カテゴリ:現代文化・音楽・訳詞( 131 )

モンガイカンの美術館(朝日文庫)/南伸坊

モンガイカンの美術館 (朝日文庫)

南 伸坊/朝日新聞社



久しぶりに行った実家にあった本。「お父さん、こんな本読んでいたんだぁ」と、娘気分でパラパラとページをめくっていたんですが、ぐんぐん惹き込まれて、3センチ近くある分厚い文庫ですが、あっという間に読了してしました。

本書は1978〜1982年に雑誌「みづゑ」に連載。初版は1983年。エッセイストとしてもイラストレイターとしても著名な氏のキャリアの最初期のものですが、内容に古びたところは全然なく、ゲージュツ好きな人から、そうでもない人まで、今後の美術鑑賞に役立ちそう。ブックオフなどで見つけたら、購入されるとお得な一冊だと思います。(写真の下半分のモナリザは帯で、取ると白地に文字だけのカバーです)

図版が多いところも本書の魅力のひとつなんですが、その図版の多さがネックで、なかなか文庫化できなかったと、あとがきに書かれています。雑誌掲載のときは、宣伝になるので「快く」図版の貸与が行なわれるのに、単行本となると「話が違う」ということのようです。

図版の貸与の権利は、その作品を購入した美術館にあるんでしょうか。単行本、文庫と、その度に、その権利を主張する、ということのようですね。

アーティストには色々な人がいて、様々なアートがありますが、どんな「権利」でも、それを握っているのは、同じ人たちというか、本当に、うんざりする話です。

「私がこの本で、始終一つ覚えのように言ってたのは、オレはどこかのエライさんのいいなりに何かを見たり考えたりはヤダ、ヘタでもクソでも、自分で見たり考えたりしたい。ということでした」

美術展の入口近くにある、あいさつとか、解説を混雑して並んでみるより、自分で考えてみた方が、やっぱり楽しいと思います。
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【BOOKデータベース】「自分にとって面白いモノとは?」という観点に立って、門外漢の立場から「ゲージュツ」の「ゲージュツ」たるゆえんを、「南伸坊コトバ」で説く異色の美術エッセイ。古今東西の名画・名作から、著者の手による名作まで図版多数収録。冗談かと思うと哲学、哲学かと思うと冗談の不思議な一冊。朝日新聞社 (1997/04)



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by yomodalite | 2009-10-27 13:20 | 現代文化・音楽・訳詞 | Trackback | Comments(0)

キャプテン・アメリカはなぜ死んだか ー 超大国の悪夢と夢/町山智浩

キャプテン・アメリカはなぜ死んだか (文春文庫)

町山 智浩/文藝春秋




本書は『アメリカ人の半分はニューヨークの場所を知らない』と同じく、『週間現代』の連載をまとめたもの。ベストセラーの続編ではなく、同時期のコラムの異なる編集のようです。(2ヶ月違いの発刊)

『アメリカ人〜』は、政治に関するコラム集で、こちらはそれ以外のカルチャー系のコラムなんですが、どうして『週間現代』連載で、2冊とも講談社じゃないの? なんで出版社が違うの?という疑問に関して、著者は本書のあとがきで、答えているんですが、どうやら、ブッシュ、小泉時代の大掛かりなマスコミ対策にひっかかったような。。。でも文芸春秋がOKいうのも(?)

Chapterは9編。

・Living in America
・American Nightmare
・Taking Care of Business
・Rock in The USA
・Culture Wars
・Boob Tube
・Celebrity Meltdown
・Nippon Daisuki!
・American Dreamers

「Boob Tube」の意味がわからなかったのですが、どうやらTV受像機とか、番組放送のことみたいですね。

時事ネタのコラム集ですが、今読むのはもちろん、数年後に読んでも貴重な資料になりそうな、口当たりは軽いけど濃くて深い内容は町山氏ならでは。『アメリカ人〜』を読んだ人も、読んでいない人にも!
__________

【内容紹介】★ブッシュの人生は『エデンの東』だった。★『サラ、いつわりの祈り』はいつわりだった。★プレスリーもスーパーマンもユダヤ系だった。★南北戦争で勝ったのは南軍だった?★セックスとドラッグに溺れるアーミッシュ。★ネオナチ美少女双子デュオ!★グーグル社員はブログするとクビ?『アメリカ人の半分はニューヨークの場所を知らない』に続く、「本当のアメリカ」がわかる最前線コラム100本! 太田出版 (2008/12/18)

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by yomodalite | 2009-04-10 21:38 | 現代文化・音楽・訳詞 | Trackback | Comments(0)

アメリカは今日もステロイドを打つ USAスポーツ狂騒曲/町山智浩

アメリカは今日もステロイドを打つ USAスポーツ狂騒曲 (集英社文庫)

