映画『ダークナイト』監督:クリストファー・ノーラン

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残酷さに加え超人的な人間ばかり登場する近年のアメリカ映画には辟易としているのだけど、「バットマン」には思い入れもあり、下記の竹熊健太郎氏のブログ評により、うっかり観てしまいました。

で、結果から言うと「最高傑作」という評価には賛成です。しかし、それゆえの「うんざり感」も相当というか。憎めない感じだけど、ナンギなところも多かったTVシリーズの頃の「バットマン」と、この『ダークナイト』のバットマンの差は、リアルに昔と今のアメリカ人の印象と重なります。

(↓若干ネタバレ要注意。以下青文字 竹熊氏のブログより引用)

俺は近年、ここまで評論しやすい映画を見たことがないです。とにかくテーマがはっきりしていて、ひとつのテーマに沿って全体が一分の隙もなく構成されている。本当に隙がないんですよ。そのテーマというのは、言葉にすれば「善悪の相対性」という、日本のヒーロー物でもよく使われるものです。

と竹熊氏は評しています。確かにしつこいと思えるほどの「善悪」の判断が求められるシーンの連続があり、そこではメトロン星人とモロボシダンがちゃぶ台を挟んで会話した時のような、危険が回避され、時間がそこだけ止まっているような異次元空間(思想空間)ではありません。

観客にとって、一瞬の判断で生死が決まってしまうリアルな瞬間瞬間に、常に「善悪」を問われることによって、それは「問い」としては機能せず、敵の「悪」のイメージを増大させることに寄与してはいないでしょうか。それは、この映画に限らず、『24』や、アメリカの映画やTVの多くに見られるものです。果たしてバットマンの超人としての苦悩は、大ヒット中だというアメリカの大勢の観客が共有できるものなんでしょうか。

メトロン星人とモロボシダンは、ちゃぶ台という一般人の「日常」に降りて来ましたが、バットマンも、ジョーカーも、あり得ないほどの強大な「力」の頂点で闘い続け、ゴッサムシティに甚大な被害を与え、市民全てを敵にまわしますが、快楽殺人の権化ともいえる、まったく同情の余地のないジョーカーに、ようやく訪れた絶体絶命の瞬間も、バットマンはジョーカーを殺さず助けてしまう。

この場面は、今までのバットマンは人殺しをしない、という「お約束」とはまったく異なる「異常」な判断で、衝撃的です。無法者だけど、正義の味方という「闇のヒーロー」の系譜から逸脱した、正にアメリカの病そのものを体現しているような「異常」さ。

『ダークナイト』のような「スーパー・ヒーローの自己言及映画」が出て、しかも当のアメリカで空前のヒットを飛ばしているということは、いよいよ何かの時代の変わり目にさしかかっているような気がします。

今が時代の変わり目であることは間違いなく、それが特にアメリカ発信であることもたしかではあるけれど、これは、

ベトナム戦争が泥沼になってきた60年代末から70年代前半にかけては、『俺たちに明日はない』とか『イージー・ライダー』なんかの「アンチ・ヒーロー」を描いたアメリカン・ニューシネマ・・・

とは違い「イラク戦争」批判になっているのでしょうか。「敵」の中にある悪を膨らませることに飽きずに、超人としての自分も増大させている『ダークナイト』は、『戦争における「人殺し」の心理学』で言及されていた「脱感作」や「条件づけ」という洗脳の範疇からは、はみ出していないように思える。

メトロン星人とモロボシダンのちゃぶ台会談を実現できるのは、ゴシックな異空間であるゴッサムシティを創造したティム・バートンだけど、ワーナーのお偉方は、まだまだ戦争で金儲けしたい人々なんじゃないでしょうか。

え〜〜っと。この書き方では『俺たちに明日はない』とか『イージー・ライダー』を肯定してるみたいですが....でも、この映画の正義漢の検事ハービー・デントは、ロバート・レッドフォードを意識したキャラなので、彼の「反転」は皮肉が効いてます。更に彼の反転は市民には伏せておこうというのも痛烈。

そして、相変わらず、常識的な善人役には黒人が配置されていて(船中での黒人囚人やモーガン・フリーマンの扱い・・次期大統領はやっぱりオバマなんですねw)

レイチェルは益々ブサイクになっていて、ノーラン、相当喰えない奴のようですが、、

これは、敵もヒーローも際限なく「超人化」していくアメリカ映画の「最後の作品」を目指しているのか?

ジョーカー役のヒース・レジャーは亡くなり、バットマン役のクリスチャン・ベールは、母親と姉に対する暴力で逮捕というドメスティックな問題を露にしました。アメリカという新天地で別の仮面を手にしたいというハリウッド・ドリームもその澱みをもう隠しきれず、光と闇の「光」にすら輝きを失ったと、大勢のアメリカの観客は認識したのか? 

「ダークヒーロー」ですらない、こんな暗い映画が記録的な大ヒットし、日本では、このところ洋画の観客数の落ち込みが激しく、『崖の上のポニョ』が大ヒットしている。世界を知れば知るほど、島国なのは、日本だけではないとわかる。

◎「たけくまメモ」
◎「超映画批評」


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Tracked from 千恵子@行政書士 at 2008-09-05 08:45
タイトル : 権力腐敗描く ダークナイト
権 力 腐 敗 描 く  ダ ー ク ナ イ トバットマンは米国の有名な漫画の主人公で何度も映画化された勧善懲悪のスーパーヒーロー。今、上映されている映画は『ダークナイト』という題で公開され欧米で大ヒット中。夜中に蝙蝠(コウモリ)の図柄を空に投影すると、どこからか覆面の正義の味方が駆けつける「お約束」となっている主人公は暴力で制圧するだけ。バットマンは富豪のうえ会社の特別費を使い放題でバットモービルなどを特注する権力者。なにやら、世界の警察官=米国みたい。米国と違い殺しはしないが、暴力で正義を目論む。...... more
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by yomodalite | 2008-09-04 00:46 | 映画・マンガ・TV | Trackback(1) | Comments(0)

旧「読書日記と着物あれこれ」。歴史/文学/お笑いを好み、着物生活をしていたはずが、いつしかマイケルジャクソンのように本を読もうになってしまったブログ。永年暮らした東京を離れ、現在は大阪を満喫中。


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