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名古屋と金シャチ/井上章一

こんな本を読んでしまうのもわたしが名古屋育ちだから。。。
陽の光が金シャチの光とともに届けられる、名城公園まで徒歩数分というような地域に住んでいて、城にも金シャチにもうんざりだった住人時代ですが、名古屋三大ブス説を覆した井上章一氏なら今までにない名古屋文化論が期待できるかもしれません。


第一章 世界のなかの名古屋のシャチ
「イタリアにも、シャチホコはいる。」 ヴェネチアングラスの工芸品、ローマのバルベリー二広場のトリトンの泉。。。空想のイルカはシャチとそっくりだという発見から、シャチの由来を探る。

第二章 シャチの都を取材して
名古屋取材。市役所のバッジ、交通局のマスコット、サッカーチーム「グランパスエイト」(グランパスとはシャチのこと)、市職員機関誌「シャチ」、遊覧船「金鯱号」、陸上自衛隊第十師団のマーク、名古屋牛乳のシャチ印、「シャチボン」(シャチの形のシュークリーム)、名古屋に溢れるシャチと、そのキャラクターの変遷。

第三章 シャチの背後に歴史を読む
金シャチは、尾張徳川家の威光を人民に見せつけていた。黄金の輝きを日常的に見せつけられていた人民の欲望は1782年に上演されていた芝居『けいせい黄金の鯱』にも表れていた。。。

第四章 金シャチ美人
かつて一世風靡した「名古屋美人」は、なぜ「日本三大ブス」の産地へと変遷したのか、ミス名古屋からその謎を解く。

著者は、執拗に名古屋城の金のシャチホコが持つ名古屋での意味と価値について、歴史を遡り、周縁を探っていく。第4章の「名古屋芸者」の話は、『日本の女が好きである。』でも書かれていた話の更に詳細な記述で、著者の本により初めて聞く話でしたが、全体を通して、名古屋人気質や名古屋文化論ついて語られている部分が少なく、浅薄な名古屋文化論を覆すような視点がないのが、すこし残念。

金シャチに興味がある奇特な方へ
★★★☆

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【MARCデータベース】名古屋は街中、シャチだらけ。シャチを愛好する市民感情は、どのようにしてはぐくまれたのか。その都市論的な背景をさぐり、名古屋という街の文化史をうきぼりにする。ファンシー革命、美人説…鯱都の謎を解き明かす。 NTT出版 (2005/02)





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by yomodalite | 2009-06-30 22:47 | 歴史・文化:美術 | Trackback | Comments(0)

売国者たちの末路/副島隆彦、植草一秀

売国者たちの末路

副島 隆彦,植草 一秀/祥伝社



ここ数年、流行語大賞も、今年を表す漢字も「売国」でいいんじゃないかと思うほど大流行なんですが、

中でも、「キング・オブ・売国」竹中平蔵氏と、小泉純一郎氏が行なった数々の売国行為と、売国者によって、犯罪者に貶められた優秀な経済学者で愛国者の植草一秀氏の真実が一冊によくまとめられています。

副島氏の弟子で、『ジャパンハンドラーズ』の著者でもある中田安彦氏は本の内容は大きく3つに分かれ、

現在アメリカを襲い世界に波及している、アメリカ初の世界金融恐慌についての分析と、

有力エコノミストである植草一秀氏に痴漢の罪をでっち上げて、「破廉恥(はれんち)罪」というレッテルを貼り、拘置所に閉じこめ、社会的に抹殺しようとした、「国家権力の手先」との熾烈な戦いの記録。

そして、エコノミスト植草一秀の目から見た、「流行の経済思想の流通業者・竹中平蔵」の分析、解説であり、この3番目の部分こそが一番の読みどころと評しておられます。

植草氏は、かつて大蔵省での同僚でもあり、若い頃の竹中氏の姿を間近に目撃していて、竹中氏の経済学者としての変節も、大臣として登りつめていった過程も、よく知っている。また、「かんぽの宿」のオリックス(宮内義彦会長)への安値払い下げ問題にも深く触れられているので、全国納税者の必読の書と言っていいでしょう。

