カテゴリ:映画・マンガ・TV( 130 )

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カンヌで「観客と批評家にとってのパルムドール」と言われ、各国の有力誌もこぞって2016年のベスト1に選び、ジャック・ニコルソンによる、ハリウッド・リメイクも決定したという作品。

ヒトラーが絡んでなくて、コメディとか、ヒューマンドラマという、ドイツ映画なんてめずらしいなぁと思って観に行きました。

主人公は、出っ歯の入れ歯や、変なメイク、妙なズラとか、子供みたいなイタズラが大好きな「父親」なんですが(トニ・エルドマンのことですw)、

とにかく、この「父親」、開始1分を待たずに、もうウザくて、

面倒くさいタイプだと聞いてはいたものの、ここまでとは・・というレベル。

オヤジギャグ連発・・なんていう話も、イメージしていたのとは、ちょっと違ってて・・・

もう「娘」だったら絶対に耐えられない、本当に困るタイプ!

全体を通して「腹がよじれるほど面白く、驚きの連続。正真正銘、観客を楽しませる」(ロサンゼルス・タイムズ評)とは言いがたく、私を含め、客席から「くすくす笑い」が起きる頻度はかなり少なかったのですが、この父親と娘の違いを笑い、この映画を評価しなくてはならない、と思うヨーロッパの事情のようなものは伝わってきて、笑うしかない、という感じでしょうか。

2016年の映画なので、さぞかし、多様性あふれるドイツの姿が見られるのかと思いきや、黒人もヒジャブをかぶった女性も難民もいなくて、私たちがイメージするドイツ人が登場し、娘(イネス)が仕事で来ているルーマニア(ブカレスト)がシーンの大半を占めています。

コンサルティング会社のエリートである「娘」は、石油会社の合理化を図るために、石油採掘場所である、ブカレストに来ているのですが、娘を含めたドイツから来たビジネスマンたちと、ルーマニアの人々との格差がエゲツなくて・・ルーマニア人を同じ人間と感じているのは、ウザい父親だけ。

それで父は、ますます娘の生活を心配するようになっていく・・

娘が、父のムチャぶりで、急遽ホイットニー・ヒューストンの『Greatest Love Of All』を歌わせられるシーンがあって、字幕に歌詞が出たことで、はじめて歌の内容を意識したんですが、元々モハメド・アリの伝記映画のために作られた曲だったんですね。



まずは自分を愛せるようになること
それが何よりも最高の愛だから・・・

ドイツの繁栄の陰には、ルーマニアを始め、搾取される一方の東欧の貧しい国があり、父のウザい行動の数々には、不感症になっていく娘への思いが・・・

たっぷり162分の上映時間をまとめてしまうと、そんな感じなのですが、ジャック・ニコルソンによるハリウッド版は、きっとドイツとルーマニアじゃないよね、どうするのかなぁ。。

終盤で「母親」の葬儀があって、生前、彼女から葬儀のときかけてほしいと言われていたのは「ハリー・ベラフォンテ」。ここにも娘へのメッセージが込められているのだと思いますが、トニ・エルドマンも「あの黒人の・・」と言い添えていて、母も娘も、重要な局面で、黒人の歌を、ということみたいです。

とにかく、ハリウッド映画のようにわかりやすい作品ではなく、エンディングまで、微妙なポイントに目が離せない映画でした。


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by yomodalite | 2017-06-29 09:46 | 映画・マンガ・TV | Trackback | Comments(0)
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三島由紀夫の『美しい星』が原作と知って、観に行かねばと思った映画。

吉田大八監督は、この作品だけは自分が映画化すると、原作に大変な思い入れがあったとは聞いていたものの、最初、物語の中心となる一家の父親が、地球温暖化に危機感を抱くテレビ番組の気象予報士だということに、小説との違いを感じて、ちょっぴり不安を感じつつ観ていましたが、徐々に1967年に発表された小説の斬新さを、現代に甦らせようとする熱意が伝わってきて、原作を読んでいる人にも楽しめる映画だと思いました。

『美しい星』は、UFOや宇宙人が登場することで、三島作品の中でも異色だと紹介されることが多い作品ですが、実は、これこそ三島由紀夫!と言いたくなる、三島にしか書けないような作品で、

