和訳 “Unbreakable”

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さて、いよいよ、アンブレイカブル の和訳です。

なんていっても、今頃?って思われそうだったり、一番の難問だったビギーのラップは、すでに「You Can't Stop the Reign」で訳し終えていて、




それ以外の部分は、特に迷うところもないので、和訳の前に、マイケルがすでに年も前に亡くなっていたビギーの既発曲のラップを使ったのは、なぜなのか? について、「マイケルとヒップホップ」では書ききれなかったことを補足したいと思います。


* * (補足はここから)* * 


ヒップホップのアーティストたちに、もっとも人気がある映画は『スカーフェイス(Scarface)』だと言われています。


アル・パチーノ主演のこの映画は、キューバの刑務所を出て、アメリカにやってきた主人公のトニー・モンタナが、コカインの密売でのしあがろうとする物語で、危険を冒しても成功を手に入れたいストリートのプレイヤーにとって「バイブル」とも言われ、


◎[参考記事]人生で成り上がりたいなら「スカーフェイス」を見ろ!!


ビギーのラップに登場する、コロンビア人のエピソードや、また、黄色のクーペも、まだ成功する前にトニーが乗っていた車を思わせるのですが、


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ラッパーたちだけではなく、マイケルもこの映画にこだわっていたんですね。


1983年に、アル・パチーノがトニー・モンタナを演じた『スカーフェイス』は、元々、マイケルもお手本にしていた伝説的な大富豪ハワード・ヒューズが、アルカポネをモデルにした映画を作ろうと、ハワード・ホークスに監督を依頼して制作されたもの(原題は同じ、邦題は『暗黒街の顔役』)のリメイクで、


主人公を演じていた、ポール・ムニは、マイケルが尊敬し、親友でもあったマーロン・ブランドが最も尊敬する俳優であり、Billie Jeanや、You Rock My World のショートフィルムに引用された『ゴッドファーザー』も、この映画から大きな影響を受けていて、マイケルはまだ幼いブランケットにさえこの映画を見せていたほどです。


You Rock My World のショートフィルムには、Unbreakable で映像化しようとしたアイデアが少し形を変えて組み込まれているに違いないと、私は思っているのですが、『スカーフェイス』は、彼が “心を揺さぶられた(You Rock My World)” ものであり、マイケルが考える「不屈の精神(Unbreakable)」のために引用されているんですね。



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「World Is Yours(世界は君のもの)」は、『スカーフェイス』に何度も登場する言葉なんですが、


シャックとビギーの「You Can't Stop the Reign」は、トニー・モンタナが悲劇的な結末を迎えるのとは異なり、成功はしたけど、彼のような失敗はぜずに、俺たちの世界を維持し続ける、という曲ですが、


マイケルの Unbreakable は、本当の成功や、強さとは、「決して負けないこと」である、という言葉だけでなく、時流に対して気が利いていて、韻を踏んだ「言葉」だけで勝負したがるラッパーたちに、もっと「音」そのもので勝負しろ!といわんばかりの、音の “奇襲攻撃” であり、


「スリラー」で、人種やジャンルを越えた地点から、より高い壁を突破しようという、マイケル自身の音とリズムによる「声明」でした。


そして、実は『スカーフェイス』へのこだわりは、彼自身の「顔」にも関係があって・・・


というのも、1992年、デイリーミラー紙は、マイケルの整形手術を揶揄するかのように、彼の顔のアップを一面にし、「Scarface(傷だらけの顔)」という見出しを付けていたからです。


マイケルはこれに抗議し、その写真の使用禁止と謝罪文の掲載を勝ち取りましたが、もともと整形手術を行った事実はオープンにしていますし、そうやって変えた顔に関して一度も後悔することなく、ここまで何度もひどい中傷にあっても負けなかった、という思いもあったでしょう


You Rock My World のショートフィルムのルックスは、当時、多くのファンを失望させましたが、歌詞にもあったように、その後、彼は余裕で這い上がり(I’m steady laughin’ while surfacing)、昔のファンが戻っただけでなく、大勢の新たなファンを増やし、今もなお KING Of POP の座を明け渡してはいません。


