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バイバイ、エンジェル (創元推理文庫)

笠井 潔/東京創元社




『国家民営化論』『本格ミステリの現在』や島田荘司氏との共著『日本型悪平等起源論』など理論家としての笠井潔氏の著作は読んだことがあったのだけど、ミステリ本は順番も無視して『哲学者の密室』『天啓の器』をジャケ買いしたものの長らく放置状態のまま、今に至るまで未読でしたが、とうとう決意を固め、矢吹駆シリーズ第一作をようやく読んでみました。

本格ミステリに目覚めたのは遅くて今から10年程前だったので、なんとなく『バイバイ、エンジェル』とか『サマー・アポカリプス』などのカタカナタイトルが「ニューミュージック(笑)」のようで、しかも革命とか現象学も「マジ」な感じだったのが、むしろ娯楽本の方に手が出なかった理由。で、結論から言えば大変楽しめました。特に、

「(略)事件の進行過程では具体的な質問に一切答えないつもりだ。だから犯人が誰かというようなことを尋ねても無駄だよ。僕の関心はひとつの犯罪が現象としてどのように生成していくのかを、始めから終わりまではっきりと見届けることにのみある。そのためには知りえた事実を全部語るわけにはいかないのだ。もしもそんなことをすれば、現象の固有のあり方が外部から恣意的に歪められてしまう危険性が生じる。そうなっては、犯罪の現象学的考察は不可能になるからね」


という箇所。名探偵が連続殺人事件に当初から関わっていながら、その後の殺人を食い止めることができず、最大限の被害者を出した後、事件の真相を語りだすという、パターンへの解答に現象学とは。。。(* ̄ ̄ー ̄ ̄)。

それと『バイバイ、エンジェル』のエンジェルの意味も(* ̄ ̄ ̄ー ̄ ̄ ̄)ニヤリ。。ですね。

三つ星レストランに行って、評価に相応しい極上の味が想像以上であったような感じ。
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【出版社/著者からの内容紹介】アパルトマンの一室で、外出用の服を身に着け、血の池の中央にうつぶせに横たわっていた女の死体には、あるべき場所に首がなかった! ラルース家を巡り連続して起こる殺人事件。警視モガールの娘ナディアは、現象学を駆使する奇妙な日本人矢吹駆とともに事件の謎を追う。日本の推理文壇に新しい一頁を書き加えた笠井潔のデビュー長編。東京創元社 (1995/05)


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by yomodalite | 2008-08-30 23:17 | 文学 | Trackback | Comments(0)

8月のきもの(晩夏編)

f0134963_15232677.jpgあと数日で9月。巷のきものブログでは、もう単衣のキモノを着てみたとか、ホントですかぁ〜??。今年私はたとえ人様より後指指されようとも、9月半ばごろまで、巷の人々が半袖を着ている間は絽のキモノを着るつもりです!な〜んて、妙に気合い入れてる風なのも、つい3日程前に姑に絽帯をもらったから♪。。。。。もうちょっと早くおくれよぉ〜〜(嘘です。すごく感謝してます!!こんな締め跡もないキレイな帯を戴けるなんて!なんて幸せな嫁なんでしょう!)
そんな訳で、コーディネートとしては、こちら→http://nikkidoku.exblog.jp/8758162/ の方が「晩夏」ぽいのですが。。。。
昨日から、関東地方で記録的な大雨。都心部でも今日は雨予報だったのに、午後3時半現在まで中央区では完全に「晴れ」なんですけど、、どうなっているやら。。。ああ、このキモノでお出かけすれば良かったなぁ
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by yomodalite | 2008-08-29 15:23 | きもの | Trackback | Comments(0)

戦争における「人殺し」の心理学 (ちくま学芸文庫)