この小説はきわめて耽美的、芸術至上主義的であり、もっとも社会的でありながら、もっとも反現実的である。明治以来の日本の近代文学にかつてなかった型破りの小説・・・
人類の運命に関する論争の場面は、手に汗を握るような迫力・・・ドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』の「大審問官」の章を思い浮かべた・・・
作者は核兵器という人類を滅亡させる最終兵器を自らの手でつくりだした現代という状況をふまえて、人類の存在の根源を問おうとしているのだ。(新潮文庫、奥野健男氏の解説より)

というような小説なんですよね。

映画では、リリー・フランキーが演じている一家の父親がコミカルで、宇宙人だと意識している家族と、政治家との関係なども、かなり単純化されていて、耽美的とか、芸術至上主義的な印象もないと思いますが、知性も感情も劣化した現代では、三島が描こうとしたレベルを想像することさえ難しくなっていますし・・。

没後何年も経ってから、作品に出会った者には信じられないことですが、文学者だけでなく、あらゆる分野の中でも、日本最高の知性を持ち、死の瞬間まで「流行作家」だっただけでなく、小学生でも知っているほどの「有名人」でもあった三島は、きっと、この映画を楽しんで観たでしょう。

遠い未来を見通すほどの鋭い知性と、完璧な美を追求する繊細な感覚。この両方を兼ね備えた、数百年にひとり現れるかどうかというような稀有な天才が生み出した作品を、いつか、私たちが理解できるときまで、今後も三島作品がたくさん映画化されますように。

小説は、見てから、読んでも、また違った感じですごく深いです!



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by yomodalite | 2017-06-01 09:52 | 映画・マンガ・TV | Trackback | Comments(0)
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前日まで、観たい映画がなかったのですが、毎週1本映画を見るノルマを果たさなくては・・・という気持ちから、上映作をサーチしていったところ、こちらのイタリア映画がひっかかってきました。

現代のイタリア映画ってほとんど観られないし、2015年にイタリアでヒットした、ヒーロー物がどんな感じなのかなんて想像もできないし、永井豪原作の日本のアニメが関わっていたり、タイトルもなんか変だし・・

主人公が不死身で、一風変わったヒーローものというと、最近のラインナップである『無限の住人』、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー・リミックス』という、日米伊の比較にもなって面白いかも。そんな感じで観に行ったのですが、

ちなみに、ヨーロッパで、永井氏がとても尊敬されていることは聞いていましたが、私自身は『デビルマン』をコミックで読んだだけで、『鋼鉄ジーグ』のこともまるで知らなかったのですが、映画を楽しむ上では問題なく、

一応の予備知識としては、

主人公が、司馬 宙(しば ひろし)という名で、優秀な科学者でもある父によって、サイボーグにされていることや、「鋼鉄ジーグ」の熱狂的なファンである、アレッシアがいうヒミカとは、永い眠りから覚めた後、3人の幹部を従え、地上征服に乗り出し、鋼鉄ジーグと激しい戦いを繰り広げる、邪魔大王国の女王なんですが、彼女は自分の父親を、その幹部のひとりだと思っていることぐらいでしょうか。

冒頭からしばらくの間、リアルな裏社会の描写や、テロ事件への抗議行動など、『ガーディアンズ』とは違う生々しい現実感があって、しかも、主人公はキムタクとは正反対のリアル親父系だし・・・またもや残酷描写に弱い私には、観られない場面が続いたあと、主人公が自分の驚異的な力に気づいてやったことといったら、

脳みそまですべて筋肉っ!というような馬鹿力を使ったドロボーなうえに、奪ったお金で買ったものも「バカ」がガチ過ぎてドン引きするレベル。しかも、トラウマから精神に異常をきたしている若い女の子アレッシアが、王女のドレスを試着しているときにやったことといったら、もう本当に哀しくなって・・とにかく、ヒーローの資質など、微塵も感じられない男なんですが、

物語は徐々に、『ダークナイト』を思わせる展開(?)になっていきつつも、米国のヒーローもののように、市民や警察官が巻き添えになったり、無関係なところで、簡単に破壊が行われたり、ということがなく、意外にも後味は悪くありません。

『ガーディアンズ』を観たあとなので、エンディングがたった1曲で終わってしまうなんて、短いような気がしてしまいますがw、歌っているのは、主役のエンツォを演じたクラウディオ・サンタマリアで、『鋼鉄ジーグ』のテーマソングらしいのですが、すっごく渋くて、「2」が出来そうな匂いもちらほら・・

