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映画『手紙は憶えている」監督:アトム・エゴヤン

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もう日本の映画しか観ないかも・・と思ったのも束の間、先週3本目の作品は、カナダ&ドイツ映画の『手紙は憶えている』(原題:Remember)。

90歳の老人ゼヴは、目覚めるとすぐに妻のルースを呼ぶが、彼女はすでに亡くなっている。認知症のゼブは、もうそんなことさえ憶えていることができない。

妻の葬儀のあと、同じ施設で暮らす友人から手紙を託され、ゼブは家族にも内緒で施設を出る。ふたりは共にアウシュヴィッツ収容所の生存者で、家族を殺したナチスへの復讐を誓い、車椅子の友人は、ゼブが忘れても大丈夫なように全ての計画を手紙に書いていた。身分を偽り、今も生きているという兵士の名は、“ルディ・コランダー”。容疑者は4名まで絞り込まれていた。

驚愕のラスト5分、あなたは見抜けるか?

というキャッチフレーズから、どうしてもその真実を想像しながら見てしまうことになるのですが、『シックス・センス』の魅力が、8歳の少年を演じたハーレイ・ジョエル・オスメントだったように、この映画では、90歳の認知症の老人を演じている、87歳のクリストファー・プラマーから目が離せなくなる。

ゼブは子供を可愛がり、子供からも優しくされるようなキャラクターで、それがこの物語を見る私たちの視点を混乱させ、『シックス・センス』のような巧妙な叙述トリックはないものの、エンディングの哀しさには繋がっている。

音響的に抑制されたこの映画の中で静かに心に響くシーンが、ゼブがピアノを弾く二度の場面。

最初はメンデルスゾーン、そしてラストはワーグナー。

サスペンスというよりは、認知症でありながら、このふたりの美しい音楽を奏でるゼブという老人の映画だと思いました。タイトルは、『手紙は・・』ではなく、原題どおり『リメンバー』の方がより深く余韻を楽しめたかな。

下記は、ヒトラーがワグネリアンだということは知っていたけど、メンデルスゾーンがユダヤ人だったことは意識していなかった。という人への参考記事。




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by yomodalite | 2016-10-31 10:27 | 映画・マンガ・TV | Trackback(2) | Comments(0)

映画『永い言い訳』監督:西川美和

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映画館で邦画ってこれまではあまり観ていなかったけど、ブログには書いてないものの、『シンゴジラ』や『怒り』も映画館で観たし、今後ますますその傾向は強くなりそう・・

というわけで、今週観た映画の2本目は、西川美和監督の『永い言い訳』。

* * *

テレビにも頻繁に出演する作家の主人公には、美容師の妻がいる。

売れないころからの習慣なのか、妻は夫の髪を切っている。

「衣笠幸夫」という本名へのコンプレックスは、男を作家らしくねじれさせ、女はそれをスパスパと切っていく役割のよう。

男は当然のように妻に不満を抱き、妻が女友達と旅行に出ると、家で別の女を抱いていた。

そんなとき、乗っていたバスが事故に遭い、妻は友人と一緒に亡くなってしまう。

そこからの夫の行動が「永い言い訳」として描かれている。

友人にはふたりの幼い子供がいて、夫は作家とは正反対ともいえる長距離トラックの運転手。まったく共通点がなさそうなふたりは、子供を通して急接近することになって・・・

映画のキャッチコピーは、

妻が死んだ。これっぽっちも泣けなかった。そこから愛しはじめた。

でも、愛しはじめたものが何だったのかは、観る人によるのかも。

同監督の『ゆれる』と同じように、この映画も個性の異なるふたりの男性の話で、こういった心理をよく描いてくれたと感じるのは男性の方が多そう。

一方で、これまでも、女性は物語の外に置かれていることが多く、男性への目線の中に、父親コンプレックスを感じないのも、女性クリエイターとしてめずらしい個性のような・・

私は西川美和氏の小説も読んでみたくなりました。

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by yomodalite | 2016-10-29 07:00 | 映画・マンガ・TV | Trackback | Comments(0)

