カテゴリ:報道・ノンフィクション( 79 )

A3/森達也

A3【エー・スリー】

森 達也/集英社インターナショナル




森達也氏に関しては、2006年に読んだ 『東京番外地』、2007年に読んだ『日本国憲法』から、すっかり興味を失っていたので、本書にはすぐに興味を持てませんでした。森氏は、すっかり「偽善系」の人になってしまったと思っていたんです。でも本書を読み出して、すぐにそれが大きな間違いだったことに気づきました。

『A』を観たひと、『A2』を読んだひとは、絶対にこの『A3』も読んだ方がいい。『A3』は、過去作の遥かに上を行く、森氏の最高傑作だと思いました。

まだ、どの作品にも触れていない方でも、オウム事件のことを覚えているなら、今からでも観て、読んだ方がいいと思う。

森氏は「プロローグ」で本書のことを、

かつて『A』と『A2』を発表したとき、タイトルの意味についてよく質問された。主要な被写体である荒木浩広報部長(当時)のイニシャルのAでもあるし、オウム(AUM)のAでもある。あるいは煩悶(Agony)や反命題(Antithese)もうひとつの代案(Alternative)などのAでもある。などと答えるときもあったけれど、実のところ自分でも、この答えに納得はしていなかった。なぜなら本音は「タイトルなどどうでもいい」なのだ。(中略)

でも、今回の『A3』は違う。意味を込めた。内容を凝縮した。麻原彰晃のAだ。


と述べています。

自分が良いと思うと、すぐ薦めたくなる質なんだけど、、、この本は今までとは比べようがないぐらい必読本だと思う。その最大の理由は、ここに書かれていることは、この本にしか、書かれていないし、今後追随する人もいないと思われるからです。

また、オウム本に関しては1番最近読んだ元アーレフ代表、野田成人氏の『革命か戦争か』のコメント欄でも「オウム タグ」には、お薦め本はないと言っているのですが(『A』に関しては、記録していたことを忘れていましたため。これは良書)本書を、それらに比べて評価するのは、著者がこの1冊に込めた「熱意」が、本の厚み以上に深く感じられるからで、事件の真実、登場人物の描写に関しての同意によるものではありません。

この本を読んでいると、今、小沢一郎やマイケル・ジャクソンを擁護することが、どんなに「楽」で、「安全」かということを思い知らされる。

未曾有の被害者を生んだ犯罪者の本に、上記のふたりを思い出すことに、違和感を覚えたひと、ごめんなさい。

多分、それは、わたしの現在の「ビョーキ」とも言えるMJ好きによるところが大きいとは思うけど、もうひとつだけ理由を考えると、それは、著者の90年代の捉え方に共感を覚えたからだと思う。

マイケルが亡くなったとき、わたしは悲しいという気持ちより「しまった。。」と思い、しばらくして、彼を拒絶した時代のことが、1番心に突き刺ささりました。

森氏は本書で、何度か95年、96年といった、オウムによる時代の文節点を挙げています。

あの事件だけでなく、90年代からを振替える時代のドキュメンタリーとして、
アマゾン評にある「ノンフィクション史上に残る傑作!」に完全同意します。

☆本書の講談社ノンフィクション賞受賞への滝本弁護士による抗議文

◎『A3』(アマゾン)
◎A(DVD)
◎A ー マスコミが報道しなかったオウムの素顔(角川文庫)
◎A2(ドキュメンタリー映画「A」の続編「A2」の撮影日誌)

☆現在は「ひかりの輪」の代表、上祐氏の近況↓
◎上祐史浩×ターザン山本×吉田豪×プチ鹿島の『新春時事放談』
◎上祐史浩氏のオフ会に参加・国松長官事件・村井刺殺事件を聞く
_______________

[内容紹介]なぜ「あの事件」から目をそむけるのか?「何でもいいから、早く吊るせ!」。それが大半の日本人の本音なのか。真相究明なしに「事件」は葬り去られようとしている。『A』『A2』の作者が、新しい視座で「オウム事件」と「日本人」の本質に迫る!

[BOOKデータベース]何か変だよな。おそらく誰もがそう思っている。でも抗えない。多くの謎と副作用ばかりをこの社会に残しながら、急激に風化されつつある一連の「オウム事件」。何も解明されないまま、教祖と幹部信者たちの死刑は確定した―。麻原彰晃の足跡を、新しい視点からもう一度辿る。浮かび上がるのは、現代日本の深層。
集英社インターナショナル (2010/11/26)


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by yomodalite | 2011-01-30 12:23 | 報道・ノンフィクション | Trackback | Comments(0)
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著者の本を読むのは初めてなんですが、これは渾身の力作!!! 本当に、スゴい人が現れたと感動しました!

