カテゴリ:報道・ノンフィクション( 79 )

「A」 マスコミが報道しなかったオウムの素顔 (角川文庫)

森 達也/KADOKAWA / 角川書店



同ドキュメンタリー観賞後、読了。本も映画と同様傑作。

【BOOKデータベース】オウムの中から見ると、外の世界はどう映るのだろう?一九九五年。熱狂的なオウム報道に感じる欠落感の由来を求めて、森達也はオウム真理教のドキュメンタリーを撮り始める。オウムと世間という二つの乖離した社会の狭間であがく広報担当の荒木浩。彼をピンホールとして照射した世界は、かつて見たことのない、生々しい敵意と偏見を剥き出しにしていた—!メディアが流す現実感のない二次情報、正義感の麻痺、蔓延する世論を鋭く批判した問題作!ベルリン映画祭、山形国際ドキュメンタリー映画祭をはじめ、香港、カナダと各国映画祭で絶賛された「A」のすべてを描く。



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by yomodalite | 2007-03-20 12:05 | 報道・ノンフィクション | Trackback | Comments(0)

愚かな韓国人に鉄槌を

イ・ジョンシク/ぶんか社



在日をテーマにした本を集中的に読もうと思い立ち、最初に読んだ本。単純な反韓本のようなタイトルですが、在日韓国人の著者による真摯な内容に、在日日本人も大いに考えさせられる。

著者の略歴からは波乱に満ちた印象をうけますが、この年代の在日の人にとってはめずらしくはない経歴ではないかと思う。それだけに在日の複雑さ、困難さが伝わる。

新井将敬自殺の真相への仮説に心が打たれた。本物の日本人たらんとして、割腹自殺を遂げた新井氏に対して、日本人を世襲できた事をありがたく思う。
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【MARCデータベースより】元在日工作部員であった著者が、憤怒の感情で韓国の「悪」を白日のもとにさらす! 韓国人の病理や韓国史の弱点を露にし、日韓問題や北朝鮮拉致問題についても論じていく。呑気な日本人にも鉄槌を下す一冊。

■著者略歴/李 鍾植
仮名。国籍:朝鮮民主主義人民共和国→大韓民国→現在は帰化して日本国籍。都内某私立大学在学中の1980年代初頭に、韓国国家安全企画部から接触を受け、「大韓民国及び同盟国に不利益な団体と人物の監視」を依頼される。これをきっかけに大学内の左翼グループや右翼学生の内偵に従事。工作部員としての活動を始める。ある日、北朝鮮工作員からも接触を受け協力を依頼されたが、事実を韓国当局に報告したところダブル(二重スパイ)になることを強要されたため、身の危険を感じて関係を解消する。

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by yomodalite | 2007-03-19 18:21 | 報道・ノンフィクション | Trackback | Comments(0)

ブレンダと呼ばれた少年

ジョン・コラピント,John Colapinto,村井 智之/扶桑社



インターセックス(半陰陽児)に対して、1950年代以降、医学では「できるだけ早い時点でノーマルな男性もしくは女性に見えるように外科手術をほどこして、本人にはできるだけ事実を教えないのがその子のためである」とされてきた。

性差は育ちにあると考えるジェンダーフリー論者の圧力によって、絶版となっていましたが2005年にようやく扶桑社により復刊されています。

「日本インターセックス・イニシアティブ」
http://intersexinitiative.org/japan/review-colapinto.html
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【BOOKデータベースより】生後8か月の男の子がモルモットにされた。不幸な事故で性器を失った男の子が性転換手術を受けさせられた。「性は環境によってつくられる」という理論の裏付けに利用された“少女”が直面した心の葛藤とは。
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by yomodalite | 2007-03-19 13:55 | 報道・ノンフィクション | Trackback | Comments(0)

ドキュメンタリーは嘘をつく

森 達也/草思社



本書には、TVドキュメンタリー企画として「陽の目を見なかった企画」が挙げられています。

“グレート東郷” “見世物小屋の蛇娘”“野村沙知代”や“佐川一政”...