映画『SCOOP!』監督:大根仁

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今週のレディースデーは邦画で2作品を鑑賞。

まずは最初に見た『SCOOP!』から。

『山田孝之の東京都北区赤羽』でお顔を拝見してから、なんとなく次作は見てみなきゃ、と思っていた大根仁監督の作品。

昨今の「文春砲」などと言われるスクープに対して、まったく好ましい感情を抱いていないし、MJファンとして、週刊誌やパパラッチをヒーロー視するなんてありえない。そんなネガティブ感情を覆すような展開なんて絶対に無理なんじゃないかと思っていたのですが、

冒頭から下品極まりない始まり方で、タバコを吸いまくる福山雅治は清潔感のカケラもなく、口から出る言葉の90%以上が、最近ではほとんど耳にすることもなかったような下衆いセリフばかりで、そして、そんな彼や、彼の主戦場である雑誌がスクープするのもぜんぜん巨悪というわけでもない。

それなのに・・・

不思議と楽しめたんですよね。

現実のスクープは、芸能人の不倫ごとき内容に、社会正義を振りかざし、まるで絶対悪であるかのように関係者以外の人間に謝罪させるとか・・・そんなことを言っていたら、人類最古の小説ともいわれる「源氏物語」は?、古典小説の多くが絶版になったりしたら・・女子高生に恋愛について聞いてどーするの?とか、

とにかく、もうどーでもいいことで「謝罪」ばっかりさせて・・というところが嫌でしかたなかったんですが、この映画では、下衆が下衆を追うという姿勢が貫かれているところが爽快なのかも。

トップが腐敗していると、トリクルダウンするのは「偽善」ばっかり・・

それで、気概というものが「下衆な場所」の中にしかないように思える現代にぴったりな娯楽作品!

と、そんな風に思ってしまったのは、おそらくアメリカ大統領選挙のせいですがw

今年の助演男優賞なら、リリー・フランキーでキマリだと思う。


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by yomodalite | 2016-10-28 07:00 | 映画・マンガ・TV | Trackback | Comments(0)

和訳 “Privacy”

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MJの歌詞和訳は、彼自身が詩を書いているものに限定して訳しているのですが(「Man In The Mirror」は例外)、アルバム『インヴィンシブル』の和訳6曲目は「Privacy」。


この曲は、人類史上最高にプライヴァシーのない人生を送ったMJが、パパラッチに追われたことによる事故で亡くなってしまったダイアナ妃の死や、自分への行き過ぎた取材への怒りから出来上がっている。


しかしその後、プライヴァシーの問題は一部のセレブだけでなく、より大勢の人へと拡大し、人々はお互いに自由を奪い合い、疑いの眼差しは一層深まっているような気がします。


HIStory以降のMJの言葉は、人々の日常にリアルに響くものが少なかった。と当時は思っていましたが、何十年経ってもテーマやそこにある感覚が古くなっていないことに、今は驚かされます。


頂点に経った後、そうなる以前の心情から詩を書き続ける人は多いですが、MJはKINGという立場にたって、永遠に意味が失われないテーマを選んでいたと思うんですよね。






"Privacy"


Ain’t the pictures enough, why do you go through so much

To get the story you need, so you can bury me

You’ve got the people confused, you tell the stories you choose

You try to get me to lose the man I really am


どうしてそんなに嗅ぎまわるんだ、写真だけじゃもの足らないっていうのか

君は必要な物語を手に入れ、それで僕を葬り去ろうとする

君は自分が選んだ物語を語って人々を混乱させる

君は本当の僕を消し去るつもりなのさ


You keep on stalking me, invading my privacy

won’t you just let me be

‘cause you cameras can’t control, the minds of those who know

That you’ll even sell your soul just to get a story sold


君は僕をつけ回し、僕のプライバシーを侵害している

僕を放っておいてくれないか

記事を売るためなら、君は魂さえも売り払う

それを知っている人の心をカメラで操ることはできない


[CHORUS]

