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羊の目/伊集院静

羊の目 (文春文庫)

伊集院 静/文藝春秋




目次からは短編集のようにも見えますが、物語はすべて繋がっています。

浜嶋辰三、山尾三津男、四宮賢治、須賀正、神崎武美・・・彼らに刺青を入れた清次(彫清)が刻印したもの、俠客、博徒...そして名を変えながらも繋がっているものの共通点とは。修羅の世界で生きる男たちの抗争を描きつつも、静謐な文体と、神崎武美の存在が物語を「聖書」のような味わいにしていて、小説としては『眠る蝶』以降俄然面白みを増す。

地味ではあるけれど、大人の読書マニア向けとしては、多分今年最高の佳作でしょう。

★★★★(R40)

『牡丹の女』
深川で内股に牡丹の刺青のある夜鷹は花川戸の辰三に、些細な喧嘩で死んだ指物師の夫との子供を託す。数年後、病を患い満州から引き上げた女は、我が子が辰三の元で成長したことを知る。。。

『観音堂』
本所吾妻橋、竹町の長屋にやってきた博徒“上州のみつ山”こと山尾三津男は、辰三が率いる浜嶋組の代貸しとなり、浜嶋組は勢力を増していく。辰三の家にはタケミという名の澄んだ目をした少年がいた。。。

『ライオンの舌』
戦場で出会った日本兵の背中にはライオンに似た動物のタトゥーがあった。ロダル・マッキーオ・コルザは、シチリアマフィアと同様の掟をもつ日本のヤクザに惹かれ、老人の博徒のケンキチに会う。ケンキチの元に届け物をもってきた若い男はタケミと名乗った。

『眠る蝶』
辰三が彫清の長屋に若衆を連れてきた。若衆の背中に触れた彫清はその類いまれな肌に惹かれ、辰三と同じ刺青を入れることを引き受ける。若衆は神崎武美という20歳そこそこの男だった。清次(彫清)の道具箱には見事な銀の蝶の細工が浮かんでいた。昔、指物師から惚れた女の刺青の代金として受け取ったが、指物師はその後斬り殺されたらしい。
仕事を始めて清次は益々武美に惚れ込み、かつて武美と同じような魅力に溢れた男がいたことを思い出した。不動明王を彫ったその男は四宮賢治と言った。

辰三の息子正規は大阪に逃げていたが、武美により辰三の元に帰ることになる。辰三は正規との親子の縁を切り関東から所払いにしたが、正規は辰三の妾を人質にとり、辰三に迫った。正規が女を突き飛ばし、匕首を辰三に向けて飛び出した時、武美は二人の間に突進した。

『竜の爪』
伊佐和力は、四宮兼治に逢い伊佐和組を四宮組に預ける決心を固め、須賀は四宮組の武闘派として組をまかされ勢力拡大の先鋒となった。警察に自首し刑期を模範囚として勤めていた須賀の前に、際立った印象をあたえる若衆が現れた。須賀は、若衆が男色の趣味のある首謀者を含む5人に襲われるも、同じ房の無期役の老人と撃退したのを目撃し、その鮮やかな手腕に感心した。その若衆は神崎武美と言い浜嶋組の若頭で、辰三の倅を殺して服役し、老人は、相手のほとんどがヤクザにもかかわらず11人を殺した事件で世間を騒がせた正木千吉だった。
数日後、須賀は風呂場で神崎の背中に見事な唐獅子の刺青を見た。刺青は四宮の不動明王と同じく「彫清」のものだった。

『ホットドッグ』
ロスアンジェルス、ワダ・ランドリー店。ケイコは母とともに、リトル・トーキョーで催される慰霊祭に出席する米陸軍第442連隊戦闘団の軍服の修繕で忙しくしていた。ある日、店に体格のいい日本人が仕事を求めてやってきた。ケイコは男が聖サンチャゴ・クニにそっくりだと思った。一方、須賀は神崎を追って、ロスアンジェルスで催される442連隊の慰霊祭の興業団の一行に加わり渡航していた。

『羊の目』
ニューハンプシャー州、コステル連邦刑務所は合衆国の中でも取分け厳しい監獄だった。規則だけでなく、1年の3分の1が凍雪に埋もれる過酷な環境、それ以上に厳しいのは囚人たちの掟だった。無期懲役囚ばかりの重い沈黙の中で、25年間服役囚たちの間でまことしなやかに伝えられている伝説があった。

だな通信 ミステリー文庫
http://danatuusinmystery.blog17.fc2.com/blog-entry-269.html
______________

[出版社からの内容紹介]夜鷹の女が産み捨てた男児は、闇社会を震撼させる暗殺者となった。神に祈りを捧げつつなお“親”のため人を殺し続ける男の生涯を描く。昭和8年。牡丹の彫物をもつ夜鷹の女は、後に日本の闇社会を震撼させるひとりの男児を産み落とした。児の名は神崎武美。浅草の侠客・浜嶋辰三に育てられた武美は、「親」を守るため幼くして殺しに手を染め、稀代の暗殺者へと成長していく。やがて対立する組織に追われ、ロスに潜伏した武美は、日本人街の母娘に導かれてキリスト教に接するのだが… 高潔で、寡黙で、神に祈りを捧げる殺人者。25年ぶりに日本に戻った武美が見たものとは──。稀代の暗殺者の生涯を描き、深い余韻を残す大河長篇。伊集院文学の最高峰! 文藝春秋 (2008/02)



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by yomodalite | 2008-09-29 15:48 | 文学 | Trackback(1) | Comments(0)

