カテゴリ:評論・インタヴュー( 75 )

日本ゴロン/枡野浩一

日本ゴロン

枡野 浩一/毎日新聞社



1998〜2002年春までの毎日新聞連載を元に2002年に出版された本。連載は当初は週1回、途中から月1連載になり、そのときのタイトルが「君のニャは、」。

カバーの猫の写真と、枡野氏が語尾に「ニャ」をつけていることが多いのが、本書の特徴です。

同じタイトルで、連載時の挿絵と本書のカバー写真を担当した写真家八二一(はに・はじめ)の写真集も発売されています。

1998〜2002年というのは、枡野氏がまだ南Q太と結婚していて、キックボードが流行って廃れ、谷川俊太郎と佐野洋子が離婚して、相田みつをブームがあり、山崎邦正の元相方がその真似ぽいことをして、326くんや、三代目魚武濱田成夫(!)が…という時代。

それなのに、本書には懐かしさはなく最後までぐいぐいと読まされたうえに、またもや枡野氏推薦本も読まなくては!と思わされる。

書評「マガジンハウスの本が大好き!」「その他の書評」で紹介されている中で、

下記の5冊をメモ。

・川島誠『800』(角川文庫・解説江國香織)
・金子兜太×いとうせいこう『他流試合』
・室井佑月 短編集『Piss』収録「鼈のスープ」
・鈴木清剛 『消滅飛行機雲』
・永江朗『批評の事情(不良のための論壇案内)』

切通理作『ある朝、セカイは死んでいた』を評価していたのは意外だったものの、切通の「結論を出すために書いているのではありません」を引用していることには納得。あとは、保坂和志を読まないとね。


「早稲田短歌」枡野浩一40000字インタヴュー」
http://wasetan.fc2web.com/33/interview.html
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【MARCデータベース】言葉はだれのものか? 歌人・枡野浩一の極私的「日本語論」。『毎日新聞』夕刊のコラム「君のニャは、」を完全収録。かわいくって笑いがこみあげる、八二一撮りおろし猫写真も収載。 毎日新聞社 (2002/12)



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by yomodalite | 2009-05-08 14:10 | 評論・インタヴュー | Trackback | Comments(0)

ダンディズムの系譜 — 男が憧れた男たち (新潮選書)/中野香織

ダンディズムの系譜―男が憧れた男たち (新潮選書)

中野 香織/新潮社



目次には、ブランメル、オスカー・ワイルドなど... 澁澤龍彦、生田耕作氏らのダンディズムに関する著作で馴染み深い名前が並んでいて、一瞬既読感で一杯になるものの、序章で、NHK・BS「今夜決定?!世界のダンディー」(‘08)という討論番組への疑問に共感し、また著者が今ダンディズムを語ることにどんな意味があるのか?という問いを内包したうえでの著作をいうことがわかり、読んでみました。

ちなみに、NHKの番組で名前が挙がったメンバーは、マイルス・ディヴィス、ジョン・レノン、ダリ、ウォーホル、植木等、薩摩治郎八、後藤新平、周恩来、チェ・ゲバラ、エドワード・サイードで、最終的に「世界最高のダンディー」は、姜尚中が推薦したエドワード・サイードに決定。

この番組は、私も視聴者として非常に違和感と不満を感じたものだったのですけど、著者も、イングリッシュ・ダンディの系譜にありえない決定であるとし、また現代の日本のダンディと考えられている要素にも異議を唱えている。

例えば、現在の日本でダンディといえば思い浮かべる人の多い「白州次郎」も、著者はダンディとは異なるという。

白州のスマートに王道を行く感性は、本来の意味でのダンディではなく、世間からマイナス視されるような価値を、ことさら大声で論じ立てることなく、プラスに転じてみせるような皮肉なひねりというか複雑さが必要で、マイナス要素があまりない白州には、そういった屈折が感じられない。と。

