着物をめぐる物語/林真理子

着物をめぐる物語 (新潮文庫)

林 真理子/新潮社




林真理子氏が着物にはまっているという話は以前より聞いていたのだけど、有名人の着物話は交流のある他の有名人や、呉服屋や着物商売の人々が実名で登場することにより、内輪ボメや宣伝のような話が多くて手を出しそびれていましたが、ふと思い立ち『着物の悦び』と『着物をめぐる物語』を同時進行で読みはじめました。

『着物の悦び』は今から16年前のエッセイ。現在の状況と異なる点も多いうえに、今より更にお金がかかる時代の売れっ子作家の着物道楽には、ちょっとついて行けない感じが冒頭から感じられたので、小説である『着物をめぐる物語』の方を先に読みました。今まで林氏の作品をほとんど読んでいないのだけど、これは佳作ですね!隙のない完成された着物にまつわるストーリーの目白押しで、この本により着物の魔力に惹かれてしまう人も現れそう。

【内容】

『松の緑』は、加賀友禅の一番の作家であった娘が、生前父が描いた芸者の「出の衣装」に出会う話。「松の緑」と名付けられた衣装は、松の芽をモチーフに、黒の紋付の裾いちめんに芽を吹き出した松が重なり、萌黄、若草、常磐色、何色かの緑が黒の地の上で踊っていた。

『形見』は、銀座のママの回想録。銀座のママはたいてい美人じゃない。
「銀座の女にはふた通りあるの。頭が悪くて不幸になるタイプと、純情過ぎて不幸になるタイプよ。どっちも同じようなもんじゃないかって言われそうだけど、根本が違うわ。純情過ぎるっていうのはね、脳味噌や心の中のあぶくが、あまりにも多く濃く出てくることを言うのよ。頭の悪い女っていうのは、泡ひとつ出やしない。脳のつくりが単純で平べったくなっているの。」
女の美しさと幸福の関係、かつての同僚るり子と交わした「大島」の形見分けの約束は守られなかったが。。。

『唐子』
かつての良家の娘であった雪子が、娘時代に創った着物の数々。「唐子」の着物を褒めてくれた混血の従妹、倉重俊太郎は、三年後に配属された静岡の上空で襲撃されパラシュートで脱出した茶畑で、村人に「アメリカ人」と間違われなぶり殺された。

『お夏』
新人女優由美子は3本の映画に出演後、巨匠堀口監督の時代劇映画で「但馬屋お夏」に抜擢される。堀口組と称される現場で由美子は甲斐庄楠音という男に出会う。

※甲斐庄楠音(日本画家) カイノショウタダオト は実在する人物。
1894~1978 日本画家 京都出身 甲斐荘家(本名)25代三男。
作品は、岩井志麻子「ぼっけえ、きょうてえ」の装幀に使用されている。(「横櫛」)
日本画家としてよりも、溝口健二監督の時代考証(着物のデザインなど)には欠かせない存在で、時代劇映画の考証屋として有名。彼が着物を気付けると誰よりも美しく映るという評判で名高い。谷崎潤一郎、吉井勇、などとも交遊を深め、 「雨月物語」ではアカデミー賞にもノミネートされた。私生活も個性的な逸話に事欠かず、裏地に派手な女物を生地を使った着物を着たり、女言葉を使った。

『歌舞伎座の幽霊』
歌舞伎座衣装部屋の裏方が語る楽屋話。“三階さん”、階段の影に藤娘の衣装を着たひとりの女形。。。。

『姉妹』
近所でも評判の美人の姉と正反対の妹。老婆になった妹が語る戦前戦後。

『織り姫さま』
嫁佐和子が語る、越後上布一番の織り手である74歳の姑「秀」。

『箱屋』
箱屋とは花柳界の女たちの着付け師。滅び行く職業である箱屋の男が語る花柳界の今昔。

『美装室』
ホテルで美装室を経営する美枝子は、結婚式当日に花婿に逃げられた美也に再び依頼を受けた。。。

『着物熱』
若い頃は着物に興味が無かった久仁子だが、老舗呉服店の名物おかみだった母の死後、「着物デザイナー新田久仁子の店」として店を成功させている。ある日、顧客である「田崎さん」の娘が、母の死の報告と残った着物の処分に困り訪ねてきた。

『路地』
元辰巳芸者、菊と絹枝は深川で麻雀屋を営んでいる。せい子姐さんは2人が小料理屋を失敗した時から同居を申し出てくれ現在まで一緒に住んでいたが、三人姉妹のような生活に急激に老いが押し寄せる・・・
________________

【内容「BOOK」データベース】華やかな歌舞伎座の楽屋に、藤娘の衣裳を着て現れる女形の幽霊。唐子の着物をほめてくれた混血の美青年が戦時中にたどった運命。夫と息子に先立たれた老女が黙々と織る越後上布。男に翻弄されたホステスが遺した大島。老境を迎えた辰巳芸者の着物への執念。畳紙に包まれ密やかに時を刻んでいた着物が、繙かれ鮮やかに語り始める…。縦糸と横糸のあやなす、美しく残酷な11の物語。 新潮社 (2000/09 単行本1997/10) 



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Commented by sakura-kanade at 2008-09-25 13:50
こんにちは。
私は林真理子さんが好きなので、この本を読んだのですが
文庫なのに装丁が美しく、着物の楽しさまで教わった気がします。

事後報告で申し訳ありませんが、リンク貼らせていただきました。
今後ともよろしくお願いいたします。
Commented by yomodalite at 2008-09-25 22:29
本当に佳い作品ですよね。改めて林真理子氏の凄さがわかりました。リンクのお知らせもありがとうございます。こちらもリンクさせて頂きました。ところでexblog以外のリンク(sakura-kanadeさんのサイトの「お気に入りリンク」)の仕方が未だにわからないのですが。。。簡単にできるのですか?(いきなり質問でスミマセン)
Commented at 2008-09-29 11:04
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by yomodalite at 2008-09-29 15:39
ありがとうございます。ご親切に感激です。(不器用なのでできるかどうかわかりませんが)早速試してみます!
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by yomodalite | 2008-09-24 17:41 | きもの | Trackback | Comments(4)

旧「読書日記と着物あれこれ」。歴史/文学/お笑いを好み、着物生活をしていたはずが、いつしかマイケルジャクソンのように本を読もうになってしまったブログ。永年暮らした東京を離れ、現在は大阪を満喫中。


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