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「HIStory」に込められた歴史

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会話の中に登場した、「ヒストリー」に込められた歴史についての記事を要約して紹介します。


source : Important Dates in HIStory(2014.5.22の記事)





「HIStory」という曲で、オーケストラの演奏が終わった後、歌の中で話される最初の言葉は、


Monday March 26th, 1827’(1827年3月26日月曜日)

November 28th, 1929'(1929年11月28日)


これは、前者がベートーヴェンが亡くなった日で、後者がベリー・ゴーディの誕生日。


ベートーヴェンは、古典主義からロマンチシズムへの移行を成し遂げた作曲家であり、ベリー・ゴーディは、「黒い」音楽を「白い」音楽に融和させた。マイケル・ジャクソンが、このことを取り上げたのは、音楽におけるパラダイム変換を強調し、ポピュラー音楽とアメリカの音楽の業績の意味について考えようと私たちを誘っているから。


「HIStory」には、多くのクラシックが使われていて、CDブックレットには、この部分が、子供向けの映画『Beethoven Lives Upstairs』からサンプル使用されていることが明記されている。 使用されているのは、「ゴーン、ゴーン、ゴーン」という教会の鐘の音で、また、「HIStory」には、多くの日付が流れる。その中で「月曜日」という曜日まで入っているのは、このベートーベンだけだが、それは、この映画のナレーションから生じたものではないかと思われる・・・


という内容の大半は、こちらのブログの方が記事にしています(和訳ではありません)ので、


http://mjnight.seesaa.net/article/440651221.html


そちらに取り上げられていない部分を中心に要約すると、


モーツァルトの時代、作曲家は教会や宮廷に雇われ、彼らの音楽は、雇い主の必要を満たし、彼らの意見や理想を表現するために創られていた。自分の作る音楽をそういった縛りから解放したのはベートーベンだが、それでも音楽学の中には、クラシックを「高級な音楽」とする規範はあった。


そもそも西洋の音楽の歴史は、ベートーベン・パラダイムと言われるように、オーストリア・ドイツの音楽の天才たちが中心で、 バッハ、モーツァルト、ベートーベン、ブラームスといった音楽が歴史教科書に載っている。しかし、学者の中ではこれに疑問を呈している者が多くなっている。 音楽の天才が特定の時代、オーストリアとドイツだけに存在しただろうか?  クラシックが上で、ポップミュージックは下なのだろうか? 


現代のアーティストたちのマルチな試みは、そういった構造を打ち破るもので、ベリー・ゴーディーは、そこに大きな役割を果たした。


ベートーベンと、ベリー・ゴーディーのアプローチで大きく違っているのは、ベートーベンは、孤独で強迫観念的に作品に取り組む孤高のアーティスト、一方のゴーディは孤独なアーティストではなく、音楽制作を、自動車産業の組立てラインに見立て、多くの才能が関わる音楽会社としての「モータウン」をイメージした。


マイケルのアプローチはどちらかに限定されるものではなく、歌の着想については、天から、自分に降ってくるものだと言っていたが、作品に仕上げる上では、共同制作を重視し、ベリー・ゴーディー・モデルを採用した。また、ポップミュージックでは、ソングライターは、プロデューサーとパフォーマーのニーズを満たすものであって、パフォーマーの方に重要度がおかれる。ただマイケルの場合、作曲家であり、作詞家であり、歌手、ダンサー、製作者、アレンジャー、振付師、映画監督、舞台監督、照明やコスチューム・デザイナー、また、ビジネスマンとして、マーケティング感覚も兼ね備えていることから、共同制作のすべての面を統括できる立場にあった。


ベリー・ゴーディー・モデルが可能になったのは、録音技術の進歩や、レコードプレーヤーの発達によるもので、かつては作曲家の書いた楽譜を、演奏家が再現するという形だったが、録音技術は音楽の制作や記録の形を変え、多くの人が作品の制作に関われるようになり、また作品の鑑賞も、レコードプレーヤーによって時と場所を特定せずにできるようになり、作曲家に印税という報酬をも生み出した。


マイケルが、エジソンについて、HIStoryという曲の中でも取り上げ(6:11~ "1 am the Edison phonograph~" と「エジソン式蓄音機」に吹き込む声)、Dangerousのジャケットにも載せているのは(*)彼が発明した録音技術と撮影技術が、音楽の歴史を変えただけでなく、過去に起こったことを今のことのように見たり聞いたりできるという点で、人々と歴史一般との関わり方を変えたからではないか。


さらに言えば、「HIStory」という楽曲のサウンド自体が、先に述べたような音楽のパラダイムの移り変わりを表現している。『展覧会の絵」のような、作曲家の書いた楽譜を楽器で表現する音楽から始まって、電子音を含む強いビートへ、そして次第にニュース音声や演説を取り入れた多重録音へ、というふうに。


そして、歌詞の中にマイケル個人の歴史、人間全体の歴史、黒人の歴史を多重的に取り込んでいると同時に、サウンドでも、技術進歩の歴史、音楽の歴史表現した、あらゆる「歴史」を詰め込んだ楽曲と言える。


「HIStory」であげられる日付には、マイケル・ジャクソンというアーティストを成立させた「歴史」において、重要な人たちが関わっている。その中にマイケルは、「古典交響音楽」から「新しい音楽学」への歴史を踏まえただけでなく、黒人の先駆者の歴史を、従来のような「ブラック・ヒストリー」枠ではなく、一般の歴史と同列に、もしくは中心的事項としてして扱っている・・・(要約終了)


みたいな感じです。


ナレーションに登場する「歴史」については、先に挙げたブログを含め、何人かの人が書いておられますが、怒涛の年号部分においては、リンク記事のLishaのものが、もっとも詳細に思えるので、


最後にその部分を。


1847年2月11日 Thomas Edison is born(トーマス・エジソン誕生)

1865年12月30日 Rudyard Kipling is born(ラドヤード・キップリング誕生)

1903年12月7日 The Wright Brothers first flight(ライト兄弟初飛行 )

1929年1月15日 Martin Luther King is born(マーティン・ルーサー・キング誕生)

1947年10月14日 Chuck Yeager breaks the sound barrier(チャック・イェーガーによる人類初の音速飛行) 

1964年2月9日 The Beatles perform on the Ed Sullivan show(ビートルズが「エド・サリヴァン・ショー」で演奏)

1989年11月10日 The Berlin Wall comes down(ベルリンの壁崩壊)


(5:42~ ヘッドホンの左チャンネル)


1858年1月18日 Daniel Hale Williams is born(ダニエル・ヘイル・ウィリアムス誕生。黒人として初めて医科大学を卒業し、米国で初めて心臓の切開手術を成功させた外科医)

1866年8月8日 Matthew Henson is born(マシュー・ヘンソン誕生。初めて北極点を踏んだ米国の黒人探検家)

1917年5月29日 John F. Kennedy is born(ジョン・F・ケネディ誕生) 

1928年9月 The discovery of penicillin(ペニシリンの発見)

1942年1月17日 Muhammad Ali is born as Cassius Clay(モハメド・アリがカシアス・クレイとして誕生) 

1961年4月12日 Yuri Gagarin’s first space flight(ユーリ・ガガーリン初の宇宙飛行)

1981年4月12日、The first Shuttle flight(初のスペースシャトル飛行)


(5:43~ ヘッドホンの右チャンネル)


1863年11月19日 Lincoln delivers the Gettysburg address(リンカーンによるゲティスバーグ演説) 

1901年12月5日 Walt Disney is born(ウォルト・ディズニー誕生)

1920年11月2日 The first commercial radio station opens(民放ラジオ局開局) 

(1940年10月9日 John Lennon is born(ジョン・レノン誕生)

1955年7月17日 Disneyland opens(ディズニーランド開園)

1969年7月20日 Astronauts first land on the moon(宇宙飛行士が初めて月面に着陸)


(5:44~ 音場の上部に耳を傾けて、中心よりもちょっと左寄り)


1865年4月9日 The Civil War ends(内戦終結。いわゆる南北戦争のこと)

1886年10月28日 The Statue of Liberty is dedicated(米国独立運動を支援したフランス系フリーメーソンから贈呈された自由の女神像が完成)

1919年1月31日 Jackie Robinson is born(ジャッキー・ロビンソン誕生。黒人初の近代メジャーリーガー)

1929年11月28日 Berry Gordy is born(ベリー・ゴーディ誕生)

1955年12月1日 Rosa Parks refuses to give her bus seat to a white passenger(黒人女性ローザ・パークスが、白人乗客にバスの座席を譲ることを拒否した) 


長い翻訳記事をお読みいただきありがとうございました。でも、ものすごい量の情報を一本のショートフィルムのなかに詰め込んだ「HIStoryティーザー」を探る旅は、まだまだ終えられそうにありません。


次は、ここまでの内容を踏まえた、私の考察記事「HIStoryと黙示録」に続きます。


註)__________


(*)ジャケットの男性については、ベートーベンとP.T.バーナム説と両方あって、私は、頭の上の小人から、P.T.バーナムで間違いないと思いましたが、マイケルのことですから、エジソンにも見えるという点も重要なのかもしれません。いずれにしても、エジソン1人に特定することはできないと思います。


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(アルバム『デンジャラス』の絵の一部)



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(以上P.T.バーナム)




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(エジソン)

◎[関連記事]ひとりごと(2012.7.26)P.T.バーナム


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by yomodalite | 2015-12-29 06:00 | ☆MJアカデミア | Trackback | Comments(2)

HIStory Teaser, Part 3「新たなヒーロー像」⑤

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(④の続き)


ウィラ:そのあと、そういった行進する兵士たちをマイケル・ジャクソンが先導していくシーンの次に、これまでとはちょっと違う部分があるわよね。


なんていったらいいか、歌でいうと、ブリッジ(メロディとサビをつなぐ部分)かな。突然、雰囲気が変わって、なにか混沌として、おどろおどろしい感じになる。突如として夜になって、車は燃えているし、ヘリコプターが上空を旋回して、爆音が響き出し、人々は叫んだり、走ったり、恐怖に身を縮めたり・・・つまり、それは混沌と混乱の場面で、ここまでの場面にあった絶対的な規律や正確さとはまったく違う。