で、そのときはまた見に行くかもしれないな、と思いました。



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by yomodalite | 2017-05-25 11:28 | 映画・マンガ・TV | Trackback | Comments(0)
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前作の『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』から、もう3年も経ってたなんて、なんだか信じられないんだけど、続編である「リミックス」を観てまいりました。

今回は、クイル、ガモーラ、ドラッグス、ロケットと、前回の最後でベイビーに生まれかわったグルートの5人が、徐々に家族のような絆を深め、

アメリカのヒーローものには欠かせない「父と子」の物語が主軸にあって、ラベンジャーズのリーダーで、クイルの育ての親でもあるヨンドゥ、そして、ガモーラの妹ネピュラ・・といったいくつかの「家族」の物語のおかげで、人物描写も増していて、おバカなノリで「銀河を守る」というよりは、「家族を守る」という感じなんですが、

頭を空っぽにして、映画の世界に入り込めるすばらしい映像と、深くはないけど浅くない物語が、ちょうどいい漬かり具合で楽しめます。

アメリカ、ミズーリ州1980・・・というテロップで始まるんだけど、音楽は、前作よりも70年代の感じで、

(この年代の曲は、以前、学習wしたときも思ったんだけど、みんなヒゲだし、モミアゲだし、胸毛だし、とにかく毛量多い感じの曲が多くてw、お肌ツルツルな感じの曲は、ジャクソン5ぐらいなんだよね)

そして、そんな毛量の多いイケメンが、ピーター・クイルの「パパ」として登場するんだけど、『ナイトライダー』のことはギリギリわかったものの、デビッド・ハッセルホフの名前にピンと来なくて、ネタ的に「?」な部分もいくつかあったので、帰宅後、デビッド・ハッセルホフで検索してみると、お肌ツルツル&タトゥーブームから、そろそろ胸毛回帰へと移行しそうなことがわかりました(嘘)

ジャスティンが関わってるんだから間違いないw





最高ミックステープにマイケルがいない寂しさはなかなか拭いきれないけど、デヴュー当時のジョージ・マイケルの「ヘアスタイル」や、『Dirty MInd』の頃のプリンスの「胸毛」を思い出したりしつつ(調べていたら両方とも『ナイトライダー』放映前だった)、


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「スリラー」以前の世界である70年代の「イイ曲」を新たに発見するいい機会にはなったかな。


E.L.O初期のヒット曲





これぞ70年代SFの音楽みたいな曲だけど、
feat. ハッセルホフで、
サントラ唯一の「新曲」!





全曲「予習」しておきたい方はこちらで視聴可能
正式な予告編じゃなくて
超絶かわゆくなったグルートがいっぱい登場する方




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by yomodalite | 2017-05-18 10:41 | 映画・マンガ・TV | Trackback | Comments(4)

映画『無限の住人』

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キムタクと刀の組合せはサイコーなので、早く観たくてしかたなかった映画だったんですが、なんだかんだ色々と時間がとれなくて、昨日ようやく劇場へ。

いつも、水曜日のお昼過ぎぐらいに観ている印象で比較すると、「キムタクの映画」の観客は、女性率がかなり高かった。

それと、その時間帯も、私が観に行く映画のタイプも、ひとり客が多いのだけど、「キムタクの映画」では、女性のふたり客が多くて、男性の年代層も20代〜70代と幅広かったけど、そのほとんどが、彼女や奥さんと一緒のカップル客で、映画が始まる前も後も会話の声が賑やかだった。

映画が始まると、キムタクはすぐに斬りまくる。とにかく最後まで斬って斬って斬りまくる映画なので、殺人シーンに弱い私は、目をつぶってしまうシーンもいっぱいあったけど、やっぱりキムタクは魅力的で、主役を務めることの多い他の共演者たちの中でも、その「主役感」は圧倒的!ということを2時間通して確認できる、そんな映画。

ただ、監督は撮る前から、キムタクが不死身の肉体をもつ「万次」を演じる。というだけで、もうその出来栄えに満足してしまっていて、工夫のない脚本のせいで、せっかくキャスティングしても見せどころのない共演者がたくさんいたり、キムタクが極限まで肉体を駆使して出来上がった「絵」を繋ぎ合わせただけ。というもったいない映画でもあって、「キムタクの無駄遣い」について色々と考えてしまう・・

