カテゴリ:評論・インタヴュー( 75 )

秘密とウソと報道 (幻冬舎新書)

日垣 隆/幻冬舎



自由民主党のように、現マスコミもすべて一斉に政権交代できないものか、と日々思っておりますが、気鋭のジャーナリスト、日垣隆氏は、メディアにどう斬り込まれたのでしょうか。

第1章 「正義」のイヤらしさ
元官房長官の鴻池祥肇氏の女性問題は何が問題なのか?かつての新聞は、現在のような薄っぺらい正義を振りかざす存在ではなかった。確認を手抜きする編集者。
特捜が扱う事件は、すべて「国策捜査」である。

第2章 他人の秘密は蜜の味
「秘密を暴露する」「広報する」「データベースを着々と積み上げる」、新聞記事をいうものは、この3つだけで98%が埋まってしまう。しかし、政府公報も警察発表も、そのまんまの記事は非常に多い。少し気をつけて見れば、新聞記事は「・・・という」だらけ。

第3章 スクープかフェアネスか
スクープを手に入れるため、ルール違反を犯すこと。社会正義のためなら泥棒しても許されるのか。。。
“からゆきさん”の息子から写真とパスポートを盗んだ、山崎豊子『サンダカン八番娼館』、警察の内部資料をコピーした、佐木隆三『復讐するは我にあり』、工場の中で知り得たことは、絶対口外してはならないという服務規律違反、鎌田慧『自動車絶望工場』、盗聴器を仕掛けた、朝日新聞「談合」キャンペーン。。。
後ろ暗い取材方法を奨励してきた新聞記者の「正義」を笠にきた傲慢な態度。

第4章 奈良少年調書漏洩事件
草薙厚子『僕はパパを殺すことに決めた』の問題点。本の中味は、八〜九割方は調書の引用。崎濱医師による鑑定書は、広汎性発達障害への逆差別。精神鑑定書の著作権は精神科医のもの。本書はその内容から草薙厚子著はありえない。
33年間、情報源を隠し続けた米ジャーナリスト。大統領にもFBIにも萎縮しないアメリカ民主主義。

第5章 「週間新潮」第誤報事件
朝日新聞阪神支局襲撃を実名で告白した手記を掲載した「週間新潮」が陥った罠。
「空想虚言」の特徴。官僚や警察が記者クラブで発表した情報をそのまま流している新聞記者が、週刊誌に「ウラを取れ」と偉そうにいうこと。

第6章 この世はウソの地雷原
ウソには5つの種類がある。社交辞令、皮肉、その場の雰囲気、特定組織や自分の防衛本能、世論操作。「不自然だから」とかえって信じてしまう心理。「犯人隠匿罪」と「大スクープ」のせめぎ合い。

第7章 足利事件ー誰が捏造したのか
「精液のDNA型が一致」と発表した科捜研は、当初、付着精液が微量すぎるため鑑定は不能と辞退していた。その後しぶしぶ鑑定を引き受けると、付着していた精子の数が「頭部のみ3個」からいきなり「一万五百から一万二千個」に増えた。
著者はかつて『論座』で、この事件を冤罪と断定したところ、科捜研から呼び出しを受けたが、データの開示もなく、試料はすべて使ったなど、科学的証拠を一切示されず、今後は情報を一切出さないという脅しをかけられた。
お上が「DNA型が一致した」と言われれば、すんなり納得するのが日本の新聞ジャーナリズム。

第8章 名誉毀損ー高騰して何が悪い
なぜ賠償額が高騰したのか。高騰して何が悪いのか。日本の法律家が名誉毀損の損害額の算定に着手したのは2000年前後。きっかけは池田大作氏への度重なるスキャンダル報道。空想虚言記者は大勢いる。デタラメ報道の被害者。。。清原、龍円愛梨・・・言論弾圧と言い続ける発想は不健全。

第9章 リスクとチャレンジと謝罪
西山事件(外務省機密漏洩事件)の問題点。西山記者は、外務省審議官付きの女性と男女の仲になることで情報を得た。女性は外務省を退職し、離婚。警察の取調べの際も、西山氏からも守られることはなかったが、事件は、澤地久枝、山崎豊子らにより本も出版され、西山氏はその後も講演会などで活躍した。