エレノア:そう。ここで、『地獄の黙示録』のヘリコプターによる攻撃シーンが引用されている。あの、ヘリコプターが現れて、黒い背景に赤い太陽、という、あのシーンとそっくりよね。



ウィラ:私もそう思うわ。あなたが言うまで、そのつながりには気づかなかったけど、指摘してくれたように、本当にかなり直接的な映像の引用に見えるわよね。『地獄の黙示録』と「ヒストリー」のヘリコプターシーンをここに並べてみるけれど、おどろくほど似ているわ。



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エレノア:『地獄の黙示録』は戦争の恐怖と狂気、特にベトナム戦争でのそれを描いた作品よね。その戦争でアメリカは「無垢を喪失」し、国民は六時のニュースで自分たちも大虐殺を侵しうるのだと知り、何千何万の若者が愛国者としての義務を果たすため戦争という巨大なマシンに巻き込まれ、命をとられなかったとしても、そのマシンに噛み砕かれはき出され、身も心もモラルも破壊されてしまった。


「ヒストリー」のヘリコプターシーンで、パニックになって走る人たちは、『地獄の黙示録』で、すべてを吹き飛ばしてしまうミサイル攻撃の直前、ヘリコプターによる攻撃から身を守ろうと走る、恐怖にとらわれたベトナム人の生徒や漁師たちと同じなのよね。罪のない、戦争の犠牲者。ここでも、「善」と「悪」が入れ替わる。


そして、「ヒストリー」がリーフェンシュタールやナチスを引用していることと同じように、『地獄の黙示録』のヘリコプターが、人々を殺すためにやって来るとき、ワーグナーの「ワルキューレの騎行」を大音量で流すスピーカーを装備しているというのは意味深いわね。私たちは、どんな側であっても、繰り返し戦争を引き起こす、狂った国家主義的な政治の犠牲者であり続けるということ。



ウィラ:そのつながりは本当に一考の価値があるわ、エレノア。このフィルムをどう解釈するかということと、すごく重要な関係があるから。多くのアメリカ人にとって、ベトナム戦争は、明確な使命もなく、過剰な軍事行動をとるようになったことを象徴する、恥ずべき出来事よね。若いアメリカ兵たちは、多くが10代後半から20代前半で、だれが民間人で、だれが戦闘員なのかわからない異国の地に送られ、きちんとした指揮系統もないままに、混乱と敵意のうずまく状況の中に放り出された。それは、ベトナム人にとっても、そこに送られた若いアメリカ人にとっても悲惨な戦争だった。


仮に『地獄の黙示録』への言及に気が付かなかったとしても(実際私は気が付かなかったんだけど)「ヒストリー・ティーザー」のこのシーンが、軍におびえパニックに陥った市民を表していることは確かで、それは、最初の部分で、マイケル・ジャクソンが率いる軍を崇拝し、歓迎していた群衆に対する、とても矛盾したメッセージよね。ここでもまた、MJは意味を複雑化するために、矛盾した映像を並列させている。


この短い合間のシーンがこれほどに恐怖や混乱をかき立てるようなものであるというのは、これが「ヒストリー・ティーザー」の最も重要なシーンの一つで、とても重要な役割を負っているということではないかしら。直前にあったリーフェンシュタール風の映像、つまり軍を美化するような映像を強く疑い、複雑化させ、同じこの軍隊が自分たちに銃を向けるようになるかも知れないと、想像させる力があるんじゃない。実際この短いシーンは、強力な軍の恐ろしい力は、守ってくれる力であると同時に脅威にもなるということを示している。



エレノア:このシーンが重要であるという点は私も賛成。そしてたぶん、このシーンは、どうしてMJがソビエトの制服にこだわったかということの説明にもなっている。以前ソビエト連邦から受けたことを考えれば、ハンガリーの人たちが「銃におびえ」て用心深くなり、この間まで自分たちを抑圧していた国の制服を着た軍隊が、少しでも武力行使の兆しを見せようものなら、パニックになるというのもわかるわよね。彼らは本当に変わったのか? 彼らは本当に「善」なのか? 信用できるのか?



ウィラ:それは大事な点ね。そして、ブダペストは強力な軍隊が、どれほど人々を脅かすかを表現するのにはこの上ない場所よね。1991年の夏だったと思うんだけど、私はブダペストに友人を訪ねたの。そして二人で実際に英雄広場に立って、友人はハンガリーの歴史を説明してくれた。私はショックを受けたわ。ハンガリーが何百年ものあいだ、いろいろな勢力に占領され続け、その最後がソ連だったことに。


そして、その1991年以降大きな変化があったのは確かで、私がそこにいたときは、第二次世界大戦の痕跡はまだ目に見える形で残っていた。建物の壁に穴が空いているとかね。私がその夏に訪問したヨーロッパの他の国では、そんなことはなかったけど、ハンガリーでは、第二次世界大戦を思い出させるものが目立っていて、『意志の勝利』を引用のためには、「ヒストリー」の撮影場所としてふさわしかったのよね。


重要なのは、建物に空いた穴は、連合国側からの攻撃によるもので、要するに、ソ連の攻撃なのね。ハンガリーは(アメリカ人が第二次大戦で「悪」だとみなした)枢軸国側であり、ソ連は(アメリカが「善」とみなした)連合国側だった。だから、「ヒストリー・ティーザー」のように、第二次世界大戦時のソ連軍がハンガリーに侵攻していくようなシーンを見るとき、アメリカ人である私たちは、ソ連の側に立っているのよ。私たちは同盟国だったから。


でも、あのヘリコプターのシーンに特に言えることだけど、見ている私たちは、ソビエト(連合国)軍の脅威にさらされている、ハンガリー(枢軸国)の人々に共感しているでしょう。「善」なのか「悪」なのか、わからなくなっているってことよね!あなたも言っていたように、第二次世界大戦後ソ連は、反対勢力や反乱を残虐な方法で抑圧し、何十年もの間ハンガリーを占領していた。私たちの「善」や「悪」という単純な考え方は、ものごとをさらに混乱させているのよ。


それは、マイケル・ジャクソンというアメリカ人が、このショートフィルムをハンガリーという場所で、第二次世界大戦のイメージを使って撮ったことの大きな理由であり、興味深い点でもあるわね。あの戦争では、ハンガリーの人たちはアメリカ人の敵で、ソ連は味方だったけど、このショートフィルムではそんな感じがしない。つまり彼は、私たちの認識や感じ方をまるっきりひっくり返している訳ね。



エレノア:うーん・・・ウィラ、そこが微妙なところなんだけど、私はMJのことをアメリカ人としてというよりも、世界市民というふうに見ていて、「ヒストリー・ティーザー」の舞台も、第二次世界大戦ではなく1994年だと思うのね。でも、1994年、その少し前に消滅していたソビエト連邦は、ハンガリー人からも、アメリカ人からも敵と見られていた。だから、MJがブダペストで、そういった兵士たちを導いているとしたら、すごく奇妙で、わかりにくいことになるのよね。あなたは本当にあれが第二次世界大戦を舞台にしていると思う?



ウィラ:いい質問ね、エレノア。手短に言えばノーだけど、リーフェンシュタール的な映像やその他の歴史的事実を思い起こさせる要素を考えれば、そう単純には答えられないわね。


私は、「ヒストリー・ティーザー」の舞台は現代だけれど、過去を強く思い起こさせる現代だと思っていて、そこには、終始、第二次世界大戦やソビエト支配の影響があって、現在と過去が二重写しになっている感じよね。『意志の勝利』や『独裁者』に出てくる長い隊列や、背景にある権力者のための記念碑という過去が、現代の服装をした群衆たちと共に存在している。だから、第二次世界大戦でソ連や、間接的にアメリカとも戦ったハンガリーと、戦後数十年にわたってソビエトの占領下に置かれたハンガリーがあり、それらが、このショートフィルムが作られた1994年のハンガリーに、亡霊のように存在している、と、思うんだけど、どう思う?



エレノア:私は、未だにソビエト支配のトラウマに苦しみ、映画であっても、ソ連の制服を着るのはいやだと思うような人々の国だから、撮影に使われたのだと思うのね。だから、ヘリコプターが画面に現れると、それはすぐに占領の記憶と結びついて、恐怖感をもたらす。1994年は、ハンガリーの人々は枢軸国の市民ではなく、彼らは、まだ自由になったばかりで、ロシア人のことを信用するどころか、信用するふりをする必要もなかった。そして、ここに出てくる観衆たちは、アメリカ人である必要もないと思う。



ウィラ:そうね。私が、一人のアメリカ人がこれを作ったのが興味深いと言ったのは、そういうこともあるのよね。つまり、アメリカ人にありがちな見方をしていない、ということ。むしろ正反対。だって、ソビエトの軍隊を率いるアメリカ人なんて見たことがある? そんなの一度だって見たことがない。絶対にありえないわよね。これも、あなたが言っていた、相反するイメージの並列よね。彼らは「悪」で、私たちは「善」。そういった従来の見方からすれば、どうしてMJは、ソ連の兵隊といるのか?ということになる。感情的、心理的にも、これをアメリカの観客が、どうとらえるかというのは、すごく興味深いんだけど、でも、それはアメリカ人だけの問題ではないと思うのね。


それに、彼がここでやっていることは本当に複雑で、理解するのが難しいということは白状しておかなくてはね。私は未だに悪戦苦闘している感じ。



エレノア:無理もないわ。マイケル・ジャクソンは「ヒストリー」で、この上なく、(またこの言葉使ってしまうけど)複雑な任務を引きうけていて、ものすごい量の情報を一本のショートフィルムのなかに詰め込んであるんだから。でも、私たちはこの作品をよりよく理解するために長い道のりを歩いてきたって感じるわ。



ウィラ:私もよ。



エレノア:それと、あなたが第二次世界大戦について言ったことに戻るんだけど、私も「ヒストリー・ティーザー」でのヘリコプターシーンは、ベトナム戦争を連想させるためだけではなく、もっと何年も前に起こった戦い、ハンガリーがアメリカの敵だったときの戦いの記憶にも重ねて創られていると思う。MJが言っているのは、誰が権力の座につこうと、分断して統治するという原則に基づいた権力構造は、決して正義をもたらさず、不正義が継続するのを許すだけであるということ。そして、戦争は決して平和をもたらさず、さらなる戦争をもたらすだけだということ。プレイヤーが変わっても、パターンは同じ。誰が「善」で、誰が「悪」なのか、解釈は絶え間なく変わり、戦争における倫理は疑問だらけ。


