時代を見通す力/副島隆彦

時代を見通す力

副島 隆彦/PHP研究所



久しぶりに歴史関係で興奮を覚える本。

神道などの日本精神を学ぼうとしてもわからなかった人、日本を愛するきもちから特定アジア諸国への反感に駆り立てられている人、その他さまざまな陰謀に利用されないためにも真実の歴史を見通す力は必要ですよね。

《第1章のポイント》
南宋の文官トップであった文天祥の「正気の歌」(1281年?)が、1660年代の日本の知識人層にものすごく大きな影響を与えた。そこから山崎闇斎(やまざきあんさい)の崎門学(きもんのがく)が生まれ、その後、浅見絅斎(あさみけいさい)の『靖献遺言(せいけんいげん)』の中で文天祥の「正気の歌」が激しく礼讃され、当時の優れた武士たちに強い影響を与え、栗山潜峰(くりやませんぽう)らとともに後の日本の右翼思想の源流ともいえる愛国主義、民族主義が生まれた。

この思想は幕末・明治維新の尊王攘夷の思想につながり、昭和の軍人たちにまでつながった。“昭和維新”の二・二六事件の青年将校たちも、全てこの「正気の歌(せいきのうた)」である。

更にこのあと大日本帝国の思想となって海外膨張主義即ちアジア侵略の思想、東アジア自己防衛戦争、大東亜共栄圏(八紘一宇)の戦略思想にまでなった。

幕末の日本で爆発的に読まれた、平田篤胤(ひらたあつたね)の『出定笑語(しゅつじょうしょうご)』、頼山陽(らいさんよう)の『日本外史』と会沢正志斎(あいざわせいしせい)の『時務策(じむさく)』。この三人の言論人の原型も、すべて文天祥。

日本人の思想の正統性の根拠が、中国の儒学者たちからもらってきた思想であるという複雑な心理と悲しみに、日本という国の知識階級のねじれというか、哀しみがずっと横たわっている。→「日本こそが世界の中心である」(山崎闇斎、山鹿素行、藤田東湖ら)日本中朝論。

《第2章のポイント》
足利・戦国時代から江戸初期まで、禅僧(仏教徒)たちが朱子学を学び講義もしていた。なぜ仏僧たちが、中国の儒教の書物を読み続けたのか?→禅僧たちは、中国との密貿易の文書作成係で、それが彼らの隠された最大の仕事(重要な国家的任務)だった。貿易だけが巨万の富をもたらす。幕末に薩長土肥の4藩が豊かな軍資金をもっていた背景と同様。

頼山陽と平田篤胤が熱狂的に武士階級の人たちから読まれたことが、幕末維新の思想的原動力となる。→儒学の正統である朱子学は当時非常に嫌われていた。昌平坂学問所の教授、古賀精里、尾藤二州、柴野栗山らは、朱子学を講義しながらも内心バカにし(中公文庫「日本の歴史」参考)、国学や、陽明学を学んでいた(→反徳川)。徳川家の一門の中でも、天皇を中心にした政治体制論に傾き始める。

幕末は、僧侶たちに対する激しい憎しみが国内に満ち溢れていた。(→戸籍にあたる宗旨人別帳と豪奢な寺の維持費の負担、墓参りの度に頭を下げなくてはならない「墓質」)

仏教は先祖崇拝とは何の関係もない。お釈迦様は「人間の死に関わるな。葬式に関わるな」とはっきり言っている。仏教と僧侶に対する憎悪が「お伊勢参り」の大流行につながった。「神社」が民衆の信仰を集めた。

神道の中身は何もなく、あるのは「日本民族の真心」だけである。

明治元年と2年の2年間に、全国に廃仏毀釈という運動が吹き荒れる。毀損されていない寺は陰陽寺に変化してしまっていている寺院が全国各地にあり、その典型は浅草寺、目黒不動尊、北野天満宮、四天王寺など。明治以降は、神道の時代になって、神官たちが威張り始めた(→『現人神の創作者たち』山本七平)

仏教界の激しいイデオロギー対立は大乱闘を繰り返し歴代天皇も苦慮した。知識人集団である僧侶たちの危険から、朝廷は侍という武装集団をガードマンとして雇うようになった。(→武士の興り)僧侶たちの集団乱闘の激しさは、学生運動を思い出せばわかる。

浄土宗の原型はキリスト教。特に聖母マリアへの信仰。マリア像が観世音菩薩に変じた。

富永仲基「誠の道」は、松下幸之助に受け継がれた優れた生き方である。
※論文『出場後語』(しゅつじょうこうご)、『翁の文』(おきなのふみ)『出場後語』が百年後に平田篤胤により改変されて『出場笑語』(しゅつじょうしょうご)となる。

尊王攘夷、勤王の思想は好ましいが、冷酷な政治理論としては、どうしても神懸かりであり、偏狭な日本主義を唱えているという世界からの攻撃を免れることはできない。神仏習合・神仏混淆を放置することも同様。

武士が能を好んだ理由....従軍して負傷者を看取り、戦没者を弔う陣僧としての役割を担い、軍旅を慰める興を催す活動から「阿弥衆」として芸能文化の想像に関わることに成った→その後、観阿弥・世阿弥が大成。狂言はそのお笑い版。

(第3章以降後日更新予定)


第1章 「義」の思想を日本が受容した
・文天祥「正気の歌」 
・思想の大義に従って生きること 
・「正気の歌」が中世・近世・近現代の日本史を動かした
・戦後世代の言論の弱点 
・中国人の根底にあるのは孔子ではなく関羽
・富永仲基が暴いたこと 
・平田篤胤の政治パンフレットが革命の発火点 
・裏のない横井小楠たち開明派 
・特攻隊へとつづく忠義の思想
・副島隆彦は現代の文天祥である 
・近代五百年の大きさを知れ 
・「志士」は「侍」ではない 
・戦後日本に蔓延したのは神でも仏でもなく「岩波共産主義」 
・「義」とは何か――政治の中心にある「巨大な悪」 