着物の悦び/林真理子(新潮文庫)

着物の悦び―きもの七転び八起き (新潮文庫)

林 真理子/新潮社



今から16年前に出版された林真理子氏の初心者向けガイドにもなっている着物奮闘記。私もまだまだ初心者なので、着物関連で知りたいことは山のようにあるのだけど、正直この本ではそれはあまり叶えられないし、現在の多くのきもの初心者にとってもそうではないかと思う。

16年後に読む本著は、ガイド本としての魅力ではなく、林真理子氏の戦いの記録というか、女流作家の心意気というか、なでしこジャパンや、女子ソフト金メダルと同じような、不細工な女の純情一途な清々しさを味わせてもらいました。林氏は何度も経済力があってこその着物道楽と認めていますが、それにしても氏が着物に目覚めたのはもっとも着物が高いうえに、良いものの数が少ない時期だったと思う(コンテナに詰まっている着物の数々は多分「林真理子コレクション」として、後年まで残るものではないでしょう)。

いくら有名作家でも、著作だけでここまでの経済力は無理ではないかなど、林氏ぐらいの有名作家になると著書収入以外の収入がかなりあるんだな〜など、めずらしく他人の懐が気になってしまうのも、着物だからでしょうか。

とはいえ、作家はやはり筆一本で稼いできたに違いなく、そのお金を加賀友禅や、越後上布に換えたのだ。なんて綺麗なお金の使い方だろう。綺麗なのは支払いだけではない。グレース大賞を受賞したときの「京都織物商業組合」での講演も、『着物をめぐる物語』の連載開始の経緯が書かれている文庫版あとがきも、ああ、本当に綺麗なお金の使い方をされたんだなぁと、じんわり目頭が熱くなりました。

今まで林氏のエッセイが嫌いで小説もほとんど読んだことがなかったのだけど、作家「林真理子」にとって、考え抜かれた戦闘フォームだったんだなぁ〜ということが少しわかり、小泉純一郎や奥谷禮子らとのつきあいも、こういう本が書かれるためにあったのだと一応納得w


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by yomodalite | 2008-09-25 12:49 | きもの | Trackback | Comments(0)

着物をめぐる物語/林真理子

着物をめぐる物語 (新潮文庫)

林 真理子/新潮社




林真理子氏が着物にはまっているという話は以前より聞いていたのだけど、有名人の着物話は交流のある他の有名人や、呉服屋や着物商売の人々が実名で登場することにより、内輪ボメや宣伝のような話が多くて手を出しそびれていましたが、ふと思い立ち『着物の悦び』と『着物をめぐる物語』を同時進行で読みはじめました。

『着物の悦び』は今から16年前のエッセイ。現在の状況と異なる点も多いうえに、今より更にお金がかかる時代の売れっ子作家の着物道楽には、ちょっとついて行けない感じが冒頭から感じられたので、小説である『着物をめぐる物語』の方を先に読みました。今まで林氏の作品をほとんど読んでいないのだけど、これは佳作ですね!隙のない完成された着物にまつわるストーリーの目白押しで、この本により着物の魔力に惹かれてしまう人も現れそう。

【内容】

『松の緑』は、加賀友禅の一番の作家であった娘が、生前父が描いた芸者の「出の衣装」に出会う話。「松の緑」と名付けられた衣装は、松の芽をモチーフに、黒の紋付の裾いちめんに芽を吹き出した松が重なり、萌黄、若草、常磐色、何色かの緑が黒の地の上で踊っていた。

『形見』は、銀座のママの回想録。銀座のママはたいてい美人じゃない。
「銀座の女にはふた通りあるの。頭が悪くて不幸になるタイプと、純情過ぎて不幸になるタイプよ。どっちも同じようなもんじゃないかって言われそうだけど、根本が違うわ。純情過ぎるっていうのはね、脳味噌や心の中のあぶくが、あまりにも多く濃く出てくることを言うのよ。頭の悪い女っていうのは、泡ひとつ出やしない。脳のつくりが単純で平べったくなっているの。」
女の美しさと幸福の関係、かつての同僚るり子と交わした「大島」の形見分けの約束は守られなかったが。。。

『唐子』
かつての良家の娘であった雪子が、娘時代に創った着物の数々。「唐子」の着物を褒めてくれた混血の従妹、倉重俊太郎は、三年後に配属された静岡の上空で襲撃されパラシュートで脱出した茶畑で、村人に「アメリカ人」と間違われなぶり殺された。

『お夏』
新人女優由美子は3本の映画に出演後、巨匠堀口監督の時代劇映画で「但馬屋お夏」に抜擢される。堀口組と称される現場で由美子は甲斐庄楠音という男に出会う。

※甲斐庄楠音(日本画家) カイノショウタダオト は実在する人物。
1894~1978 日本画家 京都出身 甲斐荘家(本名)25代三男。
作品は、岩井志麻子「ぼっけえ、きょうてえ」の装幀に使用されている。(「横櫛」)
日本画家としてよりも、溝口健二監督の時代考証(着物のデザインなど)には欠かせない存在で、時代劇映画の考証屋として有名。彼が着物を気付けると誰よりも美しく映るという評判で名高い。谷崎潤一郎、吉井勇、などとも交遊を深め、 「雨月物語」ではアカデミー賞にもノミネートされた。私生活も個性的な逸話に事欠かず、裏地に派手な女物を生地を使った着物を着たり、女言葉を使った。