町山 智浩/集英社




アメリカ在住、町山智浩氏によるアメリカ本、本書はスポーツ編。

タイトルのステロイドとは、筋肉増強剤のそれ以外にも、学習のための覚醒剤、演奏の前に飲むアガらない薬、整形...遺伝子ドーピングの時代の到来、勝つためには手段を選ばず、障害をも「強さ」で乗り切ろうとするアメリカが、これでもかと紹介されます。

アメフト、バスケだけでなく、アメリカだけで異常に盛り上がっているスポーツが網羅されていますが、スポーツに興味がなくてもカルチャー本として充分読ませる内容。流石です。

まえがき もっとデカく!強く!速く!
筋肉こそがアメリカ。デカくなるために、強くなるために、速くなるために、アメリカはどこまでも突き進んでいく!

第1章 強さこそはすべて—All You Need Is To Be Strong
ステロイド使用の蔓延が引き起こす悲劇と、すべてを犠牲にして可能性の低いスポーツ業界での成功に賭けるモンスターペアレンツ。メジャーリーガー、プロレスラー、チアリーダー、ボクサー、サーファー。。。

第2章 悪魔に挑む男たち—Daredevils
85キロ以上の距離を走るウルトラマラソン、スケボー禁止から生まれたパルクール、スタントライダー、高さ360mの綱渡り、フリースタイルモトクロス。。。ハイリスク、ローリターンな競技に人生を賭ける者たち。

第3章 スポーツ犯科帳—Sports Crime File
『リアリティTV』が生んだ悲劇、精神障害でホームレスのサッカー選手の名探偵ぶり、詐欺ストリッパー、友人を殺害してしまったボクサー、NFLのスターが運営していた闘犬、NFLのスパイ事件、ハルク・ホーガン一家を崩壊させた息子の飲酒運転など、スポーツ選手の犯罪の数々。

第4章 私を観戦に連れてって—Take Me Out To The Ball Game
スポーツ観戦にまつわる話題。NFLの定番ソング、ロケット工学者のチアリーダー、大リーグで三千個のボールを集めた男、一万敗もしたチームのファン意識。野球カードの異常な高騰。

第5章 アメリカンスポーツの殿堂—Only In America
60歳にしてガチで勝利した女子プロレス最強の選手、ぶつかるのを避けるなんて男じゃないデモリッションダービー、地獄のマリアたちによるローラーダービー、ビンボー白人運動会レッドネックゲームス、10年間で18人の死者や度重なる脳障害や耳がちぎれてもアメフトは止められない。ダンクが変えたNBA。

第6章 多民族国家のバトルロイヤル—Racism In Sports
チームのマスコットはインディアンばかり、「障害を持つ人を映画に出さずにいられない」ファレリー兄弟、NFL唯一のアジア系スターはアフリカと韓国とのハーフ、レスリングも、大リーグも試合後に宗教ショーがある、未だに黒人監督やオーナーはいない。アリのラップ、NFLのスター選手スコット・フジタはブロンドでブルーの瞳。DJの差別発言。

第7章 敗れざる者たち—The Undefeateds
『ミリオンダラー・ベイビー』原作者の人生、車椅子ラグビーは「殺人ボール」、片足のスキーヤーの壮絶ガン人生、四肢欠損のアマレスチャンプ、人民寺院教祖の息子とバスケットボール、カリフォルニア工科大学のバスケチーム、一万敗したチームが世界一に、ミッキーロークが演じたプロレスラー。

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【内容紹介】アメリカの10代のステロイド使用者数、30万人! プロスポーツ選手になれる人は、たった2400人しかいないのに。なぜアメリカ人は副作用を知りつつ、ステロイドで筋骨隆々の体になろうとするのか…。その他、娘をチアリーダーにしたくてライバルを殺そうとした母親。マラソン10回分(421.95km)を75時間で走るエリート・ビジネスマン。1枚の野球カードに3億円払う人々、などなど。
「アメリカンスポーツ=富と名誉、夢と希望、強くてカッコいい」の思い込みをぶっ壊すエピソードの数々。「アメリカ人の半分はニューヨークの場所を知らない」の著者が暴くスポーツバカ大国・アメリカの真実。

80年代は筋肉の時代だった。大リーグでは、レスラー並の体をしたホセ・カンセコとマーク・マグワイアがバットを大振りしてバカバカとホームランを打っていた。スクリーンではシュワルツェネッガーが、シルベスタ・スタローンが筋肉をうならせてアメリカの敵を倒していた。筋肉こそアメリカだった。(中略)この本は「ビッガー、ストロンガー、ファスター」という言葉に象徴されるアメリカンスポーツの世界で日夜繰り広げられる、異常な事件、笑えるニュース、悲しい出来事、感動的な物語を、アメリカに暮らす異邦人の目から見たコラムを集めています。(まえがきより抜粋) 集英社 (2009/2/25)



