テロルの真犯人/加藤紘一

テロルの真犯人

加藤 紘一/講談社




政治家の発言というのは難しいのだと思う。責任をもった政治家ほど、真実が言えなくなるのでしょう。政治家は学者と違って、常に「勝負」の世界。「実」を取らなければ、何の意味もない。加藤氏は、政治家を志したときから、いずれは総理を目指すまでの経験と学習を積んできた人だと思う。

アジアばかりに媚びていると言われるが、政治とヤクザの世界は似ていて、アメリカも、EUも、中国も大事だなどと言う政治家は、結局、そのいずれとも関係を保つことは出来ない。しかし日本という国にとっては、いずれの国とも良好な関係を築くことこそ国益であるはず。それゆえ親中派の政治家を「媚中派」などと言って貶めるのは、愛国者のすべきことではない。

現在、媚中派というレッテルを一身に浴びている加藤氏だが、親中であればすべて批判されるようなネット世論には、かつて中国との国交を結んだことにより、アメリカから失脚させられた田中角栄氏と同じく、親米派の策略を見るべきだと思う。マスコミや、ネットでの論調に左右されずに、真実の加藤氏を少しでも知りたいと考え、本著を読んでみた。

加藤宅の放火事件の真の原因、正体とは何なのか。という思いが『テロルの真犯人』というタイトルになっている。老テロリストを突き動かした加藤氏の靖国発言から、自らの発言の歴史をふりかえる第1章、第2章。

内務官僚として生まれた生い立ちを語った第3章。アメリカ留学、台湾赴任を経て、中国をライフワークとし、出馬を決心した第4章。政治家の発言と責任。「加藤の乱」への反省、小沢、宮澤、大平、渡辺美智雄などの発言をふりかえる第5章。

第6章は、小林よしのりの『ゴーマニズム宣言』に見られる靖国史観、小泉外交への批判。ナショナリズムの危険な側面に注意すべきという第7章。「真犯人」と題されたエピローグでは、テロルの真犯人は、小林よしのり氏の作品により戦争がフィクション化され、再生したことによる浮世離れした現代人の心の隙間に潜んでいる。と結論づけている。

で、本著を読んだ感想を、一言でいうなら、「やっぱり、この人はダメである」。
必死に肩を持とうと読んだにも関わらず。。。。

第6章で、小林氏の『戦争論』を、手にするにはずいぶんためらいがあり、つい最近読んだというのは、エリートである加藤氏の正直な発言だろうが、この後に続くのが、読んでみたら素晴らしいマンガだったというなら、これでも良いが、本著発売の8年前に出版され、未だに売れている政治本として異例のベストセラー本に対して反論なら、あまりにも危機感が無さ過ぎる。日本への不満に対して中国に見せる細やかな気遣いを、どうして自国民にできないのだろうか? 

加藤氏が言う、日本会議や松平宮司の背景にいる旧軍人グループ、昭和天皇の松平宮司への不信感といった問題は重要であるが、その重要さを国民に伝えようとする努力が、小林よしのり氏の1000分の一もない。安易なナショナリズムを危険視し、今後のアメリカとの付き合いを考えなくてはいけないと思うなら、保守の名を借りた親米派を「ポチ保守」と名付けた小林氏に対してもう少し別の態度もあったのでは。

どんなに、中国の肩をもったところで、自国民に信頼のない政治家は中国も信頼しない。
加藤氏がどんなにアジア外交が重要だと言っても、アメリカも別に危険視しないだろう。
田中角栄、真紀子、鈴木宗男、小林よしのりのような影響力がないから。

この人を見ていると、アジアで戦争が起こった後に「平和主義者」として、生き残ってそうな気がしてならない。小沢氏に対して、自己像を正確に描いていたら、と言っているが、加藤氏の自己像と、国民から見える像のズレは、広がっていく一方です。

老テロリストへ、冷静な態度で、真犯人を「時代の空気」との位置づけたが、
「時代の空気」に反していることへの危機感が全くなく、まるで回答を用意しての「自作自演」だったのか、という疑いすら抱かせる。
なぜか、この人の場合、軸がぶれない態度に政治家としての大きさよりも、無風の山形から出た官僚出身2世議員の傲慢さのようなものが鼻を突いてならない。

