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グランフロント大阪

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Photo : Take It Easy~パパールの雑記帳 別館


2、3日ほど前の、内田樹氏のツイッター。


内田樹 ‏@levinassien
ところで「うめきた」にできたあの施設ですけれど、Grand Front がどうして「グランフロント」なのか誰か知ってますか?あの綴り、英語だったら「グランドフロント」だし、フランス語だったら「グランフロン」って読むんじゃないですか。そもそも「大前線」てどういう意味?

家の近くにChocolat Republic という店舗の看板があって、これもぞくぞくします。La Tour Blanc というお店もあります。お店の名前つけるというのはずいぶん時間をかけたはずですけれど、どうして人は「辞書を引く」という手間を惜しむのでしょう。

たぶん命名会議では大学でフランス語初級をとった人が「この店舗名、英語圏の人もフランス語圏の人も、『?』ってなるんじゃないですか?」って疑義をただしたんだと思います。そのときに「いいんだよ、客は誰も店舗名なんか気にしないんだから」って言った人がいたんでしょうね。

まあ、それもひとつの見識ですね。実際に、店舗名に「これはちょっと・・・?」という報道を僕はどこでも見たことないですし。まあ、それも「おおらか」と言えば、おおらかです。ええ、いいんじゃないですか、グランドフロンで。あ、違ったグランフロントだ。

綴り字間違いのお店情報、たくさんの方からご教示いただきました。日本語の店名にすればいいのに、どうしてなんでしょうね。うめきただって「新梅北商店街」とかいう名前にして、漢字で書いた巨大看板とかつけたら(『ブレードランナー』みたいな)、世界中のフォトグラファーが飛んできますよ。

というかはじめから「うめきた大仏」にしておけばよかったんですよ。あそこに100メートルの大仏が立って、参道には「茶店」とか「たこ焼き屋」とか「うどん屋」とかが軒を接している。松と竹と梅を植え込んだ築山と池があって、四季折々の風情を楽しんでみんなが庭を散策。そっちのがいいのに。

形容詞の最後の子音の脱落が「正しい英語」の発音だから「グランフロント」でいいのだというご教示がありました。ヘンリー・ヒギンズ教授だったら「そんなのは英語じゃない」と言うでしょうね。「グランプリ」を子音脱落の例に挙げてくれましたが、Grand Prixはフランス語では・・・

帰り道にもう一個みつけました。Monlavie というマンションです。たぶん大家さんが「『生活』ってなんて言うの?」って訊いたときにフランス語初級をとったことのある息子が「え?La vie じゃないの」と答え、「じゃあ、『私の』は?」に「え、Monかな・・・」と答えた結果がこれ?

今年30回目の新幹線で東京に向かうなう。さわやかな五月晴れの土曜日です。言語と階層についてのヘンリー・ヒギンス教授のご意見を徴すべく『マイフェア・レディ』を見たら、『サウンド・オブ・ミュージック』が見たくなり、さらに『ウェストサイド物語』まで見始めたので、寝不足で眠いです。


(内田氏のツイッター終了)


「うめきた」と言うのは、大阪・梅田の北側の愛称で、グランフロントは、家から徒歩圏内の大型商業施設。わたしは街が好きだし、基本的にキレイで、便利で、めずらしいようなものが売っているところも好きなので、まるで、わたしの引越しに合わせて完成したようなタイミングに気を良くし、靴とか、お洋服とか、勢いで買っちゃったりしてるので、「うめきた大仏」じゃなくて、ホント良かったと思うものの、

同様の疑問はもっていたので、なんとなく、、、。

東京近郊の人に、グランフロントのことを説明すると、

外側から見ると、2本同じような形のビルが並んでるので、丸ビルみたいな感じなんだけど、中に入って見ると、丸ビルほど多くのお店はなくて、あのゴージャスな椅子とかソファもないんだけど、

八重洲口の新開発と似た感じの「うめきた」というプロジェクトと、新宿のリヴィングセンターOZONEと、パナソニックが汐留感覚で作った何の未来も感じさせないうえに、ますます赤字が増えそうな未来型ショールームとか、

日本橋コレドの早稲田キャンパスとか、六本木ヒルズの会員制サロンのカジュアル版のような「ナレッジサロン」などと、

アパレル&レストラン施設が一緒になってるとこかな。

それと、、

最近わたしは書店というところにさっぱり行ってなかったのですが、久しぶりに行ってみたら、もしかして、やっぱり書店てステキなところだわ。という思いが蘇るんじゃないかと思って、

グランフロントの中の「紀伊国屋書店」に行ってみました。

ここの書店の「オルタナティブ」の棚にどんな本が並んでいるか興味があったんです。

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ネグリとか、チョムスキーやクルーグマンとかジャック・アタリ...
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新自由主義や『ショック・ドクトリン』、
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エンデと『モモ』や『デルス・ウザラー』などが、オルタナティブなんだぁ。
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で、「オルタナティブ」の向かい側がスピリチュアルの棚なんですが、

チョプラの本がまだ6冊も並んでいて、、
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ワンワールドとか、コールマンも新版とか再刊だったり、
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日月神示や、ユダヤ同祖論もまだ人気?
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仏教とヨガとセラピーとパワーストーンは「スピリチュアル」ではなく
「ヒーリング」という棚で、
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その隣は「未来社会」という棚。

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ウパニシャッドとか、ヒンズー教というか、サンスクリット語がタイトルの本や、カルロス・カスタネダとか、ラーマクリシュナとか、マクロビオティックとか、マリファナの本も「未来社会」という棚なのね。

