・ガッタ・ハヴ・イット』が低予算映画でありながら700万ドルを超える興行成績を残した年。


RUN-DMC - Walk This Way




Beastie Boys - Fight For Your Right




1985年から始まったNBAの大スター、マイケル・ジョーダンを使ったナイキのCMは、それまで業界第2位だったナイキを一躍トップメーカーへと押し上げることになったのですが、リーはデビュー映画の成功をきっかけに、このCM撮影をまかされ、ジョーダンとの共演CMも評判を呼びました(1987)。





ちなみに、マイケルがペプシのCMに登場し、コカコーラとの「コーラ戦争に勝った」と言われたシリーズCMが始まったのは1984年のこと。1980年代の中盤は、エンターテイメント界と、スポーツ界の2人の若き黒人スター(奇しくも二人ともMJ)が、マーケティング史上にのこる快挙を成し遂げることになったわけですが、ペプシと異なり、若者に高価なスニーカーへの欲望を掻き立てたCMは、「エア・ジョーダン狩り」と呼ばれる暴力事件を誘発したという批判も受けることに。

『Bad』のプロデューサーだったクインシー・ジョーンズや、マイケルも勢いを増すヒップホップの流れを感じていて、『Bad』がロック寄りになったのも、そういった流れに沿ったものとも言えるわけですが、マイケルがヒップホップのアーティストと会ったのは、クインシー・ジョーンズがセッテイングしたRun-D.M.Cとの出会いが最初だと言われています。

クインシー・ジョーンズは、彼らとマイケルの共作を考えていて、「Crack Kills」という曲を録音したものの、結局「Crack(亀裂)」をテーマにしたこの曲は『Bad』には収録されることはありませんでした。

『Bad』では、Run-D.M.Cよりも、シングル曲でのプリンスとの共演計画の方がよく知られていますが、プリンスは自らこの共演を断り、マイケルがその後、ヒップホップとの距離を縮めていくのとは逆に、ヒップホップ界の汚い言葉や、男性優位で、女性蔑視的な言葉遣いや世界観を嫌って、ラップミュージックに反対の立場をとるようになります。

これは、マイケルファンにとっては意外というか、むしろ、マイケルがしそうなことだと感じる人が多いのではないかと思いますが、これまでマイケルよりもずっと過激な表現をしてきたプリンスは、1985年のアルバム『Around the World in a Day』以降、徐々に宗教色を強めていき、その後、マイケルが『Bad』期に離れた教団に、プリンスは改宗することになります(2001)。

ふたりは音楽や仕事に対しても、神に対しても、非常に似通ったところがあるのですが、マイケルは時代に支持されていることに、常に真っ向から立ち向かおうとし、プリンスはより独自な道を切り開こうとする。というのはこの後も続いたふたりの個性のように思われるのですが、プリンスがより宗教的になっていったのは、ヒップホップ世代の社会の変化が大きかったからではないでしょうか。

音楽やダンスの修養や、練習する楽器を手に入れなくとも、ラップを書くことで成功できるかもしれないというラップミュージックは、かつて英国のパンクムーブメント以上に、黒人社会を変え、ヒップホップに黒人社会の未来を感じた評論家や、アーティストによる過激な言葉は、音楽や文化だけでなく、政治との繋がりをも深めていきました。

『Bad』と同じ1987年には、おそらくヒップホップに関する文章で、最も多く引用されているグループだと思われるパブリック・エネミーのデビューアルバム『Yo! Bum Rush the Show』も発売され、彼らはセカンドアルバム『It Takes a Nation of Millions to Hold Us Back』から、より政治色が強くなり、

スパイク・リーの1989年の映画『ドゥ・ザ・ライト・シング』のテーマにも使用された「Fight The Power」を含む、彼らのアルバムの中で最も売れた1990年の3rdアルバム『Fear of a Black Planet』は、ブラックパワーや、ネイション・イスラムと連携を深め、黒人至上主義的なメッセージによって、ポリティカル・ヒップホップの土台を作ることになり、アメリカ国会図書館の重要保存録音物として永久保存もされています。