それは、前回のチャップリンの議論で、第二次世界大戦時に反ファシストの立場だった人(つまり「善」)が、それからたった数年後の冷戦時代には、共産主義者(「悪」)と呼ばれることになった、というのにも当てはまる。


だから、この絶え間ない状況の変化というテーマから考えても、ブダペストは「ヒストリー・ティーザー」の舞台にぴったりだった。



ウィラ:私も、そう思うわ。



エレノア:そして、ハンガリーは1994年の時点では平和だったけど、世界はそうではなかった。実際、さほど離れていないボスニアでは、非常に残忍な戦争が進行中だった。



ウィラ:そうだったわね。それについては考えてなかったわ。



エレノア:それは、本当に複雑で、何が本当なのか、私にはまったく理解できない戦争だった。


でも、「ヒストリー・ティーザー」では、ヘリコプターの登場は、軍事攻撃開始のではなく、祝福の合図だということがすぐに明らかになる。新しいヒーローを讃える彫像の除幕式を祝うためだったのよね。そして、そのヒーローの任務は、私たちを、終わりの見えないこのサイクルから救い出すこと。


ただね、ウィラ、これ以上の隠された意図については、私にはわからない。映像だけでなく、サウンドトラックにも大きなヒントを見つけられたけど、それでも、なにか大きなものを見落としているような気がする。



ウィラ:私もそう思う。像の序幕に流れる音楽がどこから来たものなのか、探ってみたんだけど、まだ突き止められない。でも、あなたと同じように、そこがすごく重要な気はするのね。『レッド・オクトーバーを追え』のサウンドトラックに入っている曲かも知れないと思って全部聴いてみたけど(→YouTube)、ぴったり合う旋律は見つけられなかった。マイケルが好きで、デンジャラス・ツアーでも使った「カルミナ・ブラーナ」の一節かとも思って、YouTubeで聴いてみたけど(オープニングの「O Fortune」はMJファンにはおなじみね)、そうではなかった。アルバム「ヒストリー」ではなく、プロモーション・フィルムの歌に関するクレジットを探し出して、色々調べて、あの曲の編曲者かも知れない人にメールもした。それでもまだ突き止められていないの。


そんなわけで、この音楽が重要だとは思うんだけど、私もよくわからないのよね。『レッド・オクトーバーを追え』からのような気もするけど、ベイジル・ポールドゥリスの他の曲かも知れない。彼の作品っぽいものね。でもはっきりわからない。



エレノア:それについては、今わかる範囲で考えるしかないわね。



最後のシーンは、未来SF的な雰囲気を持っていて、建築面でも、歴史的な部分でも、映画的な表現においても、過去に支配されている前半部分とはまったく異なっているわよね。それと、「ヒストリー・ティーザー」では、CGIを使って、英雄広場をまったく違った姿にしている。夜のシーンになる前、千年記念碑の一部である高い円柱が広場の真ん中から取り去られ、違う形になっていることに、私たちは気づく。



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ウィラ:それは重要なディテールよね。あの千年記念碑の高い円柱の頂上には大天使がいるのだけれど、私たちが「ヒストリー」で見る、デジタル処理された英雄広場では、長い中央通りの両側に大天使たちがいるのよね。このシーンで見られるとおり。



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stephensonが数週間前のコメントで指摘してくれたとおり、マイケルと大天使ミカエルとの象徴的なつながりを考えると、このシーンはとても重要ね。Stephensonは「大天使ミカエルの、聖書や伝説における、神の天使軍のリーダーとしての役割」について述べてくれて、これが「ヒストリー」の「マイケル(=ミカエル)」が軍を率いているシーンを解釈するもうひとつの方法なのでは、と言ってくれた(*1)そう考えると、大天使を戴いた円柱がいくつも並んでいる画面は、重要なシーンに思えるわね。



エレノア:そうね。MJの像が、大天使の羽の向こうに見える場面があって(映像の2:29)、この大天使が、ガブリエルだということは確かなんだけど(*2)、ただ、大天使ガブリエルは、ハンガリーの伝説では、最初のハンガリー王である聖イシュトヴァーン(イシュトヴァーン1世)に、王冠を授けたということが重要で(*3)、だから、ガブリエルが千年記念碑の頂上に位置しているというのは、ハンガリー人の歴史を考えると、深い意味を持っているのね。



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ガブリエルと円柱の下の部分が象徴しているものが、英雄広場の中央から消えているというのは、帝国主義的なメッセージを排除を意味していて、それは、「ヒストリー」の反帝国主義のメッセージと合致するのよね。




でも、あなたが指摘したように、大天使ガブリエルを頂く円柱は、映像から取り除かれたわけではなく、CGによってコピーされて、中央通りに並ぶ形になっている。それは、ガブリエルは、ハンガリーの伝説だけでなく、神の言葉を伝える天使として、広く世界に知られていて、物語の始まりと終わりに欠かせない存在だからなのよね。



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ウィラ:その解釈はすごいわね、エレノア。なにかとても大きなことが明らかになろうとしている、文字通りの意味でも、象徴的にも。



エレノア:千年記念碑のある英雄広場の中央に、巨大な像が、包まれ縛られた状態で立っている。群衆のムードは祝祭から期待へと変わっていく。撮影用の強力な照明が点いて、その像と一人の男を照らす。男は兵服に身を包み、像の外側に取り付けられた爆発装置をセットしている。人々の期待は不安に変わっていく。どうなるのだろう?彼は像を爆破しようとしているのだろうか?


男が、像から降りて退避すると、威厳のある老人(帝国の過去を象徴する)が、軍の司令官(軍の権威を象徴する)に合図を送り、彼は、メガネを照準器風レンズ(軍のテクノロジーを象徴している)で覆い、像に照準を合わせると、起爆装置担当の男(帝国や軍の命令を遂行する人間を象徴している)に最終命令を出し、その男がレバーを押して、爆発(軍の攻撃を象徴する)を起こす。


像は無事で、人々はみな安堵する。劇的に飛び散ったのは縛り縄で、像を覆っていた幕はゆっくりと波打ちながら地面に落ち、これ以上なく高くそびえる、マイケル・ジャクソンの彫像が露わになる。この像は、その人格と芸術を通して、つぎつぎと戦争を引き起こすような思考を生み出してきた古い神話を打ち砕く、ひとりの男に捧げられた記念碑で、彼の芸術、彼の遺産を表現している。


彼の芸術は、私たちを、敵対ではなく、協働に向かわせるという新しい力を放出し、武力ではなく、芸術の力で新しい世代を導く。この像は新しい千年紀の記念碑で、人々がお互いを恐れつつ暮らす必要などない国際社会を作るように促すのよ。



ウィラ:このシーンの解釈として、素晴らしいものね。あなたと同じく私も、新しく中央に立った像が、政治家や軍人や指導者ではなく芸術家を称えるものであり、新しいイデオロギー、新しい世界秩序の創生を意味している、という点は特に重要だと思う。あなたが言うように、「武力ではなく、芸術の力で」ね。



エレノア:そして、この最後の場面では、帝国に関わるすべてのシンボルを、芸術に取り入れ、それを芸術的目的に使う、という状態を提示している。テクノロジーを、人々を鎖につないでおく手段から、人々を解放する手段へと、戦争ではなく、平和のための装置へと変化させている。


テクノロジーは、芸術作品の製作に貢献し、世界のあらゆる場所に届けることもできる。だから「ヒストリー・ティーザー」でテクノロジーが、マイケル・ジャクソンの芸術的遺産を表す像を出現させるのに使われたというのは、理にかなっていると思う。そして、それで思い出すのは、チャーリー・チャップリンが、『独裁者』の最後のスピーチで、テクノロジーに注目し、人々を分断するものではなく、統一するものとして注目していたということ。



「飛行機やラジオは、私たちを近づける。こういった発明の本質は、人々の良心に呼びかけることだ。私たちみんなが普遍的な人類愛でひとつになろうと呼びかけるのだ」
「あなた方人々は、力を持っている、その力は機械を創造し、幸福も創造する。あなた方人々は、この人生を素晴らしい冒険にし、自由で美しくする力もある」
民主主義の名のもとに、この力を使い、団結しよう。新しい世界のために、働く機会が平等に与えられる世界のために戦おう。〜チャップリンのスピーチ



ウィラ:チャップリンのスピーチに再び触れてくれて、ありがとう。このスピーチは、多くの点で「ヒストリー」の青写真よね。そしてあなたの言うとおり、チャップリンは、テクノロジーの持つ、悪ではなく善の力についてかなり話しているわね。テクノロジーは戦争だけではなく平和にも、人を分断するのではなくひとつにするのにも、使えるのだと。



エレノア:最新鋭のテクノロジーを使った爆破装置がセットされ、スイッチが押されると、像が縛りから解き放たれたのと同じように、テクノロジーは、世界を癒やすために、芸術の大きな力を放出する。


彫像が公開されると、ヘリコプターは、トンボのようにブンブンそのまわりを飛び交い、群衆は歓喜の叫びを爆発させ、花火が打ち上がる。


「ヒストリー・ティーザー」の最終場面のカメラは、像の顔の部分をとらえ、その考え込んでいるような表情を映している。それは、マイケル・ジャクソンの顔にもよく見られた表情ね。彼は、私たちが運命を変えられると知っている。でも、手遅れになる前にそれが出来るだろうかと懸念もしているのよ。



ウィラ:それは、彼が繰り返し、様々な方法で問うてきた、極めて大きな疑問よね。彼が『This Is It』の「Earth Song」の部分で言っている言葉や、映画の終わり近くで彼が、他のミュージシャンやダンサーたちに「自分のすべてを捧げよう」と奨励していたことも、思い出すわね。


みんなに愛の大切さを思い出させて、世界に愛を取り戻すんだ。愛が重要だってこと、互いに愛しあうこと。僕らはひとつ、それを伝えよう。そして地球を大切にすること。4年間で、僕たちが犯した傷を直すんだ。(→全文)