第2章 現在につながる仏教と神道の対立
・禅僧は密貿易の文書作成係だった 
・朱子学者(徳川体制)が国学(天皇中心)を学んでいた江戸後期 
・名簿を管理していた僧侶たちへの憎しみが明治維新の発火点 
・江戸時代にお伊勢参りが流行したわけ 
・寺の坊主が神社の神官よりも格上だった江戸時代 
・明治、大正、昭和の敗戦までは神官たちが威張っていた
・時代の空気を読んで神官に転向した興福寺の坊主たち
・仏教内部の六百年にわたるイデオロギー闘争
・浄土宗の原型はキリスト教 
・現代の大学教授は役に立たない坊主と同じ
・富永仲基「誠の道」――真面目に働く商人の思想 
・大塩平八郎の檄文も文天祥と同じ思想だ
・吉田松陰『講孟箚記』――日本の正統な支配者は天皇である
・本物の尊王攘夷――土佐「勤王同盟」 水戸「天狗党」
・一橋慶喜に見捨てられた天狗党
・裏切られた公武合体、暗殺された天皇と将軍
・尊王攘夷思想の正しさと偏狭さ 
・清河八郎「回天一番」 
・従軍坊主「戦陣僧」――武士が能を好んだ理由

第3章 江戸中期の思想家、富永仲基を評価する
・日本の神道は中国伝来の道教が原型 
・星占い=近未来予測は、中国の歴代皇帝の重要儀式 
・日本に本物の仏教はない 
・幕末に広く読まれた平田篤胤の『出定笑語』 
・トマス・ペインの『コモン・センス』がアメリカ独立革命の発火点
・富永仲基「加上」の原則――すべての仏典は・の積み重ねだ 
・お釈迦様が本当に説いたことと後世の仏教の違い
・内藤湖南が評価した富永仲基の意義 
・富永仲基の思想を裏切った平田篤胤
・大坂で生まれた町人、商人の思想
・中世の坊主は知識人階級
・天皇の原理とは何か
・神国イデオロギーの危うさ

第4章 黒船来航とロックフェラー石油財閥の始まり
・黒船来航と捕鯨
・石油が燃料になることの発見は世界史的大転換
・鯨油から石油へ、ロックフェラー財閥の勃興
・院政(=GOM)を敷くロックフェラー家 

第5章 明治維新はイギリスの世界戦略の中に組み込まれていた
・映画『カーツーム』でイスラム原理主義を解読する
・明治維新はイギリスの世界戦略の中に組み込まれていた 
・大英帝国内部の政治闘争が属国の運命を決める
・大英帝国内部の自由党VS保守党の政争
・帝国の戦略が、属国の政治を左右する
・覇権国の軍事戦略に世界規模の歴史が見える 
・アフガニスタンでも反乱に苦しんだ大英帝国 
・今も昔も占領地で泥沼に陥る世界覇権国

第6章 昭和史の背後に戦争を仕組んだものたちが潜む
・昭和戦前史から未来が見える 
・泥沼の日中戦争から突然の日米戦争へ 
・浜口・井上「金解禁」=小泉・竹中「郵政民営化」 
・金融恐慌の背後に世界覇権の移行が見える
・“アメリカ帝国”は一九一四年に世界覇権を握った
・民政党=米ロックフェラー=三菱VS政友会=欧ロスチャイルド=三井
・金解禁の背景に米ロックフェラーの世界戦略があった
・日米開戦を仕組んだのは米内光政と山本五十六長官である 
・南京大虐殺はあった 
・“アジア人同士戦わず”アメリカの戦略に騙されるな 
・リットン調査団の本音「満州までは日本にまかせる」 
・米内光政(よないみつまさ)はアメリカのスパイ
・石原莞爾の警告「間違ってもアメリカとは戦争をするな」
・アメリカの常套手段に陥った真珠湾攻撃
・二つの戦争(日中・日米)を同時に勝てるはずがない
・なぜか東京裁判で一人も刑死しなかった海軍軍人A級戦犯 
・「戦争は公共事業」というロックフェラー家の恐るべき思想 
___________

[出版社による紹介]最近は、金融に関する予測本での活躍が目立つ著者であるが、もともとは、日本とアメリカの政治思想を専門とする、右に出る者のない碩学である。著者は、常々「本当は、日本人はどのような思想のもとに生きてゆくべきなのか」を考えてきた。そのヒントは、これまで日本という国、日本人という人種が歩んできた「歴史」のなかにこそ存在する。そこで、著者の知力を総動員して描かれたのが、本書である。 
     
この本は、美しい人間絵巻である司馬遼太郎が描いたような歴史観には基づかない。過去の人々が、なるべく一般庶民のまえに出すまいとしてきたであろう事実を表に出し、本当に起きていたことは何なのかを抉り出すことに全力を注いでいる。読者は、戸惑いと驚きの中で、今まで誰も教えてくれなかった、真の歴史考察と直面するであろう。日本人必読の一冊である。


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by yomodalite | 2008-08-04 16:08 | 歴史・文化:美術 | Trackback | Comments(0)

旧「読書日記と着物あれこれ」。歴史/文学/お笑いを好み、着物生活をしていたはずが、いつしかマイケルジャクソンのように本を読もうになってしまったブログ。永年暮らした東京を離れ、現在は大阪を満喫中。


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