Public Enemy - Fight The Power





ヒップホップの創始に関わった三大DJの1人で、ラップ、DJ、ダンス、グラフィティなどの黒人の創造性文化を総称して「ヒップホップ」と名づけたアフリカ・バンバータの文化戦略とは異なり、『ドゥ・ザ・ライト・シング』で描かれたように、かつては隣人だったユダヤ人はハーレムを離れ、新しくハーレムで店を始めた韓国人社会とは軋轢を生み、黒人社会の底辺には「反ユダヤ主義」や「新世界秩序」といった陰謀論が蔓延し、ドラッグビジネスや、銃による抗争や自己防衛は、地元警察との関係をますます悪化させていく。

マイケルの『Bad』(1987)から、『Dangerous』(1991)までの間、プリンスは『アンダー・ザ・チェリー・ムーン』(1986)に続いて、『Sign "☮" the Times』(1987)や、『Graffiti Bridge』で、音楽だけでなく、映画を通して、神や愛というメッセージを表現しようとするのですが、音楽的な完成度はさておき、プリンスとリスナーであり、消費者でもある一般の若者との距離は遠くなっていきました。

そして、一方のマイケルは、アニメ的な表現ともいえる「Smooth Criminal」の映像でさえ許そうとしなかった教団を離れ、『Dangerous』では、若者の心情に寄り添ったラップを取り入れることで、分裂や対立が大きくなった社会に影響を与えようとした。ラップを最初に取り入れた『Jam(団結)』はそれを象徴する曲でした。

(2に続く・・・)


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by yomodalite | 2017-04-24 16:15 | MJ考察系 | Trackback | Comments(0)

ラップは何を映しているのか(あるいは映していなかったのか)

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最近読んだ中で一番面白かった本から、抜粋省略してメモしておきます。


ラップは何を映しているのか


磯部・・・ネルソン・ジョージのようなオーセンティックなブラック・ミュージックの歴史観では、ディスコはソウルを売り渡したもので、対してオールドスクールのヒップホップはピュアなものとされていますから、ところが「ゲット・ダウン」は、ヒップホップと、同時代のニューヨークで起こっていたアンダーグラウンドなゲイ・ディスコのシーンとの接近を描くことで、前者の「正史」には描かれてこなかった歴史の在り方を示唆した。・・・






大和田 ゲイフレンドリーなディスコと、ミソジニスティックなヒップホップが交互に描かれていますね。・・・実はオバマ政権はアフリカン・アメリカンの団体からはそれほど評価は高くないけど、LGBTの団体からは評判がいい。


大和田 アメリカのヒップホップやラップミュージックを象徴する10曲を選ぶにあたって、当初は普通にBLM関係の曲にしようと思っていたんです。例えば、ビヨンセがスーパーボウルのハーフタイムショーで、ブラックパンサーの格好をしたダンサーを従えたり、ケンドリック・ラマーがBETアワードの授賞式でパトカーの上に乗って「Alright」をラップしたりと印象的なパフォーマンスも多かったですし。


ところが、大統領選の結果を受けて、そうしたことがどうしようもなく虚しく感じられてしまった。






つまりケンドリック・ラマーが重要で素晴らしいアーティストであることは間違いないけど、意地悪な言い方をすれば、そのケンドリックを白人の音楽評論家が絶賛するという、マイノリティとリベラルな白人の音楽評論家が結託して作り出す適度に心地よいぬるま湯的な共同体が結局はトランプ的なるものに敗北してしまった、ということを思わずにはいられませんでした。


吉田 確かにそういう視点から見ると・・あまりに評価されすぎているように思えるところはあります。・・・


磯部 ・・・ケンドリックはBLMのデモについて、「行動もいいけど、葛藤しろ」というような微妙な発言もしているようですが・・・


大和田 ・・・例えばアメリカの学会などに行くと、白人男性の研究者でフェミニズムやアフリカ系アメリカ人のアクティビズムに深くコミットしている人はたくさんいるけど、白人の労働者階級に言及する白人研究者は相対的に少ない。・・・