彼がそう言ってから、4年以上が経ってしまったわね…・



ウィラ:エレノア、参加してくれてありがとう!「ヒストリー・ティーザー」についての3回の記事で、私たち本当にたくさんのことを話し合ったわね。この複雑で、理解の難しいショート・フィルムについて、あなたが共有してくれたすべての情報や考察に、心から感謝しています。あなたのおかげで、この作品の見方や理解のし方について、目から鱗が落ちた思いがするわ。あなたは私たちに、すごくたくさんのことを考えさせてくれた。



エレノア:ありがとう、ウィラ。「ヒストリー」の謎を一緒に掘り下げていく機会をあたえてくれて。あなたも、読者の皆さんも、楽しい感謝祭を過ごしてくださるように。私は、マイケルと彼の音楽に、特別な感謝を捧げるわ。



ウィラ:ありがとう。あなたも、楽しい感謝祭を。


(会話終了)


ふたりの会話はこれで終了ですが、HIStoryを終えることはまだ出来ません。会話への補足記事も書く予定ですが、その前に、会話に登場した「HIStory」という曲についての記事を紹介します。


◎「HIStory」に込められた歴史に続く



註)________


(*1)Stephensonの記事は読んでいませんが、このあと、私なりの解説で、それについても言及したいと思います。→「HIStoryと黙示録」


(*2)ガブリエルはキリスト教の伝統の中で「神のメッセンジャー」という役割を担っていて、『ルカによる福音書』では祭司ザカリアのもとにあらわれて洗礼者ヨハネの誕生を告げ、マリアにはイエス・キリストの誕生を告げた。旧約聖書の『ダニエル書』では、預言者ダニエルの幻の中に現れ、『ヨハネの黙示録』では、名前は出ないものの、ヨハネに神のことばを告げたのは、伝統的にガブリエルであると考えられています。


また、ユダヤの伝承『タルムード』では、太祖ヨセフに道を示して、モーセの遺体を運び、イスラム教では、ガブリエル(ジブリール)は預言者ムハンマドに神の言葉である『クルアーン』を伝えるなど、一神教のすべての宗教で、神の言葉を伝える天使として、知られています。


(*3)聖イシュトヴァーンの王冠の正面には、「Christ Pantokrator(全能のキリスト、イエス・キリストの別名)」が刻まれ、イエスの左右には、大天使ミカエルとガブリエルが描かれている。


https://ja.wikipedia.org/wiki/聖イシュトヴァーンの王冠






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by yomodalite | 2015-12-28 06:00 | MJアカデミア | Trackback | Comments(0)

HIStory Teaser, Part 3「新たなヒーロー像」④

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☆註を追記修正しました

(③の続き)

ウィラ:あなたが言うように、彼は自分の芸術を通して、繰り返し私たちに「自分の歴史を作るんだ」と呼びかけていた。そして、自分たちの歴史を知ることの重要性も考えていたのね。この春の記事で、ライシャとジョイエと私が話したように、アルバム『ヒストリー』にも「ヒストリー」という曲にも、歴史に言及した部分がたくさんあるのよね(*1)。そして、「ヒストリー」のプロモーションフィルムにも、歴史に触れた重要な部分があって、特に撮影された場所についてはね。それについては、あなたもかなり調べてると思うんだけど、わかったことを話してもらえるかしら。



エレノア:そうね、このショート・フィルムで証明されたのは、MJがたいていの人よりもはるかに歴史をよく理解していたということ(ずっと言ってることだけど、私にとっては「HIStory」について調べること自体が、歴史の勉強になった)。そして、彼は、歴史から学ばない人々は、過ちをくり返すという考えを強く支持していた。


「ヒストリー・ティーザー」の舞台を、長いソビエト支配が終わった1994年のハンガリー・ブダベストにしたことや、ソ連をイメージさせるような映像を使ったことで、その当時のマイケル・ジャクソンの歴史や、アメリカにおけるアフリカ系アメリカ人の歴史、世界中の抑圧された人々の歴史を、ソ蓮の支配下で、「拷問にかけられ、糾弾され、強制収容所に入れられ、多くの人が死んだ集団農場で強制労働を担わされた」ハンガリーの人々の歴史に結びつけている。


そのつながりが明確なのは、「ヒストリー・ティーザー」で行進している兵士たちが、ソ連の制服を着て、ブダペストの英雄広場(*2)に向かっているということ。その中心には、896年のハンガリー建国を記念して、1896年(ハンガリーがオーストリア・ハンガリー帝国に属していた時代)に建てられた、千年記念碑があるのよね(*3)


意義深いことに、千年記念碑は英雄広場の中心を占めているけど、建築として広場の角に位置しているのは、国立西洋美術館と現代美術館で(*4)、広場には、芸術と英雄という二つのテーマが融合していて、英雄的な芸術というか、英雄としての芸術家は、帝国の遺産として存在しているのよね。



ウィラ:そういうの、いいわよね。「英雄としての芸術家」というのは、新しいタイプのヒーローと言えるわね。そしてこの考え方を視覚的に表現したのが、「ヒストリー」においてそびえ立つマイケル・ジャクソンの彫像ね。


英雄広場は戦場の英雄や、政治の英雄を讃える像がたくさん建てられている場所だけど、「ヒストリー・ティーザー」で私たちは、もうひとつ、他のものをすべてを見下ろす像を目にする。でも、その像は新しいタイプのヒーローの像で、彼は、地図上の境界線を変えようとする軍のリーダーや政治のリーダーではない。私たちの考え方を変え、違う文化や、違う民族の、世界中の人々と共感し合おうと私たちを鼓舞する、パワフルな芸術家。だからこの像は、あなたの言う「ヒーローとしての芸術家」を真に表現したものなのよね。



エレノア:「レッド・オクトーバーの賛歌」をソ蓮の制服を着た兵士たちの映像に重ねて見てみると、その「レッド」と関わりのある2つの「十月革命」が思い浮かぶ。1917年、皇帝が支配するロシア帝国を倒し、ソビエト連邦を権力が移った10月のボリシェヴィキ革命と、第二次世界大戦以後、ハンガリーを支配していたソビエトを打倒しようとして失敗に終わった、1956年のハンガリー革命。この革命は、数十年後に起こるソビエト連邦崩壊の原因にもなった。マイケルは、歴史をふり返ると、ひとつの革命は、多くが次の革命に、そして、そのまた次の革命にもつながっていくと考えていた。それは消えることのないパターンなのよね。



ウィラ:それは興味深い解釈だわ、エレノア。ロシアの十月革命については、「レッド・オクトーバー賛歌」でもふれられている。


Sail on fearlessly

Pride of the northern seas

Hope of the Revolution

You are the burst of faith of the people

In October, in October

We report our victories to you, our Revolution

In October, in October

And to the heritage left by you for us


恐れを知らず海を行け

北の海の誇りを胸に

革命の希望を胸に

君たちは人民の信念をみなぎらせ

十月に、十月に

我らの革命の勝利を君に告げよう

十月に、十月に

君たちは我らの遺産となるだろう



エレノア:新たな軍隊(私たちや、彼のファン?)は、マイケルが、殴ったりしないのに、腕にしていた、あの「バンデージ」(アームカバー?)のように、撃つことの出来ない木製の銃を持ち、旗やプラカードに彩られた英雄広場を行進していく。「握りこぶし」で鼓舞するのではなく、「開いた手」で投げキッスをするマイケルは、新しい時代のヒーローを表していて、彼は、征服~革命~征服という連鎖を終わらせ、すべての人の幸福のために、一緒に働くことができる、そんな人類の新しいイメージを提示することを目標にしている(*5)。ロシア語がわかればいいんだけど、残念ながら私には、旗や制服の腕章になんて書いてあるかわからないのよね。



ウィラ:実は、Google翻訳や、Babefishを使って旗のメッセージを翻訳しようと思ったんだけど、うまくいかなかったわ。(ロシア語として)認識可能な文字でないのかも。それで、私の大学のヨーロッパ言語の専門家である Bjørnに、旗と兵士の腕章のことを訊いてみたんだけど、彼の答えが素晴らしかったの。


兵士の腕章にあるのはキリル文字(ロシアの文字)ではなく、むしろ、ルーン文字に似ている。おそらく、ナチのSSのロゴに発想を得たのだと思う。調べてみたところ、腕章にある文字をルーン文字のアルファベットの中に見つけることはできなかった。このフィルムのために新たに作られたものではないだろうか。三人の兵士のアームバンドもこのパターンのバリエーションだと思う。
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その他の不明の文字は、判読できるともできないとも言いがたい。そういうわけで、兵士たちは、ロシア人かも知れないけど、ドイツ人でも、アメリカ人でもあり得る。はっきりとした印がついていないということだね(*6)


だから、私たちは、兵士をロシア人と決めつけるのではなくて、もっと広範囲にとらえた方がいいのかもね。腕章が「新たに作られた」ということは、そういうことではないかしら。 Arcadio Coslov が先週のコメントに書いていたわね。


軍事パレードはロシア、フランス、ドイツ、中国、そしてアメリカでも開催される。それは、多くの国でミリタリーカルチャーの一部だ。でも、たとえば、パレードに紙吹雪がひらひら降り注いでいるのは、きわめてアメリカ合衆国っぽい。


Arcadioや Bjørnによれば、これらの兵士たちの国籍については、いろいろと混ざっている印だと考えられるのね。マイケル・ジャクソンは、ロシア風の制服とナチ風の腕章、そしてアメリカ風の軍事パレードを合体させて、私たちがこの軍をどう「読み取る」べきか、あえて、わかりにくくしているのよ。考えれば考えるほど、そう思えてくるのよね。腕章に、特定の国を表すような言葉やシンボルをつけるのではなく、「新たに作られた」言葉をつける事によって、兵士たちの国籍は、意識的に曖昧なままにされている、と。



エレノア:これは興味深い事実が満載の記事で読んだんだけど、実は、ハンガリー人は、ソ連の軍隊の制服を誰も着たがらなくて、それで、イギリス人を雇うことになったんですって。



ウィラ:それは、面白いわね!兵士役の人々に、ソ連のユニフォームを着てもらうために、様々な障害があったってこと? 記事の英語訳では、


マイケルは、このショート・フィルムを特別なものにするために、彼の命運を賭け、5百万ドルの私財を投資した。数百人の若いハンガリー人が、ビデオの出演者として働くことを希望したが、彼らは全員平和のメンバーを演じたがった。
第二次世界大戦の始めにヒトラーの軍隊が集結して、凱旋の行進をするシーンを再現するために、ハンガリー人のエキストラたちは、赤軍の兵士のユニフォームを着ることを拒否した。そのため、本当の兵士を雇うために、イギリスの新兵募集のサービスを利用しなくてはならなかった。100人の英国海兵隊と何人かの落下傘兵が集まり、これらの兵士は、1日あたり135ドルをもらい、四つ星ホテルに泊まって、無料の旅行も楽しんだ。兵士を雇うだけで、約150,000ドル以上もかかっていた。