アマゾンレヴューでも発売後一週間未満で20件以上のレヴュー、ランキングでも政治経済部門で1位、一般書部門でもベストテン入りとよく売れているようなので、未読の方は選挙までにお買い求めになられますように。

売国者も、末路と聞けば、哀れにも思え、溺れる者に石をぶつけるのもどうかと思えてしまいますが、被害者の植草氏は、6月27日に、最高裁は上告を棄却を決定し、近く収監が決まってしまいました。

今度の総選挙では、この決定をだした最高裁判所判事の近藤崇晴(こんどうたかはる)に、国民審査で×をつけるのもお忘れなく。

★追加更新
那須弘平(なすこうへい)←この名前も憶えておこう!


「佐藤優元分析官の有罪確定へ=猶予付き懲役2年6月−外務省背任事件・最高裁 」
2009年7月1日 17時9分  時事通信


国際会議への派遣費用を外務省の関連機関に不正支出させたなどとして、背任と偽計業務妨害の罪に問われた同省元主任分析官佐藤優被告(49)=休職中=について、最高裁第3小法廷(那須弘平、なすこうへい 裁判長)は6月30日付で、被告側上告を棄却する決定をした。懲役2年6月、執行猶予4年とした一、二審判決が確定する。

植草一秀の知られざる真実
http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/

日本電子新聞社「『売国者たちの末路』を読んで、選挙に備えるべし」
http://www.qualitysaitama.com/?p=2640

___________

【内容紹介】リーマン・ショックを的中させた副島隆彦氏と植草一秀氏の対面が実現。国民を不幸にする国家権力に対して「共闘宣言」を叩きつける。
植草氏は1990年代、日本を代表するエコノミストとして華々しく活躍していた。しかし2001年4月の小泉純一郎政権誕生後、その経済政策(すなわち竹中平蔵氏主導の『構造改革』路線)に異を唱えつづけたところ2度にわたって「痴漢事件」の犯人となり、公的な職を失った。2004年の事件は罰金刑が確定したが、2006年の事件は最高裁で係争中である。現在はブログで政治・経済分析を中心とする言論を発信している。
副島氏は早くから「植草氏は冤罪。売国者・小泉=竹中政治の謀略に嵌められた」と指摘。同時に植草氏の言論活動を高く評価してきた。
両氏が相見える本書では、小泉=竹中政策の糾弾はもとより、民主党・小沢一郎代表への国策捜査、「かんぽの宿」問題に象徴される郵政民営化の闇、世界金融危機の行方まで、新聞やテレビでは触れることのできない「真実の言論」を展開する。
祥伝社 (2009/6/23)



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by yomodalite | 2009-06-28 23:51 | 政治・外交 | Trackback | Comments(4)

徹底抗戦/堀江貴文

読みたい本が手に入らない。そんな活字ギレ症状から、こんな本も。

読書前から、堀江氏は本当に気の毒だと思っていましたし、日本の司法の怖さは、刑事事件での数々の冤罪疑惑、鈴木宗男、佐藤優両氏の逮捕長期勾留、植草一秀の痴漢逮捕、小沢秘書の逮捕。。などから痛感し、最近特に司法権の乱用が目立っていると感じていました。

本書で堀江氏が主張しているように、宮内氏主導の犯罪を社長である堀江氏になすりつけることも、検察の筋書き通りなら、宮内元副社長の横領容疑を起訴しない、というやり方に「徹底抗戦」するのは困難を極めるでしょう。

司法の主人が日本国民ではないということの実例は古くは「ロッキード事件」が思い出されますが、ロッキード事件の不可思議さに気付かされたのは、事件後かなりの時間が必要でしたが、最近では、一時集中的に報道するものの、司法の正しさが信じられている期間は短く、一年後には逮捕容疑者による出版本が売れて容疑者への支持が集まる、ということも、もう慣例になっているような気がしますが、片棒を担いで一斉報道したマスコミも、一向に反省もしなければ、検察批判をすることもありませんね。