愛国者団体というよりは、アメリカの鉄砲玉の右翼が、反靖国発言で本当に脅すかな〜〜。

「加藤紘一オフィシャルサイト」
http://www.katokoichi.org/

上記サイトにある、「拉致被害者を返して、国交正常化」という案は本当に実行力があったものなのかが、未だにわからない。実行力がなかったと思われる理由は、

○なぜ北朝鮮による拉致は、これほど長い間放置され公表されなかったのか。
○拉致犯罪を公表するタイミングはアメリカの指示だったのではないのか。
○なぜ小泉しか行けなかったのか。
○国交正常化重視派の元には、拉致被害者の情報が正確に伝わっていたのか。
○情報があったのなら、国交正常化重視派は、小泉が行く前に、拉致被害者が第三国で見つかったという事態をなぜ作れなかったのか。
○国交正常化重視派の元に情報があれば、亡くなった人に対して、亡くなった理由や、
遺骨、北朝鮮での家族に語らせるなど、全面解決を演出するには、相当の準備が必要と思われるが、返すための根回しを事前に一切やらないで、遺族や国民をどう説得するつもりだったのか。
○加藤氏は、安倍さえいなければと言うが、親中派はなんの成果もあげていない。

以上の疑問から、北朝鮮の拉致を顕現させたのは、アメリカの後押しがあったのではないかという疑惑が拭えない。国交正常化重視派は、拉致被害者の情報があったのなら、その後の工作を何もしていないのは、無能としか言いようがないし、被害者を返すということの、国民説明の工夫もまったくしておらず、返したら「こんなにいいことがあった」と夢想しているとしか考えられない。拉致被害が、大きく取り上げられる前なら可能だった案だと思うが、あれほどの被害者がいて、国民が納得する具体性が何もない。

親米派の小泉だったから、金正日に会えたのではないのか。
だとしたら、日本と北朝鮮の国交正常化をアメリカが許しただろうか。

「北朝鮮が拉致を認めて謝罪したあの時、北朝鮮はアメリカの攻撃を恐れていた。だからこそ、一気呵成に交渉を進めて、拉致問題の全面解決を図るべきだった。」

加藤氏の考えは、

お互いアメリカに虐められて大変だったね。でも日本は北朝鮮のきもちはわかるからこれ以上は責めないよ。だって大変な時期だったんだから、拉致だってしょうがないよ。お互い協力して、アメリカに少しでも対抗していこうよ。ねえ困っていることない?

ということかな。
「国交正常化」にどんなイイことがあるか、それが何十人、何百人もいると言われている拉致被害者を犠牲にしても、なお重要なら、国民を納得する説明のしかたを、もっと真剣に考えるべきなんだけど。。。

時代の空気に流されないのは、大事なことだけど、時代の空気への対応に鈍感すぎるというか、国民は賢い自分に従っていればいいのだ、という姿勢が今また、国民への説明不足により批判されている。本当に国益や、戦争回避のためなら、拉致被害者家族に会って、泣きながらでも話しあいをすべきだ。自国民を説得できないで、どうして北朝鮮と交渉できるのだろう・・・

真に優秀な親中派の政治家が早く現れてほしいです(はあと)
______________

【出版社/著者からの内容紹介】なぜ、狙われたのか。
老テロリストを決起させたのは、尖鋭化していく「時代の空気」だった。政治家の一言が、人を動かし、時代の歯車を回す。政治家にとって、言葉とはなにか。覚悟とはなにか。それでも私は、発言を続ける。講談社 (2006/12/19)

【本書の主な内容】
●絵に描いたような全焼
●同世代の犯人
●「それが私の心だ」
●私はなにを発言してきたか
●安倍首相の訪中
●日中のわだかまりはなぜ消えないか
●内務官僚の子
●復員した兵士たちの体験談
●朝鮮人差別
●「靖国の妻」たち
●私の中国体験
●畏友の自死
●吉田茂の訓辞
●キッシンジャーに騙された
●「加藤の乱」から小泉劇場へ
●日本会議と『ゴーマニズム宣言』
●オリンピック、ワールドカップの愛国心
●自由電子化する国民

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Commented by あSDFHJH at 2008-07-11 22:20 x
加藤紘一も日本共産党同様、拉致加害者の手先なのでしょうか?
かつて日本共産党の徳田球一は、ソ連に対し、「共産主義者にならない抑留者は日本に帰国させるな!」
と要請したことがあります。(詳しくは「徳田要請」で検索して調べてみてください)

加藤紘一の悪質度は、拉致加害者と兄弟政党・日本共産党の徳田球一並みかそれ以上でしょうか?
加藤紘一は、「第二の日本共産党の徳田球一」でしょうか?
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by yomodalite | 2008-07-11 17:31 | 政治・外交 | Trackback | Comments(1)

旧「読書日記と着物あれこれ」。歴史/文学/お笑いを好み、着物生活をしていたはずが、いつしかマイケルジャクソンのように本を読もうになってしまったブログ。永年暮らした東京を離れ、現在は大阪を満喫中。


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