ちなみに、オルタナティブ棚の左隣は「現代思想」の棚で、

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スピリチュアルの隣は、国書刊行会の魔術とか、カバラの本があるんだけど、ビニールパックされてて苦笑してしまう。



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10年ぐらい誰も買わない恐れがあるからですねw。なぜそんなことを考えるかと言えば、ここの棚だけ、私が20年近く前にデザインした本が残ってるからww

(通常、出版社は再販時にデザインを変える。大抵の本は、日版とか東版といった問屋から送られてきたものを、書店が委託販売しているので、売れ行きが悪いと書店は出版社に送り返すことができるのだけど、国書の本は「買取」システムになっていて、送り返せないので汚したくないんですね。たぶん)


今回は少し立ち読みしてから買いたい本があったので、

久しぶりに書店に行ってみたけど、

紀伊国屋って、ホントどこも同じで、田舎の「大型書店」より品揃えが多いだけで、ファミレスと大差ない感じ。ファッションを売ってる店の方が知的好奇心が刺激される内装になってるうえに、実店舗の優位性なんて「立ち読み」ぐらいしかないのに、魔術の本をビニールパックにしちゃうわ、長くいたくなる雰囲気もないけど、椅子もないし、、(後日談:最近行ったら、イス増えてた!)

こんな感じなら、カフェで電子書籍を読む方がスマートじゃない?

個人店主がやっている、こじんまりとした本のセレクトショップみたいなところは別として、かつての六本木のABCとか、西武のリブロや、アールヴィヴァンのような魅力的な大型書店はもうどこにもなくて、紀伊国屋も、八重洲ブックセンターも、ジュンク堂も、ブックファーストも、たくさん本があっても、自分が欲しい本がある気がしないし、よほど必要に迫られない限り、やっぱり行くの面倒くさいかも。

そんなことを思いつつ、この日は一冊だけ買って、家に帰ったのでした。

◎参考記事「オルタナティヴ棚」@紀伊國屋書店グランフロント大阪店


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by yomodalite | 2013-05-28 09:35 | 日常と写真 | Trackback | Comments(0)

「イモータル」への感想を聞かれて...

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これは、こちらに頂いたコメントで、「イモータル」への率直な感想を聞かれて書き出したものなんですが、うっかり長々と(いつものことですがw)書いてしまったので、独立させました。


chinoさん:こんばんは yomodaliteさん イモータルいかがでしたか?
残念なことに 今回の日本公演には 私は参加することが出来ませんでした。
是非yomodaliteさんに 率直な感想を伺いたいと思っています。

(私の長い返信はここから)

yomodalite:イモータルを観た後に、chinoさんのコメントを見て、現在の裁判のことをどう考えるか?という質問にどう答えようかと、とても長く考えていたせいか、イモータルについては観たという記憶しかなくなってしまいましたw。

で、そんな風に書いてだいじょうぶかな?と、1日寝かせはしたものの、
これは、かなり率直な感想です。

それと、めちゃめちゃ長く書いた返信のあと、
またすぐに質問されるとは思わなかった(汗)

というのも、率直な感想で、

>長々と おしゃべりしちゃいましたね…

いやいや、私が長々と答えさせられている(自分のせいですが)だけで...

というのも、率直な感想ですw。

chinoさんがそれを早いと感じず、私が「すぐに」と感じたのは、chinoさんが私のコメントを読んだ時間と、私がそれを書いた時間が圧倒的に違うからと、それ以外でも、chinoさんは私よりも「早く」、私が「のろま」だからでしょう。

もしかしたら、ブログのyomodaliteはそうは見えないかもしれませんが、私は思ったことを、言葉にするのに、ものすごく時間がかかるタイプなんです。

だから、裁判への質問について考えていなかったとしても、

イモータルへの率直な感想を。というリクエストには答えられそうになくて、、


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演劇でも映画でも小説でも、率直な感想ってよくわからないんです。何か心に受けたことをどう表現したらいいのかな。と思っているうちに、それは「率直な気持ち」からは遠ざかっていくことが多くて、残念に思うことがよくあります。

でも、おしゃべりを基本とする女子が何かを書こうとするとき、むしろ率直さを押さえた方がいいのでは?と思うところもあり、また、MJについて書くようになってから初めて意識するようになったのですが、

彼はあらゆるすべてのファンを大事にしていたのだから、自分が共感しないことを違和感として表現するのは、できるだけ避けるべきだと思ってきました。

彼が世界中で尊敬されていることに比べて、ファンの態度が愚かに見えるということとの方が多いように思え、自重を心懸けるべきではないかと思ったんです。

で、イモータルについてですが、、

通常、わたしは何でもひとりで観に行くことが多いのですが、今回もひとりで観ました。その理由のひとつは、直後の感情とか感覚を、誰かとその場で共感するような言葉にしたくないからなんですが、今回はイモータルを観た翌日、偶然にも知り合いのMJファンの人と話す機会があったんです。私は自分がMJ好きということを知人にはいっさい公言していませんし、このブログのことも一切秘密なので、彼女はこのブログを通じて知り合った非常に数少ないMJファンの人なんですが、

そのとき、すでにイモータルを1回観ていた彼女は、その翌々日のチケットももっていて、その公演前に私と会ってくれたのですが、


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数回観たなんて、全然めずらしくもないと思いますが、本物のMJのコンサートじゃないのに高いチケット代を払って何度も観ようという発想がなかった自分の意表をつかれて、彼女のMJに対する熱の入れ込みようと、彼女自身のキャラのギャップが可笑しくて、