マイケル・ジャクソンは、そういったトラブルや出費を考慮しても、ソ連のユニフォームを着てもらうことが重要だと考えていたにちがいないわね。ということは、私たちにも、彼らをソ連の兵士とみてほしいということでしょう。これは興味深い点ね、エレノア。(「5」に続く)



註)_____________



(*1)「HIStory」の歌に込められた歴史については、この会話が終わったあとの記事で紹介します。


(*2)英雄広場/ハンガリーの首都ブダペストにある広場。


(*3)千年記念碑/英雄広場の中央にある記念碑。イシュトヴァーンへの王冠と大主教十字を持つ聖ガブリエルを戴く円柱の台座には、7部族の長の騎馬像がある。また、その左右の英雄像の中には、建立当初は、ハプスブルク朝の人々の像もあったが、第二次世界大戦後、ハプスブルク朝の像は建て替えられ、現在は、左側に、イシュトヴァーン1世からラヨシュ1世までのハンガリーの国王の像があり、右側には、政治家や将軍たちの像がある。


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(王冠と大主教十字を持つ聖ガブリエル)


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(*4)「千年記念碑」の左右には、ブダペスト西洋美術館と、ブダペスト現代美術館が建っている。


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英雄広場/千年記念碑・聖ガブリエル像(中央右)

国立西洋美術館(左上)、現代美術館(右角)




(*5)原文は、Leading a new kind of army (us, his fans?), whose rifles (arms) are “bandaged” in white (like his arm is bandaged?), marching into Budapest’s Heroes’ Square which is festooned with banners, opening his “not-iron” fist to throw kisses,・・・


bandaged in whiteは、通常は包帯を巻いていることを表すのですが、この文章は、腕(の複数形)と武器が同じarmsという言葉であることから、マイケルが殴り合いをしないのに着けていた「bandage(日本ではアームカバーとも呼ばれていますが)」と、発砲することが出来ない、銃身が木で出来た銃(in whiteには「白木で」という意味がある)を「同じ意味」にとらえ、また、戦いを鼓舞する「こぶし(fist)」や、「鉄拳ではなく(not-iron)」、「(手を開いた)投げキッス」という対比を文章にしているのだと思います。


さらに、会話では触れていませんが、ライフルドリルをしている兵士達の左腕に施された白いアームバンドは、よく見ると包帯をぐるぐる巻いたもののように見えます(そのせいで、通常は腕章部分に縫い付けられるバッジが腕から浮いている)。



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兵士の腕も武力を行使するためにあるのではない、あるいは兵士の腕も傷ついているということが連想されるのですが、いずれにしても、銃やマイケルの腕が戦いのためのものではない、ということとつながっているのではないでしょうか。つまり、2:00~2:10のこの場面には、すべてのarm(s)が包帯で巻かれているという、重層的な意味が込められているようです。


映像の2分過ぎに、ライフル・ドリルと呼ばれる動作がでてくるのですが、兵士が回しているライフルは木製で、金属で出来た銃身部分がなく、武器にはならないものです。



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マイケルの「bandage」



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格闘家の「bandage」



(*6)文字に関しては、以前「マイケルとチャップリンのエスペラント(2)」でも言及しましたが、その後さらに調べた結果も、これと同じ結果でした。




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by yomodalite | 2015-12-26 06:00 | MJアカデミア | Trackback | Comments(0)

「Part 3」を訳し終えて

ウィラとエレノアの会話の途中ですが、この記事の翻訳を手伝っていただいたchildspiritsさんからメッセージをいただきました。

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yomodaliteさんから、この記事の話を聞いたのは、かなり前だったような気がします。訳そうと思いながらずっと手をつけられないでいたのは、怠け癖のせいもあるのですが、いったん手をつけてしまうとエラいことになりそうな気がしたからです。実際、エラいことになりました。

なにせ対談が長い!ということもあるのですが、そこに出てくる映画、歴史、思想に関する知識のバックグラウンドが自分に欠けていることを痛感させられまくりで、参りました。なにしろ、撮影の舞台がブカレストの英雄広場であることも、それがどんなところかさえ知らなかったのですから。ひとつの言葉、一行の表現に、延々と悩んだり、調べたりすることの連続。けれど、それを繰り返しながらでも、パート3まで連続して訳して、本当に良かったと思います。連続して訳さなければ、わからなかったことがありましたから。

パート1,2で、『意志の勝利』や『独裁者』と「ヒストリー・ティーザー」の関わり、その引用の仕方が論じられている時点では、映像の歴史の中で特別な位置を占めるこれらの作品について、自分は実は何も知らなかったということを認識させられましたし、MJの知識や教養の広さと深さに改めて感心していました。この対談でエレノアが言ってるように「彼はどうやってこんなに勉強したの?」という感じです。ただ彼を見上げている感じ。

でもパート3を読み終えた今私が感じているのは、自分にとって、「彼はどうしてこんなに優れた教師なんだろう?」ということです。それはMJをただ見上げるだけではなく、彼が与える課題を自分はどう考えるか、という相互作用的な関係です。

パート3には、「ヒストリー・ティーザー」に引用されている作品が新たに三本論じられていていますが、ここまで来て私はやっと、MJがヒストリーでいろいろな作品を引用していることの意味が納得できたような気がします。知識の披瀝などではもちろんなく、単なるオマージュでもなく、そこに浮かび上がってくるのは、人や物事を見る目の多様性、つまり「歴史」を見る目の多様性というメッセージでした。

そして、歴史を一つの切り口ではなく、多様な観点で見るためには、どんな相手も理解しようとする共感力が必要だということ。MJというと、「その人のモカシンを履いて二つの月を歩いてみるまでは人を判断してはならない」という言葉がファンの間で引き合いに出されますが、「ヒストリー・ティーザー」は、意外なことに、その精神をもっとも強く伝えているショート・フィルムではないかと、今では思います。

先に、「連続して訳して」良かったと書きました。「ヒストリー・ティーザー」という作品について、上に述べたような自分なりの納得や感動に至ったのは、訳しながら読んだからだと思います。

もし英語で読んでいたら、本当はよくわかっていない部分でも「そうなんだとか「そういうもんか」と読み飛ばしてしまい、対談者たちの考えはだいたい解った、という地点にとどまったでしょう。でも、訳すという作業は、そこに出てくる物事についての理解が曖昧だと日本語が作れないので、yomodaliteさんとともにずいぶんと調べものをすることになりました。

Aという事柄を調べれば、芋づる式にBもCもということになり、時間もかかりましたが、いままで他ではしなかったような勉強ができましたし、二人であぁだこうだと議論を進めながらやることで(ウィラとエレノアが語りあうことで作品への理解を深めていったように)、以前には考えたこともなかったような見方にたどり着くことが出来ました。それはとてもわくわくする体験です。
なぜならMJが「ヒストリー・ティーザー」に込めた思いが、2015年の冬の日本に生きている私たちにも、身にしみて伝わってくるような気がしてくるからです。

対談に出てくる通り、「ヒストリー・ティーザー」は「怖くて不気味な感じで、誇大妄想の産物のように見える」作品です。それは、MJに批判的な人たちだけでなく、多くのファンにとっても、もちろん私にとってもそうでした。でも、この作品が一見してメッセージのわかりやすい作品だったら、ウィラやエレノアがこんなに議論することはなく、私たちも考えたり学んだりさせてもらえなかったし、そこにあるメッセージは頭の中にちょっととどまって去っていったかもしれません。

製作から20年経っても私たちが「歴史をどう見るか」ではなく、「歴史ってなんだろう」みたいなことを考えられるよう、MJがたった3分弱のなかに凝らした無数の仕掛け。私たちがあぁだこうだと言ってるのを見て、MJが「やっとわかった?でもまだまだ」と笑っているような気がします。ほんとにすごい教師です。

(childspirits)



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by yomodalite | 2015-12-25 06:00 | MJアカデミア | Trackback | Comments(0)

HIStory Teaser, Part 3「新たなヒーロー像」③

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ウィラ:それは本当に重要なポイントね。それでもうひとつ、そういった繋がりを思い出したんだけど、『ターミネーター2』と『レッド・オクトーバーを追え』と「ヒストリー・ティーザー」、実は『独裁者』もそうなんだけど、これらはすべて、新しいタイプのヒーローを中心にした作品だということ。『ターミネーター2』のヒーローはジョン・コナーでもサラ・コナーでもない。二人とも勇敢だけど、ヒーローはターミネーターという、人の命を守るためにプログラムし直された、暗殺サイボーグなのよ。型にはまらないヒーロー像について話をしなくてはね!