検察の横暴は重要な問題ですけど、ホリエモンのこの本は、「国策捜査」の名を知らしめた『国家の罠』のようなパワーを秘めた著作とは異なり、堀江氏が自ら分析したように、

「露悪趣味があるから、言葉を省略し過ぎるし、同時に自分が善玉に見られることのむず痒さがあって、ぶっきらぼうに思われる発言をたくさんした。その結果、モラルのない人間の代表と見られるようになった」

という逮捕前までのホリエモン節とあまり変わらない、ITにも、金融にもまったく興味がない“ヤンキー”にすら、届く可能性のある軽い本。本当にお気の毒な境遇にあることは間違いないのですけど、あまり同情も、支持する気持ちも湧いてこないのは、人徳でしょうか。

ただ、この人は服役中に読書三昧の生活をおくるうちに、ものすごく化けて帰ってきそうだな〜という期待は少ししてます。(無責任すぎるんとちゃう?自分)

★★★(ガンバレ!ほりえもん。君はまだ若い)

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【内容紹介】2年前に“国策捜査”で逮捕・起訴され、現在、最高裁に上告中の元ライブドア社長・堀江貴文氏。
数年前、日本を騒がせた「ホリエモン旋風」と「ライブドア事件」について、マスコミ報道は山のようにあったが、堀江氏から見えていた風景はまったく違うものだった。それを自ら書き下ろすことで、「ホリエモンとライブドアの真実」を明らかにし、堀江氏逮捕がいかにおかしな、検察の暴走・横暴によるものだったかを明らかにする。

近鉄買収、ニッポン放送・フジサンケイグループ買収、総選挙出馬、国策捜査・逮捕、仲間たちの裏切り、拘置所での暮らし、裁判、有罪判決、そしてこれからの夢…。特に堀江氏が東京地検特捜部に逮捕され有罪判決を受けた点は、今の検察・裁判所がいかに腐った危うい組織であるかを浮かび上がらせる。と同時に、生意気でふてぶてしい青年という印象だった堀江氏が、実はけっこう真っ直ぐでエネルギー溢れてていいヤツだったとか、ライブドア事件は山のように報道されたが、実はその真相は全然伝わっていなかったということもわかる。 集英社 (2009/3/5)





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by yomodalite | 2009-06-26 15:44 | 裁判・法律・犯罪 | Trackback | Comments(0)

グラン・シャレ 夢の刻/節子・クロソフスカ・ド・ローラ

グラン・シャレ夢の刻

節子・クロソフスカ・ド ローラ/世界文化社



グラン・シャレの庭でくつろぐ節子氏の美しいお姿が表紙になっていますが、扉を開けば、他では観られないような美しい着物を、小物まで完璧なコーディネートで着こなす節子氏が、山荘の見事な内部や自然を背景に薔薇のような笑顔に彩られた写真が一杯。

かつて文豪ヴィクトル・ユゴーが愛したスイスの歴史的山荘「グラン・シャレ」。1977年から、画家バルテュスとともに移住した節子氏のグラン・シャレ生活は、雑誌『家庭画報』『和楽』などに連載されていたことからも想像できるように、腕のいいカメラマンによる写真が満載で2500円はたいへんリーズナブル。

スイスの山に囲まれた自然豊かな環境で、乗馬を楽しみ、庭の花の手入れや、毎日のティータイム、わたしたち庶民には味わえないような優雅な生活ではありますが、その生活の豊かさは、世界各国から集められた品々からだけでなく、お茶やジャム、鉛筆立て、レターペーパーケース、書誌の袋、娘のための絵草紙、指人形にまで、手のこんだ手作り品に溢れていて、日本のきものに見られる、ものを大事に使う精神にも感動させられます。

名家に生まれ、若くして成功した画家で貴族の夫と結婚し、何不自由ない美人の生活には、通常あまり興味を持たないのですが、日経新聞「わたしの履歴書」にありがちな、どうしても「自慢」してしまうという文章が見当たらないのは、やっぱり「人徳」としか言いようがないです。心の贅肉が感じられない本当に美しい方です。