その後も彼女は、私がたった5回しか観ていない「THIS IS IT(以下「TII」)」を19回も観て、全シーンを「語れるw」ようになり、実際に近所で「語り部w」をやっている!と言って、私を爆笑させ、私は「DVDを貸してあげろーー」とツッこんだものの、なんだかすごく悔しくなって、高額チケットだからといって1回しか観ないなんて、そんな「普通の選択」をしてしまった自分が情けなくなったわけです。(ファンとして情けないと言うんじゃなくて、わたしより「ウケる」行動にねw)

観客のほとんどは、2人以上で観ているので、公演後には様々な感想が飛び交ったと思いますが、たぶん、それらの会話の中で、1度は出たのが「マイケルの不在」という話題ではないでしょうか。

会場では、MJがスクリーンに映し出されるときが一番盛り上がり、それは、私たちの間でも同じで、それで「リアルなマイケル・ジャクソン」とは何だろう。というような会話を少ししました。

彼女はいわゆる死後ファンで、私も生前のMJライブに1度も行っていませんが、もし、2009年の6月25日が来なかったとしても、ロンドンにも、その後行なわれたかもしれない日本ツアーにも行かなかったと思うんです。

MJのライブをビデオで観ていて、私は「ラッキーガール」が自分だったら。とは1度も思ったことはなく、いつも倒れて運ばれていく観客に自分を重ねて見ていたので、会場に行くのは無理だと思っていましたし、こんな大きな会場では、スクリーンに映し出されている彼を観ることすら大変だろうと思っていたので。


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何度も「TII」を見たいと思ったのは、
それが、これまでで一番、近くで彼を観られたことが大きかったからだと思うんです。

ずっと同じ家に住んでいる家族に、自分のことがちっとも理解されていないという不満をもっている人は多いと思いますが、ファンにとって、彼との距離というのは物理的なものではなく、

多くの人のことを考え、様々な人物を演じることに真剣だったアーティストには「本当の自分」といったプライヴェートよりも「未来の自分」の方が大事だったのではないでしょうか?

裁判の件に少し戻りますが、

私は家族の行動については理解できますが、

身近にいたスタッフやファンの一部がアーティストとの間にいる会社を「MJサイド」と見なしていないのは、エンターテイメントへの無理解が根底にあるように思います。

真実のマイケル・ジャクソンとは、彼の生死とは関係がなく、これから何十年も先に出会うことになるかもしれませんし、

マイケル自身もそう願っていたからこそ、未来をみつめ、歴史に残ることの方を強く望んだのではないかと思います。


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上記は、シルク・ド・ソレイユの「イモータル」を観た後の「率直な感想」ではなく、
「immortal(不滅)」ということへの感想として書きました。

追記:どんなに考えても書くことも感想もむずかしいので、お時間があれば「コメント欄」もお読みくださいませ。


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◎[スライドショー]マイケル・ジャクソン ザ・イモータル・ワールドツアー



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by yomodalite | 2013-05-21 20:55 | MJ系ひとりごと | Trackback | Comments(26)

勝新図鑑―絵になる男・勝新太郎のすべて/川勝正幸

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とうとう、こんなものまで。。

定価よりも大分高い金額だったけど、どうしても勝新が欲しい!
そんな夜に、ついポチってしまったのだけど、


買ってよかったぁーーー。


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素晴らし過ぎる帯コピー!!と寸分も違わない内容ww

酒も薬も愛もお金も... 勝新のデンジャラスな魅力と、

勝新を愛さずにはいられない人々の愛がいっぱい詰まってて、

とにかく、ラブリー!


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この絵は特殊マンガ家、根本敬氏の絵ではなくて、、
勝新が突然入れられた “別荘” で描いた「仏陀が見えた部屋」

このあと、デニス・ホッパーによる序文「宇宙船因果号の邂逅」があり、勝新ディナーショーの魅力を語りつくした、横山剣(クレージーケンバンド)による「モミアゲハンサムワールド」や、


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漫画家やまだないと氏による絵と文「ろくでなしの男」、勝新フィギュアの制作者である高杉涼氏の談話、また、かつての「オリーブ少女」にはたまらない仲瀬朝子氏による『悪名』シリーズはかわいいなどの素敵な文章に、勝新映画のビジュアルが盛りだくさん!



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ページを押さえるのは、煙管か、煙草入れか、白飯のおにぎりにしたかったんだけど
本が分厚かったので、家になぜかいっぱい転がってる空き瓶を使いましたw



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表紙にも使われてる、この写真は『喧嘩屋一代・どでかい奴』
モミアゲの小デブ感と墨流しのネクタイ... たまらんっ



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『駿河遊侠伝・賭場荒し』


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『座頭市血笑旅』この作品はまだ観ていないなぁ....



ビジュアルは、映画作品だけでなく、勝新が発売したレコード、勝新が撮影した写真集など、多岐にわたっていて、まさに「図鑑」!