アカデミーに属する人間として、僕らはアメリカの様々な現象を分析する際に、呪文のように「レイス」「ジェンダー」「クラス」の3つの指標を用いるように訓練づけられていますが、ウォルター・ベン・マイケルズによれば、レイス、ジェンダーの二つと、クラスというカテゴリーはぜんぜん違う。つまり、前者の二つは結局アイデンティティ・ポリティックスになりうるけど、階級(クラス)はなりえないんですよ。


例えば、アフリカ系アメリカ人や女性というアイデンティティには、マイノリティとしての戦略的な本質主義、すなわち「黒人」や「女性」の「誇り」がともなうけど、貧乏であることに誇りは生じない。貧乏はただ単に金持ちになりたいだけで、だからこそ階級闘争が重要だとマイケルズは言う。・・・


要するに統治者は白人のアイデンティティやプライドをくすぐることで、同じような状況にある黒人に対する優越感を持たせ、労働者としての連帯を妨害したというんですね。それが統治者の操作によるものかどうかは別として、白人労働者と黒人が共闘することがアメリカにおいていかに困難であったかは容易に想像がつきます。


磯部 トランプの勝利確定直後の混乱状態にいては、これは「白人労働者階級の革命だ」なんてことが言われましたが、だんだんデータが出揃ってくる中で、トランプを勝たせたのは、むしろアフリカ系やヒスパニックのようなマイノリティだ」という見方も出てきていますね。オバマに比べてヒラリーを積極的に支持できなかったアフリカ系の投票率の低さや、ヒスパニックによる意外なトランプへの投票率の高さが彼の勝利を導いた面もあると。・・


実はトランプはラップミュージックでは人気がありましたからね。2015年の時点でハフィントン・ポストは「ドナルド・トランプ」がネーム・ドロップされた67曲ものラップソングをリストに上げていますが、多くの場合、その名前は金持ちの象徴として肯定的に扱われています。そもそも。自信家で口が悪くて・・・っていうキャラクターがラップ的。しかも、トランプ自身もラップ好きで、エミネムがお気に入りだったり・・・


2004年にはエミネムのパーティに呼ばれて、「私は正しいことしか言わない!スリム・シェイディ(エミネムの別名)は勝利者だ!なぜなら、トランプの一票を獲得しているからだ!」みたいな演説を打っている。それが今回の選挙期間中、エミネムは手のひらを返すように「キャンペーン・スピーチ」という強烈なアンチ・トランプソングを発表したわけです。・・・ラップミュージックこそがトランプを有名にしたとも言えるのではないでしょうか。


もともとラップをやるような不良は、ストリートの政治にしか目に行かないというか、かつてN.W.Aみたいに無意識に政治を体現してしまうタイプの方が多いとしても・・。大文字の政治という意味では、「いま」を映さなくなってきたとも言えるのではないかと。あるいは、それこそが「いま」なのかもしれません。


吉田 ・・・例えば2008年のオバマ対マケインの裏にも、ラップ対カントリーという構図があったわけですよね。当時はウィル・アイアム、ジェイZらがオバマ支持を表明しましたが、あの頃と避泊しても、確かに状況は複雑化しているように見えます。


大和田 リチャード・B・スペンサーのような白人至上主義者の団体がワシントンで集会を開いてナチス式敬礼をしているといった、これまであまり一般のメディアでは見られなかったような映像が、大統領選をきっかけに可視化されるようになりましたね。彼らにしてみれば、アフリカ系アメリカ人や女性のアイデンティティ政治があるのなら、白人のアイデンティティ政治があってもいいだろうということになる。


磯部 「男性差別」みたいなネトウヨ用語っていうのは日本独自のものだと思われがちですが、例えば、ビヨンセのスーパーボウルでのパフォーマンスに対しては「白人差別」、BLMに対しては「ホワイト・ライブズ・マター」というような逆張りが散見されました。


磯部 ラップミュージックはリアルを歌っていると思われがちですが、むしろ重要なのはリアリティ、つまり「リアルっぽさ」であり、それってポスト・トゥルース的だとも言えると思うんですね。