『歌舞伎座の幽霊』
歌舞伎座衣装部屋の裏方が語る楽屋話。“三階さん”、階段の影に藤娘の衣装を着たひとりの女形。。。。

『姉妹』
近所でも評判の美人の姉と正反対の妹。老婆になった妹が語る戦前戦後。

『織り姫さま』
嫁佐和子が語る、越後上布一番の織り手である74歳の姑「秀」。

『箱屋』
箱屋とは花柳界の女たちの着付け師。滅び行く職業である箱屋の男が語る花柳界の今昔。

『美装室』
ホテルで美装室を経営する美枝子は、結婚式当日に花婿に逃げられた美也に再び依頼を受けた。。。

『着物熱』
若い頃は着物に興味が無かった久仁子だが、老舗呉服店の名物おかみだった母の死後、「着物デザイナー新田久仁子の店」として店を成功させている。ある日、顧客である「田崎さん」の娘が、母の死の報告と残った着物の処分に困り訪ねてきた。

『路地』
元辰巳芸者、菊と絹枝は深川で麻雀屋を営んでいる。せい子姐さんは2人が小料理屋を失敗した時から同居を申し出てくれ現在まで一緒に住んでいたが、三人姉妹のような生活に急激に老いが押し寄せる・・・
________________

【内容「BOOK」データベース】華やかな歌舞伎座の楽屋に、藤娘の衣裳を着て現れる女形の幽霊。唐子の着物をほめてくれた混血の美青年が戦時中にたどった運命。夫と息子に先立たれた老女が黙々と織る越後上布。男に翻弄されたホステスが遺した大島。老境を迎えた辰巳芸者の着物への執念。畳紙に包まれ密やかに時を刻んでいた着物が、繙かれ鮮やかに語り始める…。縦糸と横糸のあやなす、美しく残酷な11の物語。 新潮社 (2000/09 単行本1997/10) 



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by yomodalite | 2008-09-24 17:41 | きもの | Trackback | Comments(4)

バカボンのパパはなぜ天才なのか?/斎藤孝

バカボンのパパはなぜ天才なのか?

斎藤 孝/小学館



バカボンのパパだけでなく、68作品の有名マンガから人生を学べる本。斉藤氏がこんなにマンガ好きだったとはと驚きでした。40ン年間、溜めに溜めた濃いエキスを炸裂させ、自身のベスト本と断言。下記もくじに知っている作品がいくつかあったら、本著は読んでみる価値大。

テーマ別に《仕事》《自分》《恋愛》《人間関係》《家庭》の5種類に分類し、名作を人生に有効に活用させるヒントが盛り沢山。著者は我が子の教育にも「マンガ虎の穴」を開設し鍛えているようで、本著の内容も、キワモノ企画ではない真剣なものです。

