贋作王ダリ/スタン・ラウリセンス

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本書の内容は、ダリの作品の75%が贋作で、しかも、その贋作製作に、ダリ自身が関わっていた!というスキャンダルなお話。

著者は、その贋作を多数売買し、詐欺により服役したダリ専門のディーラー。

カバー写真は、いかにもダリらしいという感じですが「贋作王」の表紙にふさわしくマダム・タッソーの蝋人形館のものです(原題は「DALI&I : The Surreal Story」)。

著者は22歳の頃、チーズ工場でチーズに穴を開けて過ごし、夜はロックバンドで歌を歌っていたが、ある日週刊誌の編集者からスカウトされ、「パノラマ」紙のハリウッド特派員に。それは銀幕のスター達とディナーをともにして語ったかに読めるインタビュー記事をでっちあげる仕事だった。

『刑事コジャック』のインタビューを捏造した翌週に、ダリについてあれこれ考え始めたのは、ダリがハリウッドスターに劣らず有名だったからに過ぎなかったが、ダリの号の売り上げは、他のハリウッドスターの売り上げをはるかに上回ったことから、彼は、人生最大の教訓を得る。

「ダリは売れる」

その頃国際投資クラブのMMCの社長が会いたいと言ってきた。彼は言った。
「きみに美術投資部門の責任者になって、わが社の最上層の顧客に、カネで買える最高の美術品を見つけてきてもらいたい」

「どうしてわたしが?私は美術のことなど何も知りません」

「サルバドール・ダリの知り合いじゃないか」「ハリウッドでインタビューしただろう?いやはや、あれは実にすばらしいインタビューだった」

このときわたしは、人生でふたつ目の教訓を得た。
社長も人の子。ぺてんにかかる。

ものすごく調子のイイ話です。しかし、この後著者は、ダリ専門のディーラーになり、莫大な富を得るものの、詐欺で服役し釈放後、そのダリの隣人となり、恋人のアナをダリの朗読人にし、その死のカウントダウンもチェックした。ウルトラ・バイオレット、アマンダ・リア、グレイス・ジョーンズ。。。懐かしい名前や、ダリの共犯者である、「青年ダリ」や、イシドロ・ベアの告白、最後まで飽きさせず、読ませる魅力があります。

油絵画家のダリが、この時代のニューヨークのアートシーンを生き抜くうえで、本著で贋作と言われているような行為に挑んだのはなんとなく理解できます。アートにあまり詳しくない人は、この本でダリを誤解してしまうかもしれませんが、その後現代美術界では手法がどんどん洗練され、草間弥生には、ウォーホルの「ファクトリー」すら必要なくなっている。

ダリとガラの奇行もよく知っているし、そんなに驚いたという点はないですが、ダリの最晩年の暮らしぶりは、本著で初めて知りました。ガラはダリより先に亡くなっているとだけ認識していましたが、亡くなる前にダリの元から去っていたことは知りませんでした。

わたしのアイドルだった、ポール・エリュアール、マックス・エルンスト、ダリという3人の天才のミューズになった極普通の容姿で、しかも恐ろしく評判の悪いガラに焦点をあてた本を読んでみたいとずっと思っているのですが、どういうわけか出版されませんね〜。

それから、なんと、アル・パチーノがダリ役で映画化されるようです。ちょっと観てみたいかも。

【目次】
第1部 マックダリ—フランチャイズ計画
第2部 ドル亡者—詐欺師ダリ
第3部 セニョール・ダリ—ダリだけが売れる最悪の事態

◎[参考記事]夢のもののふ
http://nearfuture8.blog45.fc2.com/blog-entry-171.html
____________

【あらすじ】20世紀美術界最大の奇才、サルバドール・ダリ。なんとその全作品の約75%は「贋作」だった! 

ダリ専門アートディーラー兼詐欺師で、晩年のダリの隣人であった著者が克明に綴る、知られざるサルバドール・ダリの波乱万丈の生涯。欲望と狂気とスキャンダル渦巻く美術界を描いた驚愕のノンフィクション! 22カ国語に翻訳された世界的ベストセラー、ついに日本上陸!アスペクト(2008/09)

【著者略歴】スタン・ラウリセンス/1946年、ベルギー生まれ。サルバドール・ダリ専門の美術ディーラーとして10年以上を過ごし、贋作を販売した罪で服役。その後、作家に転向して、2002年、『黒い雪』という犯罪小説でエルキュール・ポアロ賞を受賞。現在、アントワープとロンドンに居を構える

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by yomodalite | 2008-12-07 22:19 | 歴史・文化:美術 | Trackback | Comments(0)

旧「読書日記と着物あれこれ」。歴史/文学/お笑いを好み、着物生活をしていたはずが、いつしかマイケルジャクソンのように本を読もうになってしまったブログ。永年暮らした東京を離れ、現在は大阪を満喫中。


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