ア・トライブ・コールド・クエストが、大統領選挙直後のサタデー・ナイト・ライブでトランプの演説をアイロニックに引用した「We the People」を披露して話題になりました。・・・投票直前にリリーズされたコモンの「Black America Again」も、トランプのスローガン「グレート・アメリカ・アゲイン」をもじったタイトルをつけ、スティービー・ワンダーからロバート・グラスパーまで様々な世代のアフリカ系アーティストを呼んだリベラルなアルバムでした。






しかし、アメリカのラップにおける幼児退行の象徴であるリル・ヨッティと、ラッパーとシンガーの中間のようないかにもいまっぽいヴォーカリストのドラムが共演した曲からは、トライブやコモンが保守的に思えるようなアナーキーさが感じられ・・・実際トライブやコモンよりも「Broccoili」の方が圧倒的に受けています。





大和田 ネットで「大統領選でこれだけ有名ミュージシャンが輪になってもリベラル側が勝てなかった」と言うひとがいたけど、アメリカ研究に関わる者としては、それはまったく驚くべきことではないんです。例えば、レディ・ガガやケイティ・ペリーが政治的にどういう立場をとり、どういうことを言うのか、みんなすでにわかってる。


ディベートですら支持者を変えるほどの影響力はそれほどなく、政治的なポジションがメディアやカルチャーによって変化することはほとんどないように思います。・・・同じ意見の人たちがうなづきあう状況を「エコー・チェンバー(反響室)」と言いますが、結局みなが反響室の中で自分たちの意見が増幅されることに満足していた、ということだと思います。


リル・ウェインや、エイサップ・ロッキーはBLMに興味がないと言っている、そのことには真摯に耳を傾けなければいけないと思います。


磯部 実はそれこそが多様性とも言えるだろうし、「アメリカの多様性」や「多文化主義」といったときに排除されてしまうものもあるのでしょうね。エイサップにとって、BLMは、排他的なブラック・ナショナリズムに映る部分もあると思うんですよ。・・・


この1ヶ月は完全にミーゴスが制覇していましたよね。






吉田 ・・・政治的な楽曲が溢れすぎて食傷気味になった反動が表れている・・・


大和田 反動というか、でもサウスのシーンってもともと政治的なメッセージをそれほど発したわけでなないです。実際に鳴っているサウンドを「政治的に:」解釈することは可能ですが・・・


オバマ政権下においてはエンターテイメントとしてのポリティックスも政治的に見えたものが、トランプ政権下においては、文字通りのエンターテイメント、しかもあまり出来のよくない娯楽にしか見えないというか・・・


磯部 カニエ・ウエストは、「もし(選挙に)行っていたら、トランプに入れていただろう」という発言のあと、実際にトランプに面会して、さらなる批判を受けています。


大和田 もう一人、スティーブ・ハーヴェイという黒人コメディアンが同じようにトランプに面会して批判を受けました。(yomodalite:カニエとMJは2008年の「スリラー25周年記念アルバム」で共演。スティーブはMJの潔白を晴らすことに多大な貢献をしている)


磯部 カニエは「多文化問題について議論するためにトランプに会う」・・とツイートしていました。・・・しかし、彼はトランプと会ったあと、精神的な疲労で入院し、件のツイートを削除するという。・・・


大統領選でのディベートでもシカゴのサウス・サイドがいかに治安が悪いかが議論されていて、そこの出身のチーフ・キーフの「I don’t Like」のMVだけでなく、同じイメージをまとった曲が過剰に再生産されている。サウスサイドで起こった年間の死亡件数がイラクを超えたからってことで、Chicag(シカゴ)+Iraq(イラク)で、「Chiraq(シャイラック)」という。


大和田 スパイク・リーが同名のタイトルで2015年に映画化したんですが、批評家受けは悪くはないものの、現地の若者からデタラメだと批判されましたよね。中でもチャンス・ザ・ラッパーの批判は激烈で、部外者がシカゴを搾取しているとかなり強い口調で・・・それに対してスパイク・リーが、シカゴに問題があるなら(市長の側近を務める)チャンスの父親に言え、と反論するんですが・・・。


磯部 スパイク・リーもアウト・オブ・デイトな存在になってしまったのか、と感慨深くなりました・・・


(引用終了。「第1章:ラップは今を映しているか」より。このあとも興味深い話題が続きます)