昔のヤクザ映画では、鶴田浩二や、高倉健に喝采をあげる男たちがいて、彼らが斬りまくることで、観客にもカタルシスがあったのに、今の日本では、とてつもない覚悟で「主役」を背負って、刀を振り下ろすキムタクを見守っているのは、女性たちだけで、「万次」が自分の命を使うのも、少女「凛」のため・・・。

その命、誰のために使うー

というのは、映画のコピーだけど、

こんな時代に「主役」でいつづける覚悟をもっているキムタクには、「万次」の孤独に重ね合わせられるような「孤独」がある。

そして、孤独から生まれる優しさが「色気」なのだと教えてくれるような役者も、やっぱりキムタクしかいない。

エンディングのMIYAVIの曲「存在証明」も、
キムタク自身に捧げられてる、と思えるようなそんな映画でした。





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by yomodalite | 2017-05-11 08:44 | 映画・マンガ・TV | Trackback | Comments(0)
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サービスデーの水曜日に『ゴンドラ』という映画を観た。
ちなみに、先週の水曜日には『T2 トレインスポッティング』も観たのだけど、そちらは、下記のリンク先に書いてある感想とほとんど一緒だったので、ここには書かなかった。


2週間前からひいている風邪がなかなか治らなくて、この日も咳と鼻水に苦しめられていた上に、雨まで降っていて、出かけるまではかなり迷ったのだけど、今日出かけなかったら、もう観られないかもしれないという思いと、未だに旅行気分が抜けない大阪でまだ行ったことがなかった「九条」という街にも行ってみたくて、ギリギリの時間になって、ようやく重い腰をあげて、家を出た。

『ゴンドラ』は1988年の作品で、今回はリヴァイバル上映。伊藤智生監督には、AV監督としてTOHJIROという名前もあって、私がこの作品を観たかったのも、そのAV作品に衝撃を受け、森下くるみさんのような人が長くAVの世界で活躍されたのも、この監督の磁力によるものなんじゃないかと思っていたから。


映画は、新宿高層ビルの映像から始まる。そのビルの上空から下を見下ろしている窓清掃の青年と、小学校の水泳の授業中、プールサイドで生理が始まってしまう少女との出会いは、少女が飼っていた文鳥のケガから。

大方の想像とは違い、この映画の「少女」はまったく性的には描かれておらず、監督は、少女を「自分」と同じように捉えているようで、青年と少女の関係には、性差や年の差さえも感じられない。

決して特別な女の子ではない主人公の少女が、周囲と迎合できずにいるのは「孤独を知って」しまったから。そして、田舎から上京した普通の青年と共通しているのは、「起きているときも夢を見られる」ということ。少女は、音叉を魔法の杖のように使い、青年は窓を拭いているとき下の世界に海を見ると言う。

そして、自立した女であろうとする母から愛情を感じられない少女は、家を出て、青年と旅に出ることに・・・

映画には、都会の上空や夕暮れ、青年の故郷の青く澄み切った空も、それぞれに美しい「空」が幾度か登場したのだけど、エンディングは、その中でも一番美しい「空」だった。


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シネ・ヌーヴォの写真は、スマホの消音機能付きのカメラで撮ったせいか、酷いピンボケ・・


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サントラ(1500円)にも惹かれたけど、今回はめったに買わないパンフ(読みどころが多くて丁寧な作りで500円)を購入。谷川俊太郎や切通理作氏の感想にうなづいたり、TOHJIRO監督が、かつて、私が東京で一番好きだった場所、あの六本木WAVEのオープニングビデオを監督されていたことを知る。


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迷ったけどやっぱり来て良かった。


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劇場を出ると、雨も上がっていた。
こういう映画を上映してくれるミニシアターがある場所には、独特の雰囲気を漂わせている街が多い。大阪のミニシアターは、十三(じゅうそう)の第七藝術劇場にしか行ったことがなかったので、シアターだけでなく、九条という街にも興味しんしんだったのだけど、上映中必死でガマンしていたこともあって、早く家に帰って目一杯うがいしたり、ティッシュを抱え込んでベッドでしばらく休みたいという気持ちが先立ち、あまり九条を楽しめなかった。

ただ、映画を見て私も旅をした気分になったせいなのか、なんだか、九条は大阪ではないみたいだった。ミニシアター系で働いている人は、どの街でもその街を代表する感じではないということもあるけど、劇場に行くまでに通ったナインモール九条、大阪には多いアーケード付きの商店街なんだけど、標語が標準語で書かれていて・・・

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「待った!スピードの出し過ぎ」は、大阪では「スピードを出し過ぎたら、アカン!」と書くのが “普通” なんだよねw

とにかく、、、

『T2 トレインスポッティング』は、前作を見た人しか見なくて良くて、前作を見た人も別に見なくてもいいけど、TOHJIRO監督のAVにお世話になったことがある人は、絶対にこの映画も観るべき!