勝新太郎に関しては、豪快伝説や、数々の魅力的な逸話は知っているものの、「作品」として、その凄さに、出会えたと思ったことはありませんでした。人気シリーズと言われる、『悪名』とか、『兵隊やくざ』とか、日本映画チャンネルで、ちらちら、見てみたものの、勝氏の個性は、今よりも、むしろ、そのときでさえ、時代とミスマッチな印象があって、

特に「悪名」では、人気コンビの片割れ、田宮次郎も、軽さと、スマートさを「チンピラ役」というキャラクターに、押し込められているようで、今の眼から見ると、魅力に乏しい作品としか、思えませんでした。

でも、田宮次郎は、その後、ヤクザ映画から逃れ、本来の個性どおりの「背広の時代」に、その個性を生かして、最終的に、そのキャラクターと心中したいと思うほどの、キャラクター(財前五郎)とめぐりあうことが出来たと思います。

また、兄の若山富三郎も、晩年まで、作品の中で、魅力を発揮できたことに比べると、勝氏の個性は、「異形の人、座頭市」でしか、表現できなかったのかなぁ。。と、

本当に、歯がゆいというか、残念に思うのは、役者としての勝氏は、ヤクザも背広も似合わないって、大して見てもいないのに、テキトーに結論づけていたんですが、さらに、残念なことに、その『座頭市』も、そうなんですが、日本の作家は、映画監督だけでなく、著作業も含めて、作品数が多過ぎると思うんです。

巨匠と言われる、黒澤(1910年3月23日 - 1998年9月6日)でさえ、多過ぎますね。

クロサワと言えば、撮影現場での、途方もない拘りで知られていますけど、そうでありながら、あれほどの数の映画を遺したというか、創ってしまったのは、どうなんだろう。。それは、きっと、日本にとって、イイことも、たくさんあったのだと思います。

そのイイことの、ひとつは、

なんだか、未だに、メディア的には「世界で評価された」なんて言って、喜んでいるふり(?)をしなくては、いけないみたいですけど、ハリウッド以外の世界が創ることを止めてしまった時代も、一定の水準以上の作品を、量産して来たのは「日本」だけでしょう。彼らの多作は、日本の平均レベルを上げることには、確実に繋がっていると思います。

ひとりの中に、さまざまな“天才”が同居しているような天才....

もし、勝新太郎が『座頭市』を、7作ほど完璧な作品として創ってくれていたら、

『座頭市』は、海外でも熱狂的にウケた作品だったから、その選択はあったはずです。でも、出来なかった。。。(本書では、勝新太郎とブルース・リーの出会いについてのエピソードも)

日本の作家には、今でも、そういう選択が出来ないように思います。日本では、「寡作」と言われていても、世界基準では、それで普通か、むしろ多いんですよね。

ゴダールが、影響を受けた監督を3人挙げてくれと言われて「ミゾグチ、ミゾグチ、ミゾグチ」と答えた逸話を知って、何度か、溝口健二(1898年5月16日 - 1956年8月24日)の作品にトライしてみたんですが、わたしには、未だに溝口作品がわかりません。40代のわたしが、わからないなら、今の20代には、もっと伝わらないんじゃないかと思う。

そんなわけで、よくはわかりませんが、溝口的な評価(ゴダールのそれとは違うかもしれないけど)のされかたというのは、文化的評価として、小津安二郎(1903年12月12日 - 1963年12月12日)より、もっと、一般的というか、継承しやすい才能だと思うんですけど、それを可能にするような旧制高校的な教養は日本では、ますます無くなりつつありますね。

勝新太郎は、決して才能を開花しきったとは言えない「天才」でしたが、

本書は、役者として、監督として、脚本家としての、勝新太郎を、詳細な現場取材を通して描き、映画隆盛期から斜陽期、テレビ時代、プロダクションの社長としての才能も、もがきも、新書の薄さからは、まったく想像できないぐらいのレベルで再現され、

最終章「神が降りてこない……」では、あの『影武者』降板騒動の真相に迫り、もうひとりの神、黒澤となぜ、折り合いがつけられなかったのかを、著者に、勝新太郎の魂が、乗り移ったとしか思えないほど肉薄して、語られています。

一代限りと思われた天才を、継承できる「歴史」としてとらえた傑作。

1977年生まれの著者が、これを書けたのは「奇跡」のような気がします。
今後も、春日氏には、めちゃめちゃ注目していきたい!!!

☆☆☆☆☆(満点)

___________________________

[内容]
第一章/神が天上から降りてくる ー 映像作家・勝新太郎
第二章/負けてたまるか ー 映画スター・勝新太郎の誕生
第三章/勝プロダクションの設立
第四章/オレは座頭市だ ー 『新座頭市』
第五章/神が降りてこない……

[BOOKデータベース]
「座頭市」と豪快な勝新伝説で知られる勝新太郎。本書は映画製作者としての勝とその凄まじい現場をスタッフの証言を元に再現し、繊細すぎる実像を浮き彫りにする。純粋さが加速させる狂気のノンフィクション。

[著者略歴 「BOOK著者紹介情報」より]
春日太一/1977年東京都出身。時代劇を中心にした日本の映画・テレビドラマの研究家。日本大学大学院博士後期課程修了(芸術学博士。テーマは「一九七〇年代の京都撮影所における時代劇製作の諸相」)。失われつつある撮影所文化を後世に残すべく、当事者たちへの聞き書きをライフワークにしている。講演・著述を通して、製作現場の熱気や職人たちの美学をより多くの方に知ってもらおうと活動中。(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)