松川事件(福島県の脱線列車事故)では、国鉄労働組合、東芝労組、共産党に容疑がかかり、20人が逮捕され、17人が有罪判決を受けた。検察は、被告人の無罪を証明できる「諏訪メモ」を隠していたことを知った、毎日新聞の倉嶋記者は、福島地検の職員の女性からこっそり資料を得てスクープを書き、その後、その職員と結婚している。死刑判決を受けた4人、実刑判決を受けた13人を救わねばならないという使命感に燃え、戦後史に残る冤罪事件をひっくり返し、情報を受けた女性とも結婚した、松川事件のスクープこそ、後世に語り継ぐべき。

謝罪に絶対必要な3つの要素ー謝意を誠実に表明すること。失敗に至る経過を詳しくそのつど説明すること。償いをすること。その3つがあまりにも実現困難すぎる場合、そのような失敗をおかさないことが如何に究極の保身であるかを、あらかじめ心得ておくことが肝心である。

ジャーナリズムの反対語は「マンネリズム」。今の新聞や雑誌には“非マンネリ”に挑戦するという自覚があるのだろうか。

第10章 有料ジャーナリズムの終焉?
総合週刊誌もマンガ雑誌も、部数の落ち込みが激しい。多くの購読者がいた時代、広告が潤沢に入っていた時代と同じモデルのままでは、生き残れない。少部数で充分ペイできている媒体も存在する。悲観するにはまだ早い。

以上が内容の簡略メモ。
ジャーナリズムの問題点へは大勢の人が共感すると思いますし、目新しいものではありませんが、著者ほどの鮮やかな手腕では誰も本にすることができない、といった内容の本。共感できなかったのは下記ぐらいでしょうか。。。

第1章の最後、土木工事の口利きをする見返りに多額の金を受け取る。そういうことを許してはいけない、と検察は考えている・・・から小沢一郎公設秘書逮捕というのはどうでしょう。小沢一郎は、田中角栄の正統な継承者かもしれませんが、土建政治を継承してきたのは、与党に居続けた自民党議員の大勢であって、当時野党であった小沢に対しての容疑としては、タイミング的にもおかしい。

第4章 大統領にもFBIにも萎縮しないアメリカ民主主義は些か言い過ぎ。ボブ・ウッドワード氏は、なにか特別に守られているように思いますし、草薙氏と比較する対象としてふさわしくない。

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【BOOKデータベース】鑑定医が秘密をバラす相手を間違えた奈良少年調書漏洩事件。「空想虚言癖」の典型的パターンに引っかかった「週刊新潮」大誤報。賠償額が高騰する名誉毀損訴訟。数々の事件で、メディアが一線を越えるか踏みとどまるかの分かれ目は、秘密の手に入れ方・バラし方、ウソの見破り方の巧拙にある。それを「言論弾圧」「取材力の低下」としか語れないのは、ただの思考停止、メディアの自殺行為だ—秘密とウソというユニークな視点から、「ジャーナリズムの危機」に斬り込む挑発の書。幻冬舎 (2009/07)



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by yomodalite | 2009-10-20 15:58 | 評論・インタヴュー | Trackback | Comments(0)

世論という悪夢 (小学館101新書)

小林 よしのり/小学館




よしりん初めての文章のみの本は、『わしズム』2006年冬号〜2009年冬号までの巻頭コラム「天籟」を編集したもの。

内容は、メディア論、国家・民族論、社会・家族論、戦争論、日本無罪論、天皇論の6章。

中でも、単行本で大いに話題になった戦争論、書き下ろしの日本無罪論(『パール真論』)、天皇論は、中身の濃い内容になっています。

マンガがないことで、いつもより魅力は減少していますが、強力な説得力をもつマンガがない状態でも、氏の主張に簡単に反論できる人が多いとは思えません。
____________

【内容紹介】マスコミ・知識人の情報操作によって、「世論という悪夢」が生まれる。我々がそこから覚醒するために、必要な真の知性とは?
新聞・テレビが垂れ流すデマ、アイヌ問題や沖縄集団自決をめぐるタブー、天皇や戦争に関する無知……閉ざされた言論状況を打破する活字版「ゴーマニズム宣言」ついに見参。
'09年初頭をもって終刊した責任編集誌『わしズム』の人気巻頭コラム「天籟」に書き下ろしを追加。あのときの「ごーまん」は一つも間違ってなかったのだ。

