AY対談w「マイケルのメッセージ?」

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6月2日にした私たちの会話を、長々とお聞かせしちゃいましたが、今回で最後です。

写真は引き続き「Searching For Neverland」から。

A:akimさん Y:yomodalite

A:マイケルの場合は、『Off The Wall』で、自分が思ってるほど評価されなかったってことも大きかったんじゃないかな?グラミー賞ではほとんど無視されて、ローリングストーン誌でも黒人は表紙にしませんとか・・そういうことではなく、確固たる実績というか、売上チャートには、一人一人が実際に買ってくれたっていう、一番「嘘」がないっていうね。


Y:お金出して買ったっていうのはね・・。最近では、「ファンです。Youtubeで毎日見てます!」なんて言っちゃうような「ファン」もいるけど、実際に「買った」っていうこと以上の「本当」ってないもんね。それはぜったいに嘘じゃないから。


A:もし、『Off The Wall』で、マイケルが思っていたとおりの反応だったら、「Thriller」は違ったものになってたかもしれないよね。


Y:そうだね、人間にとって怒りのエネルギーが、やっぱり一番強いと思うし、マイケルも、本当に成功の階段を登ったときのエネルギーはやっぱり「怒り」だったと思うんだよね。フレッド・アステアが、マイケルを見て、「君は怒れるダンサーだ」って言ってたけど、本物の一流の人が持っているスゴい力っていうのは、大体「怒り」に属していて、それを、すべて「表現」に変えられる情熱をもっている人が天才なのかもしれないんだけど、マイケルがもっていた怒りのひとつである「黒人」っていう部分は、彼の場合、幸か不幸か、そうではなくなってしまって・・・


A:「肌の色」だけじゃなく、マイケルの場合、自分と同じような「黒人」がまったくいなかったってこともあるよね。世界には色々な「黒人」がいるのに、アメリカの「黒人」には、他の国以上に、ステロタイプが求められてるし、マイケルが、自分が黒人だということに誇りをもっているのは確実だけど、みんなの描く「黒人」アーティスト像とは一味もふた味も違っていたからね。超越してたよね、本当にいろいろなことを。


Y:それでも、肌が黒いときは、その壁をぶち破ってやるという気持ち(Off The Wall)があったと思うんだけど、破った壁の向こうに新たに現れた「壁」は、マイケルには見えていても、世間の人には、わかりにくかったんじゃないかな。



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Y:でも、あらためて『Off The Wall』というタイトルは、新生マイケルのソロアルバム第一弾にふさわしかったと思うなぁ。テーマがあって音楽があるんじゃないんだって、マイケルはどこかのインタヴューで言ってたんだけど、今は、よく「マイケルのメッセージ」って言うでしょう。でも、曲やインタヴューや、色んな和訳をしてきて、つくづく思うけど、マイケルって本当はそんなメッセージがあるわけじゃないんだよね。メッセージがあるかないかで言ったら、プリンスの方がマイケルよりも断然あるよね?


A:プリンスの方が全然ある!マイケルはメッセージみたいなの、むしろ全然ない。私もそう思う!ありそうな歌詞はあるんだけどね・・


Y:ありそうなのは、マイケルが書いた詩じゃなかったり、むしろ、マイケルは、そういう言葉を慎重に避けてるって感じがすごくするんだよね。


A:皆無とは思わないんだけど、例えば、「We Are The World」とか、「Heal The World」だよね。


Y:そうそう、ああいう曲は、まさに「メッセージ」なんだよね。マイケルもそのふたつの曲を作れて良かったって言ってるから、彼にとっての「メッセージ」は、そこに尽きると思うんだけど、さらに、そういったメッセージを繰り返したり、平和活動みたいなのが、自分のアイデンティティになってしまうと、音楽の神も、愛もそこから逃げ出してしまう、みたいな感覚を持っていたんじゃないかな。あの「Love」という詩のように。




Y:「We Are The World」は80年代を代表する曲だけど、人々がそういったことを信じられなくなって、傷ついた90年代に生まれたのが、「Heal The World」だったんだよね。でも、結果的にこのふたつは、今もっとも裏切られたメッセージだと言えるんじゃない?