ある意味では、『レッド・オクトーバーを追え』はより型破りと言えるわよね。そこには二人のヒーローがいる。ソ連の原子力潜水艦の艦長とCIAのアメリカ海軍分析官。艦長は亡命し、新しいテクノロジーを西側と共有するのを望んでいるんだけど、ソ連首脳部はこれに気づき、敵の手に渡すくらいなら彼の潜水艦を沈めてしまえと、海軍に命令を出す。そして合衆国上層部に、艦長はならず者で危険人物だと伝え、アメリカ軍に潜水艦を攻撃するように要請する。これはたいていのアメリカ人なら喜んでやりそうな任務よね。



エレノア:「ならず者で危険人物」というのは「武装した危険人物」と似てるわよね! 『ターミネーター2』でサラとジョンとターミネーターが、コンピューター会社を爆破することで、スカイネットを破壊し、迫り来る核のホロコーストを未然に防ぐシーンを思い出したわ。警察は、彼らが「武装した危険人物」だと警戒する。でも、どちらかと言えば、完全武装して、ターミネーターを破壊しに行っている警察の方が危険なのよ。『レッド・オクトーバーを追え』のプロットでもそうだけど、もし「善(アメリカ軍とか警察)」が「悪(ロシアの潜水艦艦長とかターミネーター)」を殺していたら、それで終わりよね。だから、マイケル・ジャクソンが言っているのは、「彼らは僕を指さして、怖がったり、危険人物だと言っている。僕はただ地球を癒やして、僕たちが生き方を変えなければやって来てしまう悲惨な結果を、避けようとしているだけなのに」ということ。



ウィラ:たしかに。どちらの作品も、「善」と「悪」に対する従来の考え方に、大きく挑戦しているわよね。両方とも、従来の「悪」が最終的にはヒーローになる。


さらに通常と違うのは、『レッド・オクトーバーを追え』という映画では、まったく違った境遇の人の身になって考えてみることや、想像力を働かせて世界を見ることで、最終的に他者への共感がおこること。通常のアクション・アドベンチャー映画では、他者への共感に重きが置かれることはない。でも『レッド・オクトーバーを追え』では、それが物語の核になっている。CIAの分析官は、艦長のことを調べ、一度顔を合わせてもいて、彼を理解し、彼が何を大事にしているかも理解している。もっと重要なのは、分析官は人の身になって考える性格で、自分を艦長の立場に置き、艦長がどのような動機で、何をしようとしているかを理解する。このずば抜けた共感力で、彼は艦長の行動に対して、他の人たちとはまったく違う解釈をする。攻撃しようとしているのではなく、援助しようとしているのだと。



エレノア:サラとジョンがターミネーターを理解したこと。そして、マイケル・ジャクソンのファンがMJを理解し、今も理解しようとしているのと同じね。



ウィラ:確かにそうね。マイケル・ジャクソンのファンたちは、彼のことを、一般的な人たちとは非常に違った目で見ている。なぜなら、私たちは、彼に共感し、彼の視線でものを見るから。それはいい点よね。


とにかく、『レッド・オクトーバーを追え』では、非常に異なる文化圏のまったく違う二人の男が、両方とも、従来の常識や指導者たちを否定する。心情の違いを大きく飛び越えて、大西洋の中立地域で会い、相互理解に至る。だから、彼らをヒーローにしたのは、戦いにおいての行動ではなく、むしろ共感して、理解することや、自分とまったく異なる誰かを信用する勇気と、戦争を避ける知恵なのよね。それはまさに、チャーリー・チャップリンが『独裁者』の最後、パワフルで感動的な演説で訴えていたこと。そしてもちろん『独裁者』も、通常とは違うヒーローを登場させた映画よね。自分の意志に反して世の注目を浴びる場所に押し出されてしまった、シャイで心優しい床屋が、その立場を使ってファシズムを批判し、戦争を避けようとするのだから。


そう考えると、他者への感情移入は、私たちが「ヒストリー・ティーザー」を理解する際にも深く影響があったと言えるわね。 この作品は、一見すると怖くて不気味な感じで、誇大妄想の産物のように見える。「ポップシンガーが、かつてないほど厚顔無恥に、空虚な栄光に彩られた自己神格化を大真面目にやった例」だと、ダイアン・ソーヤーが批評家の言葉を借りて言ったようにね。でも、「ヒストリー・ティーザー」が作られた前年の1993年に彼に起こったことや、彼がキャリアを通して成し遂げようとしたことを、マイケル・ジャクソンの側に立って考え、この作品が創られているときから続いていることを、細部まで注意深く観察して見てみれば、私たちも、冒頭のエスペラント語の意味や、その後のロシア語の歌詞の意味、『独裁者』や『意志の勝利』やその他の映画が反映されていることに気づいて、『レッド・オクトーバーを追え』のCIA分析官と同じように、違った解釈が出来るようになる。



エレノア:まったくその通り。マイケル・ジャクソンについてあらゆることを学んで、何が彼を動かしていたかについて、私が確信しているのは、彼は、私たち人間が、自分たちを救うために必要な変化を成し遂げる能力を持っていると信じていたということね。争い合い、地球から文化を奪い取るというパターンに、救いようがないほど囚われているわけではない、と。


『ターミネーター2』でジョン・コナーと母親とターミネーターは、これ以上存在し続ければホロコーストを引き起こすことになるコンピューター・テクノロジーを破壊するんだけど、その直前、ジョンはこう言うのよ。「未来は書かれていない。運命なんてものはない。それは、私たち自身で作るものだ」 これは、もちろんマイケル・ジャクソンが「ヒストリー」という曲に込めたメッセージよね。



Every day create your history

Every path you take you’re leaving your legacy ….

All nations sing

Let’s harmonize all around the world


毎日、あなたの歴史が創られる

どんな道に進んでも、人は何かを残していく

すべての国々が歌う

そのハーモニーを世界中に響かせよう



どの歌でも、マイケル・ジャクソンは、世界のハーモニーを導く変化、というテーマに戻っていく。彼は人間は自分自身を変え、自分たちの歴史を作り、過去で未来を縛ることを拒否する力を持っている、と信じていた。



ウィラ:そうね。この考え方は、彼の生き方や仕事を貫くものだった。たぶん80年代前半に書かれたと思うんだけど、「Much Too Soon」でも、彼はこんな風に言っている。



I hope to make a change now for the better

Never letting fate control my soul


さあ、より良い方向へ変わろう

決して運命に魂を左右されずに



そして、死の前日か前々日に撮られたThis Is Itの「Earth Song」の場面でも、彼はこう言ってる。



The time has come. This is it. People are always saying, “They’ll take care of it. The government’ll … Don’t worry, they’ll …” They who? It starts with us. It’s us, or else it’ll never be done.


時は来てる。今しかないんだ。みんないつも言うよね。「誰かがやってくれる。政府がやってくれる。心配しなくても、誰かが…」って。誰か、って誰? 自分から始めなきゃ。自分から。じゃなきゃ、なにも始まらないんだ。


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(DVDでは、1:28:44〜)


人生の最後の瞬間までずっと、彼は、私たちの運命は私たちの手にあるんだ、自分で歴史を作るんだ、そして「世界を癒やそう」、とみんなを励まし続けていたのよね。



エレノア:彼は音楽をその変化をもたらすための手段だと考えていたのよね。私たちの感情に訴える力があるんだと。実を言うとね、ウィラ、人間の性質や私たちの選択を変えることも、私たちが新たな道に向かうという望みも、マイケル・ジャクソンと彼の音楽の力に対する強い信頼がなければ、私はいまごろすべての望みを失っていたかも知れない。


私は、マイケル・ジャクソン自身が、新しいタイプの人間像を体現していたと思うのね。完全なる人間の形、戦争ではなく、平和を呼びかける新しい種類のヒーローを。あの彫像と、作り変えられたサイボーグを結びつけることで、「ヒストリー・ティーザー」は、マイケル・ジャクソンこそが革命だと言っている。でも、それは心の内にあるもので、思考や感性、特に、感性に革命を起こすことで、武力行動ではない。そして、彼は、私たちの心に触れ、共感力を養うために、あなたが変化をもたらすための手段だという芸術の力を深く信じていた。(④に続く)






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by yomodalite | 2015-12-23 06:00 | MJアカデミア | Trackback | Comments(0)

HIStory Teaser, Part 3「新たなヒーロー像」②

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(①の続き)

エレノア:そのあと「ヒストリー・ティーザー」では、歴史と映画作品の両方が引用されていて、画面と音の関係は、私たちが何を見ているかを音が解説してくれるようになっている。非言語的で、時に遠回しに説明するような。たとえば、私たちが最初に目にするのは、トゥルルの像(→Part 2)なんだけど、これはハンガリーの「国鳥」であり、ハンガリーの国家主義を象徴している。そして、エスペラント語の言葉の後に聞くのは、軍靴の音。



ウィラ:それらはなにか不穏な空気を表現しているのよね。ヘリコプターの音のような・・さっきあなたが言っていたように『地獄の黙示録』のオープニングの音ね?



エレノア:そう。一連のオープニングシーンは、マイケル・ジャクソンの歴史を、帝国支配の歴史を象徴するようなハンガリーの歴史の中に組み込んでいる。そして、エスペラント語の直後に軍靴の音があることで、マイケル・ジャクソンの物語と、彼の世界観は、情景と音の対比と、平和と戦争を並列させることで、語られる。



ウィラ:すごく興味深いわ、エレノア。「情景と音」がかみ合っていないように見えるのは確かよね。Bjørn Bojesen が去年の記事で私たちのために翻訳してくれたけど、男性は、エスペラント語で「世界共通の母と、愛と、音楽の癒やしの力」について叫んでいるけど、目に映るのは軍国主義的な、恐い映像よね。だから、叫ばれているエスペラント語の意味がわかると、あなたの言う「平和と戦争の並列」が強烈にわかるわね。



エレノア:そうね。次に、労働者たちが巨大な像のようなものを建設している場面では、溶けた金属のシャーッというような音や、ハンマーを打つ音、工場内の音が聞く者をおびやかすように大きく流れていて、『ターミネーター2』で、サイボーグが組み立て直され、新たなミッションをプログラムされている場面を思い起こさせる。



ウィラ:確かに、その場面では、『ターミネーター2』の対決場面でかかる工場の音のような音楽が、しつこく繰り返し流れている。このクリップでわかると思うけれど。(最初の動画が削除されたので、代用動画です)






0:35から0:50のところが特にわかりやすいわね。「ヒストリー・ティーザー」の0:15から0:40でも、まったく同じような、うなるような工場音がくり返し流れている。






エレノア: そして、そういった情景と音が赤いユニフォームを着た軍隊のイメージに重なっていき、「ヒストリー・ティーザー」のサウンドトラックは、「レッドオクトーバーの賛歌」という『レッドオクトーバーを追え』の音楽に変化して、それは、その映画だけでなく、ソ連と冷戦の脅威との関連をも思い出させる。



ウィラ: そうね。この引用はとても大事だと思う。ここに、「レッド・オクトーバーの賛歌」の、ロシア語と英語の歌詞がついたリンクを張るわね。この歌詞を読むと、家から遠く離れて何ヶ月も過ごす、兵士や戦艦乗組員の気持ちになるわね。「ヒストリー」で流れるロシア語の部分の訳はこんな感じ(この動画は削除されたので動画には歌詞はありません)。







Cold, hard, empty

Light that has left me

How could I know that you would die?

Farewell again, our dear land

So hard for us to imagine it is real and not a dream

Motherland, native home

Farewell, our Motherland


寒く、つらく、虚しい

光は私を置き去りにした

君が死んでしまうなんて、どうして私にわかるだろう?

