溺れる人魚/島田荘司

溺れる人魚 (文春文庫)

島田 荘司/文藝春秋



『溺れる人魚』『人魚兵器』『耳の光る児』『海と毒薬』の4編の短編集。島田作品はこれまでほぼ全作読んでいましたが、2006年の本格回帰出版ラッシュ作品以降は見送っていました。

表題作以外はすべてミタライが登場するのですが、あの激しい躁鬱でユーモアたっぷりだった御手洗ではなく、歴史も最新科学も万能の学者としての登場し、ハインリッヒより頭がイイように描かれている以外に、この2人のパーソナリティーの違いはあまり見られないのは、相変わらず残念でなりません。

しかし、すべての作品が人魚の悲劇的な物語にどこか通じるものがあり、上質なミステリ短編集として洒落ている点、表題作以外は既読でしたが、再読に耐える作品であるのはやはり流石としかいいようがないです。

『溺れる人魚』
ミュンヘンオリンピックで大活躍しポルトガルの至宝と言われた美貌の水泳選手アディーノ・シルバは、先天性のニンフォマニアと診断され、ロボトミー手術されてしまう。手術後は一人で食事も排泄もできなくなり、癲癇の発作も起こすようになった。数年後、手術を担当したコスタ教授の出演番組を観た後、アディーノはピストル自殺し、そのアパートから2キロ余離れた場所でコスタ教授も射殺死体として発見される。コスタ教授宅に残された1発の弾丸は、アディーノが自殺した同じ銃から発射されたものだった。。

『人魚兵器』
フェルディナンド・ポルシェを崇拝するハインリッヒはポルシェ356でドイツを出発し、コペンハーゲンへ。有名な人魚像がなぜ災難に遭い続けるのか。「友人」のキヨシ・ミタライは私に言った。「君は『ベルリン地下協会』について聞いたころがあるかい?」
以前にキヨシがいたストックホルム大に長崎で購入したという「人魚のミイラ」が持ち込まれ鑑定を依頼された。。。2005年8月『名車交友録』所収。

『耳の光る児』
「ハインリッヒ、この『Cayenne』という車名、奇妙だと思わないか?」
「実はぼくは、中央アジアに行ってきたんだ」
彼が不思議な話を始めた。ロシアやアジア各地で耳の光る赤児が4人生まれたというのだ。紫外線を当てると、耳たぶの全体が薄ぼんやりを緑の蛍光色に光って見えるという。発現はユーラシア大陸各地に散らばっていて、母親は人種も言葉も異なるが、平凡な主婦で特殊な職業にはついていない。
ミタライは、母親たちの共通項が東方からの侵入異民であることを重要視し、東洋史にヒントが隠されていると感じ、タタルスタンやロシアの歴史資料を片端から読んだ。草原で平和な遊牧民族であったモンゴル人から、なぜ突如としてチンギスハーンによる世界最強の騎馬軍団が出現したのか、ハーン以前も以降もたった一度の奇跡はなぜ起こったのか。モンゴル帝国の西方遠征と耳の光る赤児たちとの関連とは?。。。2005年8月『名車交友録』所収。

『海と毒薬』
石岡の元に届いた一通の手紙。『異邦の騎士』に救われたと書く女性の手紙。。。元住吉「ランプハウス」。紅茶が運ばれてくると、女性はバッグから硫酸Dの小瓶を砂糖壷と並べて置いた。。。『島田荘司「異邦の扉」に還る時』
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【内容「BOOK」データベース】聖アントニオの奇跡!泳ぐことさえできなくなった元天才水泳選手が自殺しその「原因」を作った医師が殺害された。しかし不可解なことに、離れた場所であったにもかかわらず、同じ時間に同じ拳銃が使われたというのだ—。 原書房 (2006/06)



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by yomodalite | 2008-06-20 00:41 | 文学 | Trackback | Comments(0)

旧「読書日記と着物あれこれ」。歴史/文学/お笑いを好み、着物生活をしていたはずが、いつしかマイケルジャクソンのように本を読もうになってしまったブログ。永年暮らした東京を離れ、現在は大阪を満喫中。


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