このあと、先進国は多様性が重要なテーマになっていったけど、アメリカにしろ、EUにしろ、その多様性社会のルールは、グローバリスト陣営にいるほんの数人が決めることになって、そのルールに従わない国は民主国家ではないから、そんな国のリーダーは独裁者だと認定され、独裁者を倒すための軍事的行動は、どんなに犠牲が出ても正しいこととされる。

世界がひとつになる、というよりは、富を独占し、ほんの数人で法律を決めていくような「ひとつの世界」への道がずっと進行していて、そこに不満をもった人たちが、民主的な選挙によって「No!」を言おうとしても、今度は「ポピュリズム」だなんて批判されちゃう(苦笑)。



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Y:マイケルが、こうしよう、ああしよう、とか、自分はこうだ、とかほとんど言うことなく、色々誤解されたことへの弁解や、あらゆるところで、言葉が少なかったのは、そういった言葉の欺瞞に敏感で、言葉に縛られるのが嫌だったからじゃないかな。


A:特に歌詞に関してはどう捉えられてもいいみたいなね。


Y:うん、言葉は、人の心を縛るし、宗教でもあって、願いと方法論は掛け違うことが多いよね。日本人とちがって、欧米人の世界観は、善と悪が常に戦っている世界の中で、自分は「善い行い」をしたいと思ってる人がすごく多くて、そこが「アイデンティティ」に強く結び付く。

日本で一番多くに支持されてきたのは、「人に迷惑をかけない」とか、「人に優しくしたい」ってことだと思うんだけど、「善い行い」っていうのは、人に迷惑をかけても存在する。だから、アメリカのヒーロー映画は、人の車を破壊するなんてなんとも思わないどころか、犠牲者が出たって全然平気(苦笑)。

欧米的な「知性」の多くは、実はなにが「善」かということが重要だから、マイノリティが「善」ってことになると、マジョリティは「悪」になって、どんなに攻撃しても大丈夫になっちゃう。だから、ちょっぴり流行った「反知性主義」も、知性の行き過ぎに対する「理性」でもあって、マイケルの「子供に学べ」や、「いたずら好き」も、知性へのアンチテーゼのように思えるときもあるんだけど、自分が「善」だと思っている人は、自分と異なる人を「悪」だと思って攻撃しちゃう。



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Y:昔は、自分が「善」だと信じている人は、「教会」に従ってた人たちなんだけど、現代では、これが「知性」です、と言われていることを信じている人たちなんだよね。それで、今やっかいなことになっているのは、「自由や多様性を重んじる」って言葉さえ唱えていれば、そうしてるつもりになっちゃってたけど、実際はそうじゃなかったってことなんじゃないかな?

彼らは、意見が異なる人に暴力を振るっても「善い行い」だと思ってるし、「悪」と激しく戦うのは普通のことだから、Heal The Worldの方が「デンジャラス」なんだよね。


マイケルには、常に困っている人に優しくしたいっていう気持ちの純粋さをすごく感じるんだけど、今のセレブたちは、言葉やタトゥーにしても、やたらとメッセージをもちたがるんだけど、それは目標も着地点もわかりやすくて、結局、彼ら自身のアイデンティティの一部でしかないように見えちゃう。

彼らは、メディアが推奨する「正しさ」や、認められた「知性」に準じることに熱心で、地球を守るには、二酸化炭素が「絶対悪」だって思い込んでたり、実際に困っている部分の極一部にしか目が行かないみたい。国内に住んでいる恵まれない子供ではなく、わざわざ海外から連れてきた子供を養育して、肌の色の違う家族をもつことも、「アンデンティティ」のためっていうか。



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番組のイベントに登場したスザンヌ・パッセ(左)とナビ


Y:マイケルのテーマを、あえて求めるとしたら、彼の場合、常に自分を超えることに、最後までこだわっていたってことで、マイケルが越えようとした「壁」は、ギリギリのところまで実際に行ってみて、そこで初めて、目の前に立ち上がってくる、そういった「未知なるもの」への興味っていうか・・・


そういう姿勢だったから、マイケルの言葉に裏切られることがあっても、マイケル自身から「信頼」や「愛」が消えなかったんじゃないかな、とも思うんだけど・・。


A:さすが深いわ(笑) あたしはHeal the world, save the children、まぁこの二つが大きな柱だと思ってたのだけど、彼から感じるメッセージがあるとすれば、日本人としては皮膚感覚で感じることが難しいけど、とにかくloveにつきるなぁとは思う。

今年も25日が来て、マイケルのメッセージを大切にとか、マイケルの意思を継ぐとか、そういう声を聞くことが多くなって、また私が耐えられない季節になった、とか思っちゃうんだけどさ(笑)

Y:メッセージって、そんなつもりはなくても、ときどき「愛」とか「詩」とか「音楽」を殺しちゃうことがあるからね(笑)


(おしゃべり終了)


6月に、長々とした私たちのおしゃべりにおつきあいいただき、ありがとうございました!