デーヴ グロスマン/筑摩書房




序盤では、通常の人間が、いかに「人を殺すことに抵抗があるか」が、様々な戦争での実例により説明されている。

第二次世界大戦では米軍歩兵の平均的な発砲率が、わずか15〜20%にすぎなかった。ほとんどの兵士は発砲の際も命中することを求めず、とにかく敵を撃ちたがらない。

兵士の多くは弾を込めるフリをし続けることで、ひたすら発砲の責任から逃れていたらしい。ところが、ベトナム戦争では発砲率は90%へと一挙に駆け上がる。殺人への抵抗感を克服した「脱感作」、「条件づけ」とはどのようなものか、終章では、アメリカの10代の殺人率の異常な増加との関連を探る内容。名著。


◎「ゲーマーのための読書案内」

◎「#もの書きWik」

【目 次】
第一部/殺人と抵抗感の存在ー【セックスを学ぶ童貞の世界】
・闘争または逃避、威嚇または降伏
・歴史に見る非発砲者
・なぜ兵士は敵を殺せないのか
・抵抗の本質と根源

第二部/殺人と戦闘の心的外傷ー【精神的戦闘犠牲者に見る殺人の影響】
・精神的戦闘犠牲者の本質ー戦争の心理的代価
・恐怖の支配
・疲○の重圧
・罪悪感と嫌悪感の泥沼
・憎悪の嵐
・忍耐力の井戸
・殺人の重圧
・盲人と象

第三部/殺人と物理的距離ー【遠くからは友だちに見えない】
・距離ー質的に異なる死
・最大距離および長距離からの殺人ー後悔も自責も感じずにすむ
・中距離・手榴弾距離の殺人ー「自分がやったかどうかわからない」
・近距離での殺人ー「こいつを殺すのはおれなんだ。おれがこの手で殺すんだ」
・刺殺距離での殺人ー「ごく私的な残忍性」
・格闘距離での殺人
・性的距離での殺人ー「原初の攻撃性、解放、オルガスムの放出」

第四部/殺人の解剖学ー【全要因の考察】
・権威者の要求ーミルグラムと軍隊
・集団免責ー「ひとりでは殺せないが、集団なら殺せる」
・心理的距離ー「おれにとってやつらは畜生以下だった」
・犠牲者の条件ー適切性と利益
・殺人者の攻撃的要因ー復讐、条件づけ、2パーセントの殺人嗜好者
・すべての要因を盛り込むー死の方程式

第五部/殺人と残虐行為ー【ここに栄光はない。徳もない】
・残虐行為のスペクトル
・残虐行為の闇の力
・残虐行為の罠
・残虐行為のケーススタディ
・最大の罠ー汝の行いとともに生きよ

第六部/殺人の反応段階ー【殺人をどう感じるか】
・殺人の反応段階
・モデルの応用ー殺人後の自殺、落選、狂気の確信

第七部/ベトナムでの殺人ー【アメリカは兵士たちになにをしたのか】
・ベトナムでの脱感作と条件づけー殺人への抵抗感の克服
・アメリカは兵士になにをしたのかー殺人の合理化ーなぜベトナムでうまく働かなかったのか
・心理的外傷後ストレス障害とベトナムにおける殺人の代償
・忍耐力の限界とベトナムの教訓

第八部/アメリカでの殺人ー【アメリカは子供たちになにをしているのか】
・暴力のウイルス
・映画に見る脱感作とパブロフの犬
・B・F・スキナーのラットとゲームセンターでのオペラント条件づけ
・メディアにおける社会的学習と役割モデル
・アメリカの再感作
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【BOOKデータベース】
本来、人間には、同類を殺すことには強烈な抵抗感がある。それを、兵士として、人間を殺す場としての戦場に送りだすとはどういうことなのか。どのように、殺人に慣れされていくことができるのか。そのためにはいかなる心身の訓練が必要になるのか。心理学者にして歴史学者、そして軍人でもあった著者が、戦場というリアルな現場の視線から人間の暗部をえぐり、兵士の立場から答える。米国ウエスト・ポイント陸軍士官学校や同空軍軍士官学校の教科書として使用されている戦慄の研究書。 筑摩書房 (2004/05)