『ナニワ金融道』から「恋愛」を学べる著者の「学習力」の凄さにも脱帽。

【目 次】
・ゴルゴ13が「超一流」なのはなぜか《仕事》/『ゴルゴ13』
・バカボンのパパはなぜ「天才」なのか?《仕事・自分》/『天才バカボン』
・無気力に活を入れる「バカの力」とは?《仕事・自分》/『空手バカ一代』
・これぞ史上最強の「伝言力」だ!!《仕事》/『ワイルド7』
・お蝶夫人に学ぶ「プライド」の保ち方」《仕事・自分》/『エースをねらえ』
・SEXを強くするのは「意識の高速回転」だった!《恋愛》/『東京大学物語』
・「ウンコ座り」で会議革命?!《仕事》/『ビーパップ・ハイスクール』
・こんな「自己暗示術」ってアリ?《仕事・自分》/『柔道部物語』
・こまわり君は「プレゼンの達人」だった?!《仕事・人間関係》/『がきデカ』
・チエちゃんはなぜ「ダメ男」と付き合えるのか?《仕事・家庭》/『じゃりんこチエ』
・「引き継ぎ力」が常勝チームに変えた《仕事》/『キャプテン』
・肚をくくれば短所も「化ける」?!《自分》/『寄席芸人伝』
・尻の穴を見せられる「コンビ力」って?!《人間関係・家庭》/『サンクチュアリ』
・「唯我独尊系」人間との上手な付き合い方《仕事・自分》/『Heaven?』
・「ヴィジョン力」が部下を動かす《仕事》/『ジパング』
・シマリス君に教わる「トリオの教育力」《自分》/『ぼのぼの』
・「今の自分」に疑問をもったらアトムを熟読せよ《自分》/『鉄腕アトム』
・不良を更正させたパワフルな「引用力」とは?《仕事・自分》/『ROOKIES』
・なぜ「デビルマン」でなければならなかったのか《自分》/『デビルマン』
・矢吹丈の「ベストパフォーマンス」は紀ちゃんとの初デートだった!《恋愛》/『あしたのジョー』
・イサオ流「優しさ」でオンナを錯覚させろ《恋愛・家庭》/『自虐の詩』
・前野少年は、日本一の「企画力」を持つ《仕事》/『行け!稲中卓球部』
・「はぐらかしの技」が人を惹きつける《恋愛》/『めぞん一刻』
・本宮マンガの魅力は「裸」にあり《仕事・恋愛》/『俺の空』
・最強の「モチベーションの作り方」とは?《仕事・恋愛》/『 F 』
・どん底からだってはい上がれる「退行の技」 《仕事》/『無能の人』
・勝ちたいならば「神経戦で先手必勝」?!《仕事》/『月下の棋士』
・明訓高校はなぜ常勝チームだったのか?《仕事・恋愛》/『ドカベン』
・ねずみ男はなぜ「交渉名人」なのか?《仕事・恋愛》/『ゲゲゲの鬼太郎』
・70のバアさんをもとりこにする「愛想力」《恋愛・人間関係》/『浮浪雲』
・ビリビリする「身体感覚」を取り戻せ!《仕事・家庭》/『花男』
・人生を逆転させる「どん底笑い」《自分・人間関係》/『ぼくんち』
・「言質」を取られる怖さを知れ《仕事・恋愛》/『ナニワ金融道』
・若手に怯えはじめたら、「同じ土俵」で競え《仕事・家庭》/『がんばれ元気』
・ダメ部下でも活かせる「コーチング」の技《仕事・恋愛・家庭》/『天才柳沢教授の生活』
・酒を飲みたくなったら「瞬間寄生」せよ?!《仕事・人間関係》/『寄生獣』
・存在感の薄さを解消する「ヒット&アウェイ」《自分・人間関係》/『魁!!クロマティ高校』
・若作りするより「老け顔」で生きろ?!《自分》/『「坊ちゃん」の時代』
・「出し惜しみしない女」をものにせよ?!《恋愛》/『お天気お姉さん』
・ビル・ゲイツに匹敵する「作戦力」とは?《仕事》/『ルパン三世』
・タッちゃんはなぜ美女から「モテる」のか?《恋愛》/『タッチ』
・「高学年意識」がチーム力をアップさせる《仕事》/『漂流教室』
・鼻つまみ者を活用する「パッケージ化」とは?《仕事・人間関係》/『かりあげクン』
・「安いプライド」は脱ぎ捨て、現実に生きろ!!《仕事・自分》/『編集王』
・「嫌いな奴」から技を盗め!《仕事》/『バビル2世』
・プレッシャーに克つ「肚」の据え方とは《自分》/『バカボンド』
・人の役に立ちたいなら「哀しみ」を背負え《仕事・自分》/『北斗の拳』
・会社で生き抜くなら「35歳以上OL」と上手く付き合え《仕事・人間関係》/『OL進化論』
・家族の自立・再生を促す「解散宣言」《家庭》/『ありがとう』
・「ウンチく力」は海原雄山に学べ!《仕事》/『美味しんぼ』
・人生を下半身で失敗しない「もっこり力」とは?《自分・恋愛》/『シティハンター』
・「チーム仕事」を成功させるには?《仕事》/『サイボーグ009』
・「怒り」によって自分をモードチェンジせよ《仕事・自分》/『ドラゴンボール』
・なぜ両津勘吉は「パワフル」なのか?《自分・家庭》/『こちら葛飾区亀有公園前派出所』
・家族間の会話を増やすには「趣味の押しつけ」だ《家庭》/『釣りキチ三平』
・ビジネス抜きの「友だち」の作り方《人間関係》/『BANANA FISH』
・デキの悪いパートナーこそ「起死回生の武器」になる《仕事》/『子連れ狼』
・器を大きくしたいなら「男の世界に一時退却」しろ!《仕事・自分》/『龍ーRONー』
・アストロ球団はなぜ「エスカレート」するのか?《自分》/『アストロ球団』
・「妄想力」は墜落をもハッピーに変える《自分》/『じみへん』
・他人をコントロールする「一喝芸」《仕事》/『賭博黙示録 カイジ』
・「気品」を身につければ退職も怖くない《恋愛・人間関係》/『ベルサイユのばら』
・「制御不能」上司の上手な見分け方《仕事》/『AKIRA』
・本物になるには「フェイク力」を磨け!《仕事・自分》/『ギャラリーフェイク』
・宇宙戦艦ヤマトはなぜ「色褪せない」のか?《仕事・自分》/『宇宙戦艦ヤマト』
・忍者の「連活」は不眠症に効く!《仕事・自分》/『サスケ』
・大人の男は「単独者」として生きる《自分・人間関係》/『巨人の星』
・「失言力」が人生の強度を上げる《仕事・自分》/『ドラえもん』
________________

【出版社/著者からの内容紹介】マンガから人生を生き抜く知恵を学べ!
『週刊ポスト』誌上で好評連載された『マンガ流! 大人の作法』がついに単行本化! 独自の教育メソッドで知られる齋藤孝氏は、無類のマンガ好きとしても有名なだけにマンガの登場人物たちの奇想天外な処世術に着目。「ゴルゴ13が超一流なのはなぜか」「お蝶夫人はどのようにプライドを守ったのか」「ねずみ男はなぜ交渉名人なのか」など、数多の難問に挑み、現代社会を生き抜く知恵を抽出した。本書には「段取り力」「コメント力」「要約力」「質問力」「あこがれ力」「コミュニケーション力」「文脈力」ほか、様々な"エッセンス"が凝縮されている。仕事に家族に恋愛に自分に行き詰まったとき、本書を手繰れば、瑞々しい発想が浮かび、元気が湧き出ること請け合いだ。

お暇なら読んでね
http://ameblo.jp/kanmani/entry-10010325170.html

「 きょういく ユースフル!」
http://plaza.rakuten.co.jp/kyouikuuseful/diary/200612120000あ

「まこっちゃんの好奇心倶楽部」
http://makotchan-i0223.at.webry.info/200605/article_4.html



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by yomodalite | 2008-09-21 17:05 | 映画・マンガ・TV | Trackback | Comments(0)

キモノの洗濯(失敗編)

全国のアンティーク着物ファンのみなさま、ヤフオクなどで購入した安いキモノのお洗濯どうしていらっしゃいますか? 