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マイケルに扮する前のナビ


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Commented by childspirits at 2017-06-28 23:36 x
yomodaliteさんakimさん、対談、お疲れ様でした!
毎回読み終わってしまうのがもったいないような気持ちで、拝読しました。以前私がyomodaliteさんとさせていただいたシュムリーがらみのおしゃべりとはひと味もふた味も違う楽しいおしゃべりで、8回目のmemorial monthを有意義に過ごせた気がします。

This Is It以降、かなりな頻度と深さ(願わくば)でマイケルのことを考えてきたつもりですが、今回のお二人のおしゃべりを聞いていて、彼に対する考え方を「更新」できたり「追加」できる部分があったのは、とてもうれしかったです。自分を「更新」していくことの大切さ、というのが今のところ私がマイケルからもらった、一番の「メッセージ」のように思うので・・・。

対談後半にあった、どれも「本当」のマイケルである、ということや、作品にはあえてメッセージ性を持たせていない、という部分、とても納得しました。それが、世界のどんな地域でも知られ、時を超えて人を惹きつける、彼の普遍性の源かな、と。
彼のことを考えると、元々の意味での「君子豹変す」という言葉を思い出します。君子は変わることを恐れないのですよね。その言葉を知って知らずか、マイケルはショートフィルムで豹に変身したり、豹と一緒に写真撮ったりしてますねw。
今回知ったのですが「君子豹変す」には「小人は面を革む」という続きがあるのだそうです。この「面」というのがyomodaliteさんの言う昨今使われるような意味での「アイデンティティ」とつながっているのかも知れませんね。

随所にあるナビさんの写真もすごくよかったです。たしかに寄りで見ると顔とかそう似てないのに、体の線や品のある感じなど、全体の雰囲気をものすごくよく研究して、自分のものにしているのですね。マイケルに対する愛情と尊敬が感じられます。

それから、途中に入った「世界を変えたレコード展」の記事もタイムリーでよかったです。

素敵な6月にしてくださって、ありがとうございました。
Commented by yomodalite at 2017-06-29 17:40
先生ーーーー!
スムーズな翻訳を、いつもありがとうございます!!!
あちらでは、ついに、ビルとジェイヴォンの行く末にも不穏なムードが押し寄せてきましたが、それでも、二人ともパリスの可愛らしさに一生懸命尽くしていたり、マイケルの周囲では、なにかとハラハラすることばかりですが、どうしても彼から離れられないのは、ファンだけではないんですよね〜。

>「君子豹変す」という言葉を思い出します。・・・

本当はそういう意味だったんですね。デンジャラス期の「スーパーボウル」でも、マイケルはミリタリールックで登場して、「Heal The World」で締めたり・・「第一級の知性を計る基準は、二つの相対立する思想を同時に抱きながら、しかもそれらを機能させる能力を維持できるかどうかである」なんていうフィッツジェラルドが言ったらしい名言もあるけど、あれだけ読書家だったマイケルの言葉の慎重さは、そういうことだったように思えます。
Commented by yomodalite at 2017-06-29 17:41
小人は上の人に従い、それを受け入れる素振りをしつつも、旧来のやり方やメンツにとらわれ、古いやり方や、いったん口にした自説にこだわってしまう。

自説って、たくさん考えても、そうでなくても、曲げられない人が多いし、人に謝れっていう人ほど、自分では絶対に謝らないものですよね。

>随所にあるナビさんの写真・・・

うん。ファンイベントでも、MJ関係者にも概ね好評らしく、ビルとジェイヴォンもなんか満足気なツイートとかしてたみたいで・・そこは、ナビの長年の努力が実った感じがしたんだよね。

akimさんも私も、6.25が苦手だってところは共通してて、こんな6月があっても・・みたいな。ホントはもっと「本」の内容について語る予定だったんだけど、最後まで読んでないってこともあって、こんな感じになっちゃいました。全部終了したら、なんてことも話したけど、マイケルについて話すのは、いつまで経っても「緊張」するので、どうなることやら・・

でも、childspirits先生とも、またおしゃべりしたいですぅーー!
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by yomodalite | 2017-06-27 10:21 | MJ考察系 | Trackback | Comments(3)

旧「読書日記と着物あれこれ」。歴史/文学/お笑いを好み、着物生活をしていたはずが、いつしかマイケルジャクソンのように本を読もうになってしまったブログ。永年暮らした東京を離れ、現在は大阪を満喫中。


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