【著者略歴】米国陸軍に23年間奉職。陸軍中佐。レンジャー部隊・落下傘部隊資格取得。ウエスト・ポイント陸軍士官学校心理学・軍事社会学教授、アーカンソー州立大学軍事学教授を歴任。98年に退役後、Killology Research Groupを主宰、研究執辞活動に入る。『戦争における「人殺し」の心理学』で、ピューリツァー賞候補にノミネート。

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by yomodalite | 2008-08-28 13:57 | 戦争・軍隊 | Trackback | Comments(0)

日本の10大新宗教 (幻冬舎新書)

島田 裕巳/幻冬舎




著者による同じような内容の著書を読んだ気はしたものの、機会があったので、さらりと通読。宗教のもつ本質的な狂気を感じさせないことで、初心者にも優しく、また、色々知っている上級者にとっても、参考になるカタログだと思いました。


とりあげられている宗教の要約を下記にメモ。


天理教/金光教、黒住教と同じく幕末維新期に誕生。教祖=中山みき。

大本/金光教に影響を受けた出口ナオが開祖。その後義理の息子である出口王仁三郎を得て活況を呈した。丑の金神=国常立命(くにとこたちのみこと)。国常立命は、天理教など神道系宗教に共通した「神」。戦前は「皇道大本」、戦後の一時期は「愛善苑」を名乗る。高橋和己『邪宗門』のモデル。他にカルト的人気小説で王仁三郎の孫である出口和明(やすあき)が書いた『大地の母』は、古武術家甲本善紀も絶賛の壮大な内容。

生長の家/創立者谷口雅春は元大本の信者。天皇信仰。宗教活動は雑誌の出版を主体とする。海外(特にブラジル)の信者数の多さが特徴。

天照皇大神宮教/教祖=北村サヨによるナニワ節を思わせる歌による説法。サヨは戦前は生長の家の信者。「踊る宗教」として話題になる。山口県田布施が本部(上之郷利昭『教祖誕生』で岸信介とのかかわりが描かれている)。天照皇大神宮=天照大神(伊勢神宮の内宮は皇大神宮と呼ばれている)。『邪宗門』にも好意的に扱われている。

璽宇(じう)/長岡良子(ながこ)=璽光尊。北村サヨが「第二の璽光尊」と呼ばれた時期もある。有力信者に囲碁の名人 呉清源(ごせいげん)、双葉山、平凡社創業者など。国粋主義傾向。マッカーサー訪問が話題となり復員軍人らに支持されるが、取り締まりが厳しくなり、各地を転々とする。大本系と、真言密教系霊能者の長岡良子の2つのグループがある。天照皇大神宮教と同様に、神道と仏教の混交した宗教。

立正佼成会/東京都杉並区和田が本拠地。霊友会から分派。霊友会、創価学会と同様、日蓮・法華系の教団。創立者=庭野日敬(にわのにっきょう)、長沼妙佼(ながぬまみょうこう)。妙佼は以前は天理教信者。

霊友会/久保角太郎とその兄嫁である小谷喜美により発足。男女ペアである点は立正佼成会と同様。元を作ったのは西田無学。「総戒名」「霊鑑」「青教巻」などは、立正佼成会や、霊友会の分派にまで受け継がれている。1949〜53まで次々と分派が生まれた。1971年に喜美が亡くなると久保の息子の久保継成が会長に就任。東大印度哲学科博士課程修了の継成は、「インナートリップ路線」を掲げ若年層に支持を拡大した。

創価学会/創立者=牧口常三郎は小学校の校長を歴任した教育者。創立当初は「創価教育学会」。日蓮正宗を信仰し現世利益を特徴とする。二代目=戸田城聖は、小学校の代用教員から「時修学館」という学習塾で成功を治め、受験参考書もベストセラーになっている。出版、食品など実業家としての才能に加えひとの心をつかむ能力に長けていた。名称を「創価学会」に改め、信者は飛躍的に拡大した。三台目=池田大作は、敗戦直後に入信し、戸田の作った出版社や、小口金融で頭角をあらわし、戸田が亡くなった後、32歳で会長に就任。「仏法は勝負」など勝ち負けを強調する。会長をはじめ会員は、『三国志』『水滸伝』を好む。