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by yomodalite | 2009-03-24 13:45 | 現代文化・音楽・訳詞 | Trackback | Comments(0)

アメリカ人の半分はニューヨークの場所を知らない/町山智浩

『底抜け合衆国ーアメリカが最もバカだった4年間』『USAカニバケツ』に続き、衰退まっしぐらのアメリカを描いた歴史的カルチャー本?!第三弾。今回はかなり売れているようですね。まだまだ笑えた前著と違い、この4年間でアメリカの負の部分を相当輸入してしまって、第3章など来年の日本の話とどこが違うんでしょう?という感じです。

日本人の中には、永年のアメリカによる洗脳が解けて、愛国者になったと思っている人が大勢いますけど、「属国」だったと気がついてからだって、アメリカ指令に背くことは全然できないのに、どういうわけだか中国への敵対心と嫉妬心のみ燃え上がっているのは「戦争へと仕向けられている」新たな洗脳だと思いませんか?

中国も韓国も自国の政権へ批判できないので「反日」に民衆の感情を向けるしかないって言っていたのに、何も今頃になって中韓のマネしなくても。。。

拉致事件も、田母神論文も、アメリカ(というかアメリカの中のひと)の「糸」が透けて見え、トヨタに代表される自動車産業や、キャノン、ソニーなど歴代経団連代表の会社が率先して、派遣者切りや内定取り消しを行って就職できない若者を増員中。

昨日の尖閣諸島での中国船の侵入など、こういったことはこれから何度もおこって、領土問題はどんどん大きな問題になっていくでしょう。黙っているとなめられる一方だ!なんていう声も大きくなって、、、、明らかにレールに乗せられている感じがするんですけど、なにもできませんね〜。第二次大戦前もいきなり始まったときは、インテリも含めて「えっ?!」ていう感じだったみたいです(哀)。

昨日の小泉元総理の久しぶりに必死な顔を拝見すると、ホントに面白くて笑えない本です。
★★★★

☆参考書評
◎琥珀色の戯言
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【目次】

序章 アメリカ人の半分はニューヨークの場所を知らない

第一章 暴走する宗教
・子どもにブッシュを拝ませる福音派洗脳キャンプ
・遺伝子や進化の研究は神の冒涜か?
・「私に少年愛を教えたのは神父さま」
・キリスト教ディズニーランドの廃墟で泣く
・ドライブスルー教会にプロレス伝道師
・クリスマスを異教徒から守れ!
・セックスは絶対ダメ!でも、やるなら生で!
・「911テロはホモなアメリカへの神罰!」
・「神様、兵隊さんを殺してくれてありがとう!」

第二章 デタラメな戦争
・ブッシュ政権に裏切られた美人スパイ
・アメリカに帰還したイラク戦争の狂気
・敵国キューバに残るアメリカの拷問所
・兵士不足が起こしたイラク人虐殺事件
・戦争を知らないタカが戦争を起こす
・アメリカは拷問まで海外にアウトソーシング
・ランボーの戦いは全部スカだった
・政府がコントロールできない戦争株式会社
・ソ連を倒してタリバンを育てた男
・オサマ・ビン・ラディンを知りませんか?

第三章 バブル経済と格差社会
・ウォルマート、激安の代償
・ポラロイド倒産で社員が得たものは?
・最低賃金で1ヶ月生きられるか?
・マリファナの売人はセレブな未亡人
・年収360万円の若造に2億円の住宅ローン?
・病人を見殺しにする医療保険はビョーキだ
・メイド・イン・チャイナの星条旗を禁止せよ
・アメリカのトウモロコシ畑は日本の総面積より広い
・ミッキー・マウスを十字架にかける牧師

第四章 腐った政治
・ブッシュとブッシュマンをつなぐ男
・実用化された電気自動車はなぜ消えた?
・ブッシュは史上最低の大統領に決定!
・『ブッシュ暗殺』は「奴ら」の思うツボ
・ブッシュ政権は本当に「保守」か?
・イラク空爆の導師も高級デートクラブの顧客
・隠れゲイの反ゲイ政治家とヤったゲイ募集!
・選挙に勝つなら何でもする「ブッシュの頭脳」
・ウォール街の保安官、売春でつまづく
・ブッシュの伝記映画の重大な事実誤認とは? 