でもって、別にお世話になってないというこのブログを見てくれている大半の女子は、公式サイトなどの情報を読んでじっくりと判断してねw

リヴァイバル上映に対する監督の思い・・
東京では4月28日まで 5月1日の夜にスペシャル最終上映があるようです。
他の地域の上映は、今後拡大中


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by yomodalite | 2017-04-27 18:00 | 映画・マンガ・TV | Trackback | Comments(0)
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キャストは全員黒人で、主人公はゲイらしい・・そんな前情報から、黒人+LGBTというマイノリティを掛け合わせた、ポリコレ色の強い映画?という危惧もあったのだけど、全然そうじゃなかった。

ドラッグ・ディーラー、シングルマザー、治安の悪い地域・・・永年、黒人アーティストを通じて語られてきた世界が、初めてリアルに、しかも「社会的」という目線ではなく描かれた傑作。

最初から最後まで目が離せないほど美しい光と色、そして音楽。

映画が終わって、スクリーンから出ると、漂ってくるキャラメルポップコーンの香りが、いつも以上に甘くて香ばしくて、切なかった。

派手な映像はないけど、この「光」は、劇場で浴びた方がいい
私はこの一作で、映像作家バリー・ジェンキンスの大ファンになりました。
この予告編では、映画の素晴らしさが全然伝えきれてないと思う。

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by yomodalite | 2017-04-07 06:00 | 映画・マンガ・TV | Trackback(1) | Comments(0)
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イギリス北東部ニューカッスルで大工として働くダニエル・ブレイク。心臓病のダニエルは、医者から仕事を止められ、国からの援助を受けようとしたが、複雑な制度に阻まれ、援助が受けられない。そこには、ロンドンのアパートを追い出され、2人の子どもをもつシングルマザーのケイティもいて、彼女を助けたことから、絆を深めていくダニエル。しかし、ダニエルもケイティも、厳しい現実によって、ますます追い詰められ・・・

2016年のカンヌ国際映画祭で、2度目のパルムドールを受賞した、イギリスの巨匠ケン・ローチ監督の作品を見るのは初めてだったのですが、ふと読んだインタヴュー記事から興味を持ちました。

ケン・ローチ「真のポリティカルコレクトネスとは自由市場に楯突かないこと。私たちを殺しつつある自由市場について指摘するのは『政治的に正しくない』のです」
長年真面目に働き、しっかり税金も払い、妻の介護もしてきた人が、病気になったとき、政府から援助を受けることもできない。そして、そんな困難な状況であっても他人への優しさを失わないダニエルや、ケイティ、その子どもたちも、本当に俳優が演じているということを忘れてしまうぐらいリアリティがあって、強く惹きこまれる。

ただ、監督の言葉にあるような、イギリスの社会状況については描かれていいないせいか、役人の態度についても致し方ないと感じる部分も多かった。ベテラン大工のダニエルは、病気で仕事ができない間、ケイティのためにアパートの修理をしてあげたり、棚を作ってもいる。治療としては薬を飲むぐらいで、就職活動のためにたくさん歩いてもいるので、「求職中」という枠に入れられる判断が「不公平」かどうかはむずかしい。

知り合いに、心臓病の持病をもつ人がいて、一見すると健康そうで、ポジティブ思考の彼は、もっていた障害者手帳がもつ数々の高待遇について、周囲に明るく語っていたこともあって、口の悪い友人から「障害者サギ」などと言われるほど、周囲から羨ましがられてもいた。でも、そんな「特権」を行使しているように見えた彼も、結局若くして突然亡くなってしまった。彼が本当に「重い心臓病」だったことがわかったのは、葬儀でのことだった。