3千円で買った古キモノを5千円で丸洗いなんて、バカバカしいですよね。自分で洗っちゃいたいと思ったことありませんか。確かに、正絹キモノは縮むと何度も聞かされています。それゆえ、洗い張りといって、わざわざ専用の板にふのりで貼付けるという、とんでもなく面倒なことをしていたりするわけですよね。とはいえ、絹は元々水に弱い訳ではなく、反物状態までは何度も水にくぐらせていますよね。

じゃあ、なんでキモノになった状態だとそんなに縮むんですか?つーか、縮むって、どれぐらい縮むんですかぁ〜〜!もしかして、サイズの大きい着物は洗って縮めてみるなんて方法は邪道でしょうか?

と様々な邪念を抱きつつ、疑問に思ったことは、どうしても知りたくなってしまう性格ゆえ、ダメになっても3千円損するだけ。でも疑問の答えが出るのに3千円は惜しくない!とあっさり決断。洗ってみることにしました。

f0134963_20334982.jpgf0134963_20341151.jpg実験に使用する着物は、正絹(出品者申告)で、シボのある厚手の丈夫な生地。表は黒緑色で裏はグレー(写真参照)。袷から同裏を剥がして、ポイントだけ縫ってある状態。

洗い方は、普通のオシャレ着洗いと同様、ホームクリーニング「エマール♪」をぬるま湯に少なめに溶かしこみ畳んだキモノを押し洗い。心配された色落ちはあまりないようです。ところが、むせ返るとまでは言えませんが、かなりのベンジン臭が!なんで???

この時点でほぼ「失敗」を確信したので、次のすすぎでは「酢」を入れてみたり、「重曹」を入れてみたり、匂いが消えるのを期待してやりたい放題に次々と放り込んでみるものの効果なし。何度かすすぎを繰り返しバスタオルで水気をとって着物ハンガーで干しました。

さて翌日。匂いは干した部屋まで広がっていて驚きましたが、キモノ自体には残ってないようです。シボのある着物は特に縮むと言われていますよね。
さて、どのくらい縮んだんでしょうか?(ドキドキ。。)
計ってみたところ、身丈154、裄65だった着物が、身丈143、裄55に!!!!

ナント縦横に約10センチ縮みました♪

洗った後にシボがキツくなっているとかはなく、アイロンをかけた後は特に見た目生地の変化はなく、若干風合いが固くなったかな、というぐらい。果たして10センチもどこにいったのやら。。。不思議です!!!(疑問解決されてないやん!)

結論:着物を洗うのはプロにまかせるのがイイようですヾ(^_^)

「正絹の洗い方」
http://kimono.hocolife.com/teire/post_139.html

「ちょこっとキモノ」
http://piccolo3.exblog.jp/9358884/

↑こちらのサイトによれば、糸を撚ってあるものはNGのようです。確かに、撚りが強い生地かも。。。やわらかモノの縮緬なら洗ってみようとは思わなかったんですけどね〜丈夫そうな生地でもザラザラ系はダメなのかもね。でもめげずにまだまだ挑戦します!





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by yomodalite | 2008-09-18 18:28 | きもの | Trackback | Comments(2)

幸田文の箪笥の引き出し(新潮文庫)/青木玉

幸田文の箪笥の引き出し (新潮文庫)

青木 玉/新潮社



魅力的なタイトルですよね。幸田文の箪笥の中が覗けるなんて。写真掲載は47ページもあって、あの『きもの』の表紙にもなった黒の羽織を玉さんが着ている写真や、露伴のお気に入りの着物、幸田文の人生の折々に着た着物が写真とともに語られていて、お買い得な552円。幸田文ファンなら間違いなく楽しめる本です。

玉氏から語られる幸田文の江戸っ子口調もカッコいい。あぁこんな紅の婚礼衣装で嫁に行きたかった!と思わずにはいられないような婚礼衣装や、お色直しの衣裳。紫の色留袖は、これは写真の色が悪いようで、紫に見えないのだけど、作ってみたいアイデアですね。

他にも雨ゴートの生地で作った着物や、鮮やかな紫の絽の着物、今まで興味のなかった綸子の着物にも俄然興味が湧いてきました。幸田文が、玉さん用に誂えた通夜着や、鈍の紬に合わせた帯も、これとまったく同じものが欲しい!

ついでにネコも染めてみたいΣΣ( ̄◇ ̄;)!

でも、今後の最大の夢は、着物を新調する際に、柄を指定して注文して描いてもらうというもの。季節ごとに1着、目一杯気持ちをこめて4枚は作ってみたい。

そんな夢が、つい広がってしまう1冊でした。

「Franny Note」
http://FrannyG.exblog.jp/tb/9315784

「万里緒の着物日記」
http://mario-kimono.jugem.jp/?eid=47
_____________

【内容「BOOK」データベース】着物を愛し、さっそうと粋に着こなした幸田文—。残された着物の、一枚一枚に込められたさまざまな想いを、娘の目からたどるとき、在りし日の母の姿はあざやかによみがえる。四季の移り変わりを織り込みながら、祝い事などの場の雰囲気に合わせて、みごとに「装い」を調えた幸田文の、独自の美意識、そして当時の日本人が共有していた生活感を、愛用の着物の写真とともに伝える。 新潮社 (2000/08)

【目 次】
「Ⅰ」
・赤姫
・石摺りの着物
・誰が袖
・花の頃
・すがれの菜の花
・あじさいの庭
・裁ちかけの浴衣
・取りかえっこ
・虎の着物
・色ちがい
・鈍の色あい
・ネコ染衛門
・花模様
「Ⅱ」
・襁褓(むつき)  ※お襁褓(おむつ)
・小鳥の水浴び
・汚れ色
・うす綿
・着なかった振袖
・白い着物