また、男性誌に必ずといっていいほど掲載 されている“美容整形の包茎手術”の広告から 「包茎共同幻想論」の企画など、すべて見てみたい企画ばかり。

ドキュメンタリーを愛しているという著者ですが、ドキュメンタリーを製作できない状態で、著述や、コメンテーター、トークゲストなどの業態でしか見ることが出来ないのは本当に残念なことです。

◎プロローグ
『ボウリング・フォー・コロンバイン』は凡庸な作品ではないが、ムーアの旧作『ロジャー&ミー』の方が面白かった。ドキュメンタリーへの幻想や思い込みを解体することは、『ボウリング〜』がなぜ、ぼくの定義ではダメな作品であるかを論述する過程と並行する。ドキュメンタリーの魅力そのものを否定する文脈に直結する可能性もある。

◎第1章/ドキュメンタリーに惹かれる
九龍砦の中の青空/「小人の存在が放送禁止なんです」/「ミゼットプロレス」の伝説

◎第2章/「客観的な真実」
「ありのままの日常」/亀井文夫と『戦う兵隊』/牛山純一と「ノンフィクション劇場」/封殺された『南ベトナム海兵大隊戦記』/変質していくNHK

◎第3章/オウム真理教を撮る
「オウムネタなら何でも持ってきてよ」/撮影の中断命令、契約解除/キャメラを向ける主体/撮影されることへの意識

◎第4章/撮る側のたくらみ
オウム信者「不当逮捕」の映像/ドキュメンタリーは一人称だ/作り手であることの覚悟/倫理と道義を踏み越えて
「嘘が多くなるほど艶を増す」

◎第5章/フィクションとノンフィクションの境界で
溶解する虚実の被膜/キャメラの前で演じられるもの/キャスティングされた疑似家族

◎第6章/わかりやすいマスメディア
国民のニーズに応える/モザイクの向こう側/慢性化した不安の行き着く果て/マスメディアの空隙/「目を逸らさない」ということ/「わかりやすさ」が奪いつづけるもの/空疎共同幻想

◎第7章/全ての映像はドキュメンタリーだ
ドキュメンタリーからの逸脱/「撮る」という作為の意味/悪辣で自分本位で、自由な/『奇跡の詩人』の致命傷

◎第8章/陽の目を見なかった企画
グレート東郷の秘密/野村沙知代を被写体に/佐川一政との二年間

◎第9章/報道とドキュメンタリー
深夜のシェフィールド駅/ニュースとドキュメンタリー/「報道ドキュメンタリー」という矛盾

◎第10章/ドキュメンタリーの加害性
デジタルの恩恵/放映を阻むもの/くりかえされる自問と煩悶/鬼畜の所業

◎第11章/セルフドキュメントという通過点
身も蓋もないエゴイズム/セルフドキュメントへの懸念/「自分探し」の隘路/商品から遠ざかる映画

◎第12章/世界はもっと豊かだし、人はもっと優しい
次に撮りたいもの/「屠場」に働く人々/『A2』から『A3』へ/二〇〇一年九月十一日/「他人を想像する力」/たかが映画

◎第13章/ドキュメンタリーは嘘をつく
アクション・ドキュメンタリー/嘘をつく装置/嘔吐する男/BOX東中野の映像脱退/ドキュメンタリーとドラマの狭間

◎第14章/ドキュメンタリー映画評
安易な結論が世界を壊す/徹底して無邪気な善意/犯罪加害者のモンスター化/果てしない憎しみの連鎖/糊の剥げた新聞記事/『スーパーサイズ・ミー』

◎エピローグ
ムーアの主張には、全面的に賛同することができる。強引で作為的でアンフェアな属性は、ドキュメンタリーの領域としてはむしろ健全な位置にある。でも、ムーアはドキュメンタリーを愛していない。ぼくは偏愛している。使命感や社会主義ではなく、「これが自分の業なのだ」と書けば、いちばん近いが、どうしても言語化できない。
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【出版社/著者からの内容紹介】 オウムを内部から撮った作品『A』で知られる著者が、自らの制作体験を踏まえて展開するドキュメンタリー論。表現行為としての危うさと魅力と業の深さを考察する。

【BOOKデータベース】ドキュメンタリーとは事実の客観的記録である—ほんとうにそうなのだろうか?すべての映像は、じつは撮る側の主観や作為から逃れることができない。ドキュメンタリーを事実の記録とみなす素朴で無自覚な幻想からは、豊かな表現行為は生まれようがない。だが、撮ることに自覚的で確信犯的な作品の中には、観る側の魂を鷲づかみにしてきたものが多々ある。本書は、ドキュメンタリーというものが拓いてきた深甚な沃野に向き合い、その悪辣で自己本意で、自由で豊潤な表現世界の核心へと迫るものである。たんなる映画作品論ではない。この現実世界の見方そのものを揺さぶる鮮烈な論考である。


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by yomodalite | 2007-03-19 13:20 | 報道・ノンフィクション | Trackback | Comments(0)

日本テレビとCIA 発掘された「正力ファイル」 (宝島SUGOI文庫)

有馬 哲夫/宝島社



著者は早稲田大学教授。米国で正力ファイルを発掘し、公式には発表されていない日本テレビ設立の経緯を公表した。
当時の「赤化」への恐怖、吉田茂が正力を「潰し」に行く経緯など。。。

プロ野球、巨人、長嶋、プロレス、電通も視聴率もすべて。。。
民主主義とは、情報戦なのだと改めて認識しました。

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「日本テレビ放送網」----なぜ日本テレビの社名は「放送網」となっているのか?