ナチス式敬礼だと批判されたリチャード・B・スペンサーをはじめ、トランプ支持者は、シリアへの攻撃に対していち早くトランプを批判しましたが、CNNなどヒラリー支持のメディアでは、逆に評価が上がっていて・・・


日本のポップミュージックや、お笑いが政治を扱わないことを批判する声もあったけど、人種(レイス)や、ジェンダーへの言葉に驚くほど過敏なアメリカ社会が、女性蔑視で、同性愛嫌悪で、男性優位主義で、武器とドラッグとニガって言葉が大好きすぎるラップミュージックのみ批判してこなかったことを考えると(ヒラリーが「嘆かわしい人々」といった特徴のうち、人種差別主義者(黒人至上主義)、女性蔑視(ミソジニー)、同性愛者嫌い(ホモフォビア)の3つを兼ね備えていない有名ラッパーの方が少なく、ネイション・イスラムという黒人至上主義による特殊なイスラム教は、一般的なムスリムからイスラム教とは認められないことがほとんど)、やっぱりリアルとリアリティは違うんだなと。(銃規制の話になると、全米ライフル協会の話ばかりなのも、白人差別かもw)


ヒップホップにはユダヤ陰謀論を広めたという功績(苦笑)も、あると思うけど、かつてのフォークと違って、ラップは商業主義と手を結ぶのが早く、何故これほど大きなビジネスになったのか、っていう「陰謀論」の方が、私的には気になる今日この頃・・。



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by yomodalite | 2017-04-19 07:00 | 現代文化・音楽・訳詞 | Trackback | Comments(0)

和訳 “This Time Around”

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インヴィンシブルの和訳は、あと2曲を残すのみなんですが、「Speechless」に手をつけようとすると緊張してしまうし、「Unbreakable」はラップが一番の難問なので、Notorious B.I.G(別名ビギー・スモールズ)の他の曲や、同じ時代のヒップホップのリリックを調べたり、生前のアルバムを繰り返し聴いたり、自分でも呆れるほど遠回りして考えているんですが、なかなかビギーの魂が降りてこないこともあって、


「Unbreakable」よりも前、MJが初めてビギーを使った「This Time Around」から取りかかることにしました。


Notorious B.I.G(本名Christopher George Latore Wallace)は、犯罪とクラックが蔓延する環境に育ち、17歳で銃の不法所持により逮捕され、その後はお決まりのようにドラッグディーラーの道へ。その頃からラッパーとしても注目を集めるようになり、1994年のデビューアルバム『レディ・トゥ・ダイ』が大成功する。


当時のヒップホップ業界は、西海岸(デス・ロウ・レコード)と、東海岸(バッド・ボーイレーベル)が争っていて、それぞれを代表するスターとなった2pacとビギーは交友をもちながらも激化する両者の抗争の渦に巻き込まれ、


94年に、2pacが何者かに銃撃されると、ビギーは犯行に関わったと疑われ、96年に2pacが射殺されると、翌年ビギーも同じように亡くなってしまう。


マイケルは、再び王冠を手にするために、『Dangerous』をチャートのNo.1から蹴落としたニルヴァーナや、インダストリアル・ロックのナイン・インチ・ネイルズらだけでなく、ブラックミュージック界を席巻していたラップをも取り入れようとしたわけですが、


X世代と呼ばれた当時の若者の気持ちを代弁していたカート・コバーンや、2pac、ビギーにとっては、成功の重圧や、周囲の変化にやりきれない思いを抱いている時期でもありました(カート・コバーンは、2pacが銃撃された94年に猟銃自殺によって亡くなった)。


批評家は、『HIStory』に対して、様々な批判を繰り広げましたが、マイケルは再びNo,1に返り咲き、この曲から数年後の裁判ではすべてにおいて無罪を勝ち取った。


この曲は、ビギーとマイケルふたりのスターダムの苦悩が歌われていると言われていますが、もっとも苦しく、長い戦いを制し、本当に劇的な「This time around」を有言実行できたのは、マイケルだけでした。