着物が好きで、うっとりしたい人は是非。

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【BOOKデータベース】“上の郷”(ペイ・ダン・オー)と呼ばれる山あいの村ロシニエールにはスイスで最も大きな木造建築物グラン・シャレがあります。そこは“二十世紀最後の巨匠”といわれた画家バルテュスの終の住処となりました。夫亡き後も、節子夫人は自然をこよなく愛し、和の心を慈しみ西洋と東洋の美しい融合の暮らしを続けています。バルテュスと過ごしたその宝石のような時間、“夢の刻”を綴った珠玉のエッセイ集。

【MARCデータベース】20世紀最後の巨匠バルテュス夫人のフォトエッセイ。巨匠バルテュスと愛しんだ和の心、そしてスイス山荘で紡ぐ日々の暮らしを綴る。『家庭画報』連載をまとめる。 世界文化社 (2005/05)



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by yomodalite | 2009-06-25 13:28 | きもの | Trackback | Comments(0)

きものでわくわく/大橋歩

図書館でお目当ての本がなかったのに加え、活字中毒者にありがちな活字ぎれの症状が。。。『きもの〜』と書いてある本なら、どれでもイイ!そんな状態で手に取りましたって、ホント著者に失礼だなぁ〜。

大橋歩コレクションは大体10冊ほどあるみたいで、本書以外も『ゆかたでわくわく』など、きもの関連本が3冊ほどあるようです。流石は平凡パンチ創刊号(1964)の表紙からずっと売れっ子イラストレーターだった著者。現在は69歳ですが、こちらは2005年に出版されているもの。

新書の左右を1センチほど拡げたぐらいのサイズで厚さは8ミリほど。これで1200円高!という印象ですが、カラーページが多いからなんですね。

日本の雑誌文化が一番華開いた時代に永く活躍されているクリエーターのきもの生活に興味があったのですが、どこをとっても初心者向けのキモノ本の平均値で、しかも情報に関しては、「私が着物を時々買っている、センスのよい着物を置いている呉服屋さんに。。。。」など、お店の名前は一切出てこないし、コーディネート写真にも、店情報も、着物の名前もなし。大橋さんの感性はあまり表現されていませんが、腕力は感じられます。

マナーやルールに関する話も、ごく一般的なものを踏襲されていて、大橋さん独自の工夫とかアイデアなどもなく、記憶に残る点が見当たりません。

大橋歩さんのファンの人はこれで楽しめるのでしょうか?

★★☆
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【出版社 / 著者からの内容紹介】着物のおしゃれを楽しむための本です。着物を自分らしく着るためのアドバイスが満載。着物はどうやって手に入れるの、値段は、コーディネートは。それ以外にも柔らかい着物/夏の着物/帯で着る/着物の小物と下着など、役立つ情報がいっぱいです。マガジンハウス (2005/7/14)





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by yomodalite | 2009-06-25 10:43 | きもの | Trackback | Comments(0)

映画試写会『MWムウ』/主演:玉木浩、山田孝之 監督:岩本仁志

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1976年の手塚治虫の漫画が原作。
キャストは、原作の結城美知夫が→結城美智雄(玉木宏)、賀来巌が→賀来裕太郎(山田孝之)という変更があるものの、二人ともイメージぴったり。

玉木宏は、現在公開中の『真夏のオリオン』(観てません)の宣伝でTV出演時に、役柄に合わせて痩せたと言っていたのが、潜水艦の船長でなぜ?と納得できなかったのだけど、本当は、この映画の為だったのね。というぐらい役柄に合ってます。

原作は、手塚最大の禁断の作品などと言われていますが、残念ながら33年後の映画では、その禁断度は相当目減りしています。主役のお二人は原作以上にその物語を表現できそうなんですけどね。

映画自体は、退屈するようなところはなく、ほどほどに楽しめる仕上がり。時間を無駄にしている箇所はないので、2時間でまとめると、これで精一杯というところでしょうか。
地下鉄サリン事件は1995年ですし、手塚の先見性を33年間も放置して「現在」という意味は、全く感じられない作品ではありますが。

他キャストで、石田ゆり子がこんなに下手だったかなという気がするのと、石橋凌がものすごく浮腫んでいたのはショックでした。

★★★☆
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映画『MW』公式サイト
http://mw.gyao.jp/

