生物と無生物のあいだ(新書)/福岡伸一

極上の科学ミステリーという宣伝文句ですが、著者の詩的で美しい文章に引き込まれました。

研究者の日常の些事から、生命誕生の神秘にせまる歴史、脚光を浴びる研究者の陰に隠れた真のヒーロー、オズワルド・エイブリー、ルドルフ・シェーンハイマーとロザリンド・フランクリンいう三人の「アンサング・ヒーロー」(unsung hero)の物語が錯綜しているのも、科学の最先端の現場に物語的深みを感じさせ、また著者の生命観とも合致している。

■池田信夫Blog
http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/31e93631310649419220ba30ddba14dd
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生命とは何か? 極上の科学ミステリー。生命とは、実は流れゆく分子の淀みにすぎない!?「生命とは何か」という生命科学最大の問いに、いま分子生物学はどう答えるのか。歴史の闇に沈んだ天才科学者たちの思考を紹介しながら、現在形の生命観を探る。
ページをめくる手がとまらない極上の科学ミステリー。分子生物学がとどりついた地平を平易に明かし、目に映る景色がガラリと変える!講談社 (2007/5/18)


【目 次】
第1章 ヨークアベニュー、66丁目、ニューヨーク
ロックフェラー大学、野口英世の現在の評価
第2章 アンサング・ヒーロー
《オズワルド・エイブリー》
遺伝子の本体はDNAである。当時遺伝子はたんぱく質であると思われていた。
第3章 フォー・レター・ワード
《オズワルド・エイブリー》
A、C、G、Tたった4種しかないDNA文字がそのシンプルさゆえに変化の可能性を容易に生み出した。エイブリーの業績こそが分子生物学の幕開きをした。
第4章 シャルガフのパズル
任意の遺伝子を試験管の中で自由自在に複製する技術〜PCRの原理
第5章 サーファー・ゲッツ・ノーベルプライズ
PCRは、ポスドクを渡り歩いたサーファー、キャリー・マリスが発明した。
第6章 ダークサイド・オブ・DNA
DNA二重らせん構造発見にまつわる疑惑。それは、ウィルキンズが《ロザリンド・フランクリン》のX線写真を盗み見たことから始まった。
第7章 チャンスは、準備された心に降り立つ
「準備された心」をもっていたのは誰かータンパク質X線データ解析の経験があったのはクリックだけだった。クリックが盗み見た《ロザリンド・フランクリン》の報告書の一文「DNAの結晶構造はC2空間群である」が決定打となった。
第8章 原子が秩序を生み出すとき
ワトソン、クリック、ウィルキンズに共通して影響を与えたエルディン・シュレーディンガー『生命とは何か』。ワトソン、クリックの発見は、シュレーディンガーの予言の成就だった。
第9章 動的平衡(ダイナミック・イクイリブリアム)とは何か
《ルドルフ・シェーンハイマー》
生命とは代謝の持続的変化であり、この変化こそが生命の真の姿である。
生命とは自己複製するシステムである。
脳細胞のDNAを構成する原子は、むしろ増殖する細胞のDNAより高い頻度で、常に部分的な分解と修復がなされている。
「秩序は守られるために絶え間なく壊されなければならない」
第10章 タンパク質のかすかな口づけ
《エルディン・シュレーディンガー》
生物は、原子・分子に比べてなぜそんなに大きいのか?それは粒子の統計学的ふるまいに不可避の誤差率の寄与をできるだけ小さいものにするためである。
第11章 内部の内部は外部である
《ジョージ・パラーディ》1960〜70年代にかけてロックフェラー大学が細胞生物学のトップであった時代の中心的人物。細胞の内部で作られたタンパク質はどのような経路で細胞の外に出るかを「可視化」しようとした。
第12章 細胞膜のダイナミズム
NYからボストンへ。「細胞膜」との葛藤
第13章 膜にかたちを与えるもの
「GP2遺伝子の特定とその全アミノ酸配列」をアメリカ細胞生物学会でライバルと同着で発表。
第14章 数・タイミング・ノックアウト
GP2ノックアウトマウスの細胞はまったく正常だった。
第15章 時間という名の解けない折り紙
タンパク質を完全に欠損したマウスは正常だが、不完全な遺伝子をノックインするとマウスは変調をきたした。部分的な欠落や局所的な改変の方が全体の欠落よりも、より優位に害作用を与える。動的な平衡がもつ、やわらかな適応力となめらかな復元力の大きさに感嘆し、生命を機械的に扱うことの不可能性を知る。





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Tracked from 皆殺しの天使 at 2008-10-13 16:50
タイトル : 「生物と無生物のあいだ」・酷評 2/2
(1/2のつづき) 生物と無生物のあいだ (講談社現代新書 1891) 福岡 伸一 / / 講談社 スコア選択: この本読んでて私が一番許せなかったことというのは、「動的平衡」とかの言葉をまるで新鮮な概念でもあるかのように言っておきながら、50年前の、量子力学完成直後に現れたデルブリュックやボーア、ウィーナー、そして理論生物学において非常に重要な仕事をした(そして52年の二重らせん発見直後、不自然死する)数学者であるチューリングとフォン・ノイマンのことを、一切ど...... more
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by yomodalite | 2008-01-12 18:27 | 科学・環境問題 | Trackback(1) | Comments(0)

旧「読書日記と着物あれこれ」。歴史/文学/お笑いを好み、着物生活をしていたはずが、いつしかマイケルジャクソンのように本を読もうになってしまったブログ。永年暮らした東京を離れ、現在は大阪を満喫中。


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