This Time Around

song and lyrics by Michael Jackson


[Verse 1]

This time around I’ll never get bit

Though you really wanna fix me

This time around you’re making me sick

Though you really wanna get me

Somebody’s out

Somebody’s out to get me

They really wanna fix me, hit me

But this time around I’m taking no shit

Though you really wanna get me

You really wanna get me


今度は絶対にひっかからない

君は心底僕をハメたいだろうけどね

今度ばかりはうんざりだよ

君は僕をいいようにしたいんだろう

外に誰かがいる、僕をつかまえようと、うろつく誰かが

彼らは、心底僕を捕らえて、ぶちのめしたいのさ

でも、今度ばかりは君の相手はしてられない

君はマジで、僕を本当に捕まえたいだろうけどね


[Chorus]

He really thought he really had

Had a hold on me

He really thought he really had

They thought they really had control of me


彼はでかしたと思った

僕を仕留めたってね

彼はでかしたと思った

マジで僕を自由にできると思ったのさ


This time around I’ll never get bit

Though you really wanna get me

This time around I’m taking no shit

Though you really wanna fix me

Somebody’s out

Somebody’s out to use me

They really want to use me

And they falsely accuse me

This time around

They’ll take it like spit

‘Cause you really can’t control me

You know you can’t control me


今度は絶対にひっかからない

君は心底僕をハメたいだろうけどね

今度ばかりはうんざりだよ

君は僕をいいようにしたいんだろう

外に誰かがいる、僕を利用しようとする誰かが

彼らはマジで僕を利用して、偽りの罪で僕を告訴する

今度ばかりは、彼らに言ってやる

君に僕を自由にはさせないって


[Chorus]

He really thought he really had

Had a hold on me

He really thought he really had

They thought they really had control of me

He really thought he really had

A hold on me

He really thought he really had

They thought they really had control of me

He really thought he really had

Had a hold on me

He really thought he really had

They thought they really had control of me

He really thought he really had

A hold on me

He really thought he really had

They thought they really had control of me


彼はでかしたと思った

僕を仕留めたってね

彼はでかしたと思った

マジで僕を自由にできると思ったのさ


[rap by The Notorious BIG]

Listen

I’ve got problems of my own

Flashin’ cameras

Taps on my phone

Even in my home

I ain’t safe as I should be

Things always missin’

Maybe it could be my friends

They ain’t friends

If they robbin’ me

Stoppin’ me

From makin’ a profit, see

Apology

Shallow like the ocean

I guess I’ll resort to gun totin’

If I was dead broke and smokin’

I’d probably be by my lonesome

I’m a killer nigga

I ain’t jokin’

Endo smoke got me choked

And I’m hopin’

The fool comes slippin’

So I could blow ’em open

This time around

I changed up my flow

Got rid of the rocks

Got Pitts by the door

I’ve raised other people

To watch my back

Stay away from strangers

So I won’t slack

And I know my nigga Mike like that

Baby


聞いてくれ

俺には俺の悩みがある

カメラのフラッシュ、電話の盗聴

自分の家でさえ、安全とは言えず

いつもモノがなくなるんだ

たぶん、やったのは俺のダチさ

でも、俺から奪うなんて、ダチとは言えないな

俺が儲けようとすれば、足を引っ張り

しょっぱい謝罪は、海のごとく(*1)

俺は銃を持って歩くしかないのかも

もし俺が死ぬほど貧乏で、煙でもふかしてたら

だれもそばには寄ってこないんだろうけどな

俺は最高の黒人(*2)

冗談なんかじゃないぜ

マリファナの煙でむせてるけど

そうありたいって思ってる

バカなヤツがうっかりやって来たら

そいつをぶちのめしてやる

今度こそは、俺が流れを変えるんだ

ドラッグとはおさらばして(*3)

ピッツに表に立ってもらう(*4)