第五章 ウソだらけのメディア
・イラク戦争を操ったメディアの帝王(※ルパート・マードック)
・ブッシュと記者団に恥をかかせた勇気あるコメディアン(※スティーブン・コルベア)
・魔女狩り連合軍と戦った三人の歌姫(※ディクシー・チックス)
・「オバマ候補はイスラムのスパイだ!」
・「女に選挙権を与えるな」という女性政治評論家
・アニメとオッパイで稼いでプロパガンダ

第六章 アメリカを救うのは誰か
・「奴隷制度の賠償してくれる人に投票するよ」
・「黒人が大統領候補になれるのは50年先だ!」
・不死鳥マケインは拷問より親父が怖い
・はぐれ牛マケイン、右も左も蹴っ飛ばせ
・老舗のお笑い番組がヒラリーを救った
・オバマ=セレブ=パリス・ヒルトン?

終章 アメリカの時代は終わるのか
____________

【内容紹介】デタラメな戦争、崩壊する経済、暴走する宗教、ウソだらけのメディア、腐敗する政治…ブッシュの8年間でアメリカはかくも酷くなった。文藝春秋 (2008/10/9)




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by yomodalite | 2008-12-10 15:01 | 現代文化・音楽・訳詞 | Trackback | Comments(0)

SとM(幻冬社新書)/鹿島茂

SとM (幻冬舎新書)

鹿島 茂/幻冬舎



30代中頃まで、わたしは『O嬢の物語』という小説がすごく気になっていました。というのも私が読んだ版では、作者は序文を書いたジャン・ポーランではないか、と言われていて、確かにガリマール社の社主であるジャン・ポーランなら匿名で出版する理由も、『O嬢』の文学性の高さもある程度は理解できるのですが、ステファン卿やO嬢の人物描写や、性愛描写も、未完で終わっていることも、どうも納得がいかない。

まず、こんな作品を書く「男」が想像できなかったし、かといって「ゲイ」とも思えない。サドの一連の作品や、マゾッホには見られない文学性がどこから生じたものかも、O嬢があの後どうなったんだろうという「謎」もなかなか消えませんでした。

その後、その「謎」は、アップリンク社から発売された『エロティカ』という10人の女性の性の告白を収めたVDでようやく解けました。ポーリーヌ・レアージュ(ドミニク・オーリー)はやっぱり女性でした。

簡単に言うべきではないと躊躇しつつ、、あっけないぐらい簡単に言ってしまうと、これは、オーリーにとって、文学的にも師匠であり、恋人でもあったポーランへの、ラブレターだったんですね。だから、あの結末しかなかった。。

映像に納められているドミニク・オーリーの姿は、出演時は老女だったにも関わらず、サガンをもう少し可愛らしくした感じで、ジャン・ポーランと恋人だったが、夫とも円満で子どもにも恵まれたこと、などを幸せそうに語っていて永年の謎が解けたとともに、徐々に「SM」への興味も薄らぐことができました。

本著は鹿島茂氏による語りおろしで、あとがきで著者が語っているような、文明史的にSMを位置づけるというには少し軽く、実践的指南書という側面も、業界調査もほとんどないので「一般教養としてのSM」を求める向きに適しています。自己紹介や、人物評でもSかMかという区分けや「ツンデレ」が一般的になっているので、需要があっても不思議ではないのでしょう。

「SはサービスのS」というのは、よく聞かれる言葉ではありますが、SM業界の「S」が全員女性であることや、また前述の『エロティカ』に出演している女王様、たしかアラン・ロブ・グリエの妻だったと思うのだけど、そういったいわゆる女王様以外で「サービスSという男」がキリスト教文化の西洋にいるのかどうか、という点を鹿島氏には言及してほしかったですね。

「縄」の国である日本には「サービスSの男」は確かにいる。というか、そもそも「サービスSの男」というのは、もしかしたら日本だけのものではないでしょうか。谷崎潤一郎が他の追随を許さないのもそうした理由ではないかと思う。

「放蕩娘の縞々ストッキング!」
http://blog.nagii.org/?eid=828368

「マンハッタン狩猟蟹の逃げ場」
http://plaza.rakuten.co.jp/goodbyehalo/diary/200806020000/

「月灯りの舞」
http://ameblo.jp/tsukiakarinomai/entry-10095779335.html
__________

[BOOKデータベースより]娼婦に肛門性交を強いて国を追い出された作家マルキ・ド・サド、被虐趣味に溢れた小説を書き一躍有名になったザッヘル・マゾッホ。彼らの嗜好を基に命名された「サディスム」「マゾヒスム」が浸透したのは十九世紀だが、そもそも精神的・肉体的な苦痛を介して人が神に近づくキリスト教に、SM文化の源流はあったのだ。鞭とイエスはどんな関係があるのか?そして、SMが輸入されることもなく日本で独自の発展を遂げたのはなぜか?縦横無尽に欲望を比較する画期的な文明論。

第1章 そもそもSとは?Mとは?;
第2章 SMって何?いつから発生した?;
第3章 SMは、どのようにエスカレートしたのか?;
第4章 SMは、歴史の必然から生まれた;
第5章 SMの理想の相手は、どこで見つかるのだろう?;
第6章 SMは、文化のバロメーターである;
第7章 日本人にとって、SMとは何か?