だから、ダニエルのような心臓病患者にとって、病気での申請を審査する係りが行う設問や、目視が不利なものになりがちだということはよくわかるし、ダニエルやケイティはとても身近に感じられるのだけど、社会批判としてはちょっぴりヨワいかな・・。



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by yomodalite | 2017-03-30 07:00 | 映画・マンガ・TV | Trackback | Comments(0)
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これまで、韓国映画、ドキュメンタリー、青春映画、絶望シネマといったテーマで発刊されている「観ずに死ねるか ! 」シリーズの第5弾。

観ずに死ねるか! 傑作音楽シネマ88

宇多丸、尾崎世界観、オダギリジョー、能町みね子・・



音楽スピリッツに溢れた映画を、ライムスター宇多丸、尾崎世界観、オダギリジョー、能町みね子、湯川れい子、鮎川誠、近田春夫、みうらじゅん、大槻ケンヂ、九龍ジョー氏等、総勢70人が、それぞれの視点で語り尽くし、良質な紙質に印刷された全256ページのほとんどがカラーで、たったの2000円ポッキリ!

5つの章に分かれている各章の内容を一言で言うと、

第1章の「ヤァ!ヤァ!ヤァ!」は名作音楽映画が多く、第2章の「Songs」は、曲が映画のテーマになっていて、第3章の「Legend」は音楽界の偉人たちの映画、第4章「Music Life」は文字通り音楽と人生がテーマになっていて、第5章「Passion」は、音楽系熱血青春モノといったところでしょうか。

書いている人と映画の組み合わせは、湯川れい子の『エルビス・オン・ステージ』や、ROLLYの『ロッキー・ホラー・ショー』のように意外性のないものはむしろ少なく・・・聞いたこともない映画や、耳にしたことのない音楽を、何やっている人だっけ?という方々が熱く語られていることが思った以上に多くて、死ぬまでにクリアできるか不安になってしまいましたw

とにかく、この本を見なかったら、興味を持つことがなかった映画や音楽のメモがいっぱい溜まってしまう本です。

ちなみに、マイケルの映画は第3章「Legend」に収録!

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第1章 ヤァ!ヤァ!ヤァ!
「ビートルズがやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ!」告井延隆/ギタリスト
「エレキの若大将」 松崎まこと/映画活動家、放送作家
「星くず兄弟の伝説」白石晃士/映画監督
「私たちのハァハァ」大谷ノブ彦/芸人
「ブルース・ブラザース」鮎川誠/ミュージシャン
「レニングラード・カウボーイズ・ゴー・アメリカ」三留まゆみ/映画イラストライター
「リンダ リンダ リンダ」板谷由夏/女優
「サタデー・ナイト・フィーバー」内田春菊/漫画家 、小説家
「青春デンデケデケデケ」モルモット吉田/映画評論家、ライター
「パイレーツ・ロック」ピーター・バラカン/ラジオDJ他
「WE ARE Perfume」掟ポルシェ/音楽家、アイドル評論家
「映画 けいおん!」サンキュータツオ/芸人)
「こまどり姉妹がやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ!」三留まゆみ/映画イラストライター

第2章 Songs
「歌行燈」入江悠/映画監督
「晴れ姿 伊豆の佐太郎」根岸洋之/映画プロデューサー
「東京ナイト」高橋洋二/放送作家
「豊田道倫 映像集」 岩淵弘樹/映画監督
「恋のゆくえ ファビュラス・ベイカー・ボーイズ」松崎健夫/映画評論家
「ちびまる子ちゃん」松江哲明/ドキュメンタリー映画監督
「愛と誠」篠崎真紀/イラストレーター、ライター
「ライブテープ」「トーキョードリフター」「フラッシュバックメモリーズ 3D」成海璃子/女優
「ONCE ダブリンの街角で」大根仁/映像ディレクター
「フェーム」花くまゆうさく/漫画家
「ナッシュビル」高木壮太/ミュージシャン、戯作者
「はじまりのうた」松江哲明/ドキュメンタリー映画監督
「ロッキー・ホラー・ショー」ROLLY/エンターテイナー
「センチメンタル・アドベンチャー」根岸洋之/映画プロデューサー
「ナビィの恋」 佐々木俊尚/作家、ジャーナリスト
「バングラデシュのコンサート」みうらじゅん/イラストレーターなど