【BOOKデータベース】マスコミ・知識人の情報操作によって、「世論という悪夢」が生まれる。我々がそこから覚醒するために、必要な真の知性とは?新聞・テレビが垂れ流すデマ、アイヌ問題や沖縄集団自決をめぐるタブー、天皇や戦争に関する無知…閉ざされた言論状況を打破する活字版「ゴーマニズム宣言」ついに見参。 小学館 (2009/8/3)

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by yomodalite | 2009-09-14 09:29 | 評論・インタヴュー | Trackback | Comments(0)

電化製品列伝/長嶋有

電化製品列伝

長嶋 有/講談社




本書の内容を、著者は「はじめに」で、「さまざまな文学作品の、その中の電化製品について描かれている場面だけを抜き出して熱く語った、珍妙な書評集」と説明されています。(高野文子氏のマンガや、ビートたけし主演の映画評もありますが)

ちょっと思いつかない切り口に、最初「?」と思ってしまうのですが、家電のない日常は考えられない時代において、さまざまな作家の家電への感じ方、描写などを通じて、作家の個性を紹介し、作品への興味を抱かせる、なかなか読ませる書評本です。

取り上げられた作品は全部で17作品。

・川上弘美「センセイの鞄」の電池
・伊藤たかみ「ミカ!」のホットプレート
・吉田修一「日曜日たち」のリモコン
・柴崎友香「フルタイムライフ」のシュレッダー
・福永信「アクロバット前夜」のマグライト
・尾辻克彦「肌ざわり」のブラウン管テレビ
・映画「哀しい気分でジョーク」のレーザーディスク
・吉本ばなな「キッチン」のジューサー
・生田紗代「雲をつくる」の加湿器
・アーヴィン・ウェルシュ「トレインスポッティング」の電気毛布
・小川洋子「博士の愛した数式」のアイロン
・干刈あがた「ゆっくり東京女子マラソン」のグローランプ
・高野文子「奥村さんのお茄子」の「オクムラ電機店」前編
・高野文子「奥村さんのお茄子」の「オクムラ電機店」後編
・栗田有起「しろとりどり」のズボンプレッサー
・映画「グレゴリーズガール』の電動歯ブラシ
・花輪和一「刑務所の中」の電気カミソリ
・長嶋有「猛スピードで母は」の炊飯ジャー


私の場合、読んでいない作品が半数以上ありましたが、未読の作家への興味を掻立てられ、既読の作品でも、まったく気付かなかった視点に感心させられました。

「あとがき」で著者は、作中に電化製品を多用する作家は「僕」であり、意識して多くの家電品を率先して書込んできた、と述べ、

「サイドカーに犬」の蚊取りマット
「タンノイのエジンバラ」のボタン電池(LR44)
「夜のあぐら」のラジオ付き懐中電灯
「バルセロナの印象」のファクシミリ
「ジャージの二人」のトースター
「パラレル」のヘッドマウント型ディスプレイ
「センスなし」のヘッドフォンステレオ
「瑞枝さんの原付」「単三電池」の電気アンカ
「ぼくは落ち着きがない」の業務用コピー機


そして、先頃まで新聞連載していた「ねたあとに」は電化製品列伝・実作編といっていい長嶋家電文学の総決算と語っています。。。って、新作への壮大な前フリだったんかい!

このあと『ねたあとに』にを読まずにはいられない)
___________

【BOOKデータベース】自らの作品を「長嶋家電文学」と称す著者が、現代文学で描かれる電化製品を熱く語り尽くす!こんな読み方があったのか!と、思わず目からウロコが落ちる書評(+映画評)18篇を収録。テレビにアイロン、加湿器、炊飯ジャーから電気シェーバーまで…「オール電化」な“異色”書評&エッセイ集。 講談社 (2008/11/5)



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by yomodalite | 2009-07-30 12:09 | 評論・インタヴュー | Trackback | Comments(0)

性欲の文化史 2 (講談社選書メチエ)

梅川 純代,申 昌浩,劉 建輝,原田 信男,平松 隆円,田中 貴子,松田 さおり/講談社




性欲の文化史[1]に続いて読んでみました。

[1]には納められていなかった、編者である井上章一氏の「桂離宮にエロスを読む」が収録されています。

2巻を通読して、全体の感想としては、分冊化しないで出来のいいものに限ってまとめた方が良かっただろうと思う。編集者も熱意がなく、来た原稿そのままノータッチで本にした、という感じ。