I need my privacy, I need my privacy

So paparazzi, get away from me


僕にもプライヴァシーが必要なんだ

だから、パパラッチ、僕の前から消えてくれ


Some of you still wonder why, one of my friends had to die

To get a message across, that yet you haven’t heard

My friend was chased and confused, like many others I knew

But on that cold winter night, my pride was snatched away


君たちの中には疑問に思う人もいるだろう

なぜ僕の友人が死ななくてはならなかったのかと

それは、君たちが聞いたことのないメッセージになっただろう

僕が知る大勢の人たちと同じように

その友人は追われることで混乱した

でも、あの冬の寒い夜、僕のプライドも奪われたんだ


Now she get no second chance,

she just ridiculed and harassed

Please tell my why

Now there’s a lesson to learn,

respect’s not given, it’s earned

Stop maliciously attacking my integrity


もう彼女には次のチャンスはない

彼女はただ嘲笑され、酷く悩まされた

誰か教えてくれよ、なぜなのか

今こそ学ばなければ

敬意は与えられるものでなく自分で手に入れるものだと

僕の清廉な精神を、悪意をもって攻撃するのはやめてくれ


[CHORUS]


Now there’s a lesson to learn,

stories are twisted and turned

Stop maliciously attacking my integrity


今こそ学ぼう、物語はねじ曲げられ

変えられているということを

僕の清廉な精神を、悪意をもって攻撃するのはやめてくれ


[CHORUS x 3]


(訳:yomodalite)



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by yomodalite | 2016-10-27 07:00 | マイケルの言葉 | Trackback | Comments(0)

追悼ピート・バーンズ

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MJよりも1歳年下のピート・バーンズが57歳で旅立ちました。

稀有なボーカリストにして、世界一ファッショナブルで、男性と女性、生と死、そして、性と聖、様々なデンジャラスな境界線をずっと綱渡りし続けた・・・

世界中のディスコは、これから1ヶ月ぐらいは毎日Dead or Aliveだけをかけまくってもいいんじゃないかな。

だって、21世紀までのディスコフロアでもっとも人々を熱狂させたのは、きっとDead or Alive だと思うから。




比率が少し狂っているんだけど・・
Brand New Lover





イントロ長いVer
Turn Around and Count 2 Ten





Come Home (With Me Baby)





Something in My House





これから毎年
自分の誕生日にはこれをかけようかな・・
Unhappy Birthday
Fan the Flame (Part 1)収録(1990)






整形後の曲で、
デヴィッド・ボウイのカヴァーだけど、
ボウイより素敵かも
Rebel Rebel (1994年)





やっぱり、
You Spin Me Round はハズせない・・





日本でのライブ
「サイコーーーーーーーー!!!!」
Disco In Dream 1989 Best






誰かが亡くなったときに、rest In peace とか、
R.I.P.なんて絶対に言いたくないって思ってたけど、
ピートにはなんだかそう言うのが相応しいような気がする。

R.I.P. ピート、
たくさん踊らせてくれてありがとーーーーーー!!!!


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by yomodalite | 2016-10-25 17:00 | 現代文化・音楽・訳詞 | Trackback | Comments(0)

食べる私/平松洋子

食べる私

平松 洋子/文藝春秋




雑誌「オール讀物」で3年間連載されていた「この人のいまの味」を単行本化。マイケルと同じ年に生まれた、ドゥマゴ文学賞を受賞したエッセイスト平松洋子氏による、各界の著名人の食についての対話が収められています。

著名人29人のラインナップは・・・

第1章
デーブ・スペクター(62)
林家正蔵(54)
ハルノ宵子(59)
黒田征太郎(77)
ヤン・ヨンヒ(52)
伊藤比呂美(61)

第2章
ギャル曽根(31)
美木良介(59)
土井善晴(59)
辻芳樹(52)
松井今朝子(63)

第3章
安藤優子(58)
ジェーン・スー(43)
渡部建(44)
光浦靖子(45)
堀江貴文(44)
大宮エリー(41)

第4章
高橋尚子(44)
吉田秀彦(47)
髙橋大輔(探検家・50)
田部井淳子(77)
山崎直子(46)
畑正憲(81)

第5章
小泉武夫(73)
服部文祥(47)
宇能鴻一郎(82)
篠田桃紅(103)
金子兜太(97)
樹木希林(73)

(カッコ内の数字はWikipediaで調べた生年を2016年から引いた数字)