世界救世教/開祖=岡田茂吉は元大本の信者。浅草の露天商の生まれ。「手かざし」は大本に遡るものだが、世界救世教が、手法をシステム化し分派にまで広がっている。箱根美術館やMOA美術館などの美術への関心は王仁三郎の影響がみられる。自然農法・有機農法の運動の先駆。ヤマギシ会も一部で世界救世教から土地を借りていた。1955年に岡田が亡くなると、数々の分派ができる。

神慈秀明会/「あなたの健康と幸せを祈らせてください」の3分間の手かざしが有名。
創立者=小山美秀子は、東京自由学園で学び、やがて岡田茂吉の直接の弟子となる。二代目=小山荘吉は、美秀子の長男で海外での信者獲得にも貢献した。三代目=小山弘子は荘吉の妹で、街頭の手かざしなどさらに教団の勢力拡大したが、若者の学業や、仕事放棄などにより社会的批判を受けた。

真光系教団/世界真光文明教団や崇教真光。創立者=岡田光玉は元世界救世教の有力信者で布教師。陸軍少将の7人姉弟のただ一人の男子として東京に生まれる。陸軍士官学校に入学、陸軍中佐時代に胸椎カリエスと腎臓結石を患い予備役に編入。その後実業界に転じるが空襲により事業は灰塵に帰した。生長の家、大本、世界救世教と関わりをもった。1953年に多田建設に取締役顧問ちして入社。実業家としての活動を続けながら宗教活動を展開する。1963年に世界真光文明教団に名称を改める。浄霊を「真光の業」と呼ぶ。1974年に光玉が73歳で亡くなると内紛が起こり、光玉の養女であった岡田恵珠が「崇教真光」を名乗るようになった。今日のスピリチャルブームの先駆けとなったともいえるが、簡単に関われ、抜けるのも簡単であるため、組織の永続性を保つのが難しい。

PL教団/正式名称パーフェクト・リバティー教団。毎年8月1日に行われる花火が有名。打ち上げられる花火の数は、隅田川花火の6倍。ラストは8千発を一挙に連続して打ち上げられる。PLの花火を経験するとほかの花火での感動が難しくなるほど。創立は戦前に遡る。開祖=御木徳一は松山の商人の家の生まれだったが、父親が商売に失敗し、寺の養子となり修行のため諸国を遍歴した後、安城寺の住職となるが貧乏のため、僧籍を離れ大阪で商売をするようになるう。徳光教の信者となり、1931年扶桑教ひとのみち教団を立ち上げる。ひとのみち教団は大きく発展し中国や韓国にも進出し各地に拠点が作られた。しかし百万人を超える信者を獲得するようになると、国家はその動向を危険視するようになり教団は解散させられた。当初よりひとのみち教団は大成に順応する姿勢を示していたので弾圧は言いがかりにちかいものだった。徳一は厳しい取調べ後の保釈中に死亡し息子の徳近が懲役4年の有罪、敗戦によって不敬罪が消滅するまで、囚われの身となっていたが、1945年に徳近が出所すると、パーマネント・リバティー教団に改称され、その後すぐにパーフェクト・リバティー教団に改められた。

真如苑/1980年代半ばに、沢口靖子、高橋恵子、鈴木蘭々、松本伊代、大場久美子などが入信していると伝えられ話題となる。「接心」と呼ばれる修行は霊的な開発を目的としたもので、教団独自の秘技として注目された。創価学会、立正佼成会に次ぐ第三位の規模を誇る教団とみられる。真言密教系で現世利益の実現を求める。京都の真言宗醍醐寺派の総本山、醍醐寺と密接な関係を持つ。「接心」はシャーマニズムというよりカウンセリングに近いもので、受付の雰囲気など日常的な感覚で、創価学会のような積極性はみられない。
_______________