そして、極め付きのレヴューは、吉田豪氏による、タレント本山脈に燦然と輝く勝新伝説

タレントが書いた本に登場する勝新エピソードが13冊分紹介されていて、どれも面白い。勝新自身の対談集『泥水のみのみ浮き沈み』は絶対に手に入れなくちゃ。。

最後に、

幻の名盤解放同盟のおふたり、特殊漫画家・根本敬氏と音楽評論家・湯浅学氏による対談「勝新太郎が目指した世界」より、省略して紹介します。

湯浅:俺が勝さんを意識したのは、やっぱりアヘン事件だな。俺が大学生のときだった。

根本:勝さんが知らないような法律、作る方が悪い(笑)。

湯浅:そうだよな(笑)

根本:俺の友だちがテレビで「マイウェイ」を歌う勝新を見て、それを口で説明された瞬間に、今までごっちゃになってたいろんな勝新太郎がーーアヘン事件も含めて、小学校の頃にテレビの年末特集で観た「悪いんだけど、いい人」という座頭市像もーーものすごい勢いで集約された(笑)。

湯浅:シド・ヴィシャスより勝新の方がパンクだよ。

根本:内田裕也さんが’79年に武道館でやった「ロックンロールBAKA」じゃ、20分「マイウェイ」を歌ったんだってね。

湯浅:客席に降りて、客と握手して。そのときは途中からロックに変わった(笑)。

根本:80年代は「マイウェイ」の最後がディスコになるんだよ。

湯浅:90年代は「ボレロ」になる

根本:時代を反映して、アレンジが少しが変化していく。

湯浅:歌だと、一応演技じゃないじゃん。自分の仲にあるものをどんどん出していけるからさ、どんどん煙くなっていくわけ、勝さんの周りが。その「煙」をみんなが吸うから。

根本:ジミ・ヘンドリックスじゃないけど正に「紫の煙」だよね。

湯浅:そういうでかいスケールで聴ける歌手って、いないでしょ。英語で言うとサイケデリック。本来は精神を拡張することだから。そういう意味で勝新太郎はすごくサイケはわけ。

湯浅 美の立った世界でも通用するようなことをしておきながら、わりと場当たり的なデタラメな世界で生き続けていっても、全体を見ると「勝新太郎という世界」に統一されているかのように俺らに思わせる力があるんだ。だってさ、『警視-K』(80)って、普通、企画の段階でうまくいきっこないことが分かるじゃない。

湯浅 無理あるよね。事件そのものがよく分からなくなっちゃうんだもん、途中で。

また、『警視K』はリアリティを追求するあまり、自然にしゃべった音声が聞き辛いという苦情がテレビ局に殺到したという。役者・勝新太郎の遺作となった黒木和雄監督作品『浪人街』(90)においても、勝さんの台詞だけすごく聴き取り辛くなっている。

湯浅 晩年の勝さんは「空間のノイズ」を気にしていたんだよね。物が伝わるのって耳だけの問題だけじゃないから。その場の空気をリアルに描こうとすると、どうしてもそうなっちゃう。

根本 皮肉なことに、勝さんが下咽頭がんに侵されたことにより、実生活でもどんどんどん声が枯れて、ファズがかかり、聴き取りにくなり、俺らも「絶対聴き逃しちゃいけない」と緊張するようになった。

でも、これってすごい重要なことでさ。中村玉緒さんと最初で最後の舞台となった『夫婦善哉 東男京女J(96)なんて、大阪公演は勝さんの歌う劇中のジャズソングが2曲だったのに、その後の横浜では3曲になっていたの。楽屋へ行ったらさ、「痛いから余計に歌った」という。治療だったんだ。と同時に「哲学」ともいえるが。

湯浅 あの舞台のときはしゃべってるっていう感じじゃないね、もう。全体に歌ってるみたいになっていた。

根本 その前の『不知火検校』(94)の舞台のビデオをでっかい音で再生してみると、一番最後に勝新が見えない神に断罪されるシーンなんだけど、「俺のことを人非人と言ったな。人でなしと言ったな」という台詞の「俺」の「お」っていう声が出る前に、意識してないとます聴こえない音が聞こえるんだよ。振動が。あれが大事なんだよ。

湯浅 おそらく三味線の弦鳴りみたいのものなんだよ。しゃべる前にアタックの音がある。たとえば、「か」だと、普通は「Ka」と発音するだけなんだけど、勝さんの場合は「K」の前に音がいっぱいある。「か」の原型みたいな音を、いちいち言葉の頭にもお尻にもどんどん付けていく。母音の中にまた母音があるような構造。それでセリフの中に音がいっぱい入ってくるからさ、舞台がどんどんどんどん延びちゃう(笑)。

根本 勝新太郎はそういう形で完成されていこうとしていたんだよ。

湯浅 入院する2年前ぐらいだっけ。「『不知火検校』(60)をもう1回映画にするから、アイデア出せ」って呼ばれて行ったんだけど。勝さんは脳の中にあるイメージを画像化する研究所へ何回か行ってて。「それを映画に使いたい」っておっしゃってた。そういう素粒子みたいな世界にもう入ってたんだよね。

根本 だから、「この空気の中に電気菩薩みたいなのがいるんだよ」(根本敬著『電気菩薩 豚小屋発 犬小屋行きの因果宇宙オデッセイム)って発言も出てくるんだよ(笑)。


(引用終了)


ブルース・リーよりも前に海を渡ったアジア発の最初のヒーロー「座頭市」その魅力にとりつかれた人はワールドワイドなためか、本書の文章は、すべて英語が併記されているので、楽しい英語学習本としての価値も高いのですが、

勝新は、一度その味を知ってしまったら、もうそれなしでは生きられないような劇薬なので、服用には充分にご注意ください。

すでに依存症であるわたしは、今、勝新の音楽ものが欲しくてたまらず、あちこち徘徊してしまいそうです。


◎[Amazon]勝新図鑑―絵になる男・勝新太郎のすべて


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◎[関連記事??]【悲報】ワンピース休載の原因はやはり勝新だった


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by yomodalite | 2013-05-21 09:47 | 現代文化・音楽・訳詞 | Trackback | Comments(0)