今までとは別のやつらを引き立てて

俺を背後から守ってもらい

知らない奴らからは離れて、気を緩めたりしない

俺のダチのマイク(MJのこと)もそうしてるんだ、ベイビィ


This time around, yeah

He really thought he really had

Control of me

He really thought he really had

They thought they really had control of me

He really thought he really had

A hold on me

He really thought he really had

They thought they really had control of me

He really thought he really had

Had a hold on me

He really thought he really had

They thought they really had control of me

He really thought he really had

Control of me

He really thought he really had

They thought they really had control of me

He really thought he really had

A hold on me

He really thought he really had

They thought they really had control of me

This time around yeah

He really thought


今度こそは・・

彼はでかしたと思った

僕を仕留めたってね

彼はでかしたと思った

マジで僕を自由にできると思ったのさ・・・


(訳:yomdalite)

_________


(*1)CD訳の「お詫びは大洋のように空っぽ」とは別の訳を考えてみました。

(*2)このkiller は凶暴ではなく最高!という意味。(MJインタビューでの使用例→)

Rod Temperton came into the studio and he came up with this killer

ロッド・テンパートンがスタジオに現れたとき、彼はあのスゴい曲を持ってきたんだ。

(*3)rocks は、クラックや、コカインといったドラッグのことだと思う。

(*4)Pitts は、落とし穴や、ピッツバーグではなく、ビギーのマネージャーであり、プロデューサーでもあった、Mark Pitts のことだと思う。

https://en.wikipedia.org/wiki/Mark_Pitts



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by yomodalite | 2017-04-14 09:01 | ☆マイケルの言葉 | Trackback | Comments(0)

桜のように・・・浅田真央引退

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日本で一番、可憐だった人が、桜が散っていくように引退を決めました。

今日あらためて、銀盤という言葉は美しいなぁと思い、そこでこれほど永く美しく輝いた人は、やっぱり浅田真央以外にはいなかったと思いました。

競技会ではなく、もっともっと美しい舞台で、これからも輝いてください。
たくさんの感動を本当に本当にありがとう。。



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TEB 2010 EX「バラード第1番」






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2011-2012 Nationals Gala





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散ることができるのは、
美しい花だけ





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by yomodalite | 2017-04-11 12:06 | スポーツ | Trackback | Comments(6)

桜曲 ー Prelude to J.S. Bach's Suite No.1

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by yomodalite | 2017-04-10 17:00 | 日常と写真 | Trackback | Comments(0)

桜曲 ー Yume no Shizuku

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by yomodalite | 2017-04-10 07:00 | 日常と写真 | Trackback | Comments(0)

桜曲 ー Once Upon a Time in America

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by yomodalite | 2017-04-09 17:00 | 日常と写真 | Trackback | Comments(0)

桜曲 ー Lucid Fall

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by yomodalite | 2017-04-09 07:00 | 日常と写真 | Trackback | Comments(0)

桜曲 ー 忌野清志郎

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by yomodalite | 2017-04-08 19:00 | 日常と写真 | Trackback | Comments(0)

『ムーンライト』もう、バリー・ジェンキンス監督から目が離せない

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キャストは全員黒人で、主人公はゲイらしい・・そんな前情報から、黒人+LGBTというマイノリティを掛け合わせた、ポリコレ色の強い映画?という危惧もあったのだけど、全然そうじゃなかった。

ドラッグ・ディーラー、シングルマザー、治安の悪い地域・・・永年、黒人アーティストを通じて語られてきた世界が、初めてリアルに、しかも「社会的」という目線ではなく描かれた傑作。

最初から最後まで目が離せないほど美しい光と色、そして音楽。

映画が終わって、スクリーンから出ると、漂ってくるキャラメルポップコーンの香りが、いつも以上に甘くて香ばしくて、切なかった。

派手な映像はないけど、この「光」は、劇場で浴びた方がいい
私はこの一作で、映像作家バリー・ジェンキンスの大ファンになりました。
この予告編では、映画の素晴らしさが全然伝えきれてないと思う。

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by yomodalite | 2017-04-07 06:00 | 映画・マンガ・TV | Trackback(1) | Comments(0)

旧「読書日記と着物あれこれ」。歴史/文学/お笑いを好み、着物生活をしていたはずが、いつしかマイケルジャクソンのように本を読もうになってしまったブログ。永年暮らした東京を離れ、現在は大阪を満喫中。


by yomodalite