エリオット・ネスのチーム「アンタッチャブル」は、アル・カポネを刑務所に送り込みましたが、トム・スネドンは、結局、マイケルに手出しは出来ず、アンタッチャブルだったのは、やっぱり、マイケルの方でした(you can’t touch me ‘cause I’m untouchable)


(マーティン・バシールのドキュメンタリ番組などで、マイケルへの少年性的虐待疑惑は再度持ち上がるのは、ここから数年後のことですが、私はこのアルバム以降の彼の発言や動向が記録された海外本の翻訳などから、疑惑の再燃の半分ぐらいは、マイケルが「トム・スネドンをけしかけた」からだと思っています。)


そう、マイケルは「Unbreakable」のミュージックビデオは創れませんでしたが、その後の人生すべてを賭けて、Unbreakable」を演じたんです。


「あなたの天下は終わらない(You Can't Stop the Reign)」


「世界はあなたのもの(World Is Yours)」


そんな風に、マイケルに言いたくなる気持ちが抑えきれなくなったところで、


Unbreakable」をもう一度じっくり聴いてみてください。






"Unbreakable"


[1st VERSE]

Now I’m just wondering why you think

That you can get to me with anything

Seems like you’d know by now

When and how I get down

And with all that I’ve been through

I’m still around


僕は不思議でならないんだよね

君が僕をどうにかできると思っているなんて

もう分かってもいい頃だろう

どんなに落ち込むようなことも

僕はすべてを経験して

いまだに生き延びてるんだ


Don’t you ever make no mistake

Baby, I got what it takes(I've got )

And there’s no way you’ll ever get me(get to me)

Now why can’t you see(Why can't)

That you’ll never ever hurt me

‘Cause I won’t let it be

See, I’m too much for you, baby


君は間違ってばかりだよね

ベイビィ、君とは持ってるモノがちがうんだよ

僕にたどり着こうなんて、君には無理さ

君に僕を傷つけることなんかできない

どうしてわからないのかな

僕はそんな手には乗らない

ね、僕は君の手には負えないんだよ


[CHORUS]

You can’t believe it

You can’t conceive it

And you can’t touch me

‘Cause I’m untouchable

And I know you hate it

And you can’t take it

You’ll never break me

‘Cause I’m unbreakable


君は信じられないし、

納得できないだろうけど

僕には手出しはできないよ

僕は君には手の届かない相手だからね

君が僕を嫌っているのは知ってるけど

君にはなにもできない

僕を壊すことなんか絶対に

だって、僕は不死身だから


[2nd VERSE]

Now you can’t stop me even though you think

That if you block me, you’ve done your thing

And when you bury me underneath all your pain

I’m steady laughin’ while surfacing


君がなにをしたところで僕は止められないよ

君があれこれと僕を妨害したり

あらゆる苦痛を与えて、僕を沈めようとしても

僕は余裕で笑いながら、這い上がる


Don’t you ever make no mistake

Baby, I’ve got what it takes

And there’s no way you’ll ever get me

(You can’t do it, baby)

Why can’t you see that you’ll never ever hurt me

‘Cause I won’t let it be

See I’m too much for you, baby

(I’m too much for ya, baby)


君は間違ってばかりだよね

僕からなにかを取ろうとしても

君は僕にたどり着くことはできない

(君にはどうすることもできないよ、ベイビー)

君に僕を傷つけることなんかできないよ

どうしてわからないのかな

僕はそんな手には乗らない

君には手に負えない相手なのさ

(手に負えないのさベイビー)


[CHORUS]

You can’t believe it

You can’t conceive it

And you can’t touch me

‘Cause I’m untouchable

And I know you hate it

And you can’t take it

You’ll never break me

(you can’t break me)

‘Cause I’m unbreakable


君は信じられないし、

納得できないだろうけど

僕に手出しはできないよ

僕は君には手の届かない相手だからね

君が僕を嫌っているのは知ってるけど

君にはなにもできない

僕を壊すことなんか絶対に

(君には僕を壊せない)