電子貸本Renta! - MW【全3巻】
http://renta.papy.co.jp/renta/sc/frm/item/489/





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by yomodalite | 2009-06-24 14:52 | 映画・マンガ・TV | Trackback(1) | Comments(0)

橋本治という考え方ーWhat kind of fool am I/橋本治

橋本治という考え方 What kind of fool am I

橋本 治/朝日新聞出版

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2005年出版の『橋本治という行き方ーWHAT A WAY TO GO!』 と、似ていますが、こちらは同じ出版社からの2009年本。

『橋本治という行き方』は、9・11やイラク戦争、社会批評など、考えるテーマが、一般人にもヒントになりうるテーマを扱っていたのですが、本書は全編通して、橋本治以外は考えないテーマのオンパレード!

30代頃から、少年や青年、女性にすらその悩みを解き明かし、導いてきた橋本氏ですが、今の橋本氏はそこから遥か彼方の「小説」をめざして、しかしその小説を求めている人の少なさを諦めつつも、書かずにはいられない、そんなジレンマにも孤独にも耐えることにすっかり慣れた様子です。

橋本治という考え方をする橋本治氏への正統な評価は、現代日本では無理なのかもしれません。氏以上の論者をあとどれぐらい待てばいいのか、日本一孤高の人という称号は橋本氏の死後100年は軽く守られそうな気さえします。

今まで先生だと思っていた人が徐々につまらなくなってきたり、才能が尽きてしまったと感じることは、こちらの年齢が上がるとともに訪れることですけど、橋本治氏に限っては、生涯そんな時期が訪れないでしょう。

これから小説や文学論を書こうと思っている人に(書けなくなる恐れはありますが。。)

____________

【内容紹介】橋本治による小説の書き方、考え方をめぐる本格エッセイ集。「風景」「世界観」「読書」から「近代文学」まで、橋本治にとって小説とは何か? 行き詰まりつつある現代小説において、小説を考えるための新たな土台を、自らの来歴や実感から指し示す小論集。

【BOOKデータベース】
小説のあり方を少し考えた。ドラマは「風景」の中にある。アンゲロプロス、小津安二郎の映画に「風景」のドラマを見出し、二葉亭四迷、田山花袋、樋口一葉、谷崎潤一郎から小説家の内奥に潜むドラマを発見する。本をめぐる環境から、橋本流の創作術、近代文学成立の謎まで—小説をめぐる状況をラディカルに編みかえる本格的な文学エッセイ。朝日新聞出版 (2009/4/7)


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by yomodalite | 2009-06-24 12:24 | 評論・インタヴュー | Trackback | Comments(0)

『千羽鶴』主演:木暮実千代(監督:吉村公三郎)

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木暮実千代さん第二弾!

以前こちらで書いたのですけど、実千代さまの魅力的なお姿をなかなか捕らえきれられず不満だったので、再度の挑戦。

木暮実千代さんのことが気になって仕方ないのは、彼女が全盛期に、その魅力を本当に理解していた創作者が居なかったんじゃないかと思うからです。女優として大成功されているのですが、それでも「早過ぎた個性」だったんじゃないかと。。。



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ウィキペディアの出演映画作品中、1948年の黒澤明『酔いどれ天使』、1949年今井正『青い山脈』、1950年溝口健二『雪夫人絵図』、1951年吉村公三郎『源氏物語』、1952年小津安二郎『お茶漬けの味』を観ましたが、ヴァンプ役、芸者、十二単のコスチュームプレイも、ちゃぶ台も、やっぱり「木暮実千代」を捉えきれていないように思います。

木暮実千代は、当時はほとんどいない大学出身の女優で、女子学生といえばセーラー服の娘しかイメージできない時代にあって、娘にしては大人っぽく、顔の雰囲気は上流婦人なんだけど、それにしては、普段の態度がサバサバしていて男っぽい。進んでいる感じなんだけど、妖婦には上品過ぎる。キモノが似合うんだけど、江戸と繋がっているところがなくて、芸者でもない。。。