「網」の字にはどんな意味があるのか?

その理由は設立時の秘密にある。実は日本へのテレビの導入は米国による情報戦の一環だった。

テレビ放送網は、そのまま「反共の防波堤」であり、さらに軍事通信網にもなるはずだったのである。「テレビの父」である正力松太郎のテレビ構想は、アメリカ側にたくみに利用されたものに過ぎない。

CIAは正力に「ポダム」という暗号名まで付けていたのである。

著者がアメリカ公文書館で発見した474ページに及ぶ「CIA正力ファイル」----。そこには、CIAが極秘に正力を支援する作戦の全貌が記録されていた!日米で蠢くCIA、政治家、ジャパン・ロビー、官僚、そして諜報関係者・・。

日本へのテレビ導入はアメリカの外交、軍事、政治、情報における世界戦略のパーツの一つだった。

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by yomodalite | 2007-03-17 20:28 | 報道・ノンフィクション | Trackback | Comments(0)
痛快娯楽本。文才があって、尚かつホンモノ。面白くないわけがない。次作にも期待します。

2007年7月に2作目が出版された模様。『右翼な人びと—狙った獲物は外しません』

タイトルですでに笑えますね〜。早く読もっと。

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【MARCデータベース】我々の業界といえば、依頼されれば報酬次第で何でもするのが営業方針になっております。アングラ便利屋とでも言いましょうか…。元右翼団体幹部が自らの体験に基づき東京拘置所で書き下ろした、抱腹絶倒のノンフィクション。

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by yomodalite | 2007-03-16 13:16 | 報道・ノンフィクション | Trackback | Comments(0)

ピカレスク/猪瀬直樹

井伏の盗作疑惑に関してはよくわかりましたが、果たしてそれが「井伏さんは悪人です」ということにつながるのかどうか。

文学者という小悪党と、猪瀬直樹の相性の悪さが少し感じられました。

目次
第1章 第一の事件
第2章 第二の事件
第3章 山椒魚の受難
第4章 第三の事件
第5章 第四の事件
第6章 三鷹・下連雀へ
第7章 太田静子の日記
第8章 山崎富栄の青酸カリ
終章 増補『黒い雨』と井伏鱒二の深層


【出版社/著者からの内容紹介】 流行作家の太宰治が東京・三鷹の玉川上水で心中事件を起こしたのは昭和23(1948)年6月13日の深夜。懸命な遺体捜索が続けられるなか、6月17日、太宰による遺書の下書きが見つかったと新聞は報じる。そこには、文学の師・井伏鱒二に向けた言葉が綴られていた。「みんな、いやしい慾張りばかり。井伏さんは悪人です」——。「太宰治心中事件の謎は、死後、半世紀を経たいまも封印されている。『井伏さんは悪人です』が、太宰の自殺にどう関わっているのか。死ぬ直前に溢れ出た想いが遺書に込められたとすれば自殺の動機に含めぬわけにはいかない」(本文より)。関係者から得た新事実と精緻な推理を駆使し、太宰治の自殺、遺書の謎を猪瀬直樹氏が描き切る。




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by yomodalite | 2007-03-15 21:53 | 報道・ノンフィクション | Trackback | Comments(0)

東京番外地/森達也

本書は2005年7月〜2006年9月号まで「波」に連載していたものに訂正・加筆したもの。

森達也氏の著作は、これまでに、「A」「A2」「放送禁止歌」「職業欄はエスパー」「下山事件」「ドキュメンタリーは嘘をつく」などを読んできましたが、これは残念な内容でした。場所の選定が在り来たりで、手垢がついているようなところばかりなのに、その感想も、

(P157)_戦時にいける指導者を極悪人として縦断して戦後処理の一環にすることについて、基本的に僕はなじめない。戦争は一部の邪な指導者によって国民が騙されたから起きるのではなく、その国の民意や世相も含めての全体の構造によって起きると考えられるからだ_