今また旅立つ、懐かしき我らの国

これが現実で、夢ではないなんて

想像することもできない

母国、わが故郷

さらば、我らの祖国よ



最初の部分は、艦長の境遇を語っている。彼の妻は前回の任務中に自殺してしまった(君が死んでしまうなんて、どうして私にわかるだろう?)。彼は妻といるべき時間を海で過ごしてしまったのね。「私は結婚したその日から、妻を未亡人にしてしまった」そして、彼は大きな葛藤を感じながら、再び海に赴くのよ。


でもそのあと、人称代名詞は「私」から「我ら」に変わり、続く歌詞は、故郷から離れて何ヶ月も過ごす兵士たちや乗組員たちみんなの感情を表しているように見える(今また旅立つ、懐かしき我らの国/これが現実で、夢ではないなんて、想像することもできない)。つまり、前回の記事で話したように、マイケル・ジャクソンは(先駆者であるチャーリー・チャップリンのように)根本的には戦争や帝国主義に批判的なんだけど、上からの命令を遂行している兵士や戦艦乗組員をけなしたりはしない。そうではなくて、彼らの置かれた複雑な状況を理解し、彼らに心を寄せているのよ。この部分の歌詞でそれがよくわかる。



エレノア: 歌詞を見つけてくれてありがとう、ウィラ。いまのあなたの解釈には100パーセント同意するわ。



ウィラ: この曲は40秒くらいのところから、「ヒストリー・ティーザー」の前半部分ずっと流れるんだけど、『ターミネーター2』の音楽を引き継ぐ形で「レッド・オクトーバーの賛歌」が入ってくるのよね。


そしてあなたが言ったように、エレノア、ここも「情景と音」がかみ合っていない例よね。と言うか、音が情景を攪乱しているところがある。表面的には、兵士たちが誇らしげに英雄広場に行進しているけれど、ロシア語の歌詞は、兵士たちが感じているかも知れない、嘆かわしさや、人間的でもっと微妙な感情を伝えているのよね。


ところで、この曲はベイジル・ポールドゥリスの作曲なんだけど、この人は『フリー・ウィリー』の最初の2作のサウンドトラックも書いているのよね。そしてもちろん、マイケル・ジャクソンもこの2作に関わっている。彼が作曲して歌った「Will You Be There」は第一作のテーマソングだし、「Childhood」も二作目に使われている。第一作は1993年、二作目は1995年に公開されていて、これはちょうどアルバム『ヒストリー』を作っていた頃なのよね。だから、1990年代の中頃、マイケル・ジャクソンとベイジル・ポールドゥリスには多くの接点があったのではないかしら。



エレノア:それは知らなかった。興味深いわね。



ウィラ:でしょう? それで、『ターミネーター2』についてあなたが言っていたことに戻るけど、予告編を調べてみたら、いくつかのバージョンがあることがわかった。実際、ディレクターズカット版DVDには8種類の予告編が入っているの。大々的に宣伝された映画だったものね!でも、これは初期のバージョンで、「ヒストリー」にもっとも近いものではないかしら。あなたが言ってるのは、これよね、エレノア?(こちらの動画も削除されたので、感じがわかるものを貼ってます)







エレノア: そう、それよ。1:03くらいから、ターミネーターが組み立て直されるシーンが始まる。ターミネーターは、アーノルド・シュワルツェネッガーが演じていて、彼が第1作目の『ターミネーター』で初めて言った「アイル・ビー・バック」という言葉は、彼のトレードマークになった。その映画で彼は、あらゆるものを投げつけられるんだけど、『ターミネーター2』の予告編で、生き残った彼はもう一度戦うために、帰ってくる。


これが、「ヒストリー」を作っている時のマイケル・ジャクソンの心情の手がかりでないとは思えないわよね!『ターミネーター2』は、マイケル・ジャクソンへのバッシングがエスカレートしていく直前の1991年公開だけど、映画本体と同じく予告編も、MJの物語を語る助けになる。『ターミネーター2』の要素を「ヒストリー・ティーザー」に入れることで、激しい怒りに燃えていたマイケル・ジャクソンは、誰にも自分を引きずり下ろせない、と宣言していた。マイケル・ジャクソンは、華々しく復活していたのよ。



ウィラ:面白いわ、エレノア! つまり、彼はターミネーターのように、「アイル・ビー・バック」と言ってたわけね。



エレノア:そう。そして『ターミネーター2』とマイケル・ジャクソンと彼の物語には、他にもすごく興味深い関連がある。たとえば、ナレーターは言う。「かつて彼は未来を破壊するようにプログラムされていた。しかし今、彼の使命は未来を守ること。彼の忠誠はひとりの子供に…」そしてターミネーターを演じるアーノルドは言う。「おれを信じろ(Trust me)」。これも彼を有名にしたフレーズね。MJがこの予告編を参考にしたのは不思議ではないわ。この映画の未来と子供を守るということ、それは、あのときの彼の人生そのものだもの。彼には、児童虐待の疑惑に面と向かって罵倒し返すような方法はなかった。そして、疑惑をかけられたことによって、信用(trust)という言葉は、彼にとって大きな課題となった。



ウィラ:確かに、そういう見方をすると、つまりターミネーターは脅威のように見えて実は「未来と子供を守っている」それは、マイケル・ジャクソンがこの映画を引用した大きな意味よね。そして、「おれを信じろ」というセリフも、私たちが以前に話した問題を思い起こさせるわ。誰かを信用するとか(サイボーグや、ソ連の潜水艦艦長や、姿を変え続けるポップスター)、誰が世界を脅かしているとか、私たちにわかるのか?という問題。



エレノア: そうね。そしてここで話しているようなつながりから言えば、MJは高らかに宣言している。「もちろん、僕を信じていい、僕の音楽を信じていい」と。「本心でなければ歌わない」(訳者註:ヒストリーという曲のイントロ部分)と言っているわよね。彼の曲の力というのは、彼の生の感情が吐露されていることにあり、自身の奥深いところから湧き上がってくる真実を音楽で表現し、私たちの奥深いところに訴えかける、彼の飛び抜けた能力にある。その真実は、ある人にとっては解放であり、ある人にとっては脅威になる。だから、主流派は、その名前を貶め、力を奪うために、彼に「あらゆるものを投げつけた」のよ。



ウィラ:さらに興味深いのは、その予告編のなかで、金属を溶かして、ターミネーターの骨格を作っているシーンよね。それは、「ヒストリー・ティーザー」で、溶かした金属を流し込んで巨大な像とエスペラントの星を作っているシーンとすごく似ているんじゃないかしら。



エレノア:そうね。ターミネーターを作り直している場面を元にしたといっていいんじゃない?ターミネーターは人類を救うために戻ってくる(人類自身から守るため。人間を破壊するスカイネットや手下のサイボーグたちを生み出したのは人間だから)。そしてマイケルが、彼のキャリアでもっとも政治的なアルバム『ヒストリー』発表と共にアーティストとして戻ってきたのも、このひどく狂った世界を癒やすために全力を尽くしていることや、私たちを私たち自身から救い出す、という彼の意図を強調し再確認するものだった。


それに、MJとロボットが結びついているというのも興味深いわよね。彼のロボットダンスは有名だから。チェコの劇作家が作ったロボットという言葉は、チェコ語の「robotnik(ロボトニク)」からきているんだけど、robotnikは、強制労働を意味する言葉で、奴隷を表す古いスラブ語から派生し、かつてのオーストリア=ハンガリー帝国では(「ヒストリー・ティーザー」はハンガリーで撮影されている)、19世紀後半、裕福な地主層に対して反乱を起こした小作人たちを言うのに使われていたって、知ってた? すごくない?



ウィラ:全然知らなかったわ。



エレノア:実は、私も知らなかった。ひとつの言葉に、これほど多くの歴史が含まれているなんて!でも、私が調べた経験から言えば、MJはこういったことをすべて知っていたと思う。「ヒストリー・ティーザー」は、MJや、彼の彫像とロボットを結びつけ、アフリカ系アメリカ人が奴隷であったことと、オーストラリア=ハンガリー帝国における小作人たちの強制労働を結びつけ、同時に、ロボットのような存在から自由の身へと変化するという考え方にも触れているのよね。


「ヒストリー・ティーザー」に『ターミネーター2』を反映させたのは、マイケル・ジャクソンが戻ってきたということを私たちに告げるため。そして、ターミネーターが「おれを信じろ」と言ったのと同じように、私たちに、「彼らが語る物語」ではなく、実際に起こったことに対するMJの解釈を信じろ。と言っている。


それだけではなくて、『ターミネーター2』に言及することは、私たち自身について語ることでもある。それは、人類は絶え間なく戦争をくり返し、自己破壊のループに陥っているとしても、我々は変わることが出来る、真の変化は可能なのだ、ということ。『ターミネーター2』の最後で「もし機械や、ターミネーターに、人の命の大切さを学ぶことが出来るなら、たぶん私たちにも出来るでしょう」と、サラ・コナーが言っているようにね。(③に続く)





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by yomodalite | 2015-12-22 06:00 | MJアカデミア | Trackback | Comments(0)

HIStory Teaser, Part 3「新たなヒーロー像」①

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新年まであと十日余り、慌ただしさも増してきた今日この頃ではありますが、ついに、「HIStory Teaser」の会話の最終編です。


時節柄、相応しい話題ではないのかもしれませんが、今日からお正月にかけて、会話終了後の補足記事も含め、HIStory関連の記事を随時アップしていきたいと思いますので、気が向いたときに、ご覧になってください。


意外にも『Michael Jackson Tapes』と『Honoring the Child Spirit』の2冊合わせたよりも、悩んだ箇所がたくさんあって、childspiritsさんと私は、今年中にこれを紹介することができて、「自分で自分のことを褒めてあげたい」ような気分も味わいましたが、これまで気がつかなかったこともたくさん見えてきて、マイケルがどれほど多くの歴史を意識していたかについて、愕然としたことも一度や二度ではありませんでした。


今回は、『意志の勝利』や『独裁者』という、このショートフィルムの前面に現れている映画ではないので、その引用は瑣末なものだと思われるかもしれませんが、それらは、いわゆる「オマージュ」とは違って、まさに「歴史」を意識したものです。