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by yomodalite | 2010-11-12 16:45 | 報道・ノンフィクション | Trackback | Comments(0)

憚りながら (宝島社文庫)

後藤 忠政/宝島社

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日本女子として、今、やくざの本は、猪木の本より読まなくてはと思っているのですけどなかなかイイ本がありません。どうして読まなくてはならないかは、

松岡正剛「千夜千冊」で語られているように

・日本の「侠」の歴史と動向と思想
・「侠」や「組」の発想は、アジアに通じる本質のひとつ。
・ヤクザが明治政府にも戦後の保守政治にも深く絡んでいたこと

と、現在9冊ある“やくざ”タグの中で、唯一の良本、猪野健治氏の『山口組概論ー最強組織はなぜ成立したのか』で、語られた、山口組の1人勝ちが、現在の官吏との最終局面において、これまでとは違った意味を帯びてきていることに対しての危惧からです。

本書は、山口組内で、マスコミ的にもっとも有名だった、後藤組元組長による、回想録。聞き書きの形式で、「○○の野郎も....ヤるだけヤって....グズグズした話を...バチっとかまされ、最後にはギャンと言わされて、クシュってなってたんだよ(笑)。。」みたいな感じの文章で、1942年生まれの、後藤氏の極道人生が語られています。

◎第一次頂上作戦(1964年の暴力団壊滅作戦。1940年頃まで国家も警察も必要悪として認めていた“やくざ”に対して、博打を非合法化などから国家の締め上げが激しくなった。山口組は、次々と解散に追い込まれる組織に反比例して、拡大していく。)

◎年末に行われた3つの格闘技イベント。(2003年)

◎「日韓青年交流」で、自民党の静岡県連と一緒に、当時の韓国大統領、朴正煕と会う(祖父とも知りあい)

◎富士宮における、創価学会との攻防

◎「山一抗争」(戦後最大の抗争事件。1981年。後藤組は、この抗争のきっかけとなった四代目、竹中組長の杯により、山口組直系組長になっている。)

◎廣済堂(櫻井義晃)、地産グループ(竹井博友)との出会い。経済ヤクザと呼ばれるようになる。

◎野村秋介との出会いにより、石川重弘カメラマン救出に関わる。糸山栄太郎襲撃事件も野村氏との関係が大きい。

憚りながら、として、実名で激しく批判されているのは、
・池田大作
・糸山栄太郎
・武井保雄(元「武富士」会長)
・御手洗富士男(経団連・キャノン会長)
・小泉純一郎、など。

第十章「渡米肝移植」では、日本のやくざが、アメリカに入国して移植手術を受けられた奇跡に関して、日米両国で汗をかいてくれた人たちがいると書かれている。戦後の占領統治に“やくざ”と“在日”と“元A級戦犯”は、重要な役割を果たしていた。後藤氏は、山口組の急成長時代をきっかけに、その歴史の一端を担い、統治側の“やくざ”切り捨てに、肝臓移植という「取り引き」が行われたのでは。という印象をもちました。

小泉氏のブッシュへの媚の売り方、御手洗氏の売国を、情けないと感じ、自分と同じ「チンピラ」だと言うのは、同族嫌悪の感情からでしょうか。

ナルシズム溢れる憂国的主観にも、元やくざの奔放な物語にも、チューニングを合わせることなく、冷静に読んでいたつもりでしたが、第6章「生涯の友・野村秋介」で、野村氏が27、8歳の頃、河野一郎宅への放火により、千葉刑務所に収監されたときの“句”が、目に飛び込んできたときは、思わず涙が溢れました。

「俺に是非を説くな 激しき雪が好き」

_________

[内容紹介]かつて伊丹十三監督・襲撃事件などで日本社会を震撼させた武闘派団体・後藤組の後藤忠政組長。08年10月に山口組を電撃引退し、翌年には天台宗系の浄発願寺で得度(得度名=忠叡)。日本中をあっといわせたのは記憶に新しい。それから1年……財界・政界にも大きな影響力を発揮し、山口組の直参として、日本の深層を生き抜いた後藤忠政とは、いかなる人物なのか?
本書は、半年にわたる延べ50時間のインタビューを構成したもので、これまでその人物像が明かされることのなかった伝説の組長の生い立ち、静岡県富士宮を舞台にした愚連隊時代、山口組直参昇格、竹中正久4代目の思い出、山一抗争、伊丹十三襲撃事件、孤高の民族派・野村秋介との交友、企業社会への進出、政界との交流、武富士との攻防、山口組引退の真相、そして自身の人生哲学から女性哲学までが、たっぷりと語られる。
激動の半生を送ってきた人物が語り下ろす、今年、注目度ナンバーワンのノンフィクション!!宝島社 (2010/5/15)