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by yomodalite | 2008-10-16 14:06 | 現代文化・音楽・訳詞 | Trackback(1) | Comments(0)

体の中の美術館—EYE、BRAIN、and BODY/布施英利

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布施氏の本を読むのは処女作の『脳の中の美術館』以来20年ぶり。カバーの頭蓋骨写真(ゲルハルト・リヒターの『髑髏』という作品)に惹かれて久しぶりに読んでみました。

昔からこの手の本をよく読んでいたのだけど、今はあまり触手が動かない。言葉で美術を語る語り口に少し飽きてしまったからでしょうか。それに、幼い頃から美術評論の本を読んでいて不満でならなかったのは、全体に図版が少な過ぎることと、本文ページの白黒図版の汚さだったのですが、それから30年以上も経ってもほとんど変わっていないのはなぜだろう。印刷・製版業界は、デジタル化により激変したのに。。。

本著の雰囲気は、ベストセラーになった福岡伸一氏の『生物と無生物のあいだ』に似ています。布施氏の語り口の詩的なところがそう感じさせるのだけど、残念ながら福岡氏の本ほどの濃密な物語はないので新書化には向いていないでしょう。ガツガツした気分でなく、昼下がりにカフェでまったりという余裕のある1日なら美味しい紅茶のお供に合うかも。

★★★

「オンライン書評図書館 -Blue Sky Horizon」
http://app.blog.livedoor.jp/type5w4_lion/tb.cgi/51464224
_______________________

【内 容】
人は、目と脳と、そして体で見る。東京藝術大学で美術解剖学を教える芸術学者・布施英利が、芸術に対峙する「人体」を思考軸として先史洞窟から現代アートまで、作品に込められた生命の記憶を辿る。前作「脳の中の美術館」に続くシリーズ第2弾。図版50点収録。筑摩書房 (2008/06)

【目 次】
1.EYE「目」
科学の目
芸術の目
目の誕生
ワンダフル・アートの世界
光と色の歴史
中世フランスの光
2.BRAIN「脳」
イメージが生まれる
脳が芸術を生む瞬間
脳と遠近法
レオナルド・ダ・ヴィンチ『最後の晩餐』
千利休「待庵」
重森三玲の庭
絵画と脳
ピカソによる破壊
脳における視覚情報
デュシャンによる破壊
芸術における「子ども」
絵画の死?
3.and BODY
「手」 手の解剖学、線を描く、石を彫る
「足」 ヒトの足、足の解剖学、他
「肺」 オペラ、空気を吸う、呼吸で描く
「背骨」 バッターボックス、サボテンと脊柱、他
「内臓」 一本の管、内蔵と進化、色と進化、30億年のかたち



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by yomodalite | 2008-10-06 13:07 | 現代文化・音楽・訳詞 | Trackback | Comments(0)

ジャパンクールと江戸文化/奥野卓司

ジャパンクールと江戸文化

奥野 卓司/岩波書店

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2004年の『日本発イット革命ーアジアに広がるジャパン・クール』に続いて2冊目のジャパン・クール本。相変わらずものすごくダサイ装幀が残念ですが、あちこちで目にするようになった「ジャパン・クール」の紹介者である奥野氏の本なので読まずにはいられません。

今回はマンガ・アニメ、JPOPなどジャパン・クールの源流は江戸にあった、というもの。江戸の再発見ブームは永く続いていますが、「数奇者」ー「オタク」、「ワビ、サビ、イキ、モエ」や、鎖国の国のグローバリズムなどなど、江戸文化の実態を探る内容にもなっていて、目次からも面白さが窺える。読者を疲れさせない読みやすい文章ですがレベルの高い内容。