序章からもう少し引用すると、

ダンディとは、元祖を生んだ英国においても、実は100%のほめ言葉ではない。
突出しない同調をよしとする世間の価値観にささやかに抵抗すべく、意識的に、偽悪的に、軽佻浮薄は表層で武装することもあるダンディは、見方によっては、愚かしくぶざまに見える存在である。

ダンディと呼ばれた男たちは、堂々と、演技的に、「空気を読めない」、いや「空気を読んだうえでぶちこわす」男たちだった。徹底して個を貫き、世間を支配する枠組とはまったく別の枠組をもちこむことで、その他大勢にすがすがしく優越した。(引用終了)

紹介されているダンディ達は16人。英国で廃れつつあったダンディズムがフランスで詩的哲学として結晶化され、現代に引き継がれたことなど、人物列伝だけでなく、歴史としてのダンディズムが描かれているところも興味深い。

終章は「日本におけるダンディズム」。粋とダンディを比較するのは、気の遠くなるような課題であるとは思うけど、本書の粋版ほど、読みたい本はないとも思えるほどなので、いつか出版されることを期待してます。

中野香織公式ウェブサイト
http://www.kaori-nakano.com/
_____________

【出版社/著者からの内容紹介】華麗な装い、大胆な立ち居振る舞い、事に臨む態度で、氏素性に関係なく周囲をひれ伏させる男がいた。
「ナポレオン(英雄)になるより、ブランメル(ダンディの祖)になりたい」と詩人バイロンにいわしめた、絶対的な魅力の正体とは? 時代ごとのカリスマ、理想の男たちのまばゆい系譜と「愛され力」を、気鋭のファッションジャーナリストが徹底解剖する。 新潮社 (2009/02)


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by yomodalite | 2009-04-17 15:37 | 評論・インタヴュー | Trackback | Comments(0)

日本という方法—おもかげ・うつろいの文化 (NHKブックス)/松岡正剛

日本という方法―おもかげ・うつろいの文化 (NHKブックス)

松岡 正剛/日本放送出版協会




本書は、NHK人間講座の 「おもかげ・うつろいの文化」の講義を基にした本。

NHK放送時の副題は 「日本の編集文化を考える」で、日本を編集的に見るという視点が松岡氏らしいのだけど、それだけに、最近よくある日本の誇りとか、自信を取り戻せとかいう類いとは異なり、日本が古代から一貫して「主題の国」ではなく、「方法の国」であったと見抜いているのは流石です。

松岡氏は、日本を「一途で多様な国」という。

大切なことは「おもかげ」や「うつろい」を主題ばかりで埋め尽くさないこと。

引用したい箇所も紹介したい点もあり過ぎて、書ききれません。2006年出版の本なのですけど、過去私が読んだ「日本」本のなかでもベスト本(ランクインという意味)。

第1章から最終章まで、各々素晴らしく編集力が唯事ではない。厚さ12ミリほどのテキストですけど、ぎっしり詰まってコンパクト。なんとたったの1200円で日本の基本がわかります!

【目 次】
第1章 日本をどのように見るか
第2章 天皇と万葉仮名と語り部
第3章 和漢が並んでいる
第4章 神仏習合の不思議
第5章 ウツとウツツの世界
第6章 主と客と数寄の文化
第7章 徳川社会と日本モデル
第8章 朱子学・陽明学・日本儒学
第9章 古学と国学の挑戦
第10章 二つのJに挟まれて
第11章 矛盾と葛藤を編集する
第12章 日本の失敗
第13章 失われた面影を求めて

「404 Blog Not Found」
http://blog.livedoor.jp/dankogai/archives/51082324.html

「見もの・読みもの日記」
http://blog.goo.ne.jp/jchz/e/780d383bd461c33bc870f87343da44cd
____________