第3章 Legend
「5つの銅貨」立川志らく/落語家、映画監督
「処女ゲバゲバ」「ゆけゆけ二度目の処女」他 渚ようこ/歌手
「ラ★バンバ」森直人/映画ライター
「エルビス・オン・ステージ」湯川れい子/音楽評論家、作詞家
「永遠のモータウン」岩崎太整/作曲家
「タカダワタル的」「タカダワタル的ゼロ」佐野史郎/俳優
「Ray(レイ)」古泉智浩/漫画家
「ウッドストック 愛と平和と音楽の三日間」山本直樹/マンガ家
「ジャージー・ボーイズ」川本三郎/評論家
「シュガーマン 奇跡に愛された男」清水節/編集者、映画評論家
「バード」冨永昌敬/映画監督
「ワイルド・スタイル」宇多丸/ラッパー、ラジオパーソナリティ
「ムーンウォーカー」佐々木誠/映像ディレクター、映画監督
「パガニーニ 愛と狂気のヴァイオリニスト」辛酸なめ子/漫画家、コラムニスト
「アトムの足音が聞こえる」佐々木敦/批評家

第4章 Music Life
「右側に気をつけろ」樋口泰人/「爆音映画祭」主催人
「メタリカ:真実の瞬間」深町秋生/ミステリー作家
「あの頃ペニー・レインと」九龍ジョー/編集者、ライター
「光にふれる」中井圭/映画解説者
「色即ぜねれいしょん」内田春菊/漫画家、小説家
「あがた森魚 ややデラックス」森達也/作家、映画監督、明治大学特任教授
「DENKI GROOVE THE MOVIE?」塙宣之/芸人
「オーバー・ザ・ブルースカイ」真魚八重子/映画著述業
「ギター弾きの恋」佐々木誠/映像ディレクター、映画監督
「テネイシャスD」アサダアツシ/放送作家 、脚本家
「ドキュメント 灰野敬二」能町みね子/自称漫画家
「ワイルド・マン・ブルース」ケラリーノ・サンドロヴィッチ/劇作家、演出家、音楽家、映画監督
「ドリームガールズ」金子修介/映画監督
「嗚呼!おんなたち猥歌」樋口毅宏/作家
「祭爆 SAIBAKU」森世一/新宿ゴールデン街「談SINGシネマ」店主
「ラストコンサート」清水節/編集者、映画評論家
「ハイ・フィデリティ」伊賀大介/スタイリスト

第5章 Passion
「セッション」オダギリジョー/俳優
「ストレイト・アウタ・コンプトン」長谷川町蔵/ライター
「劇場版 どついたるねんライブ」九龍ジョー/編集者 、ライター
「ドラムライン」ファーストサマーウイカ/アーティスト
「THIS IS ENGLAND」鮫肌文殊/放送作家
「グミ・チョコレート・パイン」大槻ケンヂ/ロックミュージシャン、作家
「ファントム・オブ・パラダイス」近田春夫/ロックンローラー
「アメリカン・グラフィティ」渡辺大知/ミュージシャン
「SRサイタマノラッパー」シリーズ、「TOKYO TRIBE」磯部涼/音楽ライター
「ザ・コミットメンツ」山下敦弘/映画監督
「さらば青春の光」カンパニー松尾/AV監督
「タレンタイム」森岡龍/俳優、映画監督
「スクール・オブ・ロック」長谷川町蔵/ライター
「自分の事ばかりで情けなくなるよ」尾崎世界観/ミュージシャン
「自由と壁とヒップホップ」森達也/作家、映画監督 、明治大学特任教授
「ウォールフラワー」中井圭/映画解説者

◉特集
ボクが痺れたストーンズCINEMA …しゅりんぷ小林/漫画家
ボリウッドを観ずに死ねるか! …サラーム海上/音楽評論家、DJ、中東料理研究家
映画の中のボブ・ディラン …湯浅学/音楽評論家
今どきアイドル映画は<ドキュメンタリー的>な文脈で語られる …松崎健夫/映画評論家


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by yomodalite | 2017-03-10 06:00 | 映画・マンガ・TV | Trackback | Comments(0)
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今まで、アカデミー賞の受賞作や、候補作だから観にいこうと思ったことはなくて、むしろ、どちらかと言えば、そーゆー映画が好みではなかったんだけど、

