滝山コミューン1974/原武史

極ふつうのボリュームのハードカバーですが、読了まで随分と時間がかかりました。難解な内容ではないのですが、本の性格がわかりにくく「序」での大げさ過ぎるルソーの『告白』引用後、ひたすら続くあまりにも詳細過ぎる30年以上も前の小学校時代の記述内容が、ノンフィクションとして読むにはどうにも信じがたく「資料」に対する疑問が生じ、文中に引用図書の記述はあるものの、巻末に「引用」ページがなく、著者略歴もない体裁など、やっぱり「小説」?という思いが何度も去来しながらの読書でした。

ちなみに、ウィキぺディアで、著者が1962年生まれ(年上ではあるが同世代!)、政治学者で、専攻は日本政治思想史、鉄道エッセイで知られ、現在は国際学部教授という記述を見て「?」は更に増幅しました。

読了後数日経って、結局、問題は「序」であったと思いました。この著作の資料は、ほとんど著者の「日記」であるはずですが、少年期にこれほどの詳細な日記をつけていたということを普通に説明すべきだったのに、(「序」で説明するのはそれしかないでしょ。)自らの日記の「歴史」運用への後ろめたさから、ことさら「恥ずかしい過去」や『告白』という大げさな表現ばかりが目立つことになったのでしょう。

それと、滝山コミューンの居心地の悪さから、「四谷大塚」へ逃避した著者の過去が、現在の読者にとって居心地の悪さを感じるであろうことへの著者のジレンマが交差し、私には、主題である「滝山コミューン」に入り込めませんでした。

終盤で、「少年ドラマシリーズ」のような世界という記述がありましたが、あの時代は未来への輝かしさと不安を同時に描いたものが多かった。あの頃の「未来」が無くなったひとつの原因は「四谷大塚」にあるんでしょうか。

主題というか、目のつけどころは面白かったのですが、著者の性格のねじれの方が目立ってしまって残念な結果に。

「秋月瑛二の「団塊」つぶやき日記 」
http://akiz-e.iza.ne.jp/blog/entry/192905
「送信完了。:読書系小日記」
http://d.hatena.ne.jp/ishigame/20070610#p1
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【出版社/著者からの内容紹介】 「僕は感動した。子供たちの裏切られた共和国だ!!」作家・高橋源一氏

マンモス団地の小学校を舞台に静かに深く進行した戦後日本の大転換点。たった1人の少年だけが気づいた矛盾と欺瞞の事実が、30年を経て今、明かされる。著者渾身のドキュメンタリー。東京都下の団地の日常の中で、1人の少年が苦悩しつづけた、自由と民主主義のテーマ。受験勉強と「みんな平等」のディレンマの中で、学校の現場で失われていったものとは何か? そして、戦後社会の虚像が生んだ理想と現実、社会そのものの意味とは何か? 2007年、今の「日本」は、1974年の日常の中から始まった。





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Tracked from 小烏丸の日記 at 2008-07-13 09:32
タイトル : [読書]滝山コミューン一九七四
原武史『滝山コミューン一九七四』講談社2007  本書は、政治学者(主に天皇研究)で知られる著者が、自らの小学生時代を振り返りながら書いたものである。 原武史 - Wikipedia 帯の紹介によれば (表) マンモス団地の小学校を舞台に静かに深く進行した戦後日本の大転換点。た... more
Commented at 2008-08-04 23:02 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by yomodalite at 2008-08-05 01:07
るい様、ご紹介の「大発作」存じませんでしたが、高山宏氏の文章で興味もちました。ありがとうございます。『滝山コミューン』は面白くなりそうな主題なんですが、大げさな序文から始まる構成も着地点もどうにも居心地悪い残念な
作品という印象でした。講談社ノンフィクション賞とは知りませんでした。文庫出版時に少し書き直したら、よくなる可能性があるので、その時に売りやすそうだという判断なんじゃないでしょうか。着眼点は興味深いですからね〜。
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by yomodalite | 2007-11-30 17:23 | 報道・ノンフィクション | Trackback(1) | Comments(2)

旧「読書日記と着物あれこれ」。歴史/文学/お笑いを好み、着物生活をしていたはずが、いつしかマイケルジャクソンのように本を読もうになってしまったブログ。永年暮らした東京を離れ、現在は大阪を満喫中。


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