(P165)_日本政府は、軍人の遺族らに年金を支給しながら、民間人犠牲者に対しては、「雇用関係がない」ことを理由に補償の対象外としてきた_

など、、、、、。

本著での森氏は、右を見ても左を見ても「良心」ばかり、ぜんぜん「極私的」ではないです。
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第一弾/要塞へと変貌する「終末の小部屋」ー葛飾区小菅一丁目(東京拘置所)
第二弾/「眠らない街」は時代の波にたゆたうー新宿区歌舞伎町一丁目
第三弾/異国で繰り返される「静謐な祈り」ー渋谷区大山町一番地(東京ジャーミー)
第四弾/「縁のない骸」が永劫の記憶を発するー台東区浅草二丁目(身元不明相談所)
第五弾/彼らとを隔てる「存在しない一線」ー世田谷区上北沢二丁目(東京都立松沢病院)
第六弾/「微笑む家族」が暮らす115万㎡の森ー千代田区千代田一丁目(皇居)
第七弾/隣人の劣情をも断じる「大真面目な舞台」ー千代田区霞ヶ関一丁目(東京地裁)
第八弾/「荒くれたち」は明日も路上でまどろむー台東区清川二丁目(山谷)
第九弾/「世界一の鉄塔」が威容の元に放つものー港区芝公園四丁目(東京タワー)
第十弾/十万人の呻きは「六十一年目」に何を伝えたー墨田区横網二丁目(東京都慰霊堂)
第十一弾/桜花舞い「生けるもの」の宴は続くー台東区上野公園九番地(上野公園)
第十二弾/高層ビルに取り囲まれる「広大な市場」ー港区港南二丁目(東京都中央卸売市場食肉市場【芝浦屠場】)
第十三弾/夢想と時とが交錯する「普遍の聖地」ー文京区後楽一丁目(後楽園ホール)
第十四弾/「異邦人たち」は集い関わり散ってゆくー港区港南五丁目(東京入国管理局)
第十五弾/私たちは生きていく、「夥しい死」の先をー府中市多磨町四丁目(多摩霊園)
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【BOOKデータベース】要塞へと変貌する東京拘置所、静謐な祈りが満ちるイスラム寺院、再開発の喧騒に埋もれる食肉市場、61年目を迎えた戦禍の慰霊碑…。第一線の映像作家が辿る、都会の境界。不夜城のネオンにふらつき、ドヤ街の路上で酒を呑み、炎天の雑踏に漂い、そして隣人たちの息吹を感じる。現代の15の情景を活写した極私的ドキュメント。(2006年11月発行)





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by yomodalite | 2007-03-15 14:39 | 報道・ノンフィクション | Trackback | Comments(0)
今日からブログ初め。(3月、4月の記録が異常に多いのは、それ以前に読んだものを記憶により保管したため)

記念すべき第一冊にふさわしい本書は、昭和の偉人伝とも言える内容。

空手、極真いずれにもあまり興味はありませんが、昭和史の一面としてたいへん興味深い内容でした。著者2人による2部校正は、時系列ではなく、各々の取材により倍達の人生を描いていて、真実の補完がされています。それだけに重複する内容も多いのですが、二人とも気迫のこもった文章で読ませ、倍達伝説の検証を細かくやっている点も文句なく、各々一冊でも出版できる内容。

歴史好きとしては、1部の塚本佳子氏の感情を抑えた文章が格調高く堪能できますが、2部の小島一志氏は、極真有段者にして、空手バカ一代の影響をど真ん中で受けた世代であり倍達の悲願であった「空手全科」の編集をまかされていたなど、晩年の倍達の生の姿や、格闘技好きな人にはお馴染みの話題の多くに、リアルタイムで接しています。

梶山一騎による一連の作品だけでなく、多くの脚色に満ちていると思っていた倍達伝説ですが、意外と真実が多いことに驚かされました。

韓国籍を隠し、日本人としての歴史を作るための嘘はあったが、格闘家大山倍達は、虚像ではなかった。

★★★★☆

◎[参考サイト]アングルのバイオリン

波 2006年8月号より
著者インタビュー『大山倍達正伝』刊行にあたって「昭和の闇に封印された真実」

小島一志・塚本佳子『大山倍達正伝』

――624頁という超大作の執筆、お疲れさまでした。
小島 いえ、どうも。大山倍達という一人の人間の生涯を追うのは、言ってみれば富士の樹海に入り込むようなものです。大変な恐怖を感じましたが、まあ死ぬことはないだろうから、と(笑)。

――本書は、塚本さんが「第一部」で人間・崔永宜(大山倍達の韓国名)の生涯を描き、小島さんが「第二部」で格闘家としての大山倍達を検証する、という構成になっていますね。

