トニ・エルドマンに感謝?

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カンヌで「観客と批評家にとってのパルムドール」と言われ、各国の有力誌もこぞって2016年のベスト1に選び、ジャック・ニコルソンによる、ハリウッド・リメイクも決定したという作品。

ヒトラーが絡んでなくて、コメディとか、ヒューマンドラマという、ドイツ映画なんてめずらしいなぁと思って観に行きました。

主人公は、出っ歯の入れ歯や、変なメイク、妙なズラとか、子供みたいなイタズラが大好きな「父親」なんですが(トニ・エルドマンのことですw)、

とにかく、この「父親」、開始1分を待たずに、もうウザくて、

面倒くさいタイプだと聞いてはいたものの、ここまでとは・・というレベル。

オヤジギャグ連発・・なんていう話も、イメージしていたのとは、ちょっと違ってて・・・

もう「娘」だったら絶対に耐えられない、本当に困るタイプ!

全体を通して「腹がよじれるほど面白く、驚きの連続。正真正銘、観客を楽しませる」(ロサンゼルス・タイムズ評)とは言いがたく、私を含め、客席から「くすくす笑い」が起きる頻度はかなり少なかったのですが、この父親と娘の違いを笑い、この映画を評価しなくてはならない、と思うヨーロッパの事情のようなものは伝わってきて、笑うしかない、という感じでしょうか。

2016年の映画なので、さぞかし、多様性あふれるドイツの姿が見られるのかと思いきや、黒人もヒジャブをかぶった女性も難民もいなくて、私たちがイメージするドイツ人が登場し、娘(イネス)が仕事で来ているルーマニア(ブカレスト)がシーンの大半を占めています。

コンサルティング会社のエリートである「娘」は、石油会社の合理化を図るために、石油採掘場所である、ブカレストに来ているのですが、娘を含めたドイツから来たビジネスマンたちと、ルーマニアの人々との格差がエゲツなくて・・ルーマニア人を同じ人間と感じているのは、ウザい父親だけ。

それで父は、ますます娘の生活を心配するようになっていく・・

娘が、父のムチャぶりで、急遽ホイットニー・ヒューストンの『Greatest Love Of All』を歌わせられるシーンがあって、字幕に歌詞が出たことで、はじめて歌の内容を意識したんですが、元々モハメド・アリの伝記映画のために作られた曲だったんですね。



まずは自分を愛せるようになること
それが何よりも最高の愛だから・・・

ドイツの繁栄の陰には、ルーマニアを始め、搾取される一方の東欧の貧しい国があり、父のウザい行動の数々には、不感症になっていく娘への思いが・・・

たっぷり162分の上映時間をまとめてしまうと、そんな感じなのですが、ジャック・ニコルソンによるハリウッド版は、きっとドイツとルーマニアじゃないよね、どうするのかなぁ。。

終盤で「母親」の葬儀があって、生前、彼女から葬儀のときかけてほしいと言われていたのは「ハリー・ベラフォンテ」。ここにも娘へのメッセージが込められているのだと思いますが、トニ・エルドマンも「あの黒人の・・」と言い添えていて、母も娘も、重要な局面で、黒人の歌を、ということみたいです。

とにかく、ハリウッド映画のようにわかりやすい作品ではなく、エンディングまで、微妙なポイントに目が離せない映画でした。


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by yomodalite | 2017-06-29 09:46 | 映画・マンガ・TV | Trackback | Comments(0)

旧「読書日記と着物あれこれ」。歴史/文学/お笑いを好み、着物生活をしていたはずが、いつしかマイケルジャクソンのように本を読もうになってしまったブログ。永年暮らした東京を離れ、現在は大阪を満喫中。


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