【内容説明】新宗教とはいかなる存在なのか。創価学会に次ぐ教団とは? 新宗教は高校野球をどう利用してきたか等の疑問に答えつつ、代表的教団の誕生と分裂、社会問題化した事件などをひもとき、日本人の精神と宗教観を浮かび上がらせる。
幻冬舎 (2007/11)

【目 次】
はじめに
1.天理教
2.大本
3.生長の家
4.天照皇大神宮教と璽宇
5.立正佼成会と霊友会
6.創価学会、
7.世界救世教、神慈秀明会と真光系教団
8.PL教団
9.真如苑
10.GLA(ジー・エル・エー総合本部)
おわりに〜言及できなかった新宗教:金光教、善隣教、阿含宗


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by yomodalite | 2008-08-25 20:04 | 宗教・哲学・思想 | Trackback | Comments(0)

「海洋国家」日本の戦後史 (ちくま新書)

宮城 大蔵/筑摩書房




アジア外交といえば、中国、韓国・朝鮮ばかりをイメージしてしまいますが、本著はインドネシアを主軸として、アジアの転換期に日本がどのように関わってきたのか、というお話。今もって話題のつきないデヴィ夫人の活躍も。アメリカの属国をやりながら、アジアの非政治化を目指す。外交とはつくづく難しい。

「毎日jp」今週の本棚/五百旗頭(いおきべ)真・評

◇アジアの経済建設という劇

 あの戦争に敗れた日本の戦後外交は、受け身の対応を基調としてきたと言われる。とりわけ超大国アメリカとの関係はそう見える。日本外交は舞台の中央に立って大見得(おおみえ)を切るような派手なスタイルをとらないし、自らの外交的成功を世界に誇って回るようなこともしないので、実際より小さく見られがちである。

 そのような見てくれと大方の評判に騙(だま)されてはいけない。日本が新しい時代をつくり出すうえで国際的役割を果した局面がある。それもアジアの地で、というのが本書のメッセージである。

 『「海洋国家」日本の戦後史』という本書の表題を見て、日米海洋同盟の話かと早とちりしてはいけない。日本の南方にある多島海の国インドネシアを軸とするアジアの歴史が、本書の世界である。

 アジアの戦後史とは何であったか。第一局面は、脱植民地化と独立の時代であった。革命と解放の熱き政治の時代であり、毛沢東やスカルノらカリスマ的英雄が跳躍する局面である。(ちなみに日本史は、この局面を西郷隆盛や坂本竜馬の明治維新期に済ませており、戦後史は経済再建と民主化をテーマとした。)

 戦後アジアの第二局面は、経済建設を中心とする実質的な国づくりの時代であり、朴正熙、スハルト、マハティール、トウ小平ら開発権威主義者たちの活躍が目立った。第三局面は、フィリピンのピープルズ・パワーがマルコス政権を倒して以後の民主化の季節である。

 本書が描き出すのは、第一と第二の局面であり、とりわけ第二の局面を切り開いて、戦後日本が自らの経済主義的な「海洋国家」の生き方を、南の海の国に拡(ひろ)げて行くプロセスがハイライトである。

 アジア・アフリカ諸国が参集した一九五五年のバンドン会議から本書は始まる。対米基軸で再建を図る日本は、しかし親米反共の立場で会議に臨まなかった。もとより会議で活発な反植民地主義と反米左翼に同ぜず、中立主義を政治的立場ともせず、平和主義を説きつつアジアへの復帰を求める鮮明でない存在だった。日本の知るかつてのアジアと全く違う反植民地主義の政治感情が煮えたぎるアジアを前に立ちすくんだ日本であった。

 一九五七年にインドネシアを訪れた岸首相がスカルノ大統領に対して、こじれていた賠償問題を大胆な決断によって決着したことにより、日本は南方に経済地平を拡げることになった。