最近ようやく魅力がわかってきたミュージカルで、これまでのハリウッド映画へのオマージュに満ちていて、しかも、その中には『マルホランド・ドライブ』も含まれていたり、また、男女の恋愛を扱った映画でアカデミー賞の最有力と言われることも最近ではとてもめずらしいように思えて、公開されたら早めに観に行こうと思っていました。

鑑賞前にできるだけ情報を耳にしたくない方なんだけど、直前にアカデミー賞の発表があって、そこで前代未聞のハプニングが起こり、大本命と言われながら作品賞を取れなかったのは、「トランプ政権に対するハリウッドのメッセージ」だとか、前年度の「白すぎるオスカー」への批判だとか・・・

なんだかんだ不覚にも小耳に入ってしまったのだけど、

ヒロインを死から助けるストーリーや、男女入れ替わりとか、ストーリー的に目新しさのない『君の名は』が、予想以上の出来栄えだったような、そんな魅力が『ラ・ラ・ランド』にもあるんじゃないかと思って観に行ったんですね。

でも、見終わったあとの率直な感想を言うと、

古いジャズを偏愛するピアニストを、ライアン・ゴズリングが素敵に演じていて、最優秀女優賞向きの脚本としか言えないような役を、エマ・ストーンがしっかりとこなしていて、

人が簡単に殺されたり、痛めつけられるような残酷なこともなく、主人公が自分の都合や正義のために、人の車を簡単に盗んだり傷つけたりすることが多い昨今の映画の中では、この映画の車のシーンは画期的で見所がある映像に仕上がっているし、最近ではめずらしい男女の恋愛を軸にしていることも良かったんだけど、

恋愛にも、自分の行く道を決めるといった人生の甘さや辛さの中にも、どこか「魂」が入っていないというか、

古いジャズが好きな男も、昔の映画を見て女優に憧れた女も、監督の映画オタクを表現し、業界内でウケるためだけの存在で、昔の映画を知らない観客が、『ニューシネマパラダイス』を見て感動したり、子供がマイケルのショートフィルムから、昔のミュージカルを見るようになるとか、そういった作り手側の「愛」は感じられなかった。

それと「白い映画」なのかと思っていたら、そこも違ってた。

むしろ(人種的な)配慮が行き届いているというか、セバスチャン(ライアン・ゴズリングが演じているピアニスト)を雇うバンドのボーカルを、ジョン・レジェンドが演じていて、これは黒い映画でも白い映画でもなく、ジョン・レジェンドな映画だと思った。

彼の音楽を聴くといつも「いい曲のような雰囲気」だけはあるけど、そんなにいい曲でもなくて、黒人音楽のいいところが消え、かといって白人ぽいとも言えない、ただただ優等生ぽくて、このレベルで自分で「レジェンド」って言っちゃう?とか、いったい誰が聴いてるの?とか、長年こっそり思ってたんだけど、この映画を見たらとうとう言わずにはいられなくなってしまった。

ライアン・ゴズリングはピアノもダンスも素敵で、存在自体がエレガントだし、オーディションでみせる達者な演技が、選考者に見向きもされないなんていう自作自演に気分が乗らないところはあるものの、エマ・ストーンが実力派スターだということはすごくよくわかるし、

テンポが良くて、すべての音楽が良いミュージカルは希少で、この映画はそういった意味で高いレベルだと思うし、素敵な映像もいっぱいある。

でも、セバスチャンは、チャーリー・パーカーや、セロニアス・モンクのようなジャズが好きだと言いつつ、出てくるのはそれとは真逆の優等生ジョン・レジェンドで、物語もジョン・レジェンドのような仕上がりw

白いとか、黒いとかっていう評価の中には、ジョン・レジェンドのバンドから離れて、自分の好きな店を・・ってところを深読みしているものもあるように思うんだけど、そーゆーこと自体がもううんざりって感じがして、

私は、早く家に帰って、エイミー・ワインハウス聞きてぇーー!という気分になりました。

こちらは、観終わった方向け!

ラ・ラ・ランドのネタ元映像

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by yomodalite | 2017-03-02 10:26 | 映画・マンガ・TV | Trackback | Comments(2)

旧「読書日記と着物あれこれ」。歴史/文学/お笑いを好み、着物生活をしていたはずが、いつしかマイケルジャクソンのように本を読もうになってしまったブログ。永年暮らした東京を離れ、現在は大阪を満喫中。


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