第1章は、学者にはめずらしく読者を意識した文章が書ける井上氏による、『桂離宮にエロスを読む』はとても興味深かったものの、第3章『韓国整形美人事情』(申 昌浩)や、第6章の『「ギャル男」のいる光景』(平松隆円)、第8章の『ホステスたちは、何を売る?』 (松田さおり)は、題材が、風俗としてよく知られたものにも関わらず、研究の到達点が低く、ごく普通レベルの学生論文としか読めなかった。

第7章『男から生まれた女』(田中貴子)は、現在、批判者がまったく見当たらない白洲正子氏への反論を試みた論考で、『両性具有の美』について主に論じているのですが、興味深い指摘が多く、新書などであらためて読んでみたいと思った。

編者の井上氏の、若い研究者にチャンスを与えたいという気持ちがこもった2冊だと思うのですけど、その気持ちに答えられていない研究者が目立ち、読者としてはツライ部分もある一冊。

【目次】
まえがき 性のなかに文化を読む(井上章一)
1.桂離宮にエロスを読む(井上章一)
2.神仙の証―中国古代房中術にみるセックスと飛翔(梅川純代)
3.韓国整形美人事情(申 昌浩)
4.摩登(モダン)上海にうかぶ女体の群れ(劉 建輝)
5.映画のなかの性―戦後映画史における性表現と性意識の変遷(原田信男)
6.「ギャル男」のいる光景(平松隆円)
7.男から生まれた女(田中貴子)
8.ホステスたちは、何を売る? (松田さおり)
あとがき(井上章一)
__________

【BOOKデータベース】パンチラに感謝するフランス人と、平気で見すごす中国人—何に性感を覚えるかは、時代により民族により異なる。人間の性欲とは、きわめて文化的な心の持ちようなのだ。桂離宮から渋谷センター街まで、射精抑圧から女体観察まで、感じて、そそられて、満たされる、秀逸の論究集。 講談社 (2008/11/11)

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by yomodalite | 2009-07-20 19:28 | 評論・インタヴュー | Trackback | Comments(0)

出禁上等/ゲッツ板谷

出禁上等!

ゲッツ 板谷/扶桑社

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出禁上等!<出禁上等!> (角川文庫)

ゲッツ 板谷/KADOKAWA / 角川書店

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マズい!ゲッツ板谷の本、全部読みたくなってきた・・・・・・・・・・ε-(ーдー)ハァ 

本書は『週間SPA!』連載。2004年出版なので、取材対象は5〜6年前ということで、六本木ヒルズが出来たばっかりだったり、スイーツ・フォレスト、そんなのあったなぁ〜なんて思い出したり。。。(ってまだあるみたい)

話題のスポットや人気公演など、盛りだくさんな44の体験記。

六本木ヒルズ、中谷彰宏本、木下サーカス、英会話カフェ、ユーミンライブ、劇団四季、相田みつを美術館、秋葉原オタクショップ、原宿・占い館、宝塚歌劇、甲子園球場、はとバスミステリーツアー、パンクライブ、熊川哲也、浅草サンバカーニバル、本所防災館、西原トークショー、横山隆一記念まんが館、リニアモーターカー、山海塾、「人体の不思議展」、東京タワー、東京地裁、早稲田学園祭、「かち歩き大会」、『マトリックス・レボリューション』、『バカの壁』を読む、ホットロッド・カスタムショー、あややのライブ、清掃ボランティア、いっこく堂ディナーショー、話し方教室、『NHK青春メッセージ’04』、マスターズリーグ観戦、初春大歌舞伎、漢字検定、シニア体験、スイーツフォレスト、世界らん展、わんこ豆腐早食い大会、テディベア・フェスティバル、新撰組フェスタ、GEISAI、わいわいペットフェスタ

全く興味のなかったイベントが意外と面白かった、という感想は多いものの、最初から最後まで、徹底的にダメ出しをくらうスポットも!。

「あとがき」で、抗議を受けたのは、結局1カ所だけだったということが明かされていますが、どこでしょうね〜。最後の方の取材らしいので、スイーツフォレストか、わいわいペットフェスタじゃないかな〜。確かに『週間SPA!』紙上で、中谷彰宏や川島なお美、ナムコチームへ、ここまで喧嘩を吹っかけたのは驚きました。

情報コラムとしては、些か古いと思われた本書ですが、今、読んでもかなり楽しめます。

☆2010年に文庫も発売されました!
____________

【出版社/著者からの内容紹介】売られてない喧嘩、勝手に買います! ゲッツ板谷が放つ史上最悪の突撃ルポ!!