【目次】
第1章:ジャパン・クールからみえる江戸文化
・モザイクに広がる日本文化ーパリのジャパン・クール
・変貌するファン層
・「伝統文化」のニューウェーブ
・江戸人のクールな生き方
・江戸時代をフィールドワークする。
第2章:コミュニティを再生する江戸文化
・「こんぴら歌舞伎」は全国から
・歌舞伎によるまちづくり
・祇園際の変容
・「伝統」の発明
第3章:ジャパン・クールとしての江戸文化
・「開国」していた江戸、「鎖国」している現代
・江戸文化のデジタル化
・「モノづくり」から「モノ語りづくり」へ
・玉三郎のデジタル感覚
・デジタル歌舞伎へ
第4章:江戸文化の「モエ」の構造
・「情報化」「成熟化」「多様化」が「江戸」を呼ぶ
・江戸のメディア化
・「数奇者」というオタクのネットワーク
・「武士道」なんか知らないーマンガとしての「忠臣蔵」
・エンターテイメントとしてのテクノロジー
・アニミズムからアニメへーキャラクターの錬金術
・鎖国のクニのグローバリズム
・江戸人の美意識ーワビ・サビ・イキ・モエ
第5章:京都・大阪・名古屋のコンテンツ戦略
・上方の文化ビジネス戦略
・京都商法としての家元制・本家制
・大阪商法のフィランソロピー
・元気な名古屋の存在理由
第6章:江戸という近未来
・江戸は「管理者会」か「大衆社会」か
・クールな江戸町民にとっての幸福ー西鶴の教えるネット社会の罠
・「江戸文化」をデジタル・コンテンツに

★「本よみうり堂」
http://www.yomiuri.co.jp/book/review/20070918bk03.htm

「作られた伝統も格好いい」
 ジャパンクールを若者語で言うと「日本、萌(も)え!」だろうか。アニメ、ゲーム、Jポップなど日本発のポピュラーカルチャーがアジアでも欧米でも大人気であることはよく知られている。欧米ではそんな現代若者文化を経由して歌舞伎や文楽などの「伝統文化」にまで新たな関心が及び、「ジャパンクール」(カッコいい日本)と呼んで高い評価が生まれている。だが新しい若者文化の担い手がどうして古い「伝統」文化の歌舞伎好きでもあったりするのか。
 文化人類学者クリフォード・ギアツは、連綿と続く伝統芸能と見られていたバリ島のガムラン音楽や踊りなどの民俗芸能が近代になってつくりだされた「伝統の発明」であることを明らかにして学界に衝撃を与えた。そんな認識の上に立って80年代以後、学者たちは「本物の伝統」と「ニセの伝統」の二つを見極めることを学問の任務と唱えた。ところがその後世界各地の「伝統儀式」「伝統行事」なるものの詳細な調査がなされたところ、ほとんど近代以降の「発明」であることが明らかになった。さあ「本物の伝統」などこの世にあるのか。
 著者は学者が批判的にとらえてきた「伝統の発明」を日本文化創造の源泉とみてむしろ評価する。古典文学を翻案してできた『義経千本桜』など人形浄瑠璃や歌舞伎の演目は今日のアニメ、映画と同じ「現代世相劇」だった。
 それは「伝統」を利用して「現代」を楽しむ江戸のクール感覚の産物。アニメに取り入れられた浮世絵の描写術や歌舞伎の演出法からキャラクターグッズというべき役者絵や根付けまで、ジャパンクールの現象や商品の原型は江戸時代にあると著者は分析し、さらにオタクの芸能集団を身近に召し抱えた足利義政から当時のJポップ「今様」を愛した後白河天皇の平安時代にまで遡(さかのぼ)らせうると示唆する。ほどよい批判精神と遊び心のバランスを備えた著者ならではの、海外受けする日本文化生成の謎解き。
 ◇おくの・たくじ=1950年京都市生まれ。関西学院大教授・情報人類学。
評・白幡洋三郎(日文研教授)(2007年9月18日 読売新聞)

★毎日jp「今週の本棚」
http://mainichi.jp/enta/book/hondana/archive/news/2007/08/20070805ddm015070126000c.html

田中優子・評 『ジャパンクールと江戸文化』=奥野卓司・著

◇黄表紙を踏まえたオタク的発信

 江戸時代は光の当てかた次第でお多福にも般若にもなる。笑いに満ちた桃源郷にもなるし、残酷な身分社会にも見える。どちらが本当だろうか?と真実を追究しようとしても、実体にはするりと逃げられる。しかし確実なのは、江戸人は近現代日本人が持ったことのない、変転自在な自我像を持っている、ということだ。この自我像はさまざまに顔を変え名前を変える。そのスピード感と軽さは、まさに「クール」なのである。

 「日本文化はクール、と言われているのよ」と最初に聞いたのは、ドイツ人の日本研究者からだった。数年前のことである。「どういう意味?」と尋ねると「かっこいい、ということ」だと言う。漫画、アニメにはまったヨーロッパ人たちから出た言葉らしいとわかったが、その「クール」という語感が、私が十代のころ最初に江戸文化に感じたことと似通っていることに驚いた。戦後生まれで江戸文化にはまる人は、外国人のような感覚で驚愕(きょうがく)の出会いをした人である。その出会いの瞬間を表現したのがこの「クール」という言葉かも知れない。語感は「いき」に極めて近い。