【BOOKデータベース】
アワセとキソイで「日本的編集方法」を探る。あまたある「日本論」「日本人論」のなかでも日本を「方法の国」として考えるという、大胆な試みはされてきただろうか。何らかの情報を得て受けとめる方法のすべてを「編集」であると見て史書の編纂から日記、短歌、連歌などにとどまらず政治・経済のシステムや、書くこと話すこと、生きることそのものまでを編集行為として捉え、長年考察し続けてきた成果をもとに日本を日本ならしめている「日本的編集方法」を探っていく。ことさらに「主題」を求めようとするのではなく歴史に蓄積された「日本という方法」を発見していく注目の書。 日本放送出版協会 (2006/09)

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by yomodalite | 2009-04-05 19:29 | 評論・インタヴュー | Trackback | Comments(0)

シネマほらセット/橋本治

シネマほらセット

橋本 治/河出書房新社




内田樹氏との対談集『橋本治と内田樹』で、本書を読みのがしていたことを知って、慌てて読んでみました。もちろん、まだまだ読んでいない橋本本は多々あるのですけど、本書は2004年発刊でアストロモモンガ系・・・現在のところ在庫あります。未読の方はお急ぎくださいませ。

さて、シネマほらセットは、館主が『ゴジラ対金日成』で成功した金をつぎ込んだ港区贋麻布のドーム型室内嘘つき映画館。ドーム型なので野球もやれれば見本市もできる。評判が悪ければ自転車に積んで夜逃げも出来る、などという妖しげな館主は埋もれた映画の発掘上映に力を注ぐと言ったものの、ハリウッドでは日本ブームが到来し、年末は忠臣蔵にスターが総出演という事態。『ガラスの仮面』『エデンの東』『源氏物語』がどんなことになったかは、内田先生のサイトを見ていただくとして、

内田樹の研究室
http://blog.tatsuru.com/archives/000166.php

館主の語り口調がたまらない『赤垣源蔵/孤独の晩餐』をちょっぴり紹介します。

長大な長回しによる思想的映画で有名なテオ・アンゲロプロスによる「忠臣蔵外伝」!!

主演:ハーヴェイ・カイテル、イレーネ・パパス、マリアンヌ・フェイスフル
監督:テオ・アンゲロプロス
脚本:テオ・アンゲロプロス、堺屋太一
撮影:ヨルゴス・アルヴァニテス
音楽:ミキス・テオドラキス
原題:GENNZO,Or A Sealed Bottle Of Wine
(源蔵、あるいは封印されたままのワインボトル)
配給:シネカノン

1999年 フランス、イタリア、ギリシャ、ボスニア・ヘルツェゴヴィナ合作
三時間二分

・・・クエンティン・タランティーノ監督・脚本によるオムニバス版の忠臣蔵外伝が、ピーウィー・ハーマンの屋台そば屋を狂言まわしにして、豪華キャストで撮影中でありますが(ブルース・ウィリスの赤垣源蔵、ジョン・トラボルタの決闘高田馬場に、ジャン・レノの清水一角だそうです)、そちらより先にフランス、イタリア、ギリシャ、ボスニア・ヘルツェゴヴィナ合作のこちらが完成してしまいました。

 赤穂四十七士の1人、飲んだくれの赤垣源蔵が吉良邸への討ち入り直前、一升徳利を提げて兄に別れを告げにいく。(中略)ご存知忠臣蔵外伝「赤垣源蔵徳利の別れ」が四時間半のとんでもない大作になってしまいました。

長屋の屋根には雨が降る、ざんざかざんざか雨が降る。長屋の路地には、ジジーもババーも傘を差して佇んでいる。なんで佇んでいるのかは知らないが、ただ佇んでいる。そこへやってくるのがハーヴェイ・カイテル扮する赤垣源蔵であります。