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by yomodalite | 2010-07-02 14:26 | 報道・ノンフィクション | Trackback | Comments(5)
猪木の試合は見たことがないし、プロレス自体も、ほとんど見たことはないのだけど、アントニオ猪木に関する本は、ときどき読まなくてはと思う。

わたしの猪木本歴は、『アントニオ猪木の謎』と『1976年のアントニオ猪木』に続いて、本書が3冊目。その他にも『お笑い男の星座』や『世界の宗教知識と謎』など、猪木に触れている本や、プロレスのことを、どうしても書かざるを得ない、そういう男が好きなような気がする。

「アントニオ猪木のことが好きな男に、悪い男はいない」(ただし、借金まみれだったり、アル中の可能性はある)

どういうわけだか、妙に自信をもって、そう言いたくなるのは何故だろう。

「結婚するなら、借金がなくて、アル中じゃない、猪木ファン」

これなら、エリザベス・テーラーにさえ、教えてあげてもいいような気がする。エリザベスなら、借金まみれでも大丈夫な気もするし....でも、よく考えてみると、何度も結婚するのは、楽しいことだから、やっぱり、彼女には教えなくていいのか。と、これまた、たった2回の経験から思い直してみたりもする。

本書は『1976年のアントニオ猪木』と同じく、1976年のモハメド・アリ戦を、猪木自身が語った本なんですが、1976年って!もう34年も前のことを、未だに、聞きたくて仕方がない、今のアラフォー男の中には、かなり高い割合で、そういう男がいるという事実が、女の人生に、どう関係があるのかは、わかりませんが、

猪木が、当時「茶番劇」と言われ、とてつもない借金を負ってまで、戦いたかった相手、モハメド・アリとは、どこから、力が湧いてくるのかと尋ねられたとき、

「私はマイケル・ジャクソンが見ている男と同じ男を見ている。その男とは、 マイケルの鏡に映る男(マン・イン・ザ・ミラー)なのだ」と答えた「男」なのだ。

やはり、読まずにはいられない。

★★★☆(『1976年のアントニオ猪木』を読んでいる者としては、重複内容が多いのだけど本書の魅力は、付録のDVDにあって、最高にチャーミングな67歳の男の魅力全開のインタビューが楽しめます)
_____________

[内容紹介]“異種格闘技戦 猪木vsモハメド・アリ戦”の真実を、猪木自身が縦横無尽に語り尽くした集大成の一冊!インタビュー映像(DVD:36分)付き!

33歳の猪木が歴史に刻んだ伝説の一戦。33年経った今だから話すことができた戦いの真相を、すべて語り尽くした!!

これは単なる自叙伝でも暴露本でもない。静かにだが、沸騰するほどに熱く、真実を語った、猪木自身による、猪木の魅力満載の超一級のノンフィクションである!

この戦いを軸に据えたとき、猪木の真の姿、猪木が伝えたい真のメッセージが見える。
ゴマブックス (2009/4/8)




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by yomodalite | 2010-05-30 18:51 | 報道・ノンフィクション | Trackback | Comments(6)

歌舞伎町・ヤバさの真相 (文春新書)

溝口 敦/文藝春秋



なんだかB級親父週刊誌っぽいタイトルですが、

そういえば、歌舞伎町ってどうして、そんな名前なの?
新宿の花はなぜ「ツツジ」?
ツツジと、歌舞伎町の暴力とのつながりとは?・・・

歌舞伎町や新宿の歴史に興味がある人には興味深い内容。著者は、食肉の帝王、魔女の履歴書(細木数子)、サラ金の帝王などで裏社会やタブーを扱うことに手慣れた溝口氏ですが、すでに歌舞伎町の本は無数にあり、テーマを絞り込むことに迷った末に「歌舞伎町の怖さの起源」というテーマに辿り着いた。

テーマへの逡巡のためか、溝口氏のタブーへ斬り込んだ、今までの著作とは少し趣きが異なってはいますが、歌舞伎町の表と裏の両面史がざっくりと理解できます。

ヤクザ、華僑・韓僑系企業、東声会や外国人の動向、特に、中国系マフィアに関しては、昨今いろいろ話題になりましたが、華人(台湾人)マフィアに関しては、本書で初めて詳しく知ることができました。

因みに、歌舞伎町では最盛期の半数に減ったとはいえ、08年の調査で百ヵ所程度の暴力団事務所が600メートル四方の狭い町内に存在しているそうです。
____________

【BOOKデータベース】欲望・エロス・犯罪の都は、いかに生まれ、どこに向かうのか。恐怖の根源をたどり、歓楽の核心・我われの心性に迫る。六百メートル四方の「世界一ヤバい街」の正体とは―。 文藝春秋 (2009/06)



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by yomodalite | 2009-09-16 16:13 | 報道・ノンフィクション | Trackback | Comments(0)

美人になりたい―うさぎ的整形日記

中村 うさぎ/小学館




しばらく中村うさぎ氏の本を読んでいないことに気付き、何を読もうかな〜と物色していたら、本書を読んでいないことを思い出しました。

2003年の出版。もう6年も経っているので最新整形事情とはだいぶ隔たりがあるだろうし、今更感はあったのですが、やはり、中村氏が「美容整形」をどのように扱ったのかは読んでおかなくては、と思った次第。