食べ物との関係に濃厚な気配が感じられるひと。というのが人選の理由で、各省の括りの説明はなかったのだけど、あらためてラインナップを見てみると、

食べものへの関心のなさが際立つディブ・スペクター氏から始まる第1章は、グルメにも、手の込んだ家庭料理とも関係が薄そうな方々が多く、第2章は、食や料理を仕事にしている方々、第3章は、今のメディアで活躍している人々、第4章は、アスリートや探検家といった特殊な仕事につく人々の食、第5章は、登山家の服部文祥氏を除けば、高齢者の方ばかり。

あとがきに、「語り手の輪郭が立ち上がってくることに主眼を置いた」と書かれているように、対談という感じではなく、著者はそれぞれの人に語らせるという役を担っていて、「食べる私」の「私」は、平松洋子さんではなく、それぞれの人であり、読む人に、自分の中の「食べる私」のことも思い起こさせる。

語ってくれている人の中には、名前すら知らない人も多かったのだけど、なんとなく名前は知っていたけど、どんな人なのかはまったく知らなかった宇能鴻一郎氏の回は冒頭から色々と驚かされた。

(下記は省略・要約して引用)

油照りの昼下がりだった。横浜の、とある屋敷町の坂道をのぼっていくと蝉の亡骸がころんといくつも転がっている。夏も終わりだなと思いながら勾配をのぼりつめると、行き止まりに一軒の洋館があらわれた。宇能鴻一郎宅である。・・・

宇能鴻一郎の編み出した官能小説の文体は唯一無二。誰が読んでもすぐそれとわかるところに凄みがある。

「あたし、濡れるんです」

無防備で稚拙にみせながら、核心にずばりと踏み込む。

「課長さんたら、ひどいんです」

思わず膝を乗り出させ、しかし文体は硬質で無駄がない。だから読む者に隙を与えず、おのおのの想像力にすべてがゆだねられ、読む者はけっきょく自分で自分の官能を開かせられることになる。・・・宇能鴻一郎はそもそも日本古代史研究の徒だった。東大文化二類入学、文学修士、『鯨神』で芥川賞受賞・・・しかし、後年の「あたし、濡れるんです」とのギャップが作家としての像をしごく曖昧にした。・・・山本夏彦でさえ、こう書いている「宇能鴻一郎は名のみ高く、その姿を見た者がない唯一の文士である」

そして、日刊ゲンダイでの連載小説の最終回(2006年)から宇野氏は出版界からも消えていた

・・・邸の扉が開くと、そこは日常からみごとに切り離された異空間だった。静まり返ったエントランスホール正面に置かれたコンソールテーブルに、シルクハットとステッキ。左の空間に視線を移すと、外光が降り注ぐ小部屋の中心に燭台を配したおおきなテーブルがあり、フルセットの食器とカトラリーが数人分揃っているのが見てとれる。右に視線を運ぶと、虎がかっと口を開けて牙をむいた頭部つきの毛皮が床に敷き詰めてあり・・・

半世紀も秘書を務めているという老婦人にうながされて靴のまま廊下を進み、部屋の入り口に立つなり、息を飲んだ。そこは巨大なボールルーム・・・敷地600坪の邸宅とは聞いていたが、これほどまでに現実離れしているとは。しかし「序の口」という言葉の意味を思い知るのはこれからだった・・・

(引用終了)

このあと、燕尾服に身をかためた白髪長身の宇能氏があらわれて、ますます驚きの展開が続くと、、他の食に関する話などすべて忘れて、「今どき、殺人事件の推理なんかやってないで、宇能鴻一郎をモデルにドラマを創って・・織田君!」と思ってしまう私なのでしたw。



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by yomodalite | 2016-10-24 12:00 | エッセイ | Trackback | Comments(9)

映画『ジャニス:リトル・ガール・ブルー』

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今住んでいる大阪の家は、これまで以上に映画館が近いせいもあって、この機会にできる限り映画は劇場で、という気持ちが強くて、ミュージシャンを主役にした映画の場合は特にそう思う。映画を観に行くというより、ライブよりも良い席でステージが見られるような気がするし、映画としてハズレだったこともないから。