解説/光野桃



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by yomodalite | 2008-09-18 08:43 | きもの | Trackback | Comments(0)

ネットいじめーウェブ社会と終わりなきキャラ戦争 (PHP新書)/荻上チキ

ネットいじめ (PHP新書)

荻上 チキ/PHP研究所



『ウェブ炎上』に続いて荻上チキ氏を読むのは2冊目。

第1章では、「ネットいじめ」は「ネット」が原因ではなく、偏った事例を取り上げて「ネットはいじめの温床」と決めつけるマスメディアによって「学校裏サイト」不安が作られている例が語られている。

第2章では、「学校裏サイト」というマスメディアによる恣意的な印象をあたえる名称から、「学校勝手サイト」と改称し、10代〜20歳ぐらいまでの「勝手サイト」の真実を豊富なデータにより紹介。

第3章では、ネットによりイジメが「可視化」されたことにより、見えてくる現代の「イジメ」の実態。「ネットを使うな」がむしろ「イジメ」を助長する懸念。

第4章は、ネットにより加速したキャラ創り。「イジメからイジラレへ」。

第5章は、ウェブの未来を見据え管理はどこまでなされるべきか。有害メディアとして「ネット」を位置づけようとする議論の不毛など。。。

まず、「教育問題たかり屋」としか思えないTV御用達の教育評論家、尾木直樹の憶測のみの「語り」が批判されていることに拍手。「ネットいじめ」の問題のみならず、若年層からネット利用者である青少年と、ネット経験不足の大人との誤解を埋める良書。テーマがピンポイントだけに、新書でも後半は少し飽きてしまうけどよくまとまっています。
_____________

【内容紹介】インターネットはいじめの温床、匿名ゆえに陰湿な誹謗中傷の嵐。「子どもたちを守れ!」を合言葉に、ネットやケータイの使用規制が叫ばれる。はたしてこれで、いじめは減るのか?「学校裏サイト」を利用する子どもたちの生の声を分析すると、ネット空間は現実の人間関係の延長にあり、要は使う人間の質と環境が問題だとわかる。そしてそこには、空気を読まなければ叩かれる現代の若者事情が見え隠れする。学校でも、職場でも簡単に見えるようになった<陰口>。この息苦しさの正体が明らかになる。PHP研究所 (2008/7/16)



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by yomodalite | 2008-09-17 11:52 | 雑学・Web | Trackback | Comments(0)

流れる (新潮文庫)/幸田 文

流れる (新潮文庫)

幸田 文/新潮社



露伴の死後、露伴の思い出を中心に随筆家として活躍していた著者が、随筆の限界を感じ、芸者の置屋に住み込みで働いた経験をもとに書かれた小説。

作品中、主人公はその振る舞いから何度も前職を聞かれる場面に遭遇するが、置屋へ来る前の境遇は一切書かれておらず、その描かれようから、読者には、主人公「梨花」=幸田文としか思えず、まるでノンフィクションのような気さえします。

でも、それにしてはというか、どうして、この主人公の名前を「梨花」にしたんだろう。という疑問がわきました。

梨花は、その名前を置屋の芸者米子に、

「珍しい名だこと。異人さんのお宗旨名?」
「は?」
「いえ、耶蘇のご信心だとそんな名をつけられるって話聞いてたから。」


と言われるような「名前」ですが、性格は幸田文と同様、欧米かぶれな点は一切ない。

自らの日常を書くことに限界を感じ、外の世界を見てみようと出て行った場所が芸者置屋というのも、なんだか遠いようで近いような著者らしい選択だが、梨花という名前も、自分の殻を破ろうとして、思い切ってつけた名前だったのかもしれない。しかし、それでもやっぱり幸田文は幸田文なのだ。

初めて幸田文の小説を読んだのは『きもの』で、そのときなぜこの小説は、生前発表されなかったんだろうと不思議だったのですが、梨花という名前で、別人生を生きることができなかった著者には、自分同様に成長した、るつ子の成人後は書けなかったのかもしれません。

『流れる』は『きもの』よりもずっと著者自身の感情が全開で、一気に書かれたような勢いがあります。江戸っ子ぶりや、ちゃきちゃきとして、性根がすわっていて、受取の文字をかくだけで、

「あんた、何者だい?」

と言われてしまう「幸田文」の眼が至るところに感じられ、廃れ行く芸者置屋の裏側を通して、女から見る「女」の生き様をドラマティックではなく「ぴしゃり」と描いた傑作。

同名の映画は観ていませんが、描きようによっては喜劇にもなりそうな、著者の小説の中ではもっともおかし味のある小説だと思います。

★読書感想文
http://www5b.biglobe.ne.jp/~michimar/book/181.html
______________

【内容「BOOK」データベース】大川の流れるほとりの芸者屋に、住み込んだ女中・梨花。この花街に暮らす芸妓たちの慣習と、自堕落で打算のからみあう、くろうとの世界に、梨花は困じながらも、しろうとの女の生活感覚で、誠実に応えて、働き、そこに生きる人々に惹かれていく…。時代が大きく移り変わる中で、抗いながらも、流されていく花街の人々と、そこに身を置いた女性の生活を、細やかに描いて絶賛された長編小説。新潮社文学賞、日本芸術院賞受賞。新潮社・改版版 (1998/01 初版1957/12)



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by yomodalite | 2008-09-14 21:28 | 文学 | Trackback | Comments(0)