 本書は、ストレンジャーとしての我々(現代日本人およびあらゆる外国人)の眼に映る驚きの江戸時代、面白くてしようがない江戸時代を、迷いなく描き出した本だ。書かれている中身は、この二十年ほどの間に明らかになり表に出てきた事柄であって、新しい発見があるというわけではない。しかし資料の発見や新しい証明も大事だが、江戸研究がそれ以上に必要としているのは、新視点やそれを支える価値観の登場なのである。「ジャパンクール」は漫画やアニメに対して出現した言葉だ。本書はたちまち、それを現代の歌舞伎、祭、そして江戸文化のあらゆる現象に適用した。そして見事に、江戸時代の文化を「クール」という言葉に転換してしまった。この素早い身動きがクールである。

 しばらく読んで、ああそうか、と納得した。じつはこの本、江戸時代の黄表紙(漫画本)『御存(ごぞんじの)商売物(しょうばいもの)』のパロディなのである。本を開けると「口上」が始まる。『御存商売物』は能狂言の狂言師が口上を述べるが、本書では歌舞伎や文楽の口上でご挨拶(あいさつ)があり、定式幕が開く。『御存商売物』では、幕が開くとそこは作者の見た夢の世界だった。当時の最新メディアである江戸の出版物たちが人間の姿となって現われ、流行を争い、『源氏物語』や『徒然草』のような古典さえも現代メディア(商売物)の中に位置づけられてゆく。これは江戸クールの代表的な本である。

 本書でも、江戸文化が単なる伝統としてではなく、今の市場の中で動いている(動き得る)魅力的な商品(商売物)として書かれている。戦略的にそのように編集されている。インターネットやユーチューブで拡がる伊藤若冲や歌舞伎、落語、グーグルによる江戸古地図サービスなど、江戸文化がすでにさまざまにデジタル・コンテンツ化されている様子が紹介され、さらにそれを促す。ここから立ち上がってくるメッセージは、今こそ江戸文化を日本人の手でデジタル・コンテンツ化しようではないか、という情熱的でオタク的な呼びかけである。

 江戸文化は様々あるが、本書ではその戦略に沿って周到に選択・紹介されている。しかしそれでいてさわやかなのは、著者がお金儲けに熱心なわけではなく、江戸時代の文化がしんそこ好きだからだ。頭ではなく五感すべてでクールを感じ取ったオタクこそが、江戸を世界に発信できるのだろう。(毎日新聞 2007年8月5日 東京朝刊)

※ジャパン・クールへの批判
「松岡正剛の千夜千冊」
http://www.isis.ne.jp/mnn/senya/senya1172.html
http://www.isis.ne.jp/mnn/senya/senya1237.html

【参考文献】
粟津潔・奥野卓司編『日本の技 第五巻 古都絢爛の技』
梅○忠雄『美意識と神さま』
田中優子『江戸の想像力』
富岡多恵子『西鶴の感情』
吉田弥生『江戸歌舞伎の残照』
米山俊直『「日本」とはなにか』。。。。等



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by yomodalite | 2008-09-13 22:07 | 現代文化・音楽・訳詞 | Trackback | Comments(2)

芸術と青春 (知恵の森文庫)/岡本太郎

芸術と青春 (知恵の森文庫)

岡本 太郎/光文社




岡本太郎の知恵の森文庫で復刊されている3部作、『今日の芸術』(1954)、『日本の伝統』(1956)、『芸術と青春』(1956)を一気読み。

まずは、今回初めて読む『芸術と青春』。
1929年、太郎は18歳でフランスに行き、1940年、29歳で帰国している。31歳で徴兵検査を受け中国で4年間軍隊生活を送り、1946年に復員した。1947年に敏子に会い、復員の8年後に、『今日の芸術』刊行。本著はその2年後に出版されています。

大成功した親の2世として、当時は非常にめずらしかったであろう留学経験。しかもパリが芸術の都として最も華やかな時代に、その綺羅星たちのほとんどに太郎は交流を果たした後一転して軍隊生活へ。終戦後の多くの文学者が、日本軍の惨めな実情をとおした反戦哲学や、日本批判をすることでしか世界意識を獲得できなかったのとは異なり、太郎は、日本とフランスを比較して日本を批判するようなことは一切していない。