『ミスター・ダイナマイト』も、『AMY エイミー』も、映画で初めて彼らに会えたような気がしたけど、ジャニス・ジョプリンのことも、それまでCDを聞いていたわけでも、親しみを持っていたわけではなく、これが初めての出会いだった。

平凡な家庭に生まれた3人兄弟の長女であるジャニスは、家族の中でも学校でも、妹や弟より浮いた存在。それでもその歌声は人々を一瞬で魅了し、天才シンガーとして一気に階段を駆け上がっていく彼女は、モントレー・ポップ・フェスティバル(1967)や、ウッドストック(1969)といった60年代の歴史的な音楽祭で大成功を収めていく。

驚いたというか、ある意味、当時からそうだったんだと思ったのは、ジャニスがウーマン・リブの団体から非難されたというエピソード。ジャニスは自分ほど女性の自由な表現を追求して成功したアーティストはいないと思っている。当然そうだと思う。彼女に勇気をもらった人は数知れないだろう。それでも、女性運動家たちはジャニスのバンドは男性ばかりだと非難した。

生前最後のテレビ放送では、酷いいじめに遭っていた高校時代の同窓会に出席すると語っていた。実際に出席した同窓会はテレビカメラに収められることになり、そこには、スターとして故郷に帰った彼女を冷たく迎える同級生たちの様子が映し出された。

ジャニスが27歳という若さで亡くなったのは、それからわずか数ヶ月後のこと。

これまで彼女の歌を意識して聞いたことはなかったのだけど、映画の中で流れる曲はどれも聞いたことがあって、冒頭から息をのむぐらい惹きこまれてしまうものばかりだった。でも、映画のタイトルにもなっている「リトル・ガール・ブルー」は、ジャニスが創った曲ではない。

それは古いブルースのようで、私はニーナ・シモンの曲としてこの曲を知っていたけど、映画の一番最後に流れた曲がそれと同じ曲だということに最初は気づかなかった。

少女の絶望を歌った『Little Girl Blue』は、ニーナのデビューアルバム(1958)のタイトル曲で、ジャニスの曲は3枚目で、生前に発売された最後のアルバム『I Got Dem Ol' Kozmic Blues Again Mama!』(1969)に入っている。

本当に差別が激しかった時代に黒人として生まれ、正統的なクラシックピアノの教育をうけたニーナには絶望した少女を過去のものにするような黒人のプライドと未来がある。

ジャニスの「リトル・ガール・ブルー」は、彼女の傷口から絞り出したかのような他の曲と比べると、どこか明るさが感じられるけど、絶望はより深く、ジャニスの人生と死がそのまま歌われているように感じる。

亡くなったとき、「27クラブ」に入会してしまったと言われたエイミーには他にも選択肢があったのかもしれない。それでも彼女は、迷いながらもジャズを選んだ。でも「27クラブ」を創設してしまったひとりであるジャニスには、本当にそれ以外になかったように思えた。

大声で差別を訴えることができて、居場所も与えられている「マイノリティ」と違って、本当に誰にもわかってもらえない少女の絶望をわかってくれたのは、彼女だけだ。
誰もジャニスにはなれないけど、なりたいとも言えないだろう。
たったひとりっきりの孤独に耐えられる人なんて、どこにもいないから。


Nina Simone - Little girl blue





Janis Joplin - Little Girl Blue




Sit there, hmm, count your fingers.
What else, what else is there to do ?
Oh and I know how you feel,
I know you feel that you're through.
Oh wah wah ah sit there, hmm, count,
Ah, count your little fingers,
My unhappy oh little girl, little girl blue, yeah.

座って、指を折りながら数えてみる
自分にいったい何ができるの?
感じるのは、ただ年を重ねてしまったということ
座って数えてみる
小さな指を折って
不幸で、哀しい私の少女時代

Oh sit there, oh count those raindrops
Oh, feel 'em falling down, oh honey all around you.
Honey don't you know it's time,
I feel it's time,
Somebody told you 'cause you got to know
That all you ever gonna have to count on
Or gonna wanna lean on
It's gonna feel just like those raindrops do
When they're falling down, honey, all around you.
Oh, I know you're unhappy.