ページをめくるとすぐ、2002年から始まったビフォーアフターの写真が目に飛び込んできます。あの中村うさぎが奥菜恵に!という衝撃写真も含めて、アフターの有利があまりにも明確な写真の羅列は、女子ならば誰でも大きく心を動かされるでしょう。

ただ、あの手術がどれほど痛くて、どのくらいのダウンタイムが必要かなどの美容整形情報がわかる部分もありますが、むしろ興味深かったのは、3人の対談者(大高博幸、高梨真教、春日武彦)と、インタビュアーで企画編集の深澤真紀氏との会話から、中村氏の内面に深く迫っている点。

やはり、この人はただ者ではないということに改めて気付きました。

この後の『私という病』など、他の評判の名著も早く読まなくては。。

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[出版社 / 著者からの内容紹介]自分の丸顔が大嫌いだった中村うさぎが、ボトックス、ヒアルロン酸を打つプチ整形に始まり、メスを入れるリフトアップ整形手術にまでチャレンジした。その過程をゆれる心理状態の中で赤裸々に綴った整形日記を初公開。ビューティーエキスパートの大高博幸氏、整形を担当したタカナシクリニックの高梨真教氏、精神科医で『顔面考』著者の春日武彦氏らと、美や顔についてじっくり語り合う対談も収録。また、ブランド・ホスト・整形と進んできた自らの人生をも振り返る。いま、中高生から五十代まで幅広い女性の関心と疑問が集まるプチ整形。「やってみたいけど、どうなるの? 顔は、ココロは??」という読者にとって、ここまで正直かつ真面目かつ面白い“整形ドキュメント本”はこれまでも、これからも出ることはないだろう。 小学館 (2003/03)

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by yomodalite | 2009-08-11 12:28 | 報道・ノンフィクション | Trackback | Comments(0)

文庫 江戸っ子芸者一代記 (草思社文庫)

中村喜春/草思社



前々から読みたいと思っていた伝説の芸者、喜春姐さんの一代記。著者が90歳で亡くなってから5年後、ようやく出会うことができました。

初版は1983年に草思社から出版され、その後朝日文庫から“青春編”“戦後編”“アメリカ編”として全3冊出版されているのですが、残念ながら現在は在庫切れの模様。

中村喜春さんと言えば、英語が達者な芸者として、来日した海外セレブを虜にし、外交官と結婚後はインドで、和製マタハリとして活躍。その後アメリカに渡ってからは、大学で日本文化を講義するなどの活躍をし、NHKのドラマや、SmaSTATIONでも取り上げられ、芸者に興味津々なわたしはかなり期待して読んだのですが、どういうわけだか、あまり面白いとはおもえませんでした。

執筆時、すでに70歳の喜春姐さんは、語り口が実に若々しく、まさに青春時代に戻って書いているようで、現代にはわかりにくい用語などの説明も、堅苦しくなく説明されていて読みやすいのですが、医者の娘として銀座に生まれた娘が、実家の没落も借金もなく芸者になったことの説明が、ただ本人が好きだったからと言う理由だったり、

名だたる有名人や時の権力者の名前がたくさん登場し、可愛がられた思い出が語られていても、すべてが無邪気なお客自慢の域を超えたものではなく、現代の水商売との流儀の違いについても、基本的には、現代の銀座マダムの成功物語とさほど変わらない。

最後の芸者の姿を期待していたんですが、実際は新しい時代の先駆けだったということで、それは痛快な物語なのかもしれませんが、とにかく“芸者”ではなく、デヴィ夫人の先輩モデルの姿だったという違和感でしょうか。自分のスタイルで時代を駆け抜けた“芸者”の姿を期待していただけに、既存の権力志向が気になったのかもしれません。

お客のプライヴァシーも、喜春姐さん自身のプライヴァシーもしっかり守った上で書かれているためか、人間ドラマに乏しく、「江戸っ子芸者」の物語を期待していたのだけど“青春編”を読む限りは、新時代を「語学」を武器に駆け抜けた女の物語が主で「芸者」は、そのスパイスとして、効果的だったという感じでしょうか。

かなり読書欲は減じましたが、この後「戦後編」「アメリカ編」も、いつかは読んでみるつもりです。

「千夜千冊」第三百六十九夜【0369】2001年8月31日
中村喜春『江戸っ子芸者一代記』全3冊
1983・1984(戦後篇),1987(アメリカ篇) 草思社
http://www.isis.ne.jp/mnn/senya/senya0369.html
___________

【BOOKデータベース】昭和初期、知性と江戸っ子気質で政財界や外国要人の人気を博した新橋芸者の、波乱に満ちた一代記シリーズ。1956年の渡米後はオペラのコンサルタントになり、今も活躍中の喜春さん。青春編は生い立ちから芸者時代、外交官との結婚、インド赴任、開戦による収容所生活、そして帰国までを綴る。朝日新聞 (1993/04)