週刊SPA!誌上の人気連載「出禁上等!」が単行本に。『板谷バカ三代』『ベトナム怪人紀行』などで知られるライター界の特攻隊長・ゲッツ板谷が、六本木ヒルズ、英会話カフェ、劇団四季、東京地裁、あややのライブ、清掃ボランティア、NHK青春メッセージ、漢字検定、わんこ豆腐早食い大会などをアポなし取材! 歯に衣着せぬ毒舌と絶妙の比喩を駆使したギャグが炸裂するニュータイプの爆笑ルポ、ただいま参上。描き下ろしを含む天久聖一画伯のシュールなマンガもお楽しみ! 扶桑社 (2004/9/23)


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by yomodalite | 2009-07-18 22:12 | 評論・インタヴュー | Trackback | Comments(0)

性欲の文化史 1 (講談社選書メチエ)

永井 良和,澁谷 知美,原 武史,唐権,三橋 順子,川井 ゆう,西村 大志,露木 玲/講談社




女性がパンツ(下着)を履くきっかけとなったのは、1930年代、白木屋百貨店の火災の際、火を避けて下に降りようとしたが、裾が風でまくれると下にいる野次馬にのぞかれてしまう。そのとまどいにより何人もの店員が命を失うことになった。パンツが普及したのは、その教訓からだった。という白木屋伝説を知っている人は多いと思う。わたしも、そう信じていました。

ところが、本書の編者、井上氏によればそれは事実ではないという。実はその伝説はまったくのつくり話で、井上氏は、以前『パンツが見える。』(2002年)で、それを実証しているらしい。では、パンツを最初にはきだしたのは、誰だったのか?

それは、カフェーの女給たちだった。彼女たちはパンツを性的な武器に仕立てていた。つまり最初から、パンツは見せることを前提にしていたのだ。

確かに、この件に限らず、歴史には性的なことを隠しやすい性質がある。

「歴史の影に性あり」という、編者の「まえがき」に惹かれ、本書を読んでみました。

下記の目次から章タイトルの中身を短くまとめると、

第1章は、近代日本の遊郭と、欧米との違い
第2章は、1910〜40年代の男子への禁欲とは何だったか。
第3章は、出口王仁三郎『霊界物語』から恋愛・男女観を探る
第4章は、中国の日本風俗史にみられる特徴
第5章は、女装の男娼の実態
第6章は、孕み女(模型)の見せ物史
第7章は、人形、ロボットの愛と性
第8章は、兄妹性交は古今東西、すべての社会で禁じられているわけではない。

こんな感じでしょうか。最後まで読んでも「性欲」と関係ある?と思ってしまう内容も多く、執筆者は、ほぼ全員が大学関係者で、内容はかなり固め。興味を惹かれた内容とは、かなり異なった読後感ではありましたが、バラエティに富んだ内容なので、続けて『性欲の文化史2』も読んでみます。

性欲の文化史【2】/井上章一(編)に続く

【目次】
まえがき−文化のなかに性を読む(井上章一)
1.遊廓の形成と日本文化−「囲い込み」と取り締り−(永井良和)
2.性教育はなぜ男子学生に禁欲を説いたか−1910〜40年代の花柳病言説−(澁谷知美)
3.出口王仁三郎の恋愛観・男女観−『霊界物語』を中心として−(原 武史)
4.日本女性は不淫不妬?−中華文人の日本風俗観察史−(唐 権)
5.女装男娼のテクニックとセクシュアリティ(三橋順子)
6.「胎内十月」の見世物を追って(川井ゆう)
7.「人体模倣」における生と死と性(西村大志)
8.兄妹性交の回避と禁止(露木玲・青木健一)
あとがき(井上章一)