座って、雨粒を数える
ただ落ちてくる雨粒を数えるぐらいしかなくて
誰もがそう言う
何をしても無駄なんだと
できることといえば、雨の雫を数えるぐらいなんだと・・





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by yomodalite | 2016-10-21 06:00 | 映画・マンガ・TV | Trackback | Comments(0)

誰が音楽をタダにした?巨大産業をぶっ潰した男たち

誰が音楽をタダにした? 巨大産業をぶっ潰した男たち (早川書房)

スティーヴン ウィット/早川書房

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最近では、ついにSpotifyも日本上陸。本当に様々な音楽配信サービスが登場して選択肢に迷うほどですが、音楽をタダにしたというと、昔ナップスターってあったなぁなんてことを思い出す人も多いですよね。結局そのサービスは日本では見られなかったので、当時の米国の実態はよくわからなかったのですが、この本は、そのナップスターを立ち上げた男の話だけではなく、ナップスターが立ち上がる前からネット上にあった音楽ファイルは、そもそもどうやって?という歴史と謎に迫ったもの。

翻訳がとてもスムーズで読みやすく、

・音楽圧縮技術であるmp3の生みの親
・ビッグ3と言われるレコード会社を次々に経営し成功を収めた音楽エグゼクティブ
・音楽をリークするグループで市場最強と言われた男たち

上記の3人を軸として、ナップスター全盛時代に大学生活を送り、パソコンに聴けないぐらい大量の音楽ファイルを溜め込んでいたという著者の軽妙な語り口で、リーク軍団が群雄割拠した時代が描かれています。

すでに販売されている音楽や映画の海賊版が販売されているというのは、販売する人の利益になるので理解出来るのですが、CDの発売前にリークされるということがどうして起こるのか? しかも無料で? ということがずっと不思議だったのですが、この本ではその謎の一端が明かされているだけでなく、マイケルファンにとっては、『インヴィンシブル』以降の音楽シーンを振り返る意味でも興味深い事柄が満載。

とりあえず、マイケルの名前が登場した、本書の主人公の一人である音楽エグゼクティブ、ダグ・モリスの言葉をメモしておくと、
・・モリスは音楽泥棒を牢屋にぶち込むことに大賛成だった。しかし、彼は違法テープ売買の時代からまったく違う教訓を学んでいた。警察を呼んでも問題は解決しない。解決策は「スリラー」を世に出すことだ。モリスから見ると、本当に音楽業界を救ったのは、マイケル・ジャクソンの1982年の大ヒット曲だった。足りないのは法律じゃなくてヒット曲だ。・・・モリスは「スリラー」に関わっていなかったが、ほかの音楽エグゼクティブと同じく、スリラーを特別な1曲として絶賛していた。このアルバムは企業努力の成果を表すもので、歴史に永遠に名を刻む名曲だった。
音楽著作権の危機が、音楽ビジネスを破壊するという認識があったのですが、意外にもレコード会社の重役達はしぶとく生き残り、アーティストには不利益がのしかかる。リークするグループの目的はいったいなんなのか? 業界全体の大混乱を経て、最終的に勝利したのは?

私は、『THIS IS IT』を見た日の帰り道と同じように、またもや、マイケルの完全勝利を感じましたが、そんな結末だったのかどうかは、各自確認してくださいw

1章 mp3が殺される
2章 CD工場に就職する
3章 ヒットを量産する
4章 mp3を世に出す
5章 海賊に出会う
6章 ヒット曲で海賊を蹴散らす
7章 海賊に惚れ込まれる
8章 「シーン」に入る
9章 法廷でmp3と戦う
10章 市場を制す
11章 音楽を盗む
12章 海賊を追う
13章 ビットトレント登場
14章 リークを競い合う
15章 ビジネスモデルを転換する
16章 ハリポタを敵に回す
17章 「シーン」に別れを告げる
18章 金脈を掘り当てる
19章 海賊は正義か
20章 法廷で裁かれる



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by yomodalite | 2016-10-19 06:00 | 現代文化・音楽・訳詞 | Trackback | Comments(0)