ポップ中毒者の手記(約10年分)河出文庫/川勝正幸

ポップ中毒者の手記(約10年分) (河出文庫)

川勝正幸/河出書房新社



3ヶ月前に On Sundays で購入して、寝る前にときどき思い出しては、ほんの少しづつ読んでいた本。

私は、川勝氏が活躍した雑誌を熱心に読んでいたわけでもなく、特別に興味をもっていたわけでもありませんが、2012年に氏が亡くなったとき「雑誌は死んだ」と思いました。もちろん、まだ多くの雑誌が刊行されてはいますが、川勝氏のように、自らの魂を燃え尽くすような仕事をし、その時代の文化に大きな影響を与えられるような「雑誌の時代」は終わったのではないでしょうか。

それと同じように、

野沢尚氏が亡くなったときに、TVドラマは死を迎え、
マイケル・ジャクソンが亡くなったときに、音楽産業は死んだのだと思います。

それは見方を変えれば「業界に殺された」と言えるのかもしれません。

しかしながら、その業界に命を賭け、中心にいたようなひとの死に対し「誰かに殺された」というような被害者観で語られるのは、故人の名誉に相応しいとは思えません。

生きる場所は、それぞれが戦場で、その最前線で、大勢を引っ張っている人間に、
自らそこから去ることができるでしょうか。


1996年に出版された『ポップ中毒者の手記』が、2013年に文庫で再販されるというのは、同じ戦場にいた人々なら羨ましいような、素晴らしい供養のように思えます。

人生の勝利は、その長さでも、死に方でも、
もちろん裁判の結果などで左右されることではなく、

同じ戦場を生きた人々に遺したもので、決まるのではないでしょうか。


偉大なライター、川勝氏の10年分が詰まった本書は、サブカルチャーの目利きとして、大勢の素敵な人々が紹介されているだけでなく、それらすべての人々に愛情をもって接してこられたことが感じられ、どこを紹介しようか迷ってしまいますが、

自ら選んだベスト仕事40選に2回登場したデニス・ホッパー、そして勝新(川勝氏は『勝新図鑑 絵になる男・勝新太郎のすべて』という本も編集されている)も登場する「問題オヤジ研究」から、少しだけ。

(引用開始)

やはり、問題オヤジは問題オヤジを呼ぶ。1994年2月。ロジェ・バディム、勝新太郎、デニス・ホッパー。超ヘヴィ級の問題映画監督トリオが全員集合。ご存知、ゆうばりファンタの審査委員として呼ばれて、コカインの、もとい雪の降る町で意気投合。が、その後、東京で3人が密談していたことは公にされていない。

現代日本の、問題オヤジに対する認識の成熟

2月24日の朝。新聞を見てビックリー『フォーカス』(3月2日号)の広告の見出しに、「アブないオッサン、大集合!!映画祭審査委員の勝訴、ホッパー、ヴァディム」とあるではないか。僕は『ゆうばり国際冒険・ファンタスティック映画祭94』(以下ゆうばりファンタ)のヤング・ファンタスティック・グランプリ部門の審査委員として彼らが呼ばれていたことは事前に知っていたが、新潮社の大人向け雑誌にいきなり現われた「アブないオッサン、大集合!!」という切り口。現代日本の問題オヤジに対する認識の成熟ぶりにニンマリしたのであった。

記事自体もクスリとオンナの2点に的を絞った「分かってらっしゃる内容」で、まず、勝訴が開会式で「雪を見ると昔を思い出す。鼻いっぱい吸い込んで、ハイになっちゃう、ゆうばりはそんな気分にさせる……」とかましたら、ホッパーがその場で彼を抱擁したというエピソードを枕に、二人のヤク中対決話あって……。
 
さらにホッパーが5年前の初来日の時には30歳以下の四度目の妻と来たが、今回は25歳の女優の卵といっしょだったというフリの後で、ヴァディムの華麗なるラヴラヴ歴ーー19のブリジット・バルドーと結婚/離婚し、16のカトリーヌ・ドヌーブと出会い正式な結婚はしていないが子供がいて、27のジェーン・フォンダと結婚/離婚し、3人を自分の映画に出演させていい女に変身させ、現在は五度目の妻である女優のマリー=クリスティーヌ・バローと結婚中と紹介。二人のプレイボーイ度を比較するツボを押さえた問題オヤジ研究ぶりなのであった。
 
しかし、勝新とホッパーは名うての映画バカで、それゆえに地獄を見た男たち。ヴァディムも『バーバレラ』(67年)をはじめ、セックスやエロティシズムをポジティヴに描いた作品が多いのは、「ナチスによるフランス占領時代の体験の反動から生まれた、社会や人間のダーク・サイドを映画に持ち込まない姿勢によるものだ」と自らコメントしている男である。夕張シティの雪に閉ざされた5DAYSで、3人は映画、そして人生についてディープな話をバリバリしていたのではないだろうか。

地獄を見た2人は、エンターテインメント派

という次第で、「ゆうばりファンタ」のチーフ・プロデューサー小松沢陽一さんに、ご当地でのトリオの様子を伺った。

ーーそもそも、なぜこの濃ゆい3人が審査員に?! 狙い、だったんですか(笑)。

小松沢 はじめは座頭市対スーパーマン(笑)というコンセプトだったの。ところが、クリストファー・リーヴが急にNGになって、ホッパーになったという。

ーーひょうたんから夕張メロン、ですね。

小松沢(笑)結果オーライ。ゆうばりファンタは若い才能を発見する場なんだけど、5周年目なんで、ヴァディムや勝さんといった娯楽映画の大先輩を迎えて、敬意を表したかったんです。勝さんに審査委員のお願いに行ったら、いきなり「俺が審査委員長か」と言われて冷や汗をかきましたが(笑)。『レザボア・ドッグス』が賞(93年ヤング・ファンタスティック・グランプリ部門批評家賞)を取った映画祭というので、即ノー・ギャラで出席を快諾してくれたのがうれしかったな。

ーー勝さんが、クエンティン・タランティーノのファン?!