【BOOKデータベース】
洋装下着を流行らせたのは、ほんとうに勤労女性だったのか?なぜ戦前の男子学生は「したくてもじっと我慢」でいなければならなかったのか?歴史の陰に、性あり。人間の本質を見ずして、ほんとうの歴史は語れないのだ!大本教から球体関節人形まで、「魏志倭人伝」の日本女性論から女装男娼まで、時代も地域も縦横無尽に論じ尽くす、珠玉の論考集。講談社 (2008/10/10)


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by yomodalite | 2009-07-13 21:51 | 評論・インタヴュー | Trackback | Comments(0)

銀座を歩く―江戸とモダンの歴史体験

岡本 哲志/学芸出版社



著者は建築家で、これまでにも銀座に関しての何作かの著作がある方。お店紹介ではなく、建物、通り、路地にスポットをあて、店めぐりではない銀座の街歩きを提案している。変化の激しい銀座ですが、本書は今年出版されていて、現在建築中の建物や、つい最近取り壊された建物など、銀座の近くに住んでいる者としては、大変ありがたい資料。
近年だけでも、本当に多くの歴史的な建物が壊されましたが、今現在もまだ急に壊されてしまう建物があとを絶たないのは寂しく、これ以上高層ビルが多くならないで欲しいと願うばかりです。

ちょっと気付かない細い路地の紹介や、江戸にまで遡った銀座の変遷、都市計画を通してみる銀座のあり方など、銀座通にも、ビギナーにも興味深い内容。

______________

【出版社/著者からの内容紹介】最新のショップと老舗、新旧のビルが混在し、多様な表情を湛える街・銀座。変遷する建物や街のなかで、歴史の面影をひっそりと残す空間や、変わらない暮らしを感じるとっておきのルートを、長年、銀座のまちづくりに関わってきた著者が隅々まで案内する。路地を駆け抜け、江戸・煉瓦街・モダン都市の世界へタイムスリップ。 学芸出版社 (2009/03)

【著者について】
1952年東京都中野区生まれ。法政大学工学部建築学科卒。
都市・建築設計室T. E. Oを経て、1984年4月に岡本哲志都市建築研究所を設立。
現在岡本哲志都市建築研究所代表、博士(工学)。
日本の港町研究会代表、日本建築学会会員、日本都市計画学会会員。
専攻は、都市形成史、都市論。
国内外の都市と水辺空間の調査・研究に長年携わる。
銀座、丸の内、日本橋など東京の都市形成史の研究は様々な角度から30年以上研究を続ける。
銀座は1993年から15年間調査・研究を積み重ね、著書、論文を数多く執筆してきた。

主な近刊著書 『港町の近代--門司・小樽・横浜・函館を読む』(学芸出版社、2008年)
『銀座四百年--都市空間の歴史』(講談社選書メチエ、2006年)
『江戸東京の路地--身体感覚で探る場の魅力』(学芸出版社、2006年)
『東京エコシティー--新たなる水の都市へ』(鹿島出版会、2006年)
『銀座--土地と建物が語る街の歴史』(法政大学出版局、2003年)
『水辺から都市を読む--舟運で栄えた港町』(法政大学出版局、2002年)など



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by yomodalite | 2009-07-05 22:24 | 評論・インタヴュー | Trackback | Comments(2)

橋本治という考え方 What kind of fool am I

橋本 治/朝日新聞出版

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2005年出版の『橋本治という行き方ーWHAT A WAY TO GO!』 と、似ていますが、こちらは同じ出版社からの2009年本。

『橋本治という行き方』は、9・11やイラク戦争、社会批評など、考えるテーマが、一般人にもヒントになりうるテーマを扱っていたのですが、本書は全編通して、橋本治以外は考えないテーマのオンパレード!