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by yomodalite | 2009-07-24 17:21 | 報道・ノンフィクション | Trackback | Comments(0)
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全米で有名になった「ダウンズ事件」の全貌をあますところなく描いた本書は、ダイアン・ダウンズという稀有な女性がおこした1987年の事件のノンフィクション作品。

彼女は3人の我が子の命を撃った。最初の結婚で得た7歳のシェリル、8歳のクリスティ、離婚前に別の男性との間に出来た3歳のダニー。彼女にとって妊娠と出産は、自分にかけがえのない喜びをあたえてくれるものだった。

代理母としての出産も経験し、自ら代理出産事業も始めようとしていた。子供は常に自分を必要としてくれる。けれど養育にはあまり熱心ではなかった。人並み以上の知能。人を惹きつける美貌を持ちながら、彼女は何一つ成功できないでいた。

著者のアン・ルールは、陸上のコーチの父親と発達障害児を教える母との間に生まれ、親戚には郡警察長、検察官、検死官をもち、心理学、犯罪学、刑罰学を大学で学び、犯罪捜査、警察行政、捜査術、逮捕学をコミュニティカレッジで学び、実際にシアトル警察の警官になり、女子少年院で働いたこともある。という経歴で、本書で成功後も数々のベストセラーを生みだし、犯罪ノンフィクション作家として、このジャンルを確立させた人物とも言われている。また5人の子どもを育てた母親でもあり、現在は孫もいる。

この上もない悲惨な事件ですが、人一倍渇望しながらも、愛を理解できない母親に育てられ、撃たれた、娘の母親への愛、被害にあった子どもを救おうとする医療関係者も、検察も子ども達を必死に守ろうとする。クライマックスであるクリスティの裁判での場面は泣かされます。また著者の日本語版読者へのメッセージでは、クリスティとダニーのその後にも触れられ、母親が読んで気分が悪くなるだけの作品ではありません。

マスコミを賑わす要素が多過ぎる事件ではあるけれど、著者はそのすべてをあますところなく描ききる技量と研鑽を積んだ最適な作家なので、良質なミステリを求める方にもオススメです。現在、絶版のようなので、図書館を探されると良いかもしれません。

★★★★

ところで、畠山被告は無期懲役が確定しそうですね。彼女の事件もあいまいな点が多く、夥しい畠山被告のTV映像による印象報道だけでなく、畠山鈴香という女性をもっと綿密に取材した作品が読みたいものです。わたしは、彼女に、貧しい家庭に育った田舎の文学少女を感じてならないんですよね。。。

下記は、簡単なあらすじです。読んでみようと思われる方は、読まない方がいいかな。


(上巻)彼女の生い立ち、父親との関係、結婚、出産、代理母、奔放な男性関係から、事件が起こるきっかけともいえる男性との出会い。。。

事件は起こった。シェリルは亡くなり、重大な障害が残るほど重症を負ったクリスティとダニー、3人の幼児と共に撃たれた若い母親は、マスコミによって悲劇のヒロインになるが、事件を調べる刑事たちは、彼女を次第に追いつめていく。。。

(下巻)刑事たちの執念は一歩一歩ダイアンを追いつめてはいたものの、逮捕までは永い道のりだった。ダイアンはその間も新たな男を求め、妊娠を渇望し、クリスティとダニーの養育権が奪われるのも嫌だった。

事件で注目を浴びていたことで、困難に思えた新たな妊娠だったが、彼女は今までどうりハンサムで、しかも今まで以上のインテリ男性の子どもを身ごもり、その数ヶ月後に逮捕された。ダウンズ事件は再度全米を賑わす大事件となった。

検察側にとって裁判は容易ではなかった。クリスティの回復を優先し、長い準備期間をかけてようやくこぎつけた裁判での証言。しかし弁護士は、幼いクリスティにも容赦なく覆いかかる。無罪の評決には12人の陪審員の10人が賛成すればいい。だが有罪にするには12人全員が賛成しなくてはならない。陪審員は、妊婦の容疑者を有罪に出来るのか。

裁判ではいつも清楚なマタニティドレスだったダイアンは、拘置所を出る時は髪をショートにし、ピッタリのジーンズに15センチもヒールがある膝上ブーツを履いていた。裁判が終わってもダイアンの物語は終わることはなかった。。。。

「See-Saw日記」
http://see-saw.way-nifty.com/diary/2007/10/post_1db5.html
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【Amazon.co.jp】
アメリカでは、本に対する賛辞に "Un-putdownable!" という言葉がある。本から手が放せない、読み出したら止まらない、というニュアンスだが、この『スモール・サクリファイス』を評するのに、これほどピッタリくる言葉はないだろう。全米では各紙が絶賛し100万部を突破したというのも、とにかく手にとって読み始めればうなずけるに違いない。
著者のアン・ルールは、シアトルで警察官を経験した後に作家となった、女流のクライム・ライター。「犯罪ノンフィクション」というジャンルを確立した第一人者で、『スモール・サクリファイス』は、いまやベストセラーを連発している彼女の出世作である。