小松沢 そう。ホッパーがゆうばり行きを決めたのもタランティーノが電話でプッシュしたせいだし。

ーー奴は勧誘員なのか(笑)。

小松沢 「自主的」なね(笑)。

ーーやはり、審査会はモメましたか?・

小松沢 それが、勝さんとホッパーの地獄を見て今は丸くなった二人組はエンターテインメント系を押すんだ。ところが、これから上り調子のホウ・シャオシェン(『悲憤城市』などで有名な台湾の映画監督)はアヴァンギャルドな映画のほうを評価する。この違いが面白かったなあ。

ーーええ話や(笑)。ところで、川島なお美が自分のヌード写真集を配った話は?

小松沢 ホッパーは恋人の前で「ナイスバディ」と感想を言ってツネられてたよ。

オヤジ・ギャグの応酬で、東京の夜は更けて

さて、2月23日。ゴキゲンで北海道から帰って来たホッパーと僕たちは浅草の米久でスキヤキを食べた。「僕たち」というのは、89年、デニス・ホッパーの映画祭を手作りした同志たちのことである。そこで披から衝撃の事実を知らされた。なんと「明日、ミスター勝からディナーに招待されている」というではないか! もちろん、[ヴァディムさんも一緒に」だ。

嗚呼、3人のプライヴェートな会話が聴けるなら、死んでもいい〜。
 
僕は勝さんが一席設けた飯倉の老舗のイタリア・レストランCに盗聴マイクを仕掛けようかと思ったが、幸いなことに同志・谷川健司君(映画ジャーナリスト)が通訳として同席するというので『ラジオライフ』のページを閉じることにした。
 
以下、私的な集まりでのことを活字化するのは失礼なこととは知りつつ、ホッパー自身も帰りの成田で「むっちゃ楽しかったで」と言っていたし、問題オヤジ研究史上、いや映画史上またとない場における貴重な会話ということで、ここに公にすることを笑って許していただきたい。

ーーまず、今世紀に二度とない惑星直列ばりの現場にいた感想からお願いします。

谷川 とにかく、勝さんの気配りに感勤しました。まず、ラス・ヴェガスでの英語の失敗談でみんなを和ますんですよ。「ディーラーの女性が『アー・ユー・レディ?』と言ったんで、俺は『アイム・ジェントルマン』と言った」とか(笑)。

ーー(笑)二人とも黙ってないでしょう。

谷川 そう。いつしか筆下ろしの話になってね。ヴァディムが「俺は16の時に浜辺の小屋で年上の女性に童貞を切ってもらったんだ。ところが、射精した後に、地震が起こって。こりゃ、神様が怒っているとビビって、ドアを開けたら、戦車がドカドカやって来る。ノルマンディー上陸の日だったんだ」と口火を切って。

ーーう〜ん。相当、練られた話ですなあ。

谷川 そしたら、勝さんが「俺は14の時かな。日光でことが終わったら、いつの問にか太平洋戦争も終わってた」って返して。ヴァディムがデニスを「お前は俺だちより若いから戦争中は毛が生えてなかったろう」とからかったら、「いや、俺は6歳の時に……」 って言いかけて。

ーー「コラコラ」となった、と。ヴァディムが66、勝さんが63、ホッパーが58ですからね。それにデニスはヴァディムに頭が上がらない。ヴァディムがホッパーとマブダチの、ピーター・フォンダのお姉さんと結婚してたわけだから。

谷川 デニスはヴァディムとジェーンの秘密にやった結婚式に出席してたんですよ。

ーージェームス・ディーンの話は出た?

谷川 うん。勝さんが「長唄の公演でアメリカに行った時、ロスの撮影スタジオでディーンに会ったのが、俳優になろうと思ったきっかけだった」とおっしゃってた。となると、『理由なき反抗』の時だから……。

ーーホッパーとすれ違っていたかもしれない。55年の話だから、勝さんが24、デニスが19だね。

谷川 それで、ホッパーが「先日、ワーナーのスタジオの近くに行く用事があったんで、『理由なき反抗』の頃にたむろしていたカフェをのぞいたら、昔のままでね。ディーンもナタリー・ウッドもサル・ミネオも死んで、生き残ったのは俺だけだとしみじみしたって、話をして。
 
ーー再び、ええ話や(泣)。この3人が出会えてよかった。ちなみに、デニスに勝さんが監督した『座頭市』(89年)のヴィデオを渡したので、次回、会った時はさらにツッコんだ話ができるはず。そして、勝新太郎とデニス・ホッパーの共演を妄想する僕であった。(P283ー289)


1990年、デニス・ホッパーの自宅の訪問記「崖っぷちを踊る男」の最後、川勝氏が、ホッパーの親切に平身低頭してお礼を言うと、ホッパーが、

「日本で君たちにしてもらったことは… 返そうとしても返しようのない体験だった。あんなによくしてもらったことは生涯初めてだった。マサ(川勝氏のこと)。君の世話はAMAGINGだったよ」