プリンスの言葉 Words of Prince

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発売前からとても期待していた本ですが、実際に手にしてみると期待以上の内容。プリンスに興味を持ちつつある人にも、永年プリンスファンだった人にも、どちらにとっても素晴らしく、数多のプリンス本の中でも最優先で読むべき本だと思いました。

マイケルのメッセージは、今でも大勢の人の注目を集めています。MJには世界をより良くした人だという尊敬があるからでしょう。でも、日々、マイケルの言葉に注目し、彼と読書に関するブログを書いている私でも、彼が素晴らしい言葉を多く残しているとは言えないと思うことがよくあります。マイケルは、自分への夥しい数の言及に対して、ほとんど言葉で説明しようとしなかったし、メディアで発言しなかっただけでなく、ファンが集まるライブでも、世界中で同じほんのわずかのコール&レスポンスしかしなかった。

私たちは、ブカレストライブでの冒頭の2分間も、「THIS IS IT」までのあまりにも長い沈黙も、未だに言葉にすることができないまま、MJを語ろうとすると、それを語る人を「鏡」のように映しだすか、もしくは「神の言葉」のように、自分の日常から遠ざかっていくことも・・

彼は素晴らしい言葉を残したのではなく、
永遠に素晴らしいメッセージを「体現」した人なんですよね。

でも、プリンスは・・

どんな楽器も演奏できて、デヴュー作からセルフプロデュースという音楽の天才で、驚異的なダンスパフォーマンスを含む圧巻のステージで魅了しながら、夥しい量の曲を書き、そのほとんどすべてを自分で作詞している。プリンスはMJの長い沈黙期間もずっと言葉を探し続け、

彼は「言葉」において、マイケルとは比較にならないぐらい「創造」している。

マイケルの名言のような言葉を、彼の音楽に乗せられた言葉から探すのは難しい。マイケルの音楽とダンスの素晴らしさは「沈黙」にこそ相応しく、それは、喧騒と混迷を深める時代に永遠の価値をもたらしたけど、

プリンスは、彼が生きた時代に必要な「自分の言葉」を最後まで探し続け、私たちにたくさんの声をかけてくれている。

著者のNew Breed with Takki は、格闘技医学を開拓したドクター。1985年プリンスに衝撃を受け、ペイズリー・パークやファースト・アベニューでのライヴを経験し、プリンス関連のアーティストのツアードクターもされている方で、プリンスの言葉を8つの章にまとめられています。

chapter 1:生きる
chapter 2:自分を創造する
chapter 3:音楽
chapter 4:苦難と戦い
chapter 5:神と愛
chapter 6:時代
chapter 7:勇気と救済
chapter 8:永遠

歌詞やインタヴューなど、パブリックな言葉が中心となっている上記の章以外に、プリンスに大きな影響を受け、プリンスファミリーでもあったアーティストへの貴重なインタビューが5本もあり、彼の優しい人柄やプライヴェートも垣間見れます。

とかくプリンスを語ると、マニアックな話題になる人が多いのですが、著者はこれからのファンに向けて、とても深い内容を優しくわかりやすく書かれています。ビギナーにも、より深く聴きたい人にも、どこをとっても満足度の高い、もっともすばらしい解説本だと思いました。

Must buy!!!

◎[Amazon]プリンスの言葉 Words of Prince



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by yomodalite | 2016-10-17 13:20 | 現代文化・音楽・訳詞 | Trackback | Comments(3)

和訳 “Don't Walk Away”

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『Invincible』の和訳は、MJ作詞のものに限りすべて完成させるつもりなんですが、ようやく5曲目の今回は “Don't Walk Away”。


この曲は、マイケルの多くの詩に特徴的な主語の入れ替わりもなく、シンプルに自分の感情を表現しているような・・


でも、歌詞の中で何度も「行かないで」というように、ひとつの愛に執着するような感覚は、音の方からは感じられず、発売当時はわからなかったものの、2002年のインタヴューなどで、ツアーを止めて映画に集中したいと言っていたことなど、


あとになって思うと、むしろステージを離れようとしていたマイケルが、愛するファンに、「僕から離れていかないで」と言っているように思えたり、


愛の絆や、別れることの辛さより、常に進化し続けることを自分に課していたことや、Loveという詩で「愛が飛びたいときは、自由に飛びまわらせてあげよう」と言っていた感覚など、


