羊の目/伊集院静

羊の目 (文春文庫)

伊集院 静/文藝春秋




目次からは短編集のようにも見えますが、物語はすべて繋がっています。

浜嶋辰三、山尾三津男、四宮賢治、須賀正、神崎武美・・・彼らに刺青を入れた清次(彫清)が刻印したもの、俠客、博徒...そして名を変えながらも繋がっているものの共通点とは。修羅の世界で生きる男たちの抗争を描きつつも、静謐な文体と、神崎武美の存在が物語を「聖書」のような味わいにしていて、小説としては『眠る蝶』以降俄然面白みを増す。

地味ではあるけれど、大人の読書マニア向けとしては、多分今年最高の佳作でしょう。

★★★★(R40)

『牡丹の女』
深川で内股に牡丹の刺青のある夜鷹は花川戸の辰三に、些細な喧嘩で死んだ指物師の夫との子供を託す。数年後、病を患い満州から引き上げた女は、我が子が辰三の元で成長したことを知る。。。

『観音堂』
本所吾妻橋、竹町の長屋にやってきた博徒“上州のみつ山”こと山尾三津男は、辰三が率いる浜嶋組の代貸しとなり、浜嶋組は勢力を増していく。辰三の家にはタケミという名の澄んだ目をした少年がいた。。。

『ライオンの舌』
戦場で出会った日本兵の背中にはライオンに似た動物のタトゥーがあった。ロダル・マッキーオ・コルザは、シチリアマフィアと同様の掟をもつ日本のヤクザに惹かれ、老人の博徒のケンキチに会う。ケンキチの元に届け物をもってきた若い男はタケミと名乗った。

『眠る蝶』
辰三が彫清の長屋に若衆を連れてきた。若衆の背中に触れた彫清はその類いまれな肌に惹かれ、辰三と同じ刺青を入れることを引き受ける。若衆は神崎武美という20歳そこそこの男だった。清次(彫清)の道具箱には見事な銀の蝶の細工が浮かんでいた。昔、指物師から惚れた女の刺青の代金として受け取ったが、指物師はその後斬り殺されたらしい。
仕事を始めて清次は益々武美に惚れ込み、かつて武美と同じような魅力に溢れた男がいたことを思い出した。不動明王を彫ったその男は四宮賢治と言った。

辰三の息子正規は大阪に逃げていたが、武美により辰三の元に帰ることになる。辰三は正規との親子の縁を切り関東から所払いにしたが、正規は辰三の妾を人質にとり、辰三に迫った。正規が女を突き飛ばし、匕首を辰三に向けて飛び出した時、武美は二人の間に突進した。

『竜の爪』
伊佐和力は、四宮兼治に逢い伊佐和組を四宮組に預ける決心を固め、須賀は四宮組の武闘派として組をまかされ勢力拡大の先鋒となった。警察に自首し刑期を模範囚として勤めていた須賀の前に、際立った印象をあたえる若衆が現れた。須賀は、若衆が男色の趣味のある首謀者を含む5人に襲われるも、同じ房の無期役の老人と撃退したのを目撃し、その鮮やかな手腕に感心した。その若衆は神崎武美と言い浜嶋組の若頭で、辰三の倅を殺して服役し、老人は、相手のほとんどがヤクザにもかかわらず11人を殺した事件で世間を騒がせた正木千吉だった。
数日後、須賀は風呂場で神崎の背中に見事な唐獅子の刺青を見た。刺青は四宮の不動明王と同じく「彫清」のものだった。

『ホットドッグ』
ロスアンジェルス、ワダ・ランドリー店。ケイコは母とともに、リトル・トーキョーで催される慰霊祭に出席する米陸軍第442連隊戦闘団の軍服の修繕で忙しくしていた。ある日、店に体格のいい日本人が仕事を求めてやってきた。ケイコは男が聖サンチャゴ・クニにそっくりだと思った。一方、須賀は神崎を追って、ロスアンジェルスで催される442連隊の慰霊祭の興業団の一行に加わり渡航していた。

『羊の目』
ニューハンプシャー州、コステル連邦刑務所は合衆国の中でも取分け厳しい監獄だった。規則だけでなく、1年の3分の1が凍雪に埋もれる過酷な環境、それ以上に厳しいのは囚人たちの掟だった。無期懲役囚ばかりの重い沈黙の中で、25年間服役囚たちの間でまことしなやかに伝えられている伝説があった。

だな通信 ミステリー文庫
http://danatuusinmystery.blog17.fc2.com/blog-entry-269.html
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[出版社からの内容紹介]夜鷹の女が産み捨てた男児は、闇社会を震撼させる暗殺者となった。神に祈りを捧げつつなお“親”のため人を殺し続ける男の生涯を描く。昭和8年。牡丹の彫物をもつ夜鷹の女は、後に日本の闇社会を震撼させるひとりの男児を産み落とした。児の名は神崎武美。浅草の侠客・浜嶋辰三に育てられた武美は、「親」を守るため幼くして殺しに手を染め、稀代の暗殺者へと成長していく。やがて対立する組織に追われ、ロスに潜伏した武美は、日本人街の母娘に導かれてキリスト教に接するのだが… 高潔で、寡黙で、神に祈りを捧げる殺人者。25年ぶりに日本に戻った武美が見たものとは──。稀代の暗殺者の生涯を描き、深い余韻を残す大河長篇。伊集院文学の最高峰! 文藝春秋 (2008/02)



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Tracked from だな通信 ミステリー文庫 at 2009-06-16 18:17
タイトル : 羊の目/伊集院静
◆読んだ本◆ ・書名:羊の目 ・著者:伊集院静 ・定価:1,667円 ・出版社:文芸春秋 ・発行日:2008/2/15 ◆おすすめ度◆ ・とある侠客の生涯度:★★★★★ ・静謐な筆致度:★★★★ ・純粋な想い溺..... more
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by yomodalite | 2008-09-29 15:48 | 文学 | Trackback(1) | Comments(0)

旧「読書日記と着物あれこれ」。歴史/文学/お笑いを好み、着物生活をしていたはずが、いつしかマイケルジャクソンのように本を読もうになってしまったブログ。永年暮らした東京を離れ、現在は大阪を満喫中。


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