何かを説明するとき、そこに物語がないと、私たちはなかなか理解することができないものですが、物語というのは、意味のある断片が、いくつか組み合わさって、おのずと出来上がってくるものではなく、物語をつくるために、必要な断片を、組み合わせて、意味をつくるものです。歴史は、勝者が創ると言われていることもそれと同じことですが、事実から報道をつくるときも、ブロガーも、方向性を決めなければ、文章を書くことはできないものです。


ウィラが自分のブログを会話という形にしているのは、ひとりで書く形式では、マイケルを利用して、自説を語ることにしかならないということを、よくわかっているからだと思います。エレノアも、このフィルムを説明するための筋を作ることを避け、ひたすら読み取ることに専念しています。それで、私はこれをすべて紹介したいと思ったんですね。(前回の補足記事で、少し先走ってしまって、今回の会話と一部カブっている部分もありますが・・)


マイケルがこのフィルムに膨大な引用をしている意味はなんなのか? それは、彼が、どういった歴史をピックアップしたかを知ることから、ようやく始まるのではないでしょうか。


これが、『HIStory』ともう一度出会うきっかけになってもらえたら、と願いつつ。。



☆続きを読む!!!
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by yomodalite | 2015-12-21 06:00 | MJアカデミア | Trackback | Comments(0)

映画『スローターハウス5』

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急に寒くなって、ついに、本当に冬がきてしまったような日、ヴォネガットの作品をもう一度読んでみるときの参考になるかも。。と思って録画してあった作品を観た。

まったく期待なしで、見始めたのだけど、雪景色の中を、主人公のビリー・ピルグリムが駆けていくオープニングクレジットの場面で、グレン・グールドの「ゴルトベルク変奏曲」が流れて、一気に世界に吸い込まれる。

原作は、探せば文庫があるはず。というぐらいで、あまり覚えているとはいえないのだけど、映画は、小説の幾分ハチャメチャな展開に、明快な筋を通していて、こんな内容だったとは・・と思ってしまったのは、原作を読んだ頃、この映画の背景とか、作者の気持ちとか、聖書の知識とか、まるでわかっていなかったからなんでしょう。

十代の頃に読んだ海外小説って、つくづく、そういうことが多い。

とても1972年の映画とは思えないほど、まったく古びてなくて、今の映画にはない新鮮な感覚もあって、とにかく、ものすごくよく出来た映画だなぁ・・と思って、監督のことを調べてみたら、『スティング』とか、『ガープの世界』を撮ったジョージ・ロイ・ヒル監督でした(汗)

グールドの「ゴルトベルク変奏曲」は、オープニングだけでなく、何度かかかるのだけど、この予告編の音で、いつ録音されたものかわかる人ーーーー!!


(1:00〜から
ちなみに、この「予告編」の映像は本編の良さを全然生かしてない)




ドレスデン爆撃についても、まったく考えたことなかったけど、ゴルドベルグが使われたのも、そのあたりに関係あるのかなぁ。。







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by yomodalite | 2015-12-18 08:34 | 映画・マンガ・TV | Trackback | Comments(4)

和訳 mother『Dancing the Dream』[46]

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『Dancing The Dream』の詩は今回で完訳です。

過去記事を確認してみたら、2011年の7月からやっていて、4年も経っていたことに、自分でも驚いています。もっとも、最初は全部自分で訳してみようだなんて思ってなかったんですが、やればやるほど、マイケルの言葉の魅力にハマり、最初は面白くなさそうと思っていた詩ほど、終わってみると、不思議な感覚に包まれたという体験は、この最後の詩まで変わりませんでした。

本の順番では、前回の「Look Again, Baby Seal」が最後の詩で、「mother」は、比較的最初の方にある詩なんですが、「母への思い」というのが苦手な、私の個人的な理由により、これが最後になりました。

前回、どこかで読んだ分類・・と言っていたのは、「Dancing The Elefant」でも、何度か名前が挙がっていた Elizabeth Amisu の論文だったのですが、そちらでは、「mother」は、Poems(詩)に分類されていて、英文では、音韻を重視していることがよくわかると思います。

いつものように、気になる点や間違いは、遠慮なくご指摘くださいませ。また、ここまでの詩も、随時、修正していく気持ちだけは満々なので、そちらもよろしくお願いします。



mother

Written By Michael Jackson



Eons of time I’ve been gestating

To take a form been hesitating

From the unmanifest this cosmic conception

On this earth a fantastic reception

And then one fateful August morn

From you being I was born

With tender love you nurtured a seed

To your own distress you paid no heed

Unmindful of any risk and danger

You decided upon this lonely stranger


永劫のときを経て、僕は胎内にたどり着いた

ためらいながら、形を成し

漠然とした宇宙の概念から

この素晴らしき地球に迎えられ

そして、さだめし八月の朝

僕は、あなたから生まれることになったのだ

やさしき愛で種を育み

その身の苦痛をかえりみず

あらゆる危険も構うことなく

あなたは、この孤独な旅人を産むことを決めた


Rainbows, clouds, the deep blue sky

Glittering birds that fly on high

Out of fragments you’ve made my whole

From the elements you fashioned my soul

Mother dear, you gave me life

Because of you no struggle or strife

You gave me joy and position

Cared for me without condition


虹や、雲や、果てしない青空

空高く飛ぶ、美しい鳥

あなたは、あらゆるものから僕を形づくり

さまざまなものから、僕の魂に息を吹き込み

愛しい母、あなたは、僕に命をくれた

あなたのおかげで、戦いも、争いもなく

あなたは、僕に歓びと安息の地を与え

どんなときでも気にかけてくれた


And if I ever change the world

It's from the emotions you've unfurl'd

Your compassion is so sweet and dear

Your finest feelings I can hear

I can sense your faintest notion

The wondrous magic of your love potion


僕が、この世界を変えるとすれば

それは、あなたの大いなる感情からだろう

あなたの切ないまでの慈愛も

繊細な感覚も僕にはわかる

あなたの愛の雫には、不思議な魔法がある


And now that I have come so far

Met with every king and czar

Encountered every color and creed

Of every passion, every greed


今、あなたの元を遠く離れ

あらゆる王や、指導者に会い

いろいろな肌の色と、信仰をもち

さまざまな情熱と、欲望に接していても


I go back to that starry night

With not a fear for muscle or might

You taught me how to stand and fight

For every single wrong and right

Every day without a hold

I will treasure what you've mold

I will remember every kiss

Your sweet words I'll never miss

No matter where I go from here

You're in my heart, my mother dear.


僕は、あの星降る夜にもどれるのだ

あなたは、暴力や権力にも脅えることはなく

立ち上がって戦うのだと教えてくれた

そして、正しさや、間違いにも

日々、捉われるな、と

あなたがくれたどんなものも、僕の宝物であり

あなたがくれたどんなキスも、忘れることはなく

あなたのやさしい言葉が、僕から失われることはない

たとえ、僕がどこに行ったとしても

愛しい母よ、あなたは、私の心の中にいる


(訳:yomodalite)


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by yomodalite | 2015-12-16 06:00 | Dancing the Dream | Trackback | Comments(2)

映画『007 スペクター』

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しばらく前に、WOWOWの無料放送で『ディファイアンス』という、第二次世界大戦時、ユダヤ人狩りが始まったベラルーシで、ナチス親衛隊と地元警察に両親を殺され、森へと逃げ込んだ兄弟たちが、逃げてくる同胞のユダヤ人たちを次々に受け入れ、食料や武器を調達しながら共同体を築いていくという映画を観ました。

これまでの強制収容所でのユダヤ人=被害者という描き方ではなく、殺された両親の復讐を果たし、食料を調達するための山賊まがいの行動や、武器を調達して応戦するなどの末、終戦時には1200人もの同胞を救ったと言われる共同体のリーダー役を、ダニエル・クレイグが演じていて、それが、ジェームズ・ボンド役のタキシード姿よりも、ずっとハマっているように見えて、ようやく、クレイグの魅力に気づいたのですが、

気づいたといえば、「HIStory ティーザー」の検証で、ゴルバチョフ政権の前夜を描いた『レッド・オクトーバーを追え』を見ていて、CIAとソ連の原子力潜水艦の艦長が、お互いの考えを理解できたのは、「冷戦時代」だったからで、チェスの試合のように、先を読みあう展開に、今の映画のような残忍な殺し合いがなくていいなぁ・・・なんて思っているうちに、

そういえば、『レッド・オクトーバーを追え』は、艦長と同じくショーン・コネリーが演じた『007 ロシアから愛をこめて』(From Russia with Love)に対する、CIAの意趣返しだったことにも気づいて、

『007』シリーズの有名作品のことを、おしゃれなスパイ映画以上に考えたことがなかったんですけど、歴史についても、「HIStory」についても、思いを巡らすことの多い今日この頃、ようやく、その時代のスパイ映画がなにを描いていたのかが少しわかってきたというか、

それで、ショーン・コネリーのジェームズ・ボンドが、米ソ二国時代のスパイだったことを考えていたら、どうして、ダニエル・クレイグが、ジェームズ・ボンドに選ばれたのか、という理由もわかってきて・・

クレイグのボンド1作目は2006年、第二次チェチェン紛争の最中、プーチンが再選されて、ロシア軍がテロリスト掃討のために、チェチェンへの空爆を開始した頃だったんですね。で、、そんなことを思い出したら、特に観に行くつもりじゃなかった『007』の新作が、気になってきて・・今まで気がつかなかったなんて、私だけかも・・なんだけど、

ダニエル・クレイグって、最初から「プーチン」をイメージして、ボンド役に選ばれていたんですね。

金髪に青い目という、今までのボンドのイメージを覆しても、彼が選ばれたのは・・・ということを確認しに行ったんですが、やっぱり『英国から(プーチン)に愛をこめて』みたいな内容で・・

初めて『007』シリーズをリアルに感じることができました。

あーーー、私も大人になったなぁ…(って、自分いくつやねんw)







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by yomodalite | 2015-12-14 08:14 | 映画・マンガ・TV | Trackback | Comments(0)

旧「読書日記と着物あれこれ」。歴史/文学/お笑いを好み、着物生活をしていたはずが、いつしかマイケルジャクソンのように本を読もうになってしまったブログ。永年暮らした東京を離れ、現在は大阪を満喫中。


by yomodalite