物語は、オレゴン州スプリングフィールドの病院のER(緊急治療室)に、銃撃を受けた若い母親が助けを求めにくるところから始まる。血まみれの車内には瀕死のわが子が3人。全米を震撼させた「ダウンズ事件」だ。母親のダイアン・ダウンズは、10代のころ、父親からの性的虐待にさらされた過去を持つ女性だった。不幸な結婚ののち、わが子への虐待、代理母としての出産、乱れてゆがんだ男性遍歴を重ね、すさまじいまでの人生を送っていく。

マスコミと市民を味方につけ、「悲劇のヒロイン」を演じるダイアン。だが、幼い子どもの命を奪ったのは、実は母ダイアンではないのか? 検事ヒューギを中心とする息詰まる捜査と、事件の背後に隠された人間の病理と悲惨さを、アン・ルールは圧倒的な取材と筆力で描ききり、読む者の心を締めつけて離さない。

上下2巻、800ページというボリュームだが、達者な訳文の力もあって一気に読み通してしまう。まさに "Un-putdownable!" なのだ。しかも、最後のどんでん返しには「これが本当に実話なのか?!」と仰天すること請け合い。「どんな推理小説もかなわない迫力」(インディアナポリス・スター)の本書は、ミステリーファンにも強くすすめたい。(遠藤聖一)




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by yomodalite | 2009-04-08 14:01 | 報道・ノンフィクション | Trackback | Comments(0)

猛牛(ファンソ)と呼ばれた男―「東声会」町井久之の戦後史

城内 康伸/新潮社




元公安調査庁の菅沼光弘氏は、日本の裏社会の構成要素として「やくざ・同和・在日」の3つを挙げて、その経済力に関しても、トヨタ自動車の純益が1兆円だったのに対し、山口組は8000億円の収入と語られたとか。。。

町井久之(本名:鄭建永)は、在日のヤクザの大物として、戦後の昭和史に度々名前が登場する人物ですが、まとまった本としては、こちらが初めてのもののようです。

ただ、残念ながら、山口組や、保守(右翼)系人物との関係にしても、登場人物が少な過ぎて、南北朝鮮の政治家との交流に関しては、大統領にまで及んでいるにも関わらず、在日社会は、力道山や張本(巨人)などスポーツ界が主で、日本国内の財界や政界との交流に関しては、ほとんど書かれていません。

著者は、88歳の町井の未亡人 保予(やすよ)への面会から、取材を進めているのですが、夫人の話はどうも素直に納得できないというか、違和感を感じる点が多い。

p67で、傍聴席の最前列で見守っていた保予のことに触れ、弁護士が町井に「わたしに礼はいいから、奥さんに感謝しなさい」というくだりなど、どこか唐突で、著者が未亡人への感謝を表すことにページを使っているように感じました。

また、町井の親分のような存在であった児玉誉士夫と同じく、町井もアメリカが育てた人材であったことを示すエピソードとして、

(P57)
町井の事件を担当した検事(伊藤栄樹。後にロッキード事件など大事件を手がける)は、
他界する直前に朝日新聞に寄せた回想録「秋霜裂日」で次のように振り返っている。

「彼(町井)には、連合国軍の庇護があて、それまで二度殺人などで逮捕されても、すぐに釈放され、起訴されても一度は無罪になり、一度は執行猶予となっていた。そこで、長い兼治生活の中で一度だけうそをつかせてもらった。すなわち、傷害にあたるものに、殺人未遂の罪名を、傷害・恐喝にあたるものに強盗傷人の罪名を与えるなど、本来の法律的評価よりも一段ずつ上の罪名にすることにより、連合国軍からの干渉を防ぐとともに、保釈を阻止しようとしたのである。」 朝日新聞 1988年5月11日朝刊

伊藤本人がいささか強引な手法を用いたことを認めているのだが、保予によれば、町井はこの記事が載った当時これを読んでおり、「他の作り事はいいとしても、私に連合国軍の庇護があったとは・・・・」と憤り半ばにあきれ果てていたという。

 
この町井の反応は、保予の真実の記憶だろうか。一度目の殺人は、保予にからんだ酔漢を蹴飛ばしたところ酔漢が転倒し頭を打って死亡した、というもので、二度目は差別的な発言を投げつけた人力車夫を勢い余って殴殺した、というもの。これで、無罪や執行猶予とは、庇護でなければ、生まれついての「在日特権」か、と言いたくなる内容。保予が日本人なら疑問をもたなかったとは考えにくい。

保予が1946年に、函館の実家を離れて、東京で予備校に通っていたというのも、比較的裕福な家庭を想像させるが、拉致誘拐のような形で、町井と結婚することになったエピソードなど、著者は「ストックホルム症候群」を思い出したと説明しているが、私には、よど号の妻たちの結婚エピソードが思い出された。ちなみによど号妻たちは、チュチェ思想研究会や統一協会であったが、保予は熱心は創価学会員である。