当時あっさりと、たった1人で、現代女性だった実千代さまは、男に頼ってもいないけど、特に1人で生きようとも思っていない。。。

プロフェッショナルな方なので、それぞれ評判のいい演技をされているのですが、作品と本人が一体となるような、女優「木暮実千代」のイメージを決定づける「形」にはなっていないように思います。それは、本人のキャラが時代が認知している役柄にないからだと思うんです。



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着物への興味から1940〜60年代の映画を観るようになったのですが、この頃の映画をものすごく大ざっぱに言うと、

これでもかというぐらい首元をつめた着物に、ヒステリックともいえる貞操観念の若い女と、帝大出身の男を中心に、脇役は男の場合は職人、女の場合は芸者や女将といった男社会で働く女で構成されています。着物の衿を抜いて着ているような女は、ネクタイを締めた男とは結婚できないというファッションのルールがものすごくハッキリしています。



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成功した男の妻になる女、妾になる女、馴染みの店を仕切る女や、家の中を仕切る女中から実母まで、1人の男に必要な女の数は、かなり多くて、1人の女の中に色々な顔が
あるとは考えないんですね。


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共演している杉村春子は元妾の役なんですが、杉村春子は、この時代、本当に様々な監督から必要とされていますが、どの監督からも同じような役を求められている。

それは一言で言うと、仕事をもった女の役で、そういう女は、きっと男の仕事を理解してくれるはず。という期待があるようです。

それがどのように反映されるかというと、

昔観て驚いた映画のひとつに、小津安二郎の『浮草』(1960)という作品があるのですが、そこでは、旅芸人の中村鴈治郎の妾が杉村春子で、本妻が京マチ子!



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杉村春子は確か小間物屋をやっていて、その息子は大学生(もしくは予備軍)になっている。京マチ子はキレイで一座の看板女優ですから、華もある美女なのに、徹底的に地味で、所帯染みた杉村春子の妾に嫉妬するという、今ならそれって、フェミニズム?と勘違いしてしまいそうですけど、そうではなくて、おそらくこれは当時の男の夢なんですね。



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逆に言うと、結婚すべきような女には、男の仕事を理解するなんてことは、あってはいけないというか、それは美人にはして欲しくない。現代からは想像つきませんが、杉村春子が男の夢の女であったのは、たぶん、そういうことだと思います。



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で、木暮実千代さんはと言えば、美人女優に違いないのですけど、着物は着物で、それが一番キレイに見える着方で着ていますし、洋装姿はもっと美しく、ファッションだけでなく、表情や、媚態も今見ても古びてないというか、時代的なところがなくて、むしろ今風。

よくある女優のプライドのようなところからも自由で、その後のテレビやCM出演(女優のCM第一号)など、映画全盛期以降の方が、生き生きと見えるのは、そのせいなのかもしれません。



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大女優には、名監督とのコンビというのがつきもので、田中絹代と溝口健二、原節子と小津安二郎、高峰秀子には松山善三、木下恵介、成瀬巳喜男、乙羽信子と新藤兼人、若尾文子と増村保造など、職場恋愛、結婚が多いのですけど、木暮実千代さんには、監督や共演者とも男女の仲になった気配が感じられないんですよね。

実際に彼女は女優になってから、従兄弟と結婚していて(コメント欄参照)、そんな所も女優としてはめずらしいのですが、有名になる前も後も変わっていないからなんじゃないでしょうか。



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とにかく型にはまっていないので、ウィキペディアにある「ヴァンプ女優として有名」いうのも、たまたま記述者が観た作品のイメージでしかなくて、木暮さんを撮った監督たちの様々な要求をこなし、美人女優としては、かなり幅の広い役柄を演じられています。



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この映画では、太田夫人と呼ばれる木暮実千代が、第一妾で、杉村春子が第二妾というか、、木暮実千代によって、杉村春子は永く努めた旦那から捨てられたという過去があり、木暮実千代の美しさと、杉村春子の怖さが爆発していて、この時代の映画としては、めずらしく退屈しないストーリー。