小島 はい。僕は大学で極真空手を学びはじめ、その後、空手雑誌の編集者を経て、大山総裁のライフワーク『空手百科事典』の編集のため、総裁と親しくお付き合いさせていただきました。それに対して、塚本は私が作った編集制作会社の社員第一号で……。

塚本 95年から極真空手の雑誌の編集に携わりはじめましたが、私は大山総裁を直接は知らないんです。

小島 大山総裁を知らないからこそ書けること、知っているから書けること、それを二人で書き分けられるだろうと考えたんです。

――大山倍達という不世出の空手家の生涯、その実態はこれまで誰もはっきりと把握することができませんでした。それを500点余りの資料、300人近くに及ぶ膨大な証言から浮かび上がらせていくのは、気の遠くなるような作業だったでしょう。

小島 はい。僕は段ボールを6個用意して、資料にすべて通し番号を付けて、時代ごとに分けて入れていったんです。でも、一つの資料を引っ張り出すのに30分もかかったりして……(笑)。

――その結果、大山倍達の伝説が次々と覆っていく衝撃的な本に仕上がりました。そんな中でも、戦後、在日朝鮮人たちの民族運動に彼が深く関わっていたというのは驚愕の事実でした。戦後の在日社会の実態は、昭和史の闇とも言える部分でしたし……。

塚本 民団(在日本大韓民国民団)や総連(在日本朝鮮人総連合会)に関する書籍を読んでいて、たまたま総裁の本名を見つけたんです。それから民団関連の機関紙や韓国系の新聞などを集めていきました。すると、そこには総裁の名前だけではなく、写真も載っていたんです。そして当時の関係者の方々の証言をこつこつと集めていきました。戦後、在日朝鮮人たちは、南側の民族派と北側の共産主義者に別れて、激しい抗争を繰り広げていたんです。

――その戦闘の最前線に、実は大山倍達がいた、と。

塚本 はい、常に意気揚々と戦いに参加していたんです。

――彼が最も多くの実戦を重ねていたのが、この時期だった……。

小島 当時のことを知る人たちは、全員が口を揃えて、「大山倍達は強かった」と語っています。

塚本 その頃の写真を見ても一目瞭然なのですが、本当に凄い肉体をしているんですよね。食糧事情の悪かった中、肉体だけを見ても、彼は「超人」であったと言っていいでしょう。

――また、小島さんの「第二部」では、これまでずっと謎とされてきたアメリカ遠征の全貌が明らかになります。

小島 もともとは、アメリカでプロレスラーと戦ったなどという武勇伝はまったくのデタラメだろうと思っていました(笑)。ところが、そうではなかった。この章を書くにあたっては、流智美や小泉悦次などプロレス研究家の協力を得ました。今はネット社会ですから、世界中にマニアのネットワークが出来ているんです。たとえば1952年5月から7月までのミネアポリスでのグレート東郷(大山倍達と一緒にアメリカを転戦したプロレスラー)の試合の記録はないか、とアメリカのマニアに問いかけてもらったり……。さらに、当時総裁がアメリカから妻の智弥子さんや日本のメディアに送った手紙などを、僕自身、総裁から見せていただいていましたから、それらを一つずつ照合していきました。その結果、すべてがきれいに一本の線でつながったんです。

――大山倍達は祖国を捨て、日本で「世界一の空手家」の名声を手にして長年の夢を叶えるわけですが、その一方で、晩年には祖国への思いを募らせていく姿が本書では描かれていますね。

塚本 韓国での取材で、お兄さんや息子さん(大山倍達は韓国にも妻がいて、もう一つ家庭を持っていた)などに貴重な話を伺うことができました。日本での総裁は、常に公の人であり続けなければいけなかった。しかし、韓国の家族の話からは、すごく人間くさい晩年の総裁の姿が浮かび上がってきました。等身大の人間・崔永宜の居場所が、実は祖国・韓国に存在していたんですね。

(こじま・かずし つかもと・よしこ)

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【BOOKデータベース】
資料五〇〇点、証言者三〇〇人余、渾身の取材で驚愕の新事実続出!同胞同士の抗争に明れ暮れた戦後、アメリカ遠征激闘の真実、祖国のもうひとつの家庭に求めた最後の安息…。伝説の空手家の真の人生が、いま初めて明らかになる。あまりにも衝撃的なノンフィクション超大作。




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by yomodalite | 2007-03-12 15:29 | 報道・ノンフィクション | Trackback | Comments(0)

旧「読書日記と着物あれこれ」。歴史/文学/お笑いを好み、着物生活をしていたはずが、いつしかマイケルジャクソンのように本を読もうになってしまったブログ。永年暮らした東京を離れ、現在は大阪を満喫中。


by yomodalite