だって、僕は不屈だから


You can’t believe it

(I’m unbreakable)

You can’t conceive it

And you can’t touch me

(you can’t touch me)

‘Cause I’m untouchable

(just watch me, baby)

And I know you hate it

(come on now)

And you can’t take it

You’ll never break me

You can’t stand it, babe, ’cause I’m unbreakable


君は信じられないし

(僕が不死身だってこと)

納得できないだろうけど

僕に手出しはできないよ

(君に手出しはできない)

僕は君には手の届かない相手だからね

だって、僕は不屈だから

(ただ見てればいいのさ、ベイビー)

君が僕を嫌っているのは知ってるけど

(come on now)

君にはなにもできない

僕を壊すことなんか絶対にできないし

君には耐えられないよ

だって、僕は不屈だから


[BRIDGE]

You can try to stop me

But it won’t do a thing

No matter what you do

I’m still gonna be here

Through all your lies and silly games

I still remain the same(I'm a still remain the same)

I’m unbreakable


僕を止めようとしたって、上手くいかないよ

君が何をしたところで、僕はまだここにいる

君が嘘をつき、愚かなゲームを続けても

僕は変わらない

僕は不屈だから


RAP(Notorious Big)

A lime to a lemon with my DC women(*5)(*6)

Bringin’ in ten G minimums to condos with elevators in ’em

Vehicles with televisions in ’em

Watch they entourage turn yours to just mirages

Disappearing acts, strictly nines and MACS(*7)

Killers be serial, Copperfield material

My dreams is vivid

Work hard to live it

Any place I visit I got land there

How can players stand there and say I sound like them?

Hello! Push wigs back and push six coupes that’s yellow(*8)

Plus clips that expand from hand to elbow(*9)

Spray up your Day’s Inn, any hotel you in

Crack baggin’ sick of braggin’ how my mink be draggin’

Desert ease street sweeper inside the Beemer wagon

I rely on Bed-Stuy to shut it down if I die(*10)

Put that on my diamond bezel

You’re messin’ with the devil

What? what? what? what


レモンからライムまで、(*5)

俺が支配してるD.Cの女たちにたんまり稼いでもらう(*6)

エレベーター付きのコンドミニアムや、

テレビ付きの車に運ぶのさ

見てろよ、俺の仲間はおまえが持ってるものを幻に変える

殺し屋は次々と、消すのに使うのは、9's か、MAC(*7)

デヴィッド・カッパーフィールドが手品で消すようなものさ

俺の夢ははっきりしてるし、必死にやってる

どこへ行こうが、そこが俺のシマ

そこらにいる奴が、俺みたいに出来るだって?

よぉし、頭数をそろえたら、6台の黄色のクーペに押し込んで、(*8)

肘から手まで伸びるやつを装着して(*9)

デイズインだろうが、どこのホテルだろうが、

ぶっ放してやるよ

ミンクのコートが引きずるほど長いだとか、

バカな自慢ばっかりしてるけど

乾ききった楽園の通りを、BMWワゴンの中から掃除してやる

俺が死ぬときは、ベッドスタイの連中にカタをつけてもらうぜ(*10)

俺のダイヤ付きの指輪に刻んでおこうか、

「お前は悪魔を相手にしてる」ってな。

どうよ?


[CHORUS]

You can’t believe it

You can’t conceive it

And you can’t touch me

‘Cause I’m untouchable

And I know you hate it

And you can’t take it

You’ll never break me

‘Cause I’m unbreakable


君は信じられないし、

納得できないだろうけど

僕に手出しはできないよ

僕は君には手の届かない相手だからね

君が僕を嫌っているのは知ってるけど

君には何もできない

僕を壊すなんて絶対に無理

だって、僕は不屈だから


You can’t believe it

You can’t conceive it

And you can’t touch me

‘Cause I’m untouchable

And I know you hate it

(why’d you do it?)

And you can’t take it

(just why’d you do it?)