源蔵の表情は暗い。なんで暗いのかよくわからない。今宵暮れれば念願の吉良邸討ち入りというのに、源蔵の表情は冴えない。行かねばならぬ、同志がみんな待っている。しかし、源蔵の心には戦いへの不安と疑問がエーゲ海の潮のように満ちてくる。果たして兄は自分の心を理解してくれるのか。祖父の代から受け継がれた古いワインボトルを持って、兄の住む長屋へとやって来た源蔵の前に立ち塞がるジジーとババー。泣く子供。長屋に住んで子供達に手習いを教えていた寺子屋の先生が、十七歳の少年に刺し殺されたという。(中略)

兄はどこへ行ったやら。待てど暮らせど帰らない。兄嫁もまたなにをしているのやら。狭い長屋の一間きりで、源蔵と兄嫁は背を向けたままただ座して黙している。ああ、このまま映画はどうなるのやらと思うと、ザーザー降る雨の音はいつかザーザーと鳴る潮騒の音と重なり、アクロポリスの丘に立った幼い源蔵とその兄は、青いエーゲ海を見下ろしている。

バルカンの赤穂は塩の名産地。それを狙ってオスマン・トルコも攻め入るし、ヴィクトリア女王は遠縁の吉良上野介を国王に押し込んでくるーハプスブルグの皇位継承者フランツ・フェルディナンドがアテネにやってくる。その時の勅使接待役の選ばれた浅野内匠頭は大セルビア主義者の陰謀によって吉良上野介に斬りつけざるを得なくなってしまったのだが、ユーゴと不仲のアルバニアに仕官した源蔵の兄はどこへ行ってしまったのか? 彷徨える記憶と交錯する現在は着々と日暮れに近づいているが、兄嫁は酒屋の御用聞きと不倫の関係にあるらしい。(中略)

空にはボスニア空爆を目指すNATO軍のジェット機の爆音がする。(中略)長屋の前に雨に濡れたアルバニア系の難民がムシロをかぶって音もなく列を作る。暮れの鐘が鳴って、しかし兄は一向に現れない。現れない兄を探して、赤垣源蔵は外に出る。どこかでまた人が殺されたらしい。幼い兄と弟が、降る雪の中で泣いている。目指すは本所松坂町。両国橋の上では、俳諧師の室井其角が流れる隅田川を見つめている。巨大な熊手に磔られたイエス・キリストが厄落しで流されていく向こう側では、遂に空爆が始まっていた。
壮大だがよく分かんない映画ですが、芸術ですから見てやって下さい。


『ガラスの仮面』は、北島マヤ(白石加代子)、姫川亜弓(デミ・ムーア)、速水真澄(キアヌ・リーブス)、キャサリン・ヘップバーンの月影千草以外、もう考えられないし、『アメリカン・クイーン』は絶対観たくなる。キネマ旬報読者ほど映画通でなくても楽しめそうな映画妄想が満載!
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【BOOKデータベース】鬼才が精魂こめて書き上げた映画のほら話!!『キネマ旬報』誌に連載され、世間をひたすらに唖然とさせたこの世に存在しないウソ映画集、遂に待望の単行本化。

【出版社/著者からの内容紹介】こんな映画があったらおもしろい、こんな映画があってもいいはずだ、なぜこんな映画をとらないんだ。という思いのたけを吐露する告発嘘八百八町面白本。監督、キャスト、スタッフなどはすべて実名でお送りする、橋本治全開。河出書房新社 (2004/3/2)

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by yomodalite | 2009-04-01 14:59 | 評論・インタヴュー | Trackback | Comments(0)

ヤンキー文化論序説/五十嵐太郎(編)

ヤンキー文化論序説

五十嵐 太郎/河出書房新社

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浮世絵や、江戸時代の風俗を見ていたら、「ヤンキー」的なものには、明治以降の近代化以前の日本が見えることに気づいた。

例えば彼らのリーゼントにしても、金髪にしても、外国人コンプレックスではなくて「歌舞伎」だし、ガングロもヤマンバも黒人コンプレックスではなく、渋谷ギャルは出雲阿国や辰巳芸者を生んだ「踊り子」と繋がっている。(本書では酒井順子氏が同様なことを書いておられました)