30代頃から、少年や青年、女性にすらその悩みを解き明かし、導いてきた橋本氏ですが、今の橋本氏はそこから遥か彼方の「小説」をめざして、しかしその小説を求めている人の少なさを諦めつつも、書かずにはいられない、そんなジレンマにも孤独にも耐えることにすっかり慣れた様子です。

橋本治という考え方をする橋本治氏への正統な評価は、現代日本では無理なのかもしれません。氏以上の論者をあとどれぐらい待てばいいのか、日本一孤高の人という称号は橋本氏の死後100年は軽く守られそうな気さえします。

今まで先生だと思っていた人が徐々につまらなくなってきたり、才能が尽きてしまったと感じることは、こちらの年齢が上がるとともに訪れることですけど、橋本治氏に限っては、生涯そんな時期が訪れないでしょう。

これから小説や文学論を書こうと思っている人に(書けなくなる恐れはありますが。。)

____________

【内容紹介】橋本治による小説の書き方、考え方をめぐる本格エッセイ集。「風景」「世界観」「読書」から「近代文学」まで、橋本治にとって小説とは何か? 行き詰まりつつある現代小説において、小説を考えるための新たな土台を、自らの来歴や実感から指し示す小論集。

【BOOKデータベース】
小説のあり方を少し考えた。ドラマは「風景」の中にある。アンゲロプロス、小津安二郎の映画に「風景」のドラマを見出し、二葉亭四迷、田山花袋、樋口一葉、谷崎潤一郎から小説家の内奥に潜むドラマを発見する。本をめぐる環境から、橋本流の創作術、近代文学成立の謎まで—小説をめぐる状況をラディカルに編みかえる本格的な文学エッセイ。朝日新聞出版 (2009/4/7)


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by yomodalite | 2009-06-24 12:24 | 評論・インタヴュー | Trackback | Comments(0)
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17年前に『美人論』が評判になった著者ですが、私は本書がお初。本書は2008年出版。本家を見ていないのですが、多分こちらの方がずっと軽い読みもののようです。

←女性の後ろ姿写真は、幅広帯です

平均的な文庫本の厚さの単行本なので、あっという間に読めてしまいますが、本格的考察のラフというか、いろいろ興味深いテーマが散りばめられています。下記の【内容紹介】以外で、興味深かった点を、順に挙げていくと、

「性格美人」は日本にしかいない。
姦通罪は不美人に集中していた
7歳までには美醜の判断は出来上がる
教育を受けられたのは不美人だけだった
高群逸枝は男女平等になれば美人の勢力は拡大すると予言していた
名古屋こそが群を抜く美人の都だった
明治期の新橋は名古屋女の天下だった
昔の絵画はみな下ぶくれだが骨格はそうではない
浮世絵から当時の美人の姿を想像するのは間違い
日本の英雄は「女」を武器にする
遣唐使は「容姿」と「器量」で選ばれていた
男っぽい女装者がふえてきた理由
  。。。などなど。

高群逸枝は意外と美人だったようですが、確かに予言は当たっていて、もうどんなドラマや映画の端役でも美人ばかり。これでもか!という美人が、キレイになるための本を出版して、その努力すら公開する時代。東大生には不細工な男はいますが、ブスな女はいないというのは、駒場、本郷に棲息していた私の経験ですが、スポーツ選手から、AV女優、弁護士にいたるまで、とにかく美人ばかりの世の中になってしまいましたから、アニメに群がる男が増えるのも仕方がないでしょう。

著者には本書のような軽い読み物から、桂離宮や伊勢神宮、霊柩車に関しても何冊か出版されており、学術書から風俗本まで、色々興味深い本があるようなので、また別の本も近日中に読んでみたいと思います。

★★★☆
情報考学 Passion For The Future
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/06/post-1010.html

続たそがれ日記
http://plaza.rakuten.co.jp/junko23/diary/200803120000/fbb92/
______________

【目次】
1「美人」という言葉に、まどわされ
2 誰がいちばんきれいなの
3 かしこい女、それともきれいな女
4「美人」東西物語
5「美人」今昔物語
6 男もはたして顔なのか
終章 ブスをブスと言って何が悪い!

【内容紹介】
賛否の両論を巻き起こした問題の書『美人論』から17年。再び挑む、美しい人とそうでない人の研究。なぜ日本人は、女性のうなじや脚首に魅力を感じるのか? 小野小町はほんとうに「美人」だったのか? 不美人ほど不倫をすると言われた理由は? 「秋田美人」「新潟美人」が生まれた深い事情とは? ミス・ユニバースとK-1の共通点とは?……フェミニストとの心理戦の裏話や、美人の研究を始めるきっかけとなった自らのコンプレックスなど、美人研究にまつわるさまざまな豆知識やこぼれ話を紹介する1冊。楊貴妃からかぐや姫、ミス・ユニバースに女子大生、さらにはアニメの美少女キャラまで、古今東西の資料に基づき、「美人」「美女」ついでに「美男」について、マジメに深く深く考察します。人はほんとうに「見た目」がすべてなのか? PHP研究所 (2008/1/17)