You’ll never break me

You can’t fix me

You can’t stand of me

You can’t stand it, babe, ’cause I’m unbreakable


君は信じられないし、

納得できないだろうけど

僕に手出しはできないよ

僕は君には手の届かない相手だからね

君が僕を嫌っているのは知ってるけど

(そんなことしてどうするの?)

君には何もできない

(まったく、なぜそんなことがしたいのか?)

君は僕を壊せないし、

僕を矯正することも

僕と同じ立場に立つこともできないし

君には耐えられないよ

だって、僕は不死身だから


(訳:yomodalite)


☆訳註は(ビギーのラップ部分のみ)こちらをご覧ください。

http://nikkidoku.exblog.jp/27982381/



この曲を作った当時や、その後のマイケルのギリギリの不屈の精神に思いをめぐらせていると、ピーターパン(トリックスター!!)の作者である、J.M.バリが「勇気とは何なのか?」について語ったときのことを思い出します。



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Commented by kuma at 2017-07-27 17:39 x
ヒップホップは、自分には難しすぎ!と思って敬遠しがちだったのですが、一連のyomodaliteさんの誠実な考察に導いてもらう形でいろいろ知ったり考えたりすることができました。ラッキー! マイケルは思ってた以上に多くの曲でラップを取り入れていますから、彼の創作を深く理解しようとすれば、避けては通れないところだったんですね。

パチーノの「スカーフェイス」のもとになっているのは「暗黒街の顔役」だと聞いたことはあったのですが、ポール・ムニのことや、ハワード・ヒューズが着想したことや、もう一人のハワードも関わったことなどは、今回初めて知りました。「スカーフェイス」とマイケルのフェイスのつながりについても...(涙)

>人生すべてを賭けて、「Unbreakable」を演じたんです。

という一節に深く頷きました。
いつも知らないことをおしえてもらっています。
記事に載せてる何倍ものことを調べたり考えたりしてくれているであろうyomodaliteさんに、感謝とお疲れ様を言わせて!(記事冒頭の写真も、すっごく素敵になってます!)

追伸
ピーター・パンの作者が95年前に語った言葉の今日性・・・感動とともに切なさを感じますね。





Commented by yomodalite at 2017-07-28 13:52
>ヒップホップは、自分には難しすぎ!

私もーーー!!
2パックや、スヌープ・ドッグ、エミネム、Jay Z、カニエあたりは、それなりに好きな曲があるんだけど、マイケルがオリジナルアルバムで共演したラッパーは・・・
特にビギーは、何度CDを聴いても、あの声のモゴモゴ感にどうも慣れなくて、ビギーの映画だけでなく、ヒップホップ映画をひととおり見て、本も出来る限り読んで、彼のことが、ちょっぴり身近に感じられるようにはなったんだけど、それでも、彼が今だに高評価されてる理由は、正直よくわからなかった。

でも、やれるところまではやったので、マイケルがビギーを選んだのは、ビギーの個別性ではなく、普遍性の方にあると結論づけてもいいのかなって。

そんなこと、あのインタのときのそっけない態度で、分かり切ってることかもしれないけど、でも、「Unbreakable」のSFは、SONYが反対してなくても、完成しなかったっていう確信は深まったかな。

言葉にできない歌、とか、表現できない映像とか、そーゆーのをどこまでも考え続けられるってことが、真の「天才」だもんね。あの頃、マイケルが、ヒップホップよりは確実に「音」の影響を受けた系のアーティストたちが、同じように成功の苦しみを味わったときの「言葉」を思うと、やっぱり「KING」の座は永遠に彼のものであって欲しいって思わずにはいられないし、

>追伸:ピーター・パンの作者・・・感動とともに切なさを感じますね。

マイケルがいなかったら、ピーターパンが存在する深い意味とか絶対にわかんなかったよね。
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by yomodalite | 2017-07-26 00:00 | ☆マイケルの言葉 | Trackback | Comments(2)

旧「読書日記と着物あれこれ」。歴史/文学/お笑いを好み、着物生活をしていたはずが、いつしかマイケルジャクソンのように本を読もうになってしまったブログ。永年暮らした東京を離れ、現在は大阪を満喫中。


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