私はヤンキー的なものに惹かれたことは一切ないし、ファミレスやドン・キホーテ、コンビニすらほとんど行かないし、現在住んでいる地域は、東京都心部の中でも最も「ヤンキー」的なものが見られない地域だと思うのだけど、それでも、E・YAZAWAのロゴステッカーを張った車から逃れることは出来ないことを考えると、ナンシー関氏が、日本人の5割は「銀蝿的なもの」を必要としていると断定したことに間違いはないと思う。

日本人のヤンキー的意識は拡げていけば、歌舞伎座の高級きもの集団や、女性起業家のシャネル好きにも繋がっていくものだと思っていたのだけど、気になっていたのは男子のヤンキー文化が廃れていること。

本書では「ヤンキーマンガダイジェスト」の森田真功、「映画『国道20号線』はなぜ世紀の大傑作なのか」の宮台真司、「ヤンキーたちは地域に戻ることができるのか」の阿部真大がそれについて触れられていて興味深かった。

また、斎藤環氏は「ヤンキー文化と『キャラクター』」で、酒井順子氏との対談集『「性愛」格差論』の中で酒井氏が「平安時代にもヤンキーはいた」ことを紹介し、対談では、家の外壁のイルミネーションや、ルミナリエ、ピーチ・ジョンの下着、桐野夏生、中上健次まで列挙されていて至極納得。

宮台真司、酒井順子、近田春夫、斎藤環。。。などおよそヤンキー文化と関係なさそうな豪華執筆陣ですが、上滑りのコラムではなく、執筆陣の数だけのヤンキー論が満載で、「日本論」としてとても興味深い内容。これまでヤンキーに一切関わりなかった人に!

「情報工学Passion For The Future」
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/03/post-951.html
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【内容紹介】思考や行動の様式から、ファッション、音楽、マンガ、映画、アート、建築まで——いまこそ、ヤンキー文化の豊潤な可能性を見よ! 執筆・インタビュー:都築響一、宮台真司、斎藤環、酒井順子、近田春夫、永江朗、速水健朗ほか  河出書房新社 (2009/3/3)



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by yomodalite | 2009-03-29 22:59 | 評論・インタヴュー | Trackback(1) | Comments(0)

ひとりでは生きられないのも芸のうち/内田樹

ひとりでは生きられないのも芸のうち (文春文庫)

内田 樹/文藝春秋



秀逸なタイトルだなぁと思われた方は、きっと読んで得する本だと思います。本著で内田氏は、「たぶん私は一部メディアからはどんな質問でも『それはね……』と即答する『占い師』のようなものだと思われているのであろう」と書いておられますが、『CanCam』のひとり勝ちから、少子化、「不二家」、非正規雇用、キャリア教育、ホリエモン、ロハス、食の禁忌について、健康、戦争、子供の自殺、葬送儀礼、、、ありとあらゆることを、マスメディアとは全く別の視点を持ちながら、大勢が望んでいた着地点に到達させてくれる。本当に「先生」らしい先生というか。。

橋本治の廉価版(←決して悪口ではありません)のようだなぁ、と思っていたら、内田氏は、橋本氏との対談本も出版されているようで、遅らばせながら、続けて他の本もいろいろと読みたいと思います。
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【内容紹介】性的階層格差にひと言! 強者だけが勝ち続ける「合コン」ってどうなんでしょう!? CanCam的めちゃモテ戦略から夢の少子化対策まで、非婚・晩婚化時代を斬る! 文藝春秋 (2008/1/30)



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by yomodalite | 2009-03-02 15:37 | 評論・インタヴュー | Trackback | Comments(0)

東京の流儀ー贅沢な街歩き/福田和也

東京の流儀

福田和也/光文社



ダーリンが読んでいたのを、ちょいと奪い取って速読しました。

福田和也氏のことは、このブログでは、柳美里氏との対話本の「響くものと流れるもの−小説と批評の対話」だけで、他に読んだ記憶があるのも『作家の値打ち』のみですが、上記2冊で、とりあえず、政治的感性が際立つ小デブのワイン通から、作家の価値を判定できる文学評論家へと印象が変わりました。

