地を這う虫 (文春文庫) /高村薫

地を這う虫 (文春文庫)

高村 薫/文藝春秋




元警察官を主役にした4編の短編集。ICU仏文科卒、専門商社を経て作家になった女流作家に、どうしてこのような境遇の男たちの物語がここまでリアルに綴られるのでしょうか。

『愁訴の花』/田岡は、警察を定年退職後小さな警備会社で警備員をしている。元同僚の須永は人生最後の時を迎えつつあり、7年前に妻殺しの罪で逮捕・実刑判決を受けた小谷は、懲役を終えた。小谷からの突然の電話に古い記憶が甦るー若き夫婦に釣り合わない建て売り住宅、看護婦だった妻の不可解な行動。。。須永の入院する病院で娘から渡された事務封筒、そこには小谷が妻を殺した日付から始まる手紙が入っていた。

『巡り逢う人びと』/元警察官の岡田俊郎は消費者金融で働いていたが、仕事先へ行く途中、かつての同僚に暴対法にからむ忠告を受ける。取り立て先の工場には警察時代にケンカでパクられた若者がいた。若者は親子丼を奢ってもらったことや、俊郎のカバンを覚えていた。帰りの電車では、同郷の高校時代の同級生植村に20年余ぶりに出会う。

『父が来た道』/政治家佐多幸吉のお抱え運転手になって3年。元刑事の慎一郎は20歳余も年上のおでん屋の女将と暮らしている。父信雄は地元で建設会社を営む一方、佐多の後援会会長を長年務めていたが4年前の総選挙の際、選挙違反を問われ逮捕実刑判決を受けた。慎一郎は父の世界に馴染めず警視庁へ入ったが、父の有罪確定で依願退職、その後地元の後援会に頭を下げられ、不本意ながら佐多に仕える身となっていた。慎一郎が警察と内通していることを逆に利用してきたと語る佐多の話は、父が痛恨の思いで服役したと信じてきた家族の思いを覆すものだった。

『地を這う虫』/元警察官の沢田省三は、倉庫会社と、夜間は薬品会社の警備員もかけもちしている。倉庫から薬品会社まで一ヶ月単位で一つの道順を選び、夜は倉庫から薬品会社へ、翌朝はその逆順で同じ道を通る。前に一度通った道は通らないという条件をつけて9通りのコースを設定し、9ヶ月かけてすべての道を50回づつ歩き、10ヶ月目からは新たな変化をもたせたコースを設定し同じように50回ずつ歩くということを続けて5年になっていた。規則正しい生活、同じ道を歩く生活の中で、手帳に目についた事柄を自動的に書き付けることも書かさない。省三は、300メートルを一辺とする正方形の「シマ」の中で起こった変化を見逃さずことができず、孤独な捜査に徐々にのめり込んでいった。
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【内容「BOOK」データベースより】「人生の大きさは悔しさの大きさで計るんだ」。拍手は遠い。喝采とも無縁だ。めざすは密やかな達成感。克明な観察メモから連続空き巣事件の真相に迫る守衛の奮戦をたどる表題作ほか、代議士のお抱え運転手、サラ金の取り立て屋など、日陰にありながら矜持を保ち続ける男たちの、敗れざる物語です。深い余韻をご堪能ください。 文藝春秋 (1993/11 文庫版1999/05)


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by yomodalite | 2008-03-03 12:10 | 文学 | Trackback | Comments(0)

旧「読書日記と着物あれこれ」。歴史/文学/お笑いを好み、着物生活をしていたはずが、いつしかマイケルジャクソンのように本を読もうになってしまったブログ。永年暮らした東京を離れ、現在は大阪を満喫中。


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