 反植民地主義の精神動員によって多元的な大国を統合し、共産中国に接近するスカルノ政治。スカルノに対する地方の反乱を米国CIAは支援して敗れた。この地での信頼と影響力を失うアメリカ。マレーシアを守るため強固な反スカルノに走るイギリス。日本はスカルノを親共であるよりも民族主義であると定義し、この国との関係を切らない。一九六五年の九・三〇事件後にスハルトが指導権を確立すると、日本は真先に協力と支援に乗り出す。

 この第二局面への移行に際して、日本は米英両国がそれぞれに外交的影響力を失う中で、インドネシア債権国会議を東京で開催し、開発の時代を南方に切り開く。それは独立したアジアの国をめぐって、中国の革命路線を抑えて、地道な経済建設の時代を呼び起すことになった。

 朝鮮戦争やベトナム戦争といった冷戦の地域的熱戦化に眼(め)が奪われがちななかで、静かな、しかし長期的に真に重要なアジアのドラマと、それへの日本の関与を、はじめて実証的に解明した著者の総集編ともいうべき本書である。

毎日新聞 2008年6月29日 東京朝刊
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【本の内容 asahi.com】独立と脱植民地化が課題となった戦後アジアは、冷戦と革命をめぐる渦に巻き込まれる。ひとつの軸であったインドネシアでの1965年の政変を転換点に、「非政治化」したアジアの開発は本格化する。解禁された日米ほかの外交機密文書をもとに、アジアの半世紀の変容における日本の航跡を描き出す。筑摩書房 (2008/06)

1.「アジア」の誕生―バンドン会議と日本のジレンマ
2. 日本の「南進」とその波紋―独立と冷戦の間で
3. 脱植民地化をめぐる攻防―日英の確執、中国との綱引き
4. 戦後アジアの転換点―1965年
5. アジア冷戦の溶解―米中接近と「中国問題」の浮上
エピローグ(「アジアの非政治化」と戦後日本、「吉田ドクトリン」と「福田ドクトリン」、21世紀のアジアと日本)

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by yomodalite | 2008-08-24 20:54 | 政治・外交 | Trackback | Comments(0)

家族の昭和/関川夏央

家族の昭和 (新潮文庫)

関川 夏央/新潮社

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戦中に生まれ「もはや戦後ではない」と言われた東京オリンピックの年に売れっ子TVドラマ脚本家になった向田邦子が「戦前」で、

日露戦争勃発の年の明治に生まれ、偉大な父露伴から、江戸の粋を身体で覚えさせられた幸田文が「戦後」という章順には、最初違和感を抱くが、‘78年(昭和53年)の『父の詫び状』発表までは「戦前」は暗黒であり、昭和後半までは「存在」していなかった。

昭和という時代は、その後半において、まず「戦前」を発見し、明治・江戸へと遡った。江戸の静かなブームは現在まで続き、平成の世に「落語」が再発見されている。女の自立は、戦後欧米由来一辺倒だったが、昭和後半において、明治の女の自立がようやく発見された。

バブル前夜に若くして亡くなった向田邦子は、戦前の家族を描いて仕事を終えたが、江戸の粋を作家としてではなく、一生活人としてたったひとりで体現していた幸田文は、父を描くだけではなく、戦前の家庭教育による女の骨太な自立を描いて、バブル終焉間近に亡くなった。「昭和史」においては、やはり、この順番で正しいのかも。
 
昭和後半生まれとしては、第3章の鎌田敏夫のドラマは、この中ではもっとも記憶に残っている。「ダイヤル回して手を止めた〜♪」のは、団塊の世代と言われる人たちだった。終戦後4、5年あとに生まれ、必死に豊かさを求めた親をもち、激しい競争と、学生運動という戦争を経て、核家族と、専業主婦による「家族」のドラマは、不倫と、学生時代の思い出をスパイスに描かれていた。

蒲田のドラマの主人公は、その後独身の若者へと移っていき、「家庭」は、育ちのレベルを著わすようになる。経済的格差による抗えないアイデンティティ「○金(まるきん)」、「○貧(まるび)」、ブランド信仰...