大森、豊崎両氏は『文学賞メッタ斬り』の中で、確か、福田氏のことを「政治的な人」と、決して褒め言葉ではなく称していたと思うのですが、日本の文学批評に関わる人がダメな点は「政治」がわからないことだとも言えると思います。(映画評論家もそうですね)

また福田氏は、本著で尊敬する先輩として山崎行太郎、絓 秀実をあげていますが、彼らがダメなのは政治を文学で(しかも辺境の国の)語ろうとした点だとも思う。

どうして、自分がそんなダメ出しをできるのかは不思議ですがww

また、本著の内容に共感する人は、東京に長く住んでいる人でもそんなにはいないように思います。(東京に住んでいない人には、完全に無駄な本にちがいない)

山の手と下町の区分に関してなど、各人様々な見解があるのだけど、成城や田園調布を山の手を思っている人は読まないほうがいいし、その他の戦後鉄道会社に開拓された土地に家を構えた人も読まない方がいいでしょう。

他にも、クリスマスの夜に赤坂プリを使ったことがある人、プリンスホテルで結婚式を挙げることにためらいがなかった人も、本著は読まない方がいいと思う。

でも、上記以外で、どうしても東京にこだわらずにはいられない、失われつつある「東京」に思いをよせている人には磁石のように惹き寄せられる本だと思う。

渋谷、青山がどうしようもない田舎である、とか、銀座好き、一番頻繁に行く蕎麦やが銀座の「よし田」とか、新宿が苦手だとか、「WAVE」「中国飯店」「青山ブックセンター」の六本木とか、あんまり食べないとんかつの店以外は、共感する点が多かったのだけど「よし田」に関しての文章を下記に記録しておきます。

『よし田に来て、蕎麦がどうの、かえしがどうのと云う人がいて、昔は、そういう人を的確に示す言葉があったのですがね。野暮という言葉が。
でも、現在では、一本しか物差しをもっていなくて、それで何でも測れると考えている人が沢山いる。と云うか、ほとんどがそうですね。
野暮とすらも云いようのない、薄くて半端な人たちが、山梨だの、栃木だのの山の中で、熊と猪相手に蕎麦を作っている、武者修行みたいな人が作った蕎麦と、銀座の酒呑み連中が、足場にしている店をくらべて、いいの悪いの云うのですから、嫌になってしまう。まぁ、武者修行なんていうのは、粋なものではないですな。』


私は酒飲みじゃないので「よし田」では、コロッケそばや、にしんそばをいただきます。コロッケは、あのジャガイモに衣つけて揚げたやつとはまったく別物なので、心配しないでください(誰が?)

追記:2013年まで、銀座から遠くない場所に住んでいたので「よし田」にはよく行きましたが、福田氏のような人があまりに甘やかしたせいなのか、「よし田」のレベルは、その後も坂を転げ落ちるように低くなっていき、蕎麦に関しては立ち食い蕎麦の5倍ぐらいマズい・・・と言いたくなるかも。それと、庶民的な店構えに釣られて、夜、飲みに入ると、想定外の金額になることがよくあるので注意が必要です。

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【BOOKデータベース】 「鰻屋でビールはよしなさい」「私の東京とんかつ地図」「銀座の柔らかな自負」「取り換えのきかない店」…。街場のそば屋から高級中華・グランメゾンまで、ある日は自分だけの「ぴん」の店に通いつつ、ある日はデジカメを持って撮影行に出向く。大人の見識あふれる極上街歩き。 光文社 (2008/11/21)



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by yomodalite | 2009-02-25 15:00 | 評論・インタヴュー | Trackback | Comments(0)