同じ失恋の痛みを歌っていても、「She’s Out of My Life」 の頃の絶望とはまったく違う境地に立ち、厳しさを乗り越えた優しさや、愛というつかみどころのない感情への慈しみも感じられる、


マイケルにしか歌えないような、本当に美しいラブソングだと思います。


(下記の和訳では[CHORUS 2]以降、CDとは少し異なるリスニング歌詞になっています)






Don't walk away

See I just can't find the right thing to say

I tried but all my pain gets in the way

Tell me what I have to do so you'll stay

Should I get down on my knees and pray


行かないで

こんなときどう言えばいいのか言葉がみつからないんだ

何を言おうとしても、痛みが邪魔をしてしまう

教えて欲しい、僕が何をしたら君はそばにいてくれるの?

ひざまずいて懇願すべきなんだろうか


[CHORUS 1]

And how can I stop losing you

How can I begin to say

When there's nothing left to do but walk away


どうしたら君を失わずにいられるのか

何から話せばいいのか

去って行く以外に何もできないときに


I close my eyes

Just to try and see you smile one more time

But it's been so long now all I do is cry

Can't we find some love to take this away

'Cause the pain gets stronger every day


瞳を閉じて

もう一度君が微笑む姿を思い浮かべてみる

でも、それがもうずっと前のことだと気づいて

今の僕は泣くことしかできない

この状態から抜け出せるようなわずかな愛でさえ

僕たちは見つけられないんだろうか

胸の痛みは日々募るだけ


[CHORUS 2]

How can I begin again

How am I to understand

When there's nothing left to do but walk away


どうしたら、また始められるんだろう

どうやって理解したらいいんだろう

離れていくしかないときに


See and why

All my dreams been broken

I don't know where we're going

With Everything we said and all we done now

Don't let go, I don't wanna walk away


ねえ、どうして

僕の夢はすべて壊れてしまったんだろう

これからどうなるのかもわからない

僕たちがしてきた何もかもが今はもう・・

君を行かせられない、僕はここに居たいんだ


And why

All my dreams been broken

I don't know where we're going

When everything begins to set us free

Can't you see, I don't wanna walk away


どうして

夢はすべて壊れてしまうんだろう

僕たちはどうなってしまうんだろう

ふたりを繋いでいた糸がほどけていく

わからないかな、僕はここから去りたくないんだ


If you go, I won't forget you girl

(Please, don’t go)

Can't you see that you will always be

(That you will always be)

Even though I had to let you go

(Don't you leave me, don't you leave me)

There’s nothing left to do but don't walk away


君が去ってしまっても、僕は君を忘れない

(どうか行かないで)

わからない?君はこれからもずっと

(君はこれからもずっと)

君を見送ることしかできなくても

(どうすることもできないとしても)

離れていくことしかできなくても

どうか行かないで


If you go, I won't forget you girl

(Please, Please, don’t Leave me, go away)

Can't you see, that you will always be

(Can’t you see, you and me)

Even though I had to let you go

(you will always be)

please don’t leave now, don’t you leave me

There’s nothing left to do

Don’t walk away


お願いだ、どうか僕から離れないで、行かないで

わからない?君と僕は・・


If you go, I won’t forget you girl

(oh no, oh yeah)

Can’t you see that you will always be

(baby girl, you and me, I won’t forget you, girl, I won’t forget you, girl, I won’t forget you, girl)

Even though I had to let you go

(please don’t leave now, please don’t leave now)

There’s nothing left to do

Don’t walk away


愛しい君、君と僕は・・僕は君を忘れない・・


(訳:yomodalite)


和訳の気になる点は、いつでも遠慮なくおしらせください




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by yomodalite | 2016-10-11 06:00 | マイケルの言葉 | Trackback | Comments(2)

旧「読書日記と着物あれこれ」。歴史/文学/お笑いを好み、着物生活をしていたはずが、いつしかマイケルジャクソンのように本を読もうになってしまったブログ。永年暮らした東京を離れ、現在は大阪を満喫中。


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