ジャパンクールと江戸文化/奥野卓司

ジャパンクールと江戸文化

奥野 卓司/岩波書店

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2004年の『日本発イット革命ーアジアに広がるジャパン・クール』に続いて2冊目のジャパン・クール本。相変わらずものすごくダサイ装幀が残念ですが、あちこちで目にするようになった「ジャパン・クール」の紹介者である奥野氏の本なので読まずにはいられません。

今回はマンガ・アニメ、JPOPなどジャパン・クールの源流は江戸にあった、というもの。江戸の再発見ブームは永く続いていますが、「数奇者」ー「オタク」、「ワビ、サビ、イキ、モエ」や、鎖国の国のグローバリズムなどなど、江戸文化の実態を探る内容にもなっていて、目次からも面白さが窺える。読者を疲れさせない読みやすい文章ですがレベルの高い内容。

【目次】
第1章:ジャパン・クールからみえる江戸文化
・モザイクに広がる日本文化ーパリのジャパン・クール
・変貌するファン層
・「伝統文化」のニューウェーブ
・江戸人のクールな生き方
・江戸時代をフィールドワークする。
第2章:コミュニティを再生する江戸文化
・「こんぴら歌舞伎」は全国から
・歌舞伎によるまちづくり
・祇園際の変容
・「伝統」の発明
第3章:ジャパン・クールとしての江戸文化
・「開国」していた江戸、「鎖国」している現代
・江戸文化のデジタル化
・「モノづくり」から「モノ語りづくり」へ
・玉三郎のデジタル感覚
・デジタル歌舞伎へ
第4章:江戸文化の「モエ」の構造
・「情報化」「成熟化」「多様化」が「江戸」を呼ぶ
・江戸のメディア化
・「数奇者」というオタクのネットワーク
・「武士道」なんか知らないーマンガとしての「忠臣蔵」
・エンターテイメントとしてのテクノロジー
・アニミズムからアニメへーキャラクターの錬金術
・鎖国のクニのグローバリズム
・江戸人の美意識ーワビ・サビ・イキ・モエ
第5章:京都・大阪・名古屋のコンテンツ戦略
・上方の文化ビジネス戦略
・京都商法としての家元制・本家制
・大阪商法のフィランソロピー
・元気な名古屋の存在理由
第6章:江戸という近未来
・江戸は「管理者会」か「大衆社会」か
・クールな江戸町民にとっての幸福ー西鶴の教えるネット社会の罠
・「江戸文化」をデジタル・コンテンツに

★「本よみうり堂」
http://www.yomiuri.co.jp/book/review/20070918bk03.htm

「作られた伝統も格好いい」
 ジャパンクールを若者語で言うと「日本、萌(も)え!」だろうか。アニメ、ゲーム、Jポップなど日本発のポピュラーカルチャーがアジアでも欧米でも大人気であることはよく知られている。欧米ではそんな現代若者文化を経由して歌舞伎や文楽などの「伝統文化」にまで新たな関心が及び、「ジャパンクール」(カッコいい日本)と呼んで高い評価が生まれている。だが新しい若者文化の担い手がどうして古い「伝統」文化の歌舞伎好きでもあったりするのか。
 文化人類学者クリフォード・ギアツは、連綿と続く伝統芸能と見られていたバリ島のガムラン音楽や踊りなどの民俗芸能が近代になってつくりだされた「伝統の発明」であることを明らかにして学界に衝撃を与えた。そんな認識の上に立って80年代以後、学者たちは「本物の伝統」と「ニセの伝統」の二つを見極めることを学問の任務と唱えた。ところがその後世界各地の「伝統儀式」「伝統行事」なるものの詳細な調査がなされたところ、ほとんど近代以降の「発明」であることが明らかになった。さあ「本物の伝統」などこの世にあるのか。
 著者は学者が批判的にとらえてきた「伝統の発明」を日本文化創造の源泉とみてむしろ評価する。古典文学を翻案してできた『義経千本桜』など人形浄瑠璃や歌舞伎の演目は今日のアニメ、映画と同じ「現代世相劇」だった。
 それは「伝統」を利用して「現代」を楽しむ江戸のクール感覚の産物。アニメに取り入れられた浮世絵の描写術や歌舞伎の演出法からキャラクターグッズというべき役者絵や根付けまで、ジャパンクールの現象や商品の原型は江戸時代にあると著者は分析し、さらにオタクの芸能集団を身近に召し抱えた足利義政から当時のJポップ「今様」を愛した後白河天皇の平安時代にまで遡(さかのぼ)らせうると示唆する。ほどよい批判精神と遊び心のバランスを備えた著者ならではの、海外受けする日本文化生成の謎解き。
 ◇おくの・たくじ=1950年京都市生まれ。関西学院大教授・情報人類学。
評・白幡洋三郎(日文研教授)(2007年9月18日 読売新聞)

★毎日jp「今週の本棚」
http://mainichi.jp/enta/book/hondana/archive/news/2007/08/20070805ddm015070126000c.html

田中優子・評 『ジャパンクールと江戸文化』=奥野卓司・著

◇黄表紙を踏まえたオタク的発信

 江戸時代は光の当てかた次第でお多福にも般若にもなる。笑いに満ちた桃源郷にもなるし、残酷な身分社会にも見える。どちらが本当だろうか?と真実を追究しようとしても、実体にはするりと逃げられる。しかし確実なのは、江戸人は近現代日本人が持ったことのない、変転自在な自我像を持っている、ということだ。この自我像はさまざまに顔を変え名前を変える。そのスピード感と軽さは、まさに「クール」なのである。