あなたの苦手な彼女について(ちくま新書)/橋本治

あなたの苦手な彼女について (ちくま新書)

橋本治/筑摩書房



「苦手な彼女」のことを、どうしてこうも書けるのか。

本著はものすごく橋本治っぽい本です。こんな本は橋本治以外ではありえないのだれど、それだけに橋本治初心者は手を出さない方がいいと思う。

著者は、これまでも「女」について数々の先鋭的な著作があるのですが、残念ながらこちらは、それらの決定版とは言い難いかな。70年代〜の現代女通史となるはずだったと思うのだけど、、あまり他でも評判が高くないようなので擁護したいところなんですが、これほど切れ味の悪い橋本治もめずらしい。でも大変な「労作」であることは間違いないです。

◎「もっと、うららかな日々」
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【内容紹介】 たいていの人に「苦手な彼女」がいるという。いったいそれはどういうことなのだろうか? 七〇年代の高度成長期にウーマンリブ運動が起き、時を同じくして消費者運動が登場した。八五年には男女雇用機会均等法が成立し、その年、内需拡大のために個人消費が推進された。その後の好景気とバブルの崩壊、平成不況....この四十年の間に、日本の男女関係がたどってきた変遷を、ときに女帝の時代にまで遡って深く考察する。 筑摩書房 (2008/12/10)



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by yomodalite | 2009-02-17 11:45 | 評論・インタヴュー | Trackback | Comments(0)

なぜ安アパートに住んでポルシェに乗るのか (ペーパーバックス)/辰巳 渚

なぜ安アパートに住んでポルシェに乗るのか (ペーパーバックス)

辰巳 渚/光文社




前日の日記で、めずらしく有意義なネタ出しした我が家のダーリンなんですが、昨晩どうしようもない「負け組」だということがハッキリしてしまいました。

どうも図書館に行くと返却直後の本のコーナーから、中身も見ずにテキトーに本を選んで来る癖があるんですね(家ではこれを“ハイエナ”と言っています)。

バイキングでもどうしても“カレー”を避けることができないタイプで、取捨選択においては、もはや「弱者」としか言いようがないのですけど、そんな彼が選んできた本の中でも、これはないだろうと小1時間は問いつめたくなったのが本著。

著者はマーケッター。

職場でマーケッターというような人を見ていて、彼らに一般消費者の動向を探ったり、行動を先導していけるような感性がないことは良く知っているので、まず、私はこの手の本には興味ないんですが(言い訳長っ)、とりあえず、ペラペラとページをめくってしまったわけですよ(泣)

目次には、「どうせがっかりすると思いながらも「続編」を観てしまいますか」、「通販番組や通販カタログを見てついほしくなって、買ってから後悔することがありますか」など、多くの人が「あるある」と言いたくなるような質問形式の見出しが並んでいるのですが、

中身を読むと「それで?」と言いたくなるような内容ばかり。もちろん、こういった手法は虚業家にはよくあることで(というかそれのみ)、“続編を観ること”よりも想像どおりで、むしろ安心するぐらいなんですが、想像を絶していたのはその文体!

マーケットとかプランナーと言えば、目新しい横文字を輸入して使用することが仕事の大半を占める職業ですしw、本著は横書きペーパーバック。横文字満載であたりまえなんですけど、どうもマーケット用語らしい使い方になっていないというか、

例えば、

私自身について言えば、椅子chair が悩みです。

・・・数年前ならためらいなく買った get it without hesitation くらい「好き」な椅子でも、今は買いません。

・・・今月は出費 expence が多くて赤字 deficit だからもう使えない、とか、「お金がない」money runs low という理由で買わない、ということはよくあることです(中略)

買うのをためらわせている「なにか」something with hesitation とは、なんなのでしょうか。


こんな文章が延々続きます!(驚)

で、こんなあからさまなページ稼ぎと、アメリカ帰りのイヤミのような著者はどんな奴なのか、と検索しましたところ、著者は女性で、しかも『「捨てる!」技術』など、家事関係でヒットを飛ばした人ではないですか!