その他、町井の市井のイメージを覆すとして紹介しているエピソードも、在日社会の裏のヒーローとして君臨した人物のエピソードとしては、物語の厚みに欠ける。

生前、半世紀執筆の要請を何度受けても、町井は、「自分のやってきたことを決して、表に出すな」と在日社会に至上命令を出していたらしい。取材対象が難しいことは理解できるものの不満が残る内容。

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【BOOKデータベースより】“アンダーグラウンド”から照らし出す昭和史。復興著しい東京で、1500人の構成員を束ね夜の六本木を闊歩した鄭建永(チョン・コンヨン)=日本名・町田久之。右翼の大立者・児玉誉士夫と日韓を股に掛けて暗躍し、ヤクザでありながら政財界に根深く食い込んだその存在は、やがて「フィクサー」と畏れられるまでになった—。盟友・力道山との絆、芸能・スポーツ界でのタニマチぶり、ようやく語られた秘話の数々。急成長を遂げる日本と共に生き、そして消えていった男の人生を描く。 新潮社 (2009/02)




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by yomodalite | 2009-03-08 23:09 | 報道・ノンフィクション | Trackback | Comments(0)

宿命―「よど号」亡命者たちの秘密工作 (新潮文庫)

高沢 皓司/新潮社



NHK週刊ブックレヴューで、エッセイストの青木るえか氏が(知らない人ですが)本著を推薦していたことから読んでみることに。

今まで北朝鮮および拉致事件に関しては、あまり読書意欲がわきませんでした。今、真実がわかるとは思えないので。本著が出版されたのは1998年。小泉首相が訪朝したのが2002年なので、拉致事件が連日のように報道を賑わす少し前のこと。アメリカが北朝鮮を「悪の枢軸」と呼んだのと前後して、北朝鮮の酷い惨状がこれまでかと報じられるようになり、アメリカの忠実な僕である小泉首相による、初の日朝首脳会議が行われている。

・日本はなぜ「拉致」をこれほど長い期間、無視し続けたのか?
・なぜ北朝鮮はこの時期に「拉致」を認めたのか?
・拉致が真実なら、なぜ北朝鮮は拉致被害者を返せと言えるのか? 
・拉致が真実なら、どうして日本は「日朝平壌宣言」に署名したのか?

わからない点はいくつもありますが、それは北朝鮮が「カルト」だからではないと思う。

本著に書かれてあることは、現在の北朝鮮ならびに金日成やチュチェ思想などに一般の日本人が抱くイメージからズレた点はなく「北朝鮮」の気味の悪さが一層浮き彫りになるのですが「金日成を誰が作ったのか」という点に関しては触れられていない。

とはいえ、私が読んだ単行本版で4センチ近い厚みを感じさせず、集中して読ませる内容は、間違いなく面白いと言っていいでしょう。著者は、全共闘運動に関わったジャーナリストですが、私と同じく当時の独特の用語が今イチわからず「よど号」と言われてもピンとこない世代が読んでも惹き込まれる内容です。

ひとつひとつ謎を問き明かしていく読書の楽しみが半減しそうなので、内容にはあまり触れられませんが、国交のない北朝鮮にハイジャックという手段で渡航したにも関わらず、1年足らずで日本に帰国するつもりだったことなど、「よど号」メンバーの認識には信じられない点が多いのですが、ただひとり小西隆裕のみ、渡航前に恋人だった福井タカ子を北朝鮮に呼び寄せていることから、少なくとも小西には亡命意志ががあったと思われることは要チェック。

他のメンバーにも、その後チュチェ思想を学んだ日本人が「妻」として渡航している点なども、後の「拉致」計画の必要性を疑わせる。また横田めぐみさんのような中学生の拉致に至っては、北朝鮮のイメージダウンと日本との関係を悪くさせるため以外の理由が考えられない。

1992年、ハイジャック事件のとき「身代わり人質」となった山村新治郎衆議院議員が、北朝鮮訪問前日に、精神的不安定な次女により刺される。山村議員は田宮高麿と面会予定があった。その3年後の1995年に、田宮高麿は「心臓麻痺」により突然死亡。すぐに火葬にされた。

著者は、90年以降リーダーである田宮高麿への取材を続け、本著は田宮死亡後に書き上げられている。

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[BOOKデータベース]1970年3月末、赤軍派メンバー9人が日航機をハイジャックし、北朝鮮へ亡命した「よど号」事件。謎に包まれた犯人たちのその後の人生とは。犯行の計画、北朝鮮の思想教育、日本人拉致の実態、そして日本潜入工作—。恐るべき国際謀略の尖兵と化し、世界を舞台に暗躍した彼らの秘密工作の全貌を丹念な取材で初めて明らかにした衝撃のルポルタージュ。講談社ノンフィクション賞受賞。 新潮社 (2000/07、単行本初版1998年)




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by yomodalite | 2009-02-21 12:03 | 報道・ノンフィクション | Trackback | Comments(0)

旧「読書日記と着物あれこれ」。歴史/文学/お笑いを好み、着物生活をしていたはずが、いつしかマイケルジャクソンのように本を読もうになってしまったブログ。永年暮らした東京を離れ、現在は大阪を満喫中。


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