『3丁目の夕日』とは全く異なる、永く永く揺れ動いたリアルな昭和史。

向田邦子/1929年11月28日 - 1981年8月22日『父の詫び状』(1978年)
幸田文/1904年9月1日 - 1990年10月31日 『流れる』(1955年)
小川知子/1949年1月26日〜
団塊の世代/1947〜1949(※1955年までの説もあり)

「壊れかけたメモリーの外部記憶」
http://blogs.yahoo.co.jp/rtpcrrtpcr/42923486.html

1.「戦前」の夜ー向田邦子『父の詫び状』と、吉野源三郎『君たちはどう生きるか』
・平伏する父
・稼ぐ娘
・ふたつの家の「家長」
・「コペル君」たちの東京
・「あの人々」への視線
・「大衆」の住む家
・家族のプライバシー
・大事なことはしゃべらない

2.女性シングルの昭和戦後ー幸田文『流れる』ほか
・女だへの家
・向島の生家
・「おとうと」を亡くした人
・「脊梁骨を提起しろ」
・父の思い出を書く人
・女たちがひとりで棲む街
・玄人に伍してみたい

3.退屈と「回想」ー鎌田敏夫『金曜日の妻たちへ』ほか
・「妻たち」の昭和末
・「回想」する彼ら
・「生まれ育ち」には勝てない
・衣食足りて退屈を知る
・リバーサイドからベイエリアへ
・「昭和」の終焉

終章 家族のいない茶の間
____________

[本の内容]向田邦子『父の詫び状』、吉野源三郎『君たちはどう生きるか』、幸田文『流れる』、そして鎌田敏夫『金曜日の妻たちへ』……。家族が寄り集まっていた茶の間から、一人去り、二人去り、そしてついに誰もいなくなったのが昭和という時代だった。戦前・戦中・戦後、さらにバブル期へ。「家族」を切断面に見た、「昭和期日本」の姿。
新潮社 (2008/05)

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by yomodalite | 2008-08-24 17:20 | 歴史・文化:美術 | Trackback | Comments(0)
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読書以外の件はできるだけ書かないはずのブログなのだけど、男子サッカーへのもやもやを吹き飛ばしてくれた「なでしこジャパン」があまりにも素晴らしかったので。こんなに楽しくて、巧くて、爽快な日本のサッカーを観たのは久しぶり、というか初めてだったかもしれない。


★続きを読む!!
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by yomodalite | 2008-08-16 14:45 | スポーツ | Trackback | Comments(0)

偏見

f0134963_22161717.jpg【推理】
新潟のJ1昇進、観客数増員というJリーグへの貢献のご褒美で、五輪監督ゲット!

【疑問】
予選の結果内容からほとんどのサッカーファンより見放されるも解任なし。選手には給料も少ない海外での経験を奨励するも、監督は短期コーチ留学でもあればもう充分という協会の認識。

★続きを読む!!
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by yomodalite | 2008-08-14 21:47 | スポーツ | Trackback | Comments(0)
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宮崎駿作品が、それほど好きではないので、今まで映画館で観たことはなかったのですが、

・最後の作品
・主題歌を先に作り、それにあわせてとにかく子供向けに創った。
・初めての「水」の表現。
・全部手描き。。。

などが気になり、今回はスクリーンで観ることにしました。

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by yomodalite | 2008-08-13 20:42 | 映画・マンガ・TV | Trackback | Comments(0)

夜/橋本治

f0134963_13322048.jpg久しぶりに橋本治氏の小説を読む。

『暮色』『灯ともし頃』『夜霧』『蝋燭』『暁闇』5編の短編集。

★続きを読む!!
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by yomodalite | 2008-08-12 13:36 | 文学 | Trackback | Comments(0)

旧「読書日記と着物あれこれ」。歴史/文学/お笑いを好み、着物生活をしていたはずが、いつしかマイケルジャクソンのように本を読もうになってしまったブログ。永年暮らした東京を離れ、現在は大阪を満喫中。


by yomodalite