僕はうれしかったが、半面、困った。日本での恩返しをここで独り占めしたら、他の同志たちに嫉妬で殺されるに決まっている! 居心地が悪いのでフォローに出た。

「僕はたまたまフリーで時間の都合がつくので、会計係としてお供し、英語ができないので荷物運びをやって目立っただけです。あなたのお礼を、日本のスタッフみんなや、舞台挨拶を観るために劇場前に長い長い行列をつくってくれたファンの人たちに、どうして伝えようかと悩んでいます」

「君はNOTHING SELFISHだ。ブッダみたいな男だ」

まいった。泣いてしまった。ブッダマンとまで言われちゃ、もう取材どころではない。(P271)

書き起していて、私も泣きました。。

◎[参考記事]町山智浩が涙して語る『故・川勝正幸ってどんな人?』

本書の目次

まえがき
日本語のアカすり職人たち
街と人が音楽を作る
世界同時渋谷化
リメイク・リモデル、または若いのに巧い人々
パリのアメリカかぶれ
趣味の良いバッド・テイスト
問題オヤジ研究
臭いモノのフタを取る人
文科系男の性的ファンタジー
音楽極道のシノギ
ロック少年の老後
謝辞
インタヴュー:小泉今日子
著者略歴改め「川勝仕事ベスト40」(自選)
インデックス

◎[Amazon]ポップ中毒者の手記(約10年分)河出文庫


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by yomodalite | 2013-05-15 10:35 | 現代文化・音楽・訳詞 | Trackback | Comments(0)

Michael Peck、Durutti Column…

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http://www.michaelpeckart.com/#/2010-this-may-hurt-gallery/


映画『ムーンウォーカー』や、バッドツアーにも同行したカメラマンで、彼へのマイケル直筆の手紙が、ジュリアン・オークションにも出品された William Pecchi Jr(Bill Pecchi)、通称Pecky。

◎http://www.juliensauctions.com/
◎http://www.lipstickalley.com/

で、そんな彼とはまったく関係ないのだけど、彼のことを調べているときに偶然見つけてしまった、Michael Peckさんの絵が素敵だったので。


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http://www.michaelpeckart.com/#/2011-gallery/


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http://www.michaelpeckart.com/#/2011-gallery/



◎http://www.michaelpeckart.com
◎http://michaelpeck.tumblr.com


今日の音楽は、Peckさんの絵を見ていたら聴きたくなったドゥルッティ・コラム
The Durutti Column - "Never Know"






☆Marvin Gaye の “What's Going On” がサンプリングされています
The Durutti Column - "Brother"






☆イアン・カーティス(ジョイ・ディビジョン)へのレクイエムと言われている曲
The Durutti Column - "Lips That Would Kiss"






"Lips That Would Kiss" は、T.S.エリオットの "The Hollow Men” の一節で、
あの『地獄の黙示録』で、ブランド扮するカーツが朗読していた詩…




それで、

『地獄の黙示録』や『闇の奥』に集中していたときに散々苦しめられた "The Hollow Men” を、この際なので訳してみるかと勢いづいてしまったのだけど、、

何時間も苦しんだ末にあきらめた。

"Lips That Would Kiss" が登場するのは第三節なので、とりあえず、その部分だけでも。。

III

This is the dead land
This is cactus land
Here the stone images
Are raised, here they receive
The supplication of a dead man's hand
Under the twinkle of a fading star.

Is it like this
In death's other kingdom
Waking alone
At the hour when we are
Trembling with tenderness
Lips that would kiss
Form prayers to broken stone.


とも思ったけど、
やっぱり、それも諦めた(ハァハァ、ゼイゼイ。。)

今日のところは。。

追記:その後、無事訳しました!

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by yomodalite | 2013-05-10 08:40 | 日常と写真 | Trackback | Comments(0)

「勝新太郎日和」SWITCH July 1995 Vol.13

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今回の引越しをきっかけに、資料関係の整理もしまくった。雑誌に関しては、書籍よりも迷うことが多くて、この部分だけ切り抜いておくべきかと迷ったり、残しておいた目的が文章ではない場合が多いので、目次からは判断できないことも多い。

1995年7月の『SWITCH』は、ハーヴェイ・カイテルが表紙の地味さから、中身を見ずに処分しかけたのだけど、ペラペラしてみたら、日本一カッコいい写真家・操上和美氏による「勝新」が現れて驚いた。

また、インタヴュアーは秋元康。彼が勝新を天才として語っていたエピソードはこのときのことだったんですね。

当時読んだ記憶はなかったのですが、今になって発見できるなんて、
これも「偶然完全」なんでしょうか。。



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(インタヴューは抜粋して引用しています)

俺は監督をやりだしてからものの見方が違ってきた。例えば、役だけを演じる場合は、自分と違う人生経験をしている監督の演出の目で、俺がキャメラに撮られていく。監督としてキャメラを覗く立場になってからは、自分が芝居していてもその自分をもう一人の自分の目で撒っている。と同時に、自分を自分の目で演出すると、偶然の芝居ってできないんだよ。みんな知ってるから。だからラッシユ見ててもつまんない。みんなわかっちゃってるから。

そういう意味では勝新太郎という監督も、勝新太郎という役者も不幸だ。いっぺんドキュメンタリー手法で勝新太郎の映画を撮ってみたい。いつ、偶然完全の間だとか、いつ偶然完全の失敗だとかが出るか、わからないだろ。ラッシュ見るとき、きっと面白い偶然完全がフィルムの中に納まっていくんじゃないかと思う。


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監督は役者にインタビューしなくては駄目だ。「こういうことになってきたけど君ならどうする」というインタビューをして、俳優、女優たちの個性を引き出していく。芝居の上手下手は二の次だ。俳優の捨て台詞を言っているところの表情を丁寧に撮らなくちゃいけない。テーマの台詞を、さりげなく捨て台詞のように撮らなくちゃいけない。映画ってえのは、誤解する演技をカットバックに使ったら、とってもいい効果が生まれる時があるんだよね。例えば、ポルノフィルムを見せてそれぞれの表情を映しておく。それをカットバックに使うんだが、実際は見るに堪えない、人間が人間を殺しているシーンとか。


北海道でデニス・ホッパーに会った時、俺が雪を見て「好きなだけ侍ってけよ」って目で言ったら、彼も雪を見て「サンキュー」って目で答えてくれた。言葉でなく目で話し合えることは嬉しいね。


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この間テレビ見てたら、100幾つのおじいさんが、「もう〜」という言葉を使う人が多いという話をしていた。「幾つですか」と凪ねると「もう70です」とね。彼は「まだ、100歳です」と答える。「もう」っていうのは牛の返事だ。そのおじいさんが喋る言葉というのは、今の渋谷、六本木の連中が喋ってる言葉じゃない。江戸時代の言葉なんだよね。


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今ちょっと作りたい作品は、偽物の勝新太郎の話。もしかしたら、ここに来てるのも偽物かもしれないっていう話さ。人の言うことに異を唱えない、使いやすい勝新太郎。その偽物の勝新太郎が売れていく話さ。本物の勝太郎が一日5万円もらうか、10万円もらうかわからないけど、場末の見せ物小屋や、旅館のショーなんかに出て物真似をする「偽物」として生きていく。

島倉千代子や三船敏郎、錦之助、高倉健の偽物が集まっている一座なんだ。で、その偽物連中に言われるんだ、「似てないね、勝新に」って。


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こんなストーリーも浮かんでるんだ。俺が東京から九州までカンガルーを運ばなくちやいけないって話。カンガルーをどうしても連れて行かなくてはいけないんだよ。それも人間扱いして。

そのカンガルーのお腹に国連が関与している大事な物が入ってるんだよ。それを知らずに俺はカンガルーを連れて九州まで行かなくてはいけない。しかも新幹線で。
 
で、カンガルーが何だか知らないけど、俺のこと好きになっちやってね。何かというと、俺をこう見つめてね。嫌なんだよ俺は、カンガルーが。そういうような企画もあるんだ。

飯田橋の警察病院で、頭から背広を掛けられ両手にタオルを掛けられて手錠を隠しエレベーターに乗って降りたところで、俺は背広とタオルを振り落として一般の患者の待合所を花道の出のように歩いていった。患者たちは、勝新だ、勝新だって騒いで嬉しそうに俺を見ている。手錠姿で歩いているところを一般の人たちに見せることしか、今の俺には楽しませることはできないんだから。その夜、俺は逮捕された。理由は病院の検査の結果、「お前の体が悪いからだ」。ああ、これは面白い台詞だな。おかげで今、こうして元気でいられるんだ。俺の人生経験で損をしたってことは、一回もない。


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黒澤さんのおかげで日本映画は世界にしらしめることができた。俺は尊敬してた。してた故に、本当にがっかりしちゃった。「俺はお前に負けないぞ、俺の作品だ」という態度が嫌になった。自分の演出のいいところを見せたいって言うんだけども、俺は武田信玄やってんだから。武田信玄と黒澤じゃあ、格が違うんだからさ。
 
俺ねえ、今だったらいい男に撮ってほしいの。女の人も俺も綺麗に撮ってもらいたい。今度やる映画はまさにそうであってほしいね。二人の勝新太郎のも。構想はすっかり練れてるんだよ、警視庁のシーンも拘置所に住んでた時の場面も。あの部屋に入ってくる風。拘置所のコックのおかげで俺の体は健康なんだ。

あっ、そうそう、看守でさ、俺のファンがいたんだよ。周りに人がいる時は、「コラーッ!坐ってろ、ここは楽をするところじゃないっ」って怒鳴ってた男が人がいなくなったら急に「すいません、今人がいたもんですから。あの、私、勝さんのファンで。ハッパなんて皆やってますよねえ」なんてさ。あいつに俺、祝儀やりたいんだよ。あの看守どうしたよ。探しといた? 探してない? お前、俺の言ったこと何もやってねえじゃねえか。あいつに祝儀上げたいんだよ。

(インタヴュー終了)

この上の写真で、手にしている煙草は「キャスター・マイルド」...

勝新も、渋澤龍彦、立川談志、そして清志郎も、咽頭がんで亡くなっているんだなぁ。喫煙してなければ・・・なんていいたいんじゃなくて、健康とか長生きを目的に生きてカッコいいわけないってこと。


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by yomodalite | 2013-05-08 19:31 | 評論・インタヴュー | Trackback | Comments(3)

わたくしごと(2013.5.1)大阪初日

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GWを満喫している人も、別に何も変わらないという人もおられると思いますが、、
私はついに大阪生活が始まりました!

写真は、最初の夜(4月29日)を過ごしたウエスティンホテルの窓から。

窓から見える夜景に、部屋が映り込んでいるのがキレイだったので。。

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by yomodalite | 2013-05-01 18:43 | 日常 | Trackback | Comments(9)

旧「読書日記と着物あれこれ」。歴史/文学/お笑いを好み、着物生活をしていたはずが、いつしかマイケルジャクソンのように本を読もうになってしまったブログ。永年暮らした東京を離れ、現在は大阪を満喫中。


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