捨てる!本を書きまくった彼女の現在のブログは「こんなものを買っちゃった日記」。。

「気をつけなはれや!」

それにしてもダーリン、5年も前のマーケット本を借りるとは・・(トホホ)
___________

【BOOKデータベース】 もやもやとして形をなそうとしない今どきの「買い物」「お金」の本質を知るには、日常、普通に買い物をしている人たちの声を具体的に聞いて、それらに答えを出していくのが一番の近道です。この本を読むことで、買い物の楽しさ、お金を使う喜びを再発見してください。ここで取りあげた事象は、マーケッターにとっても見逃せない消費の状況であるはずです。 光文社 (2004/3/24)



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by yomodalite | 2009-01-22 15:53 | 評論・インタヴュー | Trackback | Comments(0)

ジャパンクールと情報革命/奥野卓司

ジャパンクールと情報革命 (アスキー新書 81)

奥野卓司/アスキー・メディアワークス



『日本発イット革命』、『ジャパンクールと江戸文化』に続く奥野氏の『ジャパンクール』3作目。今回はようやく超ダサダサ装幀の岩波書店から離れて、新書で読めることがまずうれしい。上記2作を読んでいない人は、まずこちらをお求めになることをオススメします。

アマゾンで「ジャパン・クール」で検索すると(クールジャパンも含む)嶌 信彦、杉山知之など単行本でおよそ10作ほど出版されているようです。「ジャパンクール」に関しては、これまでの著書と同様(マンガ・アニメを中心とする日本発カルチャー)で新たなものはありませんが、それの捉え方が、鴻上尚史がNHK-BSでやっている番組とか、他の「ジャパンクール」本との異なり、安易な日本礼賛ではなく、むしろ日本人がまだ気づいていない 「モノづくり社会」への警鐘から、「モノ語りづくり社会」への転換という視点を提示しています。

農耕社会から工業社会、そして情報社会という流れは真実ではないということなど、「ウェブ2.0」が、肌にあわないと感じている人にもオススメ。

とくとみぶろぐ
http://tokutomimasaki.com/2008/10/cool_japan.html
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【内容紹介】バブル崩壊以降の「失われた10年」は、製造業を中心とした日本の産業構造に原因があった。一方でアニメ、マンガなどの日本産コンテンツは、「ジャパンクール」として世界に受け入れられている。ここに隠された情報革命の本質とは何か? 工業社会から情報社会への転換がもたらす、生活・文化とビジネスの変容を見通す。

【出版社による紹介】コンピュータやケータイのうえで起こる新たなコンテンツの創造・発信、それによる産業構造の変化と私たちの生活・文化の変容こそ、情報革命の本質である。この「モノづくり」から「モノ語りづくり」への革命のなかで、日本のアニメ、ゲームなどは「ジャパンクール」として世界で大いに歓迎されている。「遊び」「学び」「癒し」を個人が楽しみ、それを提供する産業を育てることこそ、未来の日本型情報社会のあるべき姿である。アスキー・メディアワークス (2008/10/9)

【目 次】
第一章 日本は「モノづくり」大国か?
第二章 「涼宮ハルヒ」の教えたこと
第三章 工業社会の後に「情報社会」が来るという嘘
第四章 「モノづくり社会」から「モノ語りづくり社会」へ
第五章 東アジアの「モノ語りづくり」産業
第六章 農耕社会・日本が情報社会に生きる道
第七章 情報社会のユーザーの姿を探る方法



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by yomodalite | 2008-10-30 10:03 | 評論・インタヴュー | Trackback(1) | Comments(0)

旧「読書日記と着物あれこれ」。歴史/文学/お笑いを好み、着物生活をしていたはずが、いつしかマイケルジャクソンのように本を読もうになってしまったブログ。永年暮らした東京を離れ、現在は大阪を満喫中。


by yomodalite