『ケンジントン公園のピーター・パン』に新訳が・・・

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今年出版された『ケンジントン公園のピーター・パン』の新訳を読みました。
これは、バリが初めてピーターパンを登場させた小説『小さな白い鳥』から、ピーターが登場する部分だけを抜粋して出版された作品なんですが、海賊フックと戦ったりする前の話で、ピーターがまだ赤ちゃんのときの話なんですね。


新訳の光文社文庫のあとがきには「小さな白い鳥』に関しても詳しく書かれているのですが、ここでは、訳者による「パン」についての解説を紹介します。

(省略・要約・抜粋して引用)

「パンとはどんな神様なのでしょうか」
19世紀に広く愛用されたランプリエールの『ギリシャ・ローマ辞典』で「パン」の項目を引くと・・

パンは羊飼い、狩人、そして田舎のすべての住人の神であり、ローマ神話のファウヌスとしばしば同一視されました。その血統については、ヘルメス神とドリュオペー(ニンフが棗の木から花を摘んだために、木になってしまう女性)の息子だとか、ゼウスとカリストー(ゼウスに愛され、女神ヘーラーに嫉妬され、熊に変えられてしまった乙女)の息子だとか、諸説あり、

また、その名前の「パン」は、ギリシャ語で「すべて」の意味(由来は諸説あり)で、姿形は、頭に小さな一本のツノが生え、肌の色は赤みを帯び、鼻は平らで、脚、腿、尻尾は山羊といったもの。

古代エジプトでは、八柱の偉大な神の一人として崇拝され、その像は山羊の姿をしていましたが、パンは、豊穣の象徴であり、エジプト人は彼を万物の原理と見なし、

ローマ時代のティペリウス皇帝は「大神パンは死せり」という声を聞き、また、パンは田舎に住む人々を怖がらせたことで、人が言われのない恐怖に取り憑かれるとき、これを「パンの恐怖」と言うようになり、これが「パニック」という言葉になった・・・

パンの性質は、みなさんが知っているピーター・パンには、ほとんど見られませんが、本書のピーターには、それがまだ残っています。

その一つが「葦笛」であり、もう一つが「山羊」です。

日本人がかつて中国の学問や文化をお手本にしたように、ヨーロッパ人にとってギリシア・ローマの文芸は敬愛する古典であり、ヨーロッパの文学や絵画にもしばしば登場し、パンの神に関しては、19世紀後半から20世紀にかけて、象徴派や耽美派の美術が盛んになると、キリスト教のアンチテーゼとしての異教世界や、産業文明に対する自然を象徴するものとして、また人間の欲望の解放の象徴として、新たな脚光を浴びたようです。

たとえば、デンマークの作家イェンス・ペーター・ヤコブセンに「アラベスク」という詩があり、イギリスの作曲家フレデリック・ディーリアスは、この詩を歌詞とした声楽曲「アラベスク」を書きました。

また、牧神をテーマにした詩で有名なのは、フランスの詩人、ステファン・マラルメの「牧神の午後」。作曲家のドビュッシーは、この詩に霊感を受け、「牧神の午後への前奏曲」をつくり、ドヴュッシーと並び称されるフランスの巨匠ラヴェルが作曲したバレエ「ダフニスとクロエ」は1912年にディアギレフバレエ団によって初演され、ニンフとパンの神に対する牧人たちの素朴な信仰が描かれています。

一方、世紀末のドイツ、ベルリンでは1895年に芸術雑誌「パン」が刊行。「パンの会」も結成され、イギリスでは、1894年にアーサー・マッケンが『パンの大神』という短編集を発表。これは、パンを魔界の象徴として用い、この神の恐ろしさを強調した作品でしたが、ケネス・グレアムの小説「The Wind in the Willows」に登場するパンは、美しい歌声で、主人公を行方不明になった息子がいる場所へと呼び寄せます。

こういった例ほど有名ではありませんが、モーリス・ヒューレットという詩人が発表した戯曲『パンと若い羊飼い』の冒頭には、「少年よ、少年よ、汝は永遠に少年なりや Boy, boy, wilt thou be a boy for ever?」と書かれていて、まるで大人にならないピーターパンの出現を予告しているかのようです。

バリーがこの作品に影響されたかどうかはわかりませんが、研究家のアンドリュー・バーキンは、バリーはこの戯曲を知っていただろうと、指摘しています。

(引用終了)
ちなみに、研究家のアンドリュー・バーキンの本は、マイケルも読んでいた本です!

バリが空想した「ネヴァーランド」は、マイケルによって何年も実在することになり、その庭には、ピーター・パンの像だけでなく、ヘルメス像が建てられていました。(HIStoryツアーのオープニング映像にも登場。→リンク)また、ドヴュッシーは、マイケルのお気に入りの作曲家であり、ディアギレフバレエ団で「牧神の午後」の振り付けとダンスの両方をこなしたニジンスキーは、マイケルのパイセンで・・・。


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光文社文庫飯の解説は、抜粋した部分以外も、ピーター・パンの創造者で、その最大のモデルでもあったバリー自身や、作品に大きな影響を与えた母親についても、よくまとめられているのですが、キャプテンWの存在が消えてしまっている本編の方は、マイケルのいないネヴァーランドのように寂しく感じられ・・

私的には、こちらの訳本の方をオススメします(しかもお値段も安いw)


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by yomodalite | 2017-08-19 00:00 | ☆マイケルの愛読書 | Trackback | Comments(0)

旧「読書日記と着物あれこれ」。歴史/文学/お笑いを好み、着物生活をしていたはずが、いつしかマイケルジャクソンのように本を読もうになってしまったブログ。永年暮らした東京を離れ、現在は大阪を満喫中。


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