 「日本文化はクール、と言われているのよ」と最初に聞いたのは、ドイツ人の日本研究者からだった。数年前のことである。「どういう意味?」と尋ねると「かっこいい、ということ」だと言う。漫画、アニメにはまったヨーロッパ人たちから出た言葉らしいとわかったが、その「クール」という語感が、私が十代のころ最初に江戸文化に感じたことと似通っていることに驚いた。戦後生まれで江戸文化にはまる人は、外国人のような感覚で驚愕(きょうがく)の出会いをした人である。その出会いの瞬間を表現したのがこの「クール」という言葉かも知れない。語感は「いき」に極めて近い。

 本書は、ストレンジャーとしての我々(現代日本人およびあらゆる外国人)の眼に映る驚きの江戸時代、面白くてしようがない江戸時代を、迷いなく描き出した本だ。書かれている中身は、この二十年ほどの間に明らかになり表に出てきた事柄であって、新しい発見があるというわけではない。しかし資料の発見や新しい証明も大事だが、江戸研究がそれ以上に必要としているのは、新視点やそれを支える価値観の登場なのである。「ジャパンクール」は漫画やアニメに対して出現した言葉だ。本書はたちまち、それを現代の歌舞伎、祭、そして江戸文化のあらゆる現象に適用した。そして見事に、江戸時代の文化を「クール」という言葉に転換してしまった。この素早い身動きがクールである。

 しばらく読んで、ああそうか、と納得した。じつはこの本、江戸時代の黄表紙(漫画本)『御存(ごぞんじの)商売物(しょうばいもの)』のパロディなのである。本を開けると「口上」が始まる。『御存商売物』は能狂言の狂言師が口上を述べるが、本書では歌舞伎や文楽の口上でご挨拶(あいさつ)があり、定式幕が開く。『御存商売物』では、幕が開くとそこは作者の見た夢の世界だった。当時の最新メディアである江戸の出版物たちが人間の姿となって現われ、流行を争い、『源氏物語』や『徒然草』のような古典さえも現代メディア(商売物)の中に位置づけられてゆく。これは江戸クールの代表的な本である。

 本書でも、江戸文化が単なる伝統としてではなく、今の市場の中で動いている(動き得る)魅力的な商品(商売物)として書かれている。戦略的にそのように編集されている。インターネットやユーチューブで拡がる伊藤若冲や歌舞伎、落語、グーグルによる江戸古地図サービスなど、江戸文化がすでにさまざまにデジタル・コンテンツ化されている様子が紹介され、さらにそれを促す。ここから立ち上がってくるメッセージは、今こそ江戸文化を日本人の手でデジタル・コンテンツ化しようではないか、という情熱的でオタク的な呼びかけである。

 江戸文化は様々あるが、本書ではその戦略に沿って周到に選択・紹介されている。しかしそれでいてさわやかなのは、著者がお金儲けに熱心なわけではなく、江戸時代の文化がしんそこ好きだからだ。頭ではなく五感すべてでクールを感じ取ったオタクこそが、江戸を世界に発信できるのだろう。(毎日新聞 2007年8月5日 東京朝刊)

※ジャパン・クールへの批判
「松岡正剛の千夜千冊」
http://www.isis.ne.jp/mnn/senya/senya1172.html
http://www.isis.ne.jp/mnn/senya/senya1237.html

【参考文献】
粟津潔・奥野卓司編『日本の技 第五巻 古都絢爛の技』
梅○忠雄『美意識と神さま』
田中優子『江戸の想像力』
富岡多恵子『西鶴の感情』
吉田弥生『江戸歌舞伎の残照』
米山俊直『「日本」とはなにか』。。。。等



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by yomodalite | 2008-09-13 22:07 | 現代文化・音楽・訳詞 | Trackback | Comments(2)

9月のきもの(まだまだ晩夏)

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昨日松屋の「職人の技・老舗の匠展」へのおでかけは、正絹紗のキモノです。盛夏に比べれば涼しくなったとはいえ、まだ夏キモノですって!単衣にしなきゃって思うと、あと2週間はキモノが着られません。でも浴衣はもう気分じゃないですね。夏キモノは、どんな場所でも大丈夫だし、着用期間意外と長いです。半袖の時期に、紗はダメなんて言ってる人、暑苦しく見えることこそマナー違反だと思うのですけど。。。

なんて、またまた気合いが入っている風なのも、単衣のキモノが手薄だから(-_-;)...
2着しかない単衣の1着を染め替えに出してしまい、
どうやら今期には間に合わなそう/(-_-)ヽ...

そういうわけで、今や貴重な白のポリきものを何通りもコーディネートしてみたのだけど、やっぱり同じキモノであることは隠しきれません (_ _。)・・・

そこで思い切って、先日ヤフオクで落札した3,000円の袷の古キモノの同裏ひっぺはがしてみました。和装の経験なんて、全然ないんですけど、突如ガンガンとはがしてみましたところ、袖の下の部分や裾と襟を少しチクチクするだけで、意外とイケます。やわらかものじゃなくて、少しごわついた正絹キモノなので、居敷あてとか要らないと覚悟しちゃいましたので、1時間ほどで単衣に変身完了。さて、帯はどうしようかな〜。


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by yomodalite | 2008-09-12 16:38 | きもの | Trackback | Comments(0)

旧「読書日記と着物あれこれ」。歴史/文学/お笑いを好み、着物生活をしていたはずが、いつしかマイケルジャクソンのように本を読もうになってしまったブログ。永年暮らした東京を離れ、現在は大阪を満喫中。


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