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by yomodalite | 2009-06-18 19:17 | 評論・インタヴュー | Trackback | Comments(0)

アダルトビデオ革命史 (幻冬舎新書)

藤木 TDC/幻冬舎

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『若衆好みー江戸女の色と恋』で、春画をたくさん観て気付いたのですが、江戸のアダルトグラビアには、女の裸がない。

着物を着ていない女の浮世絵を観たことがありますか?胸は全然出ておらず、局部結合はしっかり描くというスタイルばかりなのは、一体なぜなんでしょう?

江戸時代には「女の裸を描くな」という禁止令があったんでしょうか。もしくは、浮世絵版画のスポンサーが呉服問屋だったのか。あるいは、湯屋で混浴が一般的だったので、女の裸にはあまり価値なかったのか。。。春画に関して、全然知識がないので、まだその理由はわかりません。

さて、現在。日本のアダルトビデオといえば、アニメと並んで、そのクオリティの高さから他国でも大人気。そして、そのクオリティを支えたひとつの要因が、日本の警察が主に陰毛が写っているか否かを基準にわいせつを判断し取り締まったことから、本来ポルノビデオに必要な交合以外の表現が多様化されたから。ということは、アラフォー以上の大人なら常識でしょうか。

手を使わないというルールが、世界最大のスポーツ、サッカーを生み、更にオフサイドが攻撃を多彩に洗練させたことのように、文化には「タブー」をトリガーに進化していくということがあります。

日本のAVのレベルの高さは、その「タブー」からだけでなく、元々きめ細やかな作品つくりにあるのだと思いますが、現在は、エロに興味をもった日本人なら年齢問わず、ネットで簡単に無修正のAVが観られるわけですから、今後のAV業界の革命は作品部分ではなく、マーケット部分に移っていくのかな〜。とはいえ、過剰にクリエイティブな日本人のことですから、どうなることやら。。。

私の予測では数年以内に「フィギュアAV」が発売されると思います。(アダルトアニメとどう違うのか!?しかも、アニメより更に制作が面倒で時間もかかるけど、それでも、フィギュアがエッチするところが見たいフィギュアファンが、一コマずつ撮るのだ。笑)

くだらない予想はおいといて\(・・\)(/・・)/、

本書は、日本のAVの発生から現在までを、これまでも優れたAV業界の論評で定評のある著者による、詳細ながらも新書スタイルにマッチした、約40年間ほどのポルノ通史。力作だと思います。

本書の結びで、著者は、「もう、修正に関する論議はやめたほうがいい。」と結論しています。わたしも、ネット時代の国内基準は意味がなく、利権団体として、国内業者いじめにしかならないと思います。で、そう思う人が多いせいなのか、最近の「倫理」利権は、幼児ポルノ規正へとシフトしているようなので、これも気をつけましょう。

教養としてのAVを知りたい老若男女へ、また、これから出てみようと思う女子は、本書で戦略を練ると良いのでは?

【目次】
第1章 AV前史
第2章 AVの誕生
第3章 AV女優の成立
第4章 本番AVの時代
第5章 AVの新しい波
第6章 無修整へ
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【BOOKデータベース】日本は年間一万タイトルを超えるアダルトビデオが流通する世界屈指のポルノ生産国である。日本製のAVは、インターネットなどを通じて無修整版が世界中に流出し、そのクオリティの高さからアニメと並んで日本を代表するコンテンツとなっている。だが一方で、今までその歴史は詳らかにされておらず、アンダーグラウンドな文化としてしか語られてこなかった。本書は、第一人者の手によって、はじめてまとめられた四十年にわたるAV全史である。幻冬舎 (2009/5/27)


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by yomodalite | 2009-06-10 17:09 | 評論・インタヴュー | Trackback | Comments(0)

旧「読書日記と着物あれこれ」。歴史/文学/お笑いを好み、着物生活をしていたはずが、いつしかマイケルジャクソンのように本を読もうになってしまったブログ。永年暮らした東京を離れ、現在は大阪を満喫中。


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