鋭敏な感受性を持ちつつ、夏目漱石のように神経症にも陥ることなく、通常の日本人より落差が大きかったであろう軍隊生活を経て『今日の芸術』が書かれたことはまさに驚異的。芸術の都での太郎は、いわゆる日本の伝統を心の拠り所にしていたわけではない。太郎のその誇り高い魂の源であった岡本家の真実、かの子と一平の夫婦生活についても、実の息子でありながら、的確な評価をし、尊敬しつつも、超えようとする太郎の強い意志。。。この本を十代までに読めなかったことが本当に悔やまれる。

【目 次】
はじめに/岡本敏子
1/青春回想
色気と喰気、はたち前後、青春の森、ソルボンヌの学生生活、銃と私 ほか
2/父母を憶う
母、かの子の想い出、私の好きな母の歌、かの子文学の鍵、父の死 ほか
3/女のモラル・性のモラル
処女無用論、日本女性は世界最良か?、春画と落書き、女性に興ざめするとき ほか
解説/みうらじゅん
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【BOOKデータベースより】「青春は無限に明るく、また無限に暗い。」—岡本太郎にとって、青春とは何だったのか。パリでの旺盛な芸術活動、交遊、そしてロマンス…。母かの子・父一平との特異ではあるが、敬愛に満ちた生活。これらの体験が育んだ女性観。孤絶をおそれることなく、情熱を武器に疾走する、爆発前夜の岡本太郎の姿がここにある。 光文社 (2002/10 初出1956年河出書房)

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by yomodalite | 2008-04-22 14:10 | 現代文化・音楽・訳詞 | Trackback | Comments(0)

日本発イット革命−アジアに広がるジャパン・クール/奥野卓司

日本発イット革命―アジアに広がるジャパン・クール

奥野 卓司/岩波書店



タイムリーではありませんが、4年前の著書が今の現状をどれぐらい予知していたのかという興味により読んでみました。この数年で秋葉原の外人客の様相は明らかに変化し、ジャパニメーションや、ジャパンクールは一層拡大している印象がありますね。

著者は関西学院大学教授で、若い頃は11PMの台本をアルバイトで書いていたらしく、通常の大学教授の著書と違って関係者向けではない一般書。日本のオタク市場をTV的な印象操作のそれではなく「多元的マニアックス」と呼び、韓国や中国が国主導でコンテンツ政策を進めているが、イット革命が遊びの要素からなりたっている以上日本が追い抜かれることはないだろう。というのが要旨。

現在の日本のアニメ、マンガ業界の疲弊は明らかだが、世界の文化状況の停滞ぶりは更に激しいので、相対的にはやはり追い抜かれることはないかもしれない。それにしても、このダサ過ぎる装幀にジャパンクールっていうのは・・ ヾ(´ω`)

★★★☆
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【内容「BOOK」データベースより】拡大する日本発ポップカルチャーの実態に迫る。いま日本のゲームやアニメ、Jポップなど日本発のポップカルチャー(ジャパン・クール)がソウル、台北、上海、香港などで爆発的に拡大し、世界で高い評価を受けている。この拡大を支えているのは、多元的なコンテンツ(イット)に関心をもつ若者たちだ。豊富な調査から彼らの実態を浮き彫りにする。 岩波書店 (2004/12)

【目次】
1章/イット革命が始まる
竹中さん、IT革命って何だったのですか、Tバブル崩壊の原因 ほか
2章/イット革命が広がる—東アジアでの日本発ポップカルチャー
「ジャパン・クール」伝播の実態は?、台北の「哈日族」 ほか
3章/イット革命が創られる
「イット革命」以前、エキゾティシズムの評価を越えて ほか
4章/イット革命のゆくえ
国家戦略としてのイット革命—韓国と中国、就業可能人口と産業化の可能性 ほか



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by yomodalite | 2008-04-06 23:29 | 現代文化・音楽・訳詞 | Trackback | Comments(0)

底抜け合衆国 ー アメリカが最もバカだった4年間/町山智浩

底抜け合衆国―アメリカが最もバカだった4年間 (ちくま文庫)

町山 智浩/筑摩書房




アメリカ衰退の始まりを描いた歴史的カルチャー本!

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[BOOKデータベース]ブッシュ大統領「疑惑の当選」からマイケル・ムーアの『華氏911』戦争まで戦時下アメリカの恐ろしくもマヌケな真実!カリフォルニア州知事アーノルド・シュワルツェネッガー、『アメリカン・サイコ』ブレット・イーストン・エリスなどのインタビューも収録。 洋泉社 (2004/08)

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by yomodalite | 2007-04-11 14:29 | 現代文化・音楽・訳詞 | Trackback | Comments(0)

旧「読書日記と着物あれこれ」。歴史/文学/お笑いを好み、着物生活をしていたはずが、いつしかマイケルジャクソンのように本を読もうになってしまったブログ。永年暮らした東京を離れ、現在は大阪を満喫中。


by yomodalite