三島由紀夫の『美しい星』が映画に・・

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三島由紀夫の『美しい星』が原作と知って、観に行かねばと思った映画。

吉田大八監督は、この作品だけは自分が映画化すると、原作に大変な思い入れがあったとは聞いていたものの、最初、物語の中心となる一家の父親が、地球温暖化に危機感を抱くテレビ番組の気象予報士だということに、小説との違いを感じて、ちょっぴり不安を感じつつ観ていましたが、徐々に1967年に発表された小説の斬新さを、現代に甦らせようとする熱意が伝わってきて、原作を読んでいる人にも楽しめる映画だと思いました。

『美しい星』は、UFOや宇宙人が登場することで、三島作品の中でも異色だと紹介されることが多い作品ですが、実は、これこそ三島由紀夫!と言いたくなる、三島にしか書けないような作品で、

この小説はきわめて耽美的、芸術至上主義的であり、もっとも社会的でありながら、もっとも反現実的である。明治以来の日本の近代文学にかつてなかった型破りの小説・・・
人類の運命に関する論争の場面は、手に汗を握るような迫力・・・ドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』の「大審問官」の章を思い浮かべた・・・
作者は核兵器という人類を滅亡させる最終兵器を自らの手でつくりだした現代という状況をふまえて、人類の存在の根源を問おうとしているのだ。(新潮文庫、奥野健男氏の解説より)

というような小説なんですよね。

映画では、リリー・フランキーが演じている一家の父親がコミカルで、宇宙人だと意識している家族と、政治家との関係なども、かなり単純化されていて、耽美的とか、芸術至上主義的な印象もないと思いますが、知性も感情も劣化した現代では、三島が描こうとしたレベルを想像することさえ難しくなっていますし・・。

没後何年も経ってから、作品に出会った者には信じられないことですが、文学者だけでなく、あらゆる分野の中でも、日本最高の知性を持ち、死の瞬間まで「流行作家」だっただけでなく、小学生でも知っているほどの「有名人」でもあった三島は、きっと、この映画を楽しんで観たでしょう。

遠い未来を見通すほどの鋭い知性と、完璧な美を追求する繊細な感覚。この両方を兼ね備えた、数百年にひとり現れるかどうかというような稀有な天才が生み出した作品を、いつか、私たちが理解できるときまで、今後も三島作品がたくさん映画化されますように。

小説は、見てから、読んでも、また違った感じですごく深いです!



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by yomodalite | 2017-06-01 09:52 | 映画・マンガ・TV | Trackback | Comments(0)

旧「読書日記と着物あれこれ」。歴史/文学/お笑いを好み、着物生活をしていたはずが、いつしかマイケルジャクソンのように本を読もうになってしまったブログ。永年暮らした東京を離れ、現在は大阪を満喫中。


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