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純粋に愛に生きる太田夫人(木暮実千代)は、旦那の死を受け入れられず、その息子に面影を発見し、息子(森雅之)への愛に燃え上がる。それを放っておけないのは、かつて、太田夫人に男を取られ、現在は茶道の師範として生きる栗本ちか子(杉村春子)。捨てられた後も、現在はその息子が住む家に頻繁に出入りし、息子のお見合いをも画策する栗本には、太田夫人の息子への想いだけは絶対に許せないーー。

実千代さまの役柄は、古い女のタイプですけど当時の美しさがよく撮れています。木暮実千代さんに関しては、まだまだ追いかけたいと思います。


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『千羽鶴』goo映画
http://movie.goo.ne.jp/movies/PMVWKPD23567/

制作/1953年
監督/吉村公三郎
原作/川端康成
脚本/新藤兼人

《キャスト》
太田夫人:木暮実千代
太田文子:乙羽信子
栗本ちか子:杉村春子
三谷菊治:森雅之
三谷浩造:清水将夫
稲村ゆき子:木村三津子
婆やとよ:英百合子

【あらすじ】★ネタバレあり★(goo映画より)

三谷菊治は亡き父浩造の愛人、お茶の師匠ちか子の茶会で稲村ゆき子と見合いをしたが、席上、これも父の愛人の太田夫人とその娘文子に会った。童女のような心情の持主太田夫人は、忘れ得ぬ浩造の面かげを菊治に見出して、彼に傾く心をどうする事もできない。菊治を軽井沢の別荘に招いた一夜、ついにその胸へ身をなげた。太田夫人を憎むちか子はゆき子と菊治の仲を急速に進めることで、彼女を苦しめようとするが、若い二人の節度は崩れない。一方、ともすれば菊治の許へ走ろうとする母を押さえているのは、これも節度を知るけなげな娘文子だった。菊治は稲村家を訪問し、いよいよ縁談も定まりかけた矢先、ちか子の術策から惑乱に陥った太田夫人は、三谷家茶室での菊治との出会を最後に、毒をあおってしまった。一人残された文子に同情したゆき子は、菊治に彼女との結婚を勧め、自分は身を退いたが、その文子もまた、菊治への抑えに抑えた思慕を断って、さびしく去ってゆくのだった。

※1969年に増村×若尾コンビ20作目としてリメイク。脚本:新藤兼人 
出演:平幹二朗/若尾文子/京マチ子/船越英二/北林谷栄



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by yomodalite | 2009-06-22 19:37 | 美男・美女 | Trackback | Comments(8)

宇野千代きもの手帖ーお洒落しゃれても/宇野千代

宇野千代きもの手帖―お洒落しゃれても

宇野 千代/二見書房




おしゃれ大好き人間で、着物デザイナーでもある宇野千代氏。

本書は、氏の着物人生を、自ら創刊した、雑誌『スタイル』創刊時から現在(出版当時)までを網羅した本。着物の流行の話、様々なアイデア・工夫を生き生きと楽しげに語られていて、最後まで飽きずに読ませられるのですが、最終章の結びで、

「今年、私は97歳を迎えますが、こんな齢になっても、なお、きものを作ることが愉しいのです。自分の作ったきものどの一つを見ても、これは私にも着られる、と、そう思うのですから呆れたものではありませんか。」

本書は2004年に出版されていて、宇野氏が、高齢でありながら、つい最近までたいへんお元気で活躍されていたことも知っておりますが、それでも最後にこの文章を読んで驚かずにはいられませんでした。

茶道や着付け、老舗呉服店などの業界人には、様々なマナーやルールを、客に守らせることが仕事かのように振舞っている人が多いですよね。そんな伝統など、20〜30年にも満たず、自分の先生に教わっただけの、ほとんど業界の都合でしかないようなことばかりなのに、本当にエラそーに押し付けようとする人が多くて困ります。

巷のキモノ本にも、そのようなマナーとルールばっかりの本が溢れていて、著者と同様のセンスを学ぶことがポイントである本が多いのですが、本書は、著者のセンスやアイデアに興味がなくても、自分の中で色々アイデアが拡がるというか、キモノを着ることが益々愉しく感じられる本です。
______________

【出版社/著者からの内容紹介】小説家として活躍をしながら、精力的にきもののデザインを手がけ、ファッション雑誌「スタイル」「きもの読本」を刊行。さらに銀座に「きものの店」を出店と、生涯を「きもの」と関わり、そして「きもの」と生きた宇野千代の「きもの」「おしゃれ」にまつわる随筆集です。日本のファッション誌の先駆けとも言える「スタイル」誌、「きもの読本」の貴重な資料もふんだんに収録。 二見書房 (2004/10)



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by yomodalite | 2009-06-20 12:26 | きもの | Trackback | Comments(0)

日本の女が好きである。/井上章一

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17年前に『美人論』が評判になった著者ですが、私は本書がお初。本書は2008年出版。本家を見ていないのですが、多分こちらの方がずっと軽い読みもののようです。

←女性の後ろ姿写真は、幅広帯です

平均的な文庫本の厚さの単行本なので、あっという間に読めてしまいますが、本格的考察のラフというか、いろいろ興味深いテーマが散りばめられています。下記の【内容紹介】以外で、興味深かった点を、順に挙げていくと、

「性格美人」は日本にしかいない。
姦通罪は不美人に集中していた
7歳までには美醜の判断は出来上がる
教育を受けられたのは不美人だけだった
高群逸枝は男女平等になれば美人の勢力は拡大すると予言していた
名古屋こそが群を抜く美人の都だった
明治期の新橋は名古屋女の天下だった
昔の絵画はみな下ぶくれだが骨格はそうではない
浮世絵から当時の美人の姿を想像するのは間違い
日本の英雄は「女」を武器にする
遣唐使は「容姿」と「器量」で選ばれていた
男っぽい女装者がふえてきた理由
  。。。などなど。

高群逸枝は意外と美人だったようですが、確かに予言は当たっていて、もうどんなドラマや映画の端役でも美人ばかり。これでもか!という美人が、キレイになるための本を出版して、その努力すら公開する時代。東大生には不細工な男はいますが、ブスな女はいないというのは、駒場、本郷に棲息していた私の経験ですが、スポーツ選手から、AV女優、弁護士にいたるまで、とにかく美人ばかりの世の中になってしまいましたから、アニメに群がる男が増えるのも仕方がないでしょう。

著者には本書のような軽い読み物から、桂離宮や伊勢神宮、霊柩車に関しても何冊か出版されており、学術書から風俗本まで、色々興味深い本があるようなので、また別の本も近日中に読んでみたいと思います。

★★★☆
情報考学 Passion For The Future
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/06/post-1010.html

続たそがれ日記
http://plaza.rakuten.co.jp/junko23/diary/200803120000/fbb92/
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【目次】
1「美人」という言葉に、まどわされ
2 誰がいちばんきれいなの
3 かしこい女、それともきれいな女
4「美人」東西物語
5「美人」今昔物語
6 男もはたして顔なのか
終章 ブスをブスと言って何が悪い!

【内容紹介】
賛否の両論を巻き起こした問題の書『美人論』から17年。再び挑む、美しい人とそうでない人の研究。なぜ日本人は、女性のうなじや脚首に魅力を感じるのか? 小野小町はほんとうに「美人」だったのか? 不美人ほど不倫をすると言われた理由は? 「秋田美人」「新潟美人」が生まれた深い事情とは? ミス・ユニバースとK-1の共通点とは?……フェミニストとの心理戦の裏話や、美人の研究を始めるきっかけとなった自らのコンプレックスなど、美人研究にまつわるさまざまな豆知識やこぼれ話を紹介する1冊。楊貴妃からかぐや姫、ミス・ユニバースに女子大生、さらにはアニメの美少女キャラまで、古今東西の資料に基づき、「美人」「美女」ついでに「美男」について、マジメに深く深く考察します。人はほんとうに「見た目」がすべてなのか? PHP研究所 (2008/1/17)





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by yomodalite | 2009-06-18 19:17 | 評論・インタヴュー | Trackback | Comments(0)

旧「読書日記と着物あれこれ」。歴史/文学/お笑いを好み、着物生活をしていたはずが、いつしかマイケルジャクソンのように本を読もうになってしまったブログ。永年暮